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25. Sweet!部屋での甘い時間!
しおりを挟む夕食が終わり、各々部屋に戻ることになった。私と獅子戸先輩も部屋に戻って寛いでいると、少ししてから小腹が空いたため、私は1階にあるコンビニに何か買いに行こうと立ち上がった。
「少し小腹が空いたので、何か買いに行ってきます。欲しいものがあれば、ついでに買ってきましょうか?」
「いや、俺も行こう。ホテルの中とはいえ、1人だと何があるか分からないからな」
「本当ですか?ありがとうございます」
じゃあ行くか、と言った獅子戸先輩に返事をして、私達はコンビニへ足を運んだ。
コンビニでお菓子や軽食類を見繕っていると、剣崎くんと美馬くんがやってきた。
「あ、雪月ちゃんと獅子戸先輩じゃん!奇遇だね~!」
「奇遇ですね。お2人も、何か買いに来たのですか?」
「そうそう、お菓子でも買おうかなって思ってね!同室だった遥くんにも声掛けたら行くって言ったから、一緒に来たんだ~」
そうなんですね。と相槌を打つと、美馬くんは他の棚を見に行くと言って移動した。美馬くんの隣にいた剣崎くんは、小さく会釈してから美馬くんを追いかけた。
コンビニスイーツのあるコーナーに行ってみると、美味しそうなスイーツが並んでいた。よくよく見てみると、新商品というラベルが貼られているものもあり、それだけで興味がそそられる。
とりあえず、新商品のスイーツの1つであるチョコレートケーキと、地域限定のスナック菓子を買うことにした。
会計も済ませ、私と獅子戸先輩は部屋に戻ることにした。
部屋に戻り、テーブルの上に買ってきたものを並べる。そして、冷蔵庫の中からオレンジジュースを取り出し、グラスに注ぐ。
「白川は何を買ったんだ?」
「新商品のスイーツと、地域限定のスナック菓子です」
じゃん!と買ったものを紹介すると、獅子戸先輩は、おお、と少し目を輝かせていた。
「獅子戸先輩は何を買われたんですか?」
「俺は、これだな」
獅子戸先輩が机に並べたのは、新商品のスイーツの1つだったプリンと、定番のチョコレート菓子だった。
「あ、私もそのプリン気になってたんです!感想聞かせてくださいね」
「もちろんだ。じゃあ早速食べるか」
いただきます。と手を合わせて私はチョコレートケーキに、獅子戸先輩はプリンに手をつけた。
艶のあるチョコレートがかかったチョコレートケーキは甘過ぎず、かといって苦過ぎない丁度いい甘さだった。中にはラズベリーのソースが入っており、酸味がアクセントになって飽きがこないケーキになっている。
「このケーキ、美味しいですよ!一口食べますか?」
ケーキを刺したフォークを持って横を向くと、獅子戸先輩がこちらを見ていた。
すぐにハッとして、しまった、と私は焦った。
「す、すみません、あの、これは、その……」
焦り過ぎて吃っていると、突然フォークを持っていた手がグイッと引っ張られた。そしてそのまま獅子戸先輩の口に持っていかれる。
「…ん、美味いな」
あ、あれ?今、何が……?
数秒経って起こったことを理解した途端、自身の体温と心拍数が一気に上がったのが分かった。
なん、なんということを……!推しに、あーんだなんてっ!で、でも、不可抗力、そう、不可抗力!私がやったわけではなくて獅子戸先輩が口に持っていったんだし…!ああだけど、きっかけを作ったのは私で……!
何も言えず、顔が熱くなるのを感じながら口をワナワナさせていたら、獅子戸先輩が少し申し訳なさそうに私を見て言う。
「すまない、嫌だったか?」
「嫌じゃないです!ありがとうございます!」
「えっ?」
「ああ、いや!違います!こちらこそごめんなさい!凪と間違えてしまって!」
動揺して本心が出てきてしまったが、すぐに謝って言い直す。
私の言葉を聞いた後の獅子戸先輩はどこかホッとした様子だった。
「ああ、そうだ。一口貰ったから、俺のも一口やろう」
その言葉に今度はピシリと固まる番だった。ヒェ……と小さく呟き、目線を逸らしたくなったが、ぴったりと固定されたように逸らせなかった。
何の対策も思いつくことのないまま時間が過ぎてしまい、獅子戸先輩はプリンを乗せたプラスチック製のスプーンを構えるのをただただ眺めるだけだった。
差し出してくるスプーンと少し楽しそうな獅子戸先輩を交互に見る。
ああ、ダメだ。若干ワクワクしてる推しを拒否して悲しませることはできない。
私は意を決して、差し出されたスプーンに乗ったプリンを食す。
味?食感?分かるわけない。とてつもなく緊張しているんだから。だって、推しからのあーんだよ?緊張しないなんて無理。あとこっちは平静な顔を保つのに必死なんだよ。
「…こっちも美味しいですね」
味わった振りをして、笑みを浮かべて答える。獅子戸先輩は、だろう?と嬉しそうに笑って言った。
ああ゙!これだからオタクはやめられない!!推しの笑顔が見れてよかった!!生きててよかった!!さっき昇天しかけたけど!!!
悶えている私に気付くことなく、獅子戸先輩はスイーツを食べながら懐かしむようにポツリと呟く。
「よく弟達に一口くれ、とせがまれたのを思い出すな」
その言葉に、話を変えて落ち着けるチャンスだと思い、その話を広げることにした。
「ご兄弟がいらっしゃるんですね」
「ああ、弟と妹がいるんだ」
「そうなんですね、弟さんと妹さんはおいくつなんですか?」
「妹が中学3年で、弟か中学2年だ」
「弟さんもこの学園に?」
「いや、弟は妹と同じ学校に通っているんだ」
そこから兄弟の話題になった。しかし私には兄弟がいないので、主に獅子戸先輩の弟さんと妹さんの話を聞くことと質問することに徹した。
あっという間に時間が過ぎ、買ってきたスイーツやお菓子も食べ終わってしまった。そろそろ就寝の準備をしなければ明日に響くということで、交代でお風呂に入り、ベッドに入った。
因みに、お風呂は私が先に入った。獅子戸先輩が入った後のお風呂に入れるほど、私は図太いオタクではないので。
おやすみなさい、と就寝の挨拶をして、眠りについたのだった。
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