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6. Making!マカロンと恋の芽生え?!
しおりを挟むそんなことがあって、それ以来私と獅子戸先輩は廊下や道ですれ違った時などに挨拶をする仲になったのだ。
たまにお菓子を渡すこともあり、その時に見せる顔が、シャーベットを食べた時の顔と同じように幸せそうなので、それ見たさに私はまたお菓子を渡してしまう。
正に、推しに貢ぐとはこの事だと毎回1人で納得し、貢ぐ度に生きがいを感じるのだ。
スーパーで買い物を済ませて家庭科室に帰る途中、ボトルを持って柔道場から出てきた獅子戸先輩と鉢合わせた。
ちなみに、獅子戸先輩は3年の先輩が卒業したと同時に主将となったらしい。
流石私の推しだ。と首を縦に振り頷いていたら、凪に、お前は何様だ?と言われたのが昨日の事のようだ。
「獅子戸先輩!お疲れ様です」
「白川か。買い物帰りか?」
「はい。今日はマカロンを作ろうと思って。出来たらお持ちしますね!」
「そうか、白川がくれる菓子は何でも美味いから、楽しみだな。いつもありがとう」
笑って言った獅子戸先輩に私も笑って答える。
「いえ、気に入って頂けて良かったです。では私はこの辺りで失礼します」
ああ、と獅子戸先輩が返事をするのを聞きながら、ぺこりと頭を下げて、私は軽い足取りで家庭科室に向かった。
家庭科室に着くと、凪がガナッシュを作り終わった頃だった。
「凪、聞いてください!さっき獅子戸先輩に会いました!」
「ああ、お前の推しか」
「そうです!あの日のことは忘れられません。私が高1で……」
「その話は何十回も聞いたからしなくていい」
「推しの話は何百回でもできますし、したいんです~」
私はぷくっと片方の頬を少しだけ膨らませて先程買ってきたものを調理台の上に置く。
そこから必要なものを準備して、早速マカロンを作り始めた。
辺りが夕日で赤く染る頃にマカロンが出来上がった。
私は紅茶、凪はコーヒーをカップに入れ、マカロンを食べながらお喋りに興ずる。
「結構上手に出来ましたね。美味しいです」
「ああ、そうだな」
「そういえば、桜城くんは順調に王道転校生のルートを進んでいるようで安心しました。ふふふ、誰とくっつくか楽しみですね!」
「全く、お前は……って言っても手遅れか」
凪は溜息をついてコーヒーを煽る。
私は今日のことを思い出して笑みがこぼれた。
ふと食堂での出来事を思い出して、凪に話しかける。
「そういえば、今日の食堂のことなんですけど、あなたが他人に興味を持つなんて珍しいですね」
「いや、他人に興味が無いわけではないんだが……」
「でも普段あんなことしないじゃないですか。あの書記の子……剣崎くんに何かあるのかと気になりまして」
「…………別に」
「えっ、なんですかその間は。気になるじゃないですか、教えてくださいよ」
「大したことじゃない、気にするな」
「いやいや、無理ですよ。正直に吐きなさい」
ほらほら、と正面にいる凪の頬にマカロンを押し付けながら言う。
凪は鬱陶しそうに私の手からマカロンを奪い取り、口に入れる。
モグモグと咀嚼しながら、迷うように視線を動かす。
私は新たなマカロンを手に取り今度は凪に押し付けず、自分の口に入れる。
何となく、これかなと思う理由はあった。
ただ、凪の口から聞きたいのだ。
私から言うより、凪が自分で言ってくれた方が、私的に萌えるからだ。
凪は口の中にあったマカロンを飲み込み、コーヒーで口の中を整えると、視線を逸らしながら喋り始めた。
「…………あの書記……剣崎、だったか? あいつ、何だか放っておけないなって思ってな。……勿論、取れかけたボタンが気になってたのもある」
私は紅茶を一口飲み、口を開く。
「…………無口わんこ系書記×オカン系黒騎士」
「おい待て、何故俺が受けなんだ?」
「ご馳走様です」
「話を聞け!」
凪を拝んでいた私は、合わせていた手を離し、腕を組んでうんうんと頷きながら話し出す。
「凪にとって剣崎くんは、推しなんですね。まぁ、だいたいあなたが好きになるキャラの系統は昔っからあんな感じですし」
「…………確かに、そう言われてみれば」
「で、しかもあなた、私があなたと剣崎くんのカップリングを口に出した時、何故俺をホモにするのか、ではなく、何故受けなのか、と聞きましたよね」
腕を解き、頬杖をついてニヤリと笑って凪を見つめる。
「つまり、あなたは少なからず彼に好意を抱いているということじゃないですか?恋愛に発展するといいですね!」
「は?いや、俺は、お前が何でも腐った方向に考えるから俺も妄想の材料にすると思ったからそう聞いただけで……!しかも、少ししか話してない奴に好意とか何とか、抱けるわけないだろ?」
「……まぁ、そういうことにしといてあげますよ」
そう言えば凪は不満そうに私を見つめた。
そんな凪を余所に素知らぬ顔で私はマカロンを食べる。
「さて、そろそろ片付けますか。余っているマカロンはタッパーにでも詰めましょう」
「……そうだな」
私は凪のジトっとした目線から逃げるように話を逸らした。
凪は少し目を瞑り、目を開けた時にはいつものクールビューティー黒瀬様に戻っていた。
片付けも済ませ、寮に戻った。私達は寮の部屋も同じだ。
玄関から入って真正面にあるドアの先にはリビングやダイニングキッチンがある。
リビングはそれぞれの部屋と繋がっており、左のドアは凪の、右のドアは私の部屋へと続いている。
そして、玄関からリビングに続く廊下の左側にはトイレや風呂、洗面所がある。
私はキッチンに行ってマカロンを数個ラッピングして、タッパーに入った物と一緒に冷蔵庫に仕舞ったあと、制服の上からエプロンをつけて晩ご飯の準備をする。
私も凪も料理は出来るので、一日ごとに交代制で食事を作っているのだ。
今日の晩ご飯は、三色丼とすまし汁、もやしときゅうりのポン酢和え。普段そんなに食べない2人なので量は重視していない。今日の凪の昼ご飯みたいにガッツリ食べるのは稀なのだ。
晩ご飯を作っている間、風呂に入って部屋着に着替えた凪はソファーで寛いでテレビを見ていた。
早々に作り終えた晩ご飯をダイニングにあるテーブルに並べると、凪が席に着いた。
私も凪の前に座り、2人で手を合わせて、いただきます。と言ってから食べ始める。
「明日、部活何しますか?休みにします?」
私の問いに、凪は少し思案してから答える。
「……明日は手芸をやろう」
「分かりました。何作るんですか?」
「明日決める」
「了解です」
そこから2人はほとんど会話らしい会話をせず、食事を終えた。
私達は大抵、2人で食事する時は話をしない。
会話なぞいつでも出来るというのも一つの理由だが、単純に食事中に会話するタイミングが掴めないからである。
食べ終われば、料理を作ってない方が皿洗いをする。それが2人の間のルール。
私は凪が食器を洗っている間に風呂に入った。基本シャワーだけなのですぐに終わり、髪を乾かしてから出ると、凪はソファーで寛いでいた。
凪とテレビを見ながら、たわいも無い会話をしていると、あっという間に時間が過ぎ、どちらともなく自分の部屋に戻る。
私は宿題をした後、ベッドで横になり、今日の出来事を思い返しているといつの間にか眠りについていたのだった。
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