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ハードモードすぎて辛い。
やはり美形な父
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いつ最後に見たかも覚えてない父、ジスの書斎の扉を前に心臓が口から出そうだった。
いくら前世の記憶があっても、怖いものは怖い訳で、幼少の頃のトラウマは今も健在である。
しかも久々のカーナ以外の人間となれば尚更だ。
そんな俺を他所に、カーナは扉を丁寧に叩く。
「旦那様、リンシャ様をお連れしました。」
「入れ。」
その声を聞いて体が強ばった。不良品と呼ばれたあの日の記憶が鮮明に蘇る。
あぁ、あの時リンシャは一生、実の父親であるジスと関わりたくないと思ったんだっけ。
止まっている俺を見兼ねてカーナが手を握って囁いた。
「大丈夫ですリンシャ様。あなたは6年間、ただひたすらにグータラ生活してた訳ではありません。リンシャ様なりに本をお読みになり、魔法の勉強もしていましたでしょう?6年前、不良品と呼ばれたあなたとは色々な意味で違うと、私が自信をもって保証致します。」
真剣な眼差しのカーナを見て、いつもならまたお世辞を、など思うのだが今回ばかりは自信がついた。
「あぁ、そうだよね。」
カーナと頷き書斎の扉を開けた。
「父上お久しぶりです。リンシャです。」
正直頭が真っ白だが、こちらを向く気配もない父、ジスの背中に、とりあえず挨拶をする。
「久しいな、リンシャ。」
そう言いながら、ジスはこちらを向くと同時に、彫刻のような綺麗にできた顔を歪ませた。
「リーデルア……?」
ぼそっとそをな事を呟いた気がした。
リーデルアは確かリンシャの実母か。
相当な美人だったと聞いている。そんな美人と俺を見間違えるはずも無い。
(聞き間違えか。)
「ヴウン! リンシャ、お前を読んだ理由だが。」
そうだ。これら本題が始まる。気を引き締めなければ。
「本当はお前を、この家から追い出すつもりだった。だが気が変わった。今ここで、中等部卒業試験を受けろ。点が良ければ高等部に通わせる。」
「?!…わ、わかりました。」
とんでも展開だ。どう弁解しようか迷っていたのに、向こうから通わせてくれる道を作ってくれた。
でも、中等部卒業試験て…俺できるの?独学で本読んでただけだが?
てか、6年間もほっぽかしてきたわがまま息子を今更学園に通わせるなんて何かの罠か?
でもまぁやるしかない。ここは自分を信じよう。カーナもそう言っていたじゃないか。
「うぅーん、ほんとにこれでいいのか?」
魔法以外の問題は前世の知識で解ける問題も多く、魔法問題もさほど難しいわけでもなく、魔法を使うための基礎中の基礎な感じだった。
割とあっさり解けてしまって引っ掛けなのでは?と疑っていたがどう考えても引っ掛けを見つけられず諦めた。
「父上、できました。」
「早いな。」
ジスに答案用紙を渡す。
採点はジスが直々にやってくれるらしい。
真剣な表情のジスは惹かれるものがある。何度も言うが二次元仕様のイケメンなのだ。切れ長の目から覗く赤い瞳に見つめられたら、ひとたまりもないだろう。
まぁ俺はあの瞳に見つめられたら恐怖のが勝ってしまう訳だが。
どれだけイケメンでも嫌なものは嫌だ。
(俺が落ちぶれたのは、お前が連れてきたメアリーのせいだって叫んでやりたい。そんな度胸ないけど。)
そんなことを考えているとジスが顔を上げる。どうやら採点が終わったようだ。
「合格だ。」
「ありがとうございます!!」
なんと合格。
きっと引っ掛け問題もなかったのだろう。正直ほっとした。元の世界へ帰るための前進と言えようか。
「入学まであと3週間ほどしかない。準備しておけよ。」
「わかりました父上。」
そうしてジスとの話は終わり、自室に戻った俺は、ベッドに吸い込まれるように倒れ込む。
「怖かったぁぁぁっ。」
「よくやりましたね!リンシャ様!」
まだあまり実感はないが、確かにあの場所ジスと会話した。
俺がジスに対して、拒否反応を起こさなかったことを褒めたいくらいだ。
あんなに普通に会話できるなら、俺が幼い時に話でも聞いてくれればよかったのに。と思うが、過去の話を掘り返しても意味は無い。
「リンシャ様もお疲れでしょうから、私は失礼しますね。」
そう言ってカーナは部屋を去っていった。
「ほんとに疲れたよ。風呂入って寝よ。」
疲れた時はさっさと寝るに尽きるのだ。
いくら前世の記憶があっても、怖いものは怖い訳で、幼少の頃のトラウマは今も健在である。
しかも久々のカーナ以外の人間となれば尚更だ。
そんな俺を他所に、カーナは扉を丁寧に叩く。
「旦那様、リンシャ様をお連れしました。」
「入れ。」
その声を聞いて体が強ばった。不良品と呼ばれたあの日の記憶が鮮明に蘇る。
あぁ、あの時リンシャは一生、実の父親であるジスと関わりたくないと思ったんだっけ。
止まっている俺を見兼ねてカーナが手を握って囁いた。
「大丈夫ですリンシャ様。あなたは6年間、ただひたすらにグータラ生活してた訳ではありません。リンシャ様なりに本をお読みになり、魔法の勉強もしていましたでしょう?6年前、不良品と呼ばれたあなたとは色々な意味で違うと、私が自信をもって保証致します。」
真剣な眼差しのカーナを見て、いつもならまたお世辞を、など思うのだが今回ばかりは自信がついた。
「あぁ、そうだよね。」
カーナと頷き書斎の扉を開けた。
「父上お久しぶりです。リンシャです。」
正直頭が真っ白だが、こちらを向く気配もない父、ジスの背中に、とりあえず挨拶をする。
「久しいな、リンシャ。」
そう言いながら、ジスはこちらを向くと同時に、彫刻のような綺麗にできた顔を歪ませた。
「リーデルア……?」
ぼそっとそをな事を呟いた気がした。
リーデルアは確かリンシャの実母か。
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「ヴウン! リンシャ、お前を読んだ理由だが。」
そうだ。これら本題が始まる。気を引き締めなければ。
「本当はお前を、この家から追い出すつもりだった。だが気が変わった。今ここで、中等部卒業試験を受けろ。点が良ければ高等部に通わせる。」
「?!…わ、わかりました。」
とんでも展開だ。どう弁解しようか迷っていたのに、向こうから通わせてくれる道を作ってくれた。
でも、中等部卒業試験て…俺できるの?独学で本読んでただけだが?
てか、6年間もほっぽかしてきたわがまま息子を今更学園に通わせるなんて何かの罠か?
でもまぁやるしかない。ここは自分を信じよう。カーナもそう言っていたじゃないか。
「うぅーん、ほんとにこれでいいのか?」
魔法以外の問題は前世の知識で解ける問題も多く、魔法問題もさほど難しいわけでもなく、魔法を使うための基礎中の基礎な感じだった。
割とあっさり解けてしまって引っ掛けなのでは?と疑っていたがどう考えても引っ掛けを見つけられず諦めた。
「父上、できました。」
「早いな。」
ジスに答案用紙を渡す。
採点はジスが直々にやってくれるらしい。
真剣な表情のジスは惹かれるものがある。何度も言うが二次元仕様のイケメンなのだ。切れ長の目から覗く赤い瞳に見つめられたら、ひとたまりもないだろう。
まぁ俺はあの瞳に見つめられたら恐怖のが勝ってしまう訳だが。
どれだけイケメンでも嫌なものは嫌だ。
(俺が落ちぶれたのは、お前が連れてきたメアリーのせいだって叫んでやりたい。そんな度胸ないけど。)
そんなことを考えているとジスが顔を上げる。どうやら採点が終わったようだ。
「合格だ。」
「ありがとうございます!!」
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まだあまり実感はないが、確かにあの場所ジスと会話した。
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疲れた時はさっさと寝るに尽きるのだ。
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