BL学園の姫になってしまいました!

内田ぴえろ

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26. Swimming!青い海と輝く筋肉!

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 翌朝、朝食をとるために昨日夕食をとった会場へ向かう。
 何人かは既に会場にいて、その中に凪もいた。

「凪、おはようございます」

「ああ、白川か。おは……」

 挨拶をすれば、凪が挨拶の途中で私を見て顔を顰めた。

「お前、寝てないのか?」

「いいえ、寝ましたよ。2時間くらい」

「それはもう睡眠じゃなくて仮眠だな」

 凪の言葉に寝不足で重い頭を抱える。

「仕方ないじゃないですか……隣に推しが寝てると思うと、変に緊張して寝れなかったんですよ……」

「ああ……まあ、ドンマイ」

 同情するような眼差しと無難な言葉で励ましてきた凪。
 朝食は夕食と同じようにビュッフェ式だった。私はどちらかと言えば朝食はパン派なので、美味しそうに焼かれたパンをいくつかと、サラダ、スープ、数種類のおかずをそれぞれ少なめに皿にのせて、凪の前に座る。
 そんな寝不足なお前にトマトをやろう。と凪は自分の皿にあったトマトを私にくれた。

「はぁ、ありがとうございます」

「で、その顔、獅子戸先輩に何も言われなかったのか?」

「ああ、寝れなかったのかと聞かれたので、慣れない場所で寝付けなかったと誤魔化しました」

 なるほどな、と凪は納得した様子でそのまま特に何も言うことなく、朝食を食べ始めたので、私も朝食に手をつけることにした。



 朝食もそこそこに食べ終え、全員でホテルの前にある海で遊ぶことになった。
 人は何人かいるものの、普通に海に行くよりは圧倒的に少ない。

 目の前にキラキラと広がるエメラルドグリーンの海に、わぁ…!と感動の声を上げる者や、声は上げないもののワクワクした雰囲気を醸し出す者。反応は違えど、一様に海の虜になっている。


「よーし!早速泳ごうぜ!」

 桜城くんがひゃっほー!と走り出すも、藤凪先輩に、まず準備運動をしてからですよ。と止められていた。
 私達はパラソルを地面に刺したり、ビニールシートを引いて、荷物を置いたりした。その後、皆海へと入っていった。

 私は凪と共にパラソルの下に残っていた。日焼け止めを塗るためと、荷物番をするためである。
 私の背中に日焼け止めを塗っている凪が声をかけてきた。

「大丈夫か、白川?」

 何がとは言われなかったが、そこは魂の双子。大体は察することが出来る。

「大丈夫じゃありません」

 私はそう答えた後、だって……と若干溜めてから言葉を続ける。

「推しの水着姿だなんて…私には、まだ早いです……!」

 クッ、と目を瞑りながら現実から目を逸らすように顔を横に向ける。凪は無心で私の背中の日焼け止めを塗りたくっていた。

「ていうか見ました?あの肉体美!」

 私はそう言って、もう一度獅子戸先輩を見る。水着姿の獅子戸先輩は、綺麗な筋肉の付き方をしていた。特に私が注目したのは、上腕二頭筋と大胸筋、あと腹直筋と広背筋。それを凪に言えば、用語を使うな、分からんだろ。と吐き捨てられた。

「簡単に言うと、二の腕と胸と腹筋と背中の筋肉のことです。ねぇ、ほんと、凄くいいですよね……」

 ほぅ…と獅子戸先輩の筋肉に見蕩れていると、役割を交代して、背中に日焼け止めを塗られていた凪は、私の方をわざわざ振り向いて、顔を顰めながら言う。

「お前に推しの水着姿はまだ早いんじゃなかったのか?」

「それとこれとは別です。こんな機会滅多に無いんですから、目に焼き付けておかないと」

「変態だな……」

「そんなの、ずっと昔から分かりきっていたことじゃないですか」

 避けようとする凪を、まだ日焼け止めを塗り終わっていません。とパラソルの下に引き戻す。

「それと、有栖川先輩もなかなか良い体つきをしてますよね。あと、岩水くんと鮫島くんも」

「お前、ガタイが良かったら誰でもいいのか…?」

 若干蔑まれるように言われるも、私は特に気にすることなくその言葉を否定する。

「いやですね、そんなわけないじゃないですか。中身も大事ですよ」

「そんなこと言って、お前昔っから好きになる人とかキャラは大体顔が厳ついやつとかガタイが良いやつばっかりだろ?」

「それは、ええ、否定できませんね」

「だよな。それで否定されたら俺ビックリするわ。今まで過ごしてきた時間は何だったのかってな」

「あ、でも、ギャップが好きなので、厳つい顔をしてるけれど、不憫な人だったり、実は可愛い一面があったりしたら沼に落ちます」

「ああ、そういえばそうだったな。なるほど、確かにそれだったら、獅子戸先輩が推しになるのか」

 納得した様子の凪に、終わりましたよ。と言って背中を軽く叩く。
 凪は体勢を直して隣に座る。私達は、わちゃわちゃと水遊びをする皆を見ながら駄弁っていた。



「白川さん、黒瀬さん、交代しましょう」

 1時間が過ぎようとした時、藤凪先輩と明希くんが交代にやってきたため、有難く交代させてもらうことにした。

 波打ち際で水に足を入れるとひんやりとしていて、茹だるような暑さの今日に丁度良い感じだった。

 わぁ…と海を眺めて感動していると、凪にグイッと手を引かれて、海の中に連れて行かれた。と思ったら、グンッ!と強い力で引っ張られて、海に放り投げられた。

「ちょっと!何するんですか!?」

「お前がボーッと突っ立ってるのが悪い」

 悪戯が成功したといったように、少しだけニヤリと笑った凪。
 そんな凪に、珍しく浮かれているなぁ。と微笑ましく思えた私は、怒る素振りを見せながら凪に水をかけた。

 凪と水をかけ合ったり、かけられる水から逃げたりするのが一段落した後、他の人がいる近くへ行った。
 すると、月瀬明希くんの双子の弟の実希くんが、声をかけてきた。

「雪ちゃん先輩達、はしゃいでたね!もっと澄ました性格かと思ってた!」

「そうですか?まあでも、はしゃいでいるのは否定できませんね」

「うんうん!親しみやすくて良いと思う!明希から話聞いたけど、雪ちゃん先輩だけじゃなくて、凪先輩もお茶目なところあるんだね!」

 明希くんの名前が出た時、バスに乗った時のことかと思い当たった。凪がお茶目というのは今まで聞いたことが無かったので、少し笑ってしまった。

「凪も学生ですし、リゾート地に来たことで羽目を外しているのでしょう」

 岩水くんと桜城くんに連れられて沖の方へ向かう凪を見ながら私は言った。

「ねぇ雪ちゃん先輩、一緒に遊ぼー!」

 実希くんの可愛いオネダリを快諾し、岩水くんと桜城くんと泳ぎを競う凪を横目に私は実希くんとゆっくり水遊びをすることにした。





 交代で休憩を取りながら、海の家で昼ご飯を食べたり、ビーチバレーやスイカ割りをしたりして、一日中海を満喫した。
 夕暮れで赤く染まる海を眺めている桜城くんに、有栖川先輩が近づいていた。
 私はそれを見ながらパラソルを片付ける。傍では、藤凪先輩や獅子戸先輩、凪、美馬くん、剣崎くん達がビニールシートやパラソル、荷物を片付けている。

「全く、有栖川は自分だけ蓮と話して…僕も話したいんですけど?あと、少しは片付けも手伝えと言いたいです」

「まあ、有栖川はこの程度の片付けを手伝うようなやつではないな」

「流石、幼馴染の言葉は説得力がありますね」

「え、獅子戸先輩、有栖川先輩と幼馴染なんですか?」

 私はパラソルをまとめる手を止めて、獅子戸先輩に訊ねる。

「ああ、そうだ。あと風紀委員長の氷川とも幼馴染だ」

「氷川先輩とも幼馴染なんですか?!」

 驚きの事実にパラソルを手放しそうになった。近くでビニールシートを袋に詰めていた凪も話を聞いていたようで、獅子戸先輩に質問を投げかける。

「でも、有栖川先輩と氷川先輩は犬猿の仲って感じですよね?」

「今はそうだな。だが、昔は普通に仲は良かったぞ」

 片付けが終わって、忘れ物がないか確認してから桜城くんと有栖川先輩を呼んだ獅子戸先輩。何故2人は仲が悪くなったのかを聞きそびれた。気になるところだが、また後で聞いてみようと算段を立て、今はホテルに戻るために皆に着いて行くことにした。

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