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花乱る鳥籠
54.
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「テオドール。レオナルドも」
二人にとって最後の稽古が終わった後、学徒らが続々と帰っていく中で二人はフレディに呼び止められた。
「君達この後は何かある? もし何も無いなら、最後に僕ら全員で二人をみてあげることも出来るけど」
その申し出に二人はハッと表情を煌めかせて、
「何も無いです! 稽古をつけていただけるなんて、どんなにありがたいか」
と声を弾ませる。
「じゃあ、皆が帰ったらここでやろうか。それまで少し休憩ね」
「はい!」
元気な返事にフレディは笑うと、他の団員のもとへ離れていった。
明後日から神依りの儀が行われる。明日は儀式の流れを学んだ後は心身を整えるための自由時間となっていた。その後は本番まで誰とも会うことが出来ないため、今日が最後の稽古だった。
数日前にフレディ達団員が学徒らの態度を一喝したこともあってか、昨日と今日は止めずに通して稽古が出来、大体の感覚を掴むことは出来ていたが、しかしこれから二週間稽古が出来ないというのは、それが仕方の無いことだと分かっていても二人とも不安だった。
「レオナルド」
背後からルイに声をかけられて「うん?」と振り向く。
「僕達、見学してもいい?」
「うん、僕は。テオドールは?」
「構わないよ。フレディさんにも聞いてみるけど、きっと許可してくださる」
テオドールは頷いて、それから気遣わし気にルイを見た。
「それよりルイ。明日から僕は君を守れなくなる。大丈夫か」
「大丈夫だよ。三人がいるもの。見えてるでしょ?」
ルイはそう言ってリヴィ達三人を指す。
「そうだけど、今まで僕とレオナルドに向いていたものが全て君達に向かってしまったらと思うとさ。三人だって辛い思いをするかもしれない」
「大丈夫だよ。最初の一か月は、二人が居ない中でやってきたんだから」
「だけど、その頃よりずっと――。本番が近づいてきて神経質にもなるだろうし」
困ったように眉を寄せるテオドールの肩に、
「大丈夫だ、テオドール。兄を信じろ」
とジョンがニッと笑って手を置いた。
「兄なのは役だけだろ、ジョン」
テオドールがその手を払ってため息をつく。
「稽古中は団員さんが目を光らせているし、休憩中は四人で固まっているから。不穏な気配がしたら団員さんの近くに皆で避難する。ウィリアム先生も、来られる時はずっと傍にいてくださるって仰ってくれたから」
ディランが柔らかく微笑んだので、テオドールは少し肩の力を抜いた。
「こっちのことは心配しないで。レオナルドを頼んだよ」
極めつけにリヴィがルイの肩を抱いてテオドールにそう言ったので、
「ああ。ありがとう」
と、テオドールも無意識にレオナルドの手を握って答えた。
「あ。ルイ、今の内にレオナルドに聞いておいたら?」
ディランがルイに目をやったので、レオナルドもルイを見て「うん?」と小首を傾げる。
「いや、その、別に聞かなきゃ聞かないでも」
「駄目だよ。困ってるなら聞いておきな」
ディランに押しきられるようにして、リヴィも肩をトンと叩くので、ルイは渋々口を開いた。
「レオナルドはさ、どうしてそんなに笑えるの?」
「……え?」
レオナルドは眉を上げて、その意味を汲み取りたいとルイを見つめる。
「劇の中で、幸せそうに楽しそうに笑っているでしょ? 僕、あんな風に自然に笑えなくて。リヴィと踊るの、別に楽しくないわけじゃないんだけど」
ルイが少し気恥ずかしそうに、戸惑いながら言うので、
「そいういうことか。あのね、僕も、テオドールと踊るのは楽しいけど、それだけじゃないよ」
とレオナルドは表情を緩めた。
「前にね、フレディさんに教えてもらった時は、自分の周りの明るい人を思い浮かべるといいよって。この人の笑顔がいいな、とか、楽しいなって人を思い出してみるといいって教えてもらった」
「例えば?」
「例えば、マルコとか?」
「ああー。確かに」
「だけど、僕の場合は、マルコの真似をしようとしてもあんまりしっくりこなくて。だから、僕の周りに、マルコだけじゃなくて、マシューとかダレンとかノアとか。勿論ルイも、アダムスの皆がいるって想像して踊ってる。皆と一緒、って思ったら、安心して心が温かくなるから、それが僕には良いみたい」
レオナルドが言うと、ルイは「へぇー」と少し嬉しそうな顔をした。
「いつも思うんだけど、アダムスは楽しそうだな」
ジョンが感心して言う。
「うん。皆、優しい子達ばかりで、街の人達も元気で明るくて楽しい所だよ」
「中央教会とは、全然違う。例えば鞭は、アダムスではただの指示棒でしかないもの」
ルイの言葉に、アダムス出身でない四人は「えっ!」と一様に驚いた。
「悪いことをした時は? 例えば、決まりを破った時とか」
「悪いことをしようとする前に誰かが止めるし、その注意を素直に聞くし。厳しい決まりもないから、破る必要もないしね」
レオナルドはルイに頷いて、ふと、決まりを破った時のことを思い出した。
「僕、一度だけ、とても悲しくてやりきれないことがあって夜中に教会を抜け出したことがある。見つかった時は怒られると思ったんだけど、逆に褒められたよ、辛いことに気がついて、逃げ出せて偉かったねって。それからゆっくり、たくさん話をして……、そういえば結局、抜け出したことは一度も叱られてないな」
レオナルドがポカンと言うと、ルイが呆れたように息を吐く。
「それはそうでしょ、超優等生なレオナルドが抜け出すなんて余程のことだよ。先生達だって驚いただろうさ。……ああ、そうだ。レオナルドがいたからさ、僕らは皆、悪さしなかったんだと思う。レオナルドは言葉で引っ張っていくタイプじゃなかったけど、困った時にどうしたらいいか、レオナルドが優しく教えてくれたから」
「僕、何か教えた?」
「レオナルドは勉強家で、歌もうまくて、何より優しいから。レオナルドみたいになりたいって皆思ってた。レオナルドは僕らの憧れなんだよ」
「ええー、僕、そんな……。だけど、そっか。僕もルカ先生にずっと憧れていたわけだから、きっとずっと、こうやって繋がっていくんだね」
レオナルドが一人で納得していると、
「聞けば聞くほど、アダムスに行きたくなってきたな」
とテオドールが羨ましそうに言った。
「劇が終わって落ち着いたら、皆アダムスにおいでよ」
ルイが誘うと、
「そうだね。それじゃあ、秋にはコユーゲルにおいで。収穫祭があって、とても楽しいから」
とディランがまず乗っかった。
「それなら、ヘーヴェには冬に来るといい。他の街よりは暖かいから。美味しい魚も食べさせてあげるよ」
ジョンが負けじと故郷を売り込んで、
「キジャールはなぁ、特にこれと言って取り柄もないし。王城の真裏だから日陰ばかりだし」
と、リヴィが自嘲して言う。
「でも、本があるでしょう? 聞いたことがあるよ。古書店街があって、貴重な資料がたくさん置いてあるって。羨ましいと思ってたんだ」
レオナルドがリヴィに言うと
「本で喜ぶなら、いくらでも案内するけど」
と目を逸らして返されたので、
「やったぁ! ルイ、一緒に行こうね」
とレオナルドははしゃいでルイを誘った。
「その時は僕らにも手紙を出してね。日を合わせて集合しよう」
ディランの言葉に皆が頷く。口角を上げていれば、小さく燻る寂しさには気づかない。
「気が早いな、もう劇が終わった後の話かい?」
声を掛けられて振り向けば、フレディがクスリと笑った。
「あ、あの、僕達見学――」
「見学だろ? いいよ。見ていきな。きっと君達にも勉強になるから」
案の定フレディはあっさりと許可して、
「さあ、同窓会の計画もいいけれど、今はまだ劇に集中。稽古を始めるよ」
と手を叩いた。
二人にとって最後の稽古が終わった後、学徒らが続々と帰っていく中で二人はフレディに呼び止められた。
「君達この後は何かある? もし何も無いなら、最後に僕ら全員で二人をみてあげることも出来るけど」
その申し出に二人はハッと表情を煌めかせて、
「何も無いです! 稽古をつけていただけるなんて、どんなにありがたいか」
と声を弾ませる。
「じゃあ、皆が帰ったらここでやろうか。それまで少し休憩ね」
「はい!」
元気な返事にフレディは笑うと、他の団員のもとへ離れていった。
明後日から神依りの儀が行われる。明日は儀式の流れを学んだ後は心身を整えるための自由時間となっていた。その後は本番まで誰とも会うことが出来ないため、今日が最後の稽古だった。
数日前にフレディ達団員が学徒らの態度を一喝したこともあってか、昨日と今日は止めずに通して稽古が出来、大体の感覚を掴むことは出来ていたが、しかしこれから二週間稽古が出来ないというのは、それが仕方の無いことだと分かっていても二人とも不安だった。
「レオナルド」
背後からルイに声をかけられて「うん?」と振り向く。
「僕達、見学してもいい?」
「うん、僕は。テオドールは?」
「構わないよ。フレディさんにも聞いてみるけど、きっと許可してくださる」
テオドールは頷いて、それから気遣わし気にルイを見た。
「それよりルイ。明日から僕は君を守れなくなる。大丈夫か」
「大丈夫だよ。三人がいるもの。見えてるでしょ?」
ルイはそう言ってリヴィ達三人を指す。
「そうだけど、今まで僕とレオナルドに向いていたものが全て君達に向かってしまったらと思うとさ。三人だって辛い思いをするかもしれない」
「大丈夫だよ。最初の一か月は、二人が居ない中でやってきたんだから」
「だけど、その頃よりずっと――。本番が近づいてきて神経質にもなるだろうし」
困ったように眉を寄せるテオドールの肩に、
「大丈夫だ、テオドール。兄を信じろ」
とジョンがニッと笑って手を置いた。
「兄なのは役だけだろ、ジョン」
テオドールがその手を払ってため息をつく。
「稽古中は団員さんが目を光らせているし、休憩中は四人で固まっているから。不穏な気配がしたら団員さんの近くに皆で避難する。ウィリアム先生も、来られる時はずっと傍にいてくださるって仰ってくれたから」
ディランが柔らかく微笑んだので、テオドールは少し肩の力を抜いた。
「こっちのことは心配しないで。レオナルドを頼んだよ」
極めつけにリヴィがルイの肩を抱いてテオドールにそう言ったので、
「ああ。ありがとう」
と、テオドールも無意識にレオナルドの手を握って答えた。
「あ。ルイ、今の内にレオナルドに聞いておいたら?」
ディランがルイに目をやったので、レオナルドもルイを見て「うん?」と小首を傾げる。
「いや、その、別に聞かなきゃ聞かないでも」
「駄目だよ。困ってるなら聞いておきな」
ディランに押しきられるようにして、リヴィも肩をトンと叩くので、ルイは渋々口を開いた。
「レオナルドはさ、どうしてそんなに笑えるの?」
「……え?」
レオナルドは眉を上げて、その意味を汲み取りたいとルイを見つめる。
「劇の中で、幸せそうに楽しそうに笑っているでしょ? 僕、あんな風に自然に笑えなくて。リヴィと踊るの、別に楽しくないわけじゃないんだけど」
ルイが少し気恥ずかしそうに、戸惑いながら言うので、
「そいういうことか。あのね、僕も、テオドールと踊るのは楽しいけど、それだけじゃないよ」
とレオナルドは表情を緩めた。
「前にね、フレディさんに教えてもらった時は、自分の周りの明るい人を思い浮かべるといいよって。この人の笑顔がいいな、とか、楽しいなって人を思い出してみるといいって教えてもらった」
「例えば?」
「例えば、マルコとか?」
「ああー。確かに」
「だけど、僕の場合は、マルコの真似をしようとしてもあんまりしっくりこなくて。だから、僕の周りに、マルコだけじゃなくて、マシューとかダレンとかノアとか。勿論ルイも、アダムスの皆がいるって想像して踊ってる。皆と一緒、って思ったら、安心して心が温かくなるから、それが僕には良いみたい」
レオナルドが言うと、ルイは「へぇー」と少し嬉しそうな顔をした。
「いつも思うんだけど、アダムスは楽しそうだな」
ジョンが感心して言う。
「うん。皆、優しい子達ばかりで、街の人達も元気で明るくて楽しい所だよ」
「中央教会とは、全然違う。例えば鞭は、アダムスではただの指示棒でしかないもの」
ルイの言葉に、アダムス出身でない四人は「えっ!」と一様に驚いた。
「悪いことをした時は? 例えば、決まりを破った時とか」
「悪いことをしようとする前に誰かが止めるし、その注意を素直に聞くし。厳しい決まりもないから、破る必要もないしね」
レオナルドはルイに頷いて、ふと、決まりを破った時のことを思い出した。
「僕、一度だけ、とても悲しくてやりきれないことがあって夜中に教会を抜け出したことがある。見つかった時は怒られると思ったんだけど、逆に褒められたよ、辛いことに気がついて、逃げ出せて偉かったねって。それからゆっくり、たくさん話をして……、そういえば結局、抜け出したことは一度も叱られてないな」
レオナルドがポカンと言うと、ルイが呆れたように息を吐く。
「それはそうでしょ、超優等生なレオナルドが抜け出すなんて余程のことだよ。先生達だって驚いただろうさ。……ああ、そうだ。レオナルドがいたからさ、僕らは皆、悪さしなかったんだと思う。レオナルドは言葉で引っ張っていくタイプじゃなかったけど、困った時にどうしたらいいか、レオナルドが優しく教えてくれたから」
「僕、何か教えた?」
「レオナルドは勉強家で、歌もうまくて、何より優しいから。レオナルドみたいになりたいって皆思ってた。レオナルドは僕らの憧れなんだよ」
「ええー、僕、そんな……。だけど、そっか。僕もルカ先生にずっと憧れていたわけだから、きっとずっと、こうやって繋がっていくんだね」
レオナルドが一人で納得していると、
「聞けば聞くほど、アダムスに行きたくなってきたな」
とテオドールが羨ましそうに言った。
「劇が終わって落ち着いたら、皆アダムスにおいでよ」
ルイが誘うと、
「そうだね。それじゃあ、秋にはコユーゲルにおいで。収穫祭があって、とても楽しいから」
とディランがまず乗っかった。
「それなら、ヘーヴェには冬に来るといい。他の街よりは暖かいから。美味しい魚も食べさせてあげるよ」
ジョンが負けじと故郷を売り込んで、
「キジャールはなぁ、特にこれと言って取り柄もないし。王城の真裏だから日陰ばかりだし」
と、リヴィが自嘲して言う。
「でも、本があるでしょう? 聞いたことがあるよ。古書店街があって、貴重な資料がたくさん置いてあるって。羨ましいと思ってたんだ」
レオナルドがリヴィに言うと
「本で喜ぶなら、いくらでも案内するけど」
と目を逸らして返されたので、
「やったぁ! ルイ、一緒に行こうね」
とレオナルドははしゃいでルイを誘った。
「その時は僕らにも手紙を出してね。日を合わせて集合しよう」
ディランの言葉に皆が頷く。口角を上げていれば、小さく燻る寂しさには気づかない。
「気が早いな、もう劇が終わった後の話かい?」
声を掛けられて振り向けば、フレディがクスリと笑った。
「あ、あの、僕達見学――」
「見学だろ? いいよ。見ていきな。きっと君達にも勉強になるから」
案の定フレディはあっさりと許可して、
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と手を叩いた。
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