『転生勇者の俺、家族に正体を隠さず話した結果、家族も最強になった件』

アルさんのシッポ

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第1部 第2章「冒険者への道」

第8話「初めての依頼」

第8話「初めての依頼」


 翌朝、まだ日が昇りきらない早朝に起床した。
 今日は初めての冒険者としての依頼。ゴブリン討伐だ。
 僕は空間収納から装備を取り出す。短剣、革の鎧、そして回復薬と万能丸薬を小袋に入れておく。
 リビングに降りると、すでにソフィア姉さんとマルク兄さんが装備を整えていた。
「おはよう、アレン」
 ソフィア姉さんが新しい剣を腰に差しながら言う。少し緊張した表情だ。
「おはよう、姉さん。準備できた?」
「うん。でも…ちょっと緊張してる」
 マルク兄さんも弓を背負いながら頷く。
「僕も。訓練とは違うんだよね…」
「大丈夫だよ。訓練でやったことを思い出せば、きっとできるから」
 母さんも装備を整えて降りてきた。革の鎧を着ている。
「母さんも一緒に行くの?」
「ええ。みんなの怪我を治すために」
 双子がまだ寝ているので、そっと部屋を覗く。二人ともグッスリと眠っている。
「双子は村長さんに預けて行こうか」
 母さんが頷く。
 簡単な朝食を済ませると、双子を起こして村長の家に連れて行った。
「村長さん、今日の昼まで双子を見ていてもらえますか?」
 村長が快く引き受けてくれる。
「もちろんだとも。アレン、気をつけてな」
「ありがとうございます」
 双子に手を振って、僕たちは村の北にある森へ向かった。
 森の入口に着いた頃には、朝日が完全に昇っていた。
「ここから先が、ゴブリンの出る森だよ」
 深い森。木々が鬱蒼と茂り、薄暗い。
「姉さん、兄さん、僕の後ろについてきてね。音を立てないように」
 二人が頷く。
 そして皆んなは身体強化魔法をかけた。
「ブースト・アップ、マイルド」
 柔らかな光が家族を包む。視力、聴力、反射神経が高まる感覚。
「すごい…視界がはっきりする…」
 ソフィア姉さんが驚いている。
「これなら、暗い森の中でも見えるね」
 僕たちは慎重に森の中に入っていく。
 しばらく進むと、神眼が何かを捉えた。
 前方五十メートルに、小さな人型の気配が三つ。
「姉さん、兄さん、母さん、前に三体いるよ」
 囁くように告げる。
「見えるの?」
 マルク兄さんが驚く。
「神眼っていうスキルなんだ。遠くのものが見えるんだよ」
 慎重に近づいていく。
 木々の隙間から、ゴブリンたちの姿が見えてきた。
 焚き火の周りで、何か肉を焼いている。身長は一メートルほど、緑色の肌、醜い顔。粗末な布を身に纏い、棍棒や短剣を持っている。
「あれがゴブリンだよ」
 ソフィア姉さんが剣を構える。手が少し震えている。
「姉さん、深呼吸して。訓練でやったことを思い出して」
 ソフィア姉さんが大きく息を吸って、吐く。表情が引き締まる。
「うん…大丈夫」
「作戦を立てよう。兄さんは、木の陰から弓で狙撃。まず一体倒して」
「わかった」
「その後、残り二体が近づいてくる。姉さんは左の一体を相手にして。僕が右を引き受けるね」
「うん」
「母さんは後ろで待機。危なくなったらすぐに助けるから、思い切ってやってね」
 二人が頷く。
 マルク兄さんが木の陰に隠れ、弓を構える。
 呼吸を整え、狙いを定める。訓練で何度も練習した動作。
 矢に風魔力を纏わせる。矢の周りに薄い風の膜が見える。
 そして――
 ヒュン。
 矢が一直線に飛び、ゴブリンの胸に命中した。
「ギャッ!」
 ゴブリンが倒れる。
 残り二体が驚いて立ち上がる。
「ゴギャ!」
「ギギギ!」
 棍棒を持って、こちらに向かって走ってくる。
「姉さん、行こう!」
「うん!」
 ソフィア姉さんと僕が飛び出す。
 ソフィア姉さんが左のゴブリンと対峙。
 剣に魔力を流し込む。剣身が赤く輝き始める。
 ゴブリンが棍棒を振り下ろす。
 ソフィア姉さんがそれを剣で受け止める。
 ガキン、と金属音。
 訓練で何度も練習した受けの動作。完璧だ。
「えい!」
 ソフィア姉さんが体勢を立て直し、反撃する。
 横薙ぎの一閃。
 炎を纏った剣が、ゴブリンの腕を切り裂く。
「ギャアァ!」
 ゴブリンが怯む。
 その隙に、ソフィア姉さんが突きを放つ。
 剣がゴブリンの胸を貫いた。
「やった…!」
 ゴブリンが倒れる。
 同時に、僕も右のゴブリンを剣一閃で倒した。
 戦闘終了。
 ソフィア姉さんが息を切らしている。
「すごい…私…倒せた…」
「すごく上手だったよ、姉さん。訓練通りにできてた」
 マルク兄さんも木陰から出てくる。
「僕も…当てられた…」
「兄さんの狙撃、完璧だったよ」
 母さんが駆け寄ってくる。
「みんな、怪我は!?」
「大丈夫だよ、母さん」
 ソフィア姉さんが嬉しそうに微笑む。
「初めての実戦…できたね」
「うん。でもこれからが本番だよ。ゴブリンの魔石を回収しようか」
 ゴブリンの身体から、小さな緑色の石を取り出す。魔石だ。
 これを持ち帰れば、討伐の証明になる。
「まだ依頼では十体から二十体倒す必要があるんだ。先に進もう」
 森の奥へと進んでいく。
 途中、何度かゴブリンと遭遇した。
 二体、三体、時には四体の群れ。
 その度に、ソフィア姉さんとマルク兄さんが戦う。
 僕はサポートに徹し、危険な時だけ魔法で援護する。
 二人は戦う度に上達していく。
 ソフィア姉さんの剣捌きが鋭くなり、マルク兄さんの狙撃の精度が上がっていく。
「姉さん、今の動き良かったよ。フェイントを入れてから攻撃したね」
「うん。ゴブリンの動きが読めてきた」
「兄さんも、動いてる的に当てられるようになったね」
「訓練の成果かな」
 母さんは後方で待機しながら、時々小さな傷を治療してくれる。
「ソフィア、腕に擦り傷があるわ」
 緑の光が傷を癒す。
「ありがとう、お母さん」
 そして、森の奥深く、大きな洞窟を見つけた。
「ここが、ゴブリンの巣かな…」
 洞窟の入口から、複数の気配を感じる。
 神眼で確認すると、中に十体以上のゴブリンがいる。
「姉さん、兄さん、母さん、ここからが本番だよ」
 三人が緊張した表情で頷く。
「洞窟の中は暗いから、僕が光魔法を使うね。二人は僕の指示に従って動いて」
「わかった」
 僕は手のひらに光の球を作り出した。
「ライト」
 柔らかな光が周囲を照らす。
 洞窟の中に入っていく。
 狭い通路を進むと、開けた空間に出た。
 そこには――
 十五体のゴブリンがいた。
 全員がこちらに気づき、武器を構える。
「ゴギャアアア!」
 一斉に襲いかかってくる。
「兄さん、後方支援! 姉さん、僕の左側を守って! 母さんは一番後ろで待機!」
 三人で陣形を組む。
 マルク兄さんが後方から矢を放ち、次々とゴブリンを倒していく。
 風を纏った矢が、一体、また一体と射抜く。
 ソフィア姉さんが左側から来るゴブリンを剣で斬り倒す。
「フレイムブレード!」
 炎を纏った剣が、ゴブリンを次々と薙ぎ払う。
 僕は右側と前方を担当。
 剣を振るう度に、ゴブリンが倒れていく。
 でも、数が多い。
 ソフィア姉さんが二体同時に相手をすることになり、少し押されている。
「姉さん、伏せて!」
「えっ!?」
 ソフィア姉さんが反射的に伏せる。
 その上を、僕の炎の魔法が通過する。
「ファイアボール」
 小さな火球が、ゴブリン二体を吹き飛ばす。
「ありがとう、アレン!」
 ソフィア姉さんが立ち上がり、再び戦闘に入る。
 数分間の激しい戦闘。
 そして――
 最後のゴブリンが倒れた。
 三人とも、息を切らしている。
「やった…全部倒した…」
 ソフィア姉さんが汗を拭う。
「僕も…頑張った…」
 マルク兄さんも満足そうだ。
 母さんが駆け寄ってくる。
「みんな、怪我は!?」
「ちょっと疲れただけだよ、母さん」
 ソフィア姉さんの腕に小さな切り傷がある。
「ソフィア、治すわね」
 母さんが治癒魔法をかける。傷が消えていく。
 マルク兄さんも手に擦り傷があった。これも治療。
「みんな、本当によく頑張ったね」
 僕は二人の肩を叩いた。
「初めての実戦で、これだけできるなんてすごいよ」
 魔石を回収すると、合計で二十三個になった。
「これで依頼達成だね。帰ろうか」
 洞窟を出て、森を抜け、村に戻る。
 途中、ソフィア姉さんが言った。
「アレン…ありがとう。あなたがいてくれたから、私たち戦えた」
「いや、二人の実力だよ。僕はほとんど何もしてないよ」
 マルク兄さんも言う。
「でも、安心感があった。アレンがいれば大丈夫だって」
 僕は微笑んだ。
「これからも、一緒に戦おうね。家族みんなで」
 村に戻ると、双子が駆け寄ってきた。
「お帰りなさい!」
「みんな無事!?」
「ただいま。無事だよ」
 村長も安堵の表情だ。
「無事で良かった」
 双子を連れて家に戻り、少し休憩してから、再びグランベルの町へ向かった。
 魔石を持って、ギルドに報告するためだ。
 グランベルの冒険者ギルドに着くと、ミラさんが笑顔で出迎えてくれた。
「あら、アレン様。もう戻られたんですか?」
「はい。ゴブリン討伐、完了しました」
 魔石二十三個を差し出す。
 ミラさんが数える。
「二十三個…依頼は十体から二十体でしたが、これは立派ですね」
「洞窟に巣がありました」
「そうですか。では、報酬を計算します」
 しばらくして、ミラさんが戻ってきた。
「ゴブリン一体につき銀貨五枚です。二十三体で銀貨百十五枚になります」
 銀貨百十五枚。金貨一枚と銀貨十五枚だ。
「ありがとうございます」
 報酬を受け取ると、ガルムさんが奥から出てきた。
「アレン、もう戻ったのか」
「はい」
「…お前、やはりただ者ではないな」
 彼は腕を組んで考え込む。
「普通、初めての依頼でこんなに早く完了するものか」
「姉さんと兄さんが頑張ってくれました」
 ガルムさんがソフィアとマルクを見る。
「お前たちも、よくやったな。初めての実戦はどうだった?」
 ソフィア姉さんが答える。
「緊張しましたけど…訓練の成果が出せました」
 マルク兄さんも頷く。
「訓練と実戦は違いましたけど、アレンが助けてくれたので」
 ガルムさんが頷く。
「良い連携だ。これから経験を積めば、もっと強くなれる」
 そして僕に向き直る。
「アレン、お前には今後Dランクの依頼も解禁する。だが、無理はするな」
「わかりました」
 ギルドを出ると、ソフィア姉さんとマルク兄さんが嬉しそうだった。
「私たち…本当に冒険者になれたんだ…」
「うん。これが、僕たちの新しい生活だね」
 母さんが優しく微笑む。
「みんな、よく頑張ったわね」
 夕暮れの空の下、四人で村への帰路についた。
 家に帰ると、双子が待っていた。
「お帰りなさい!」
「お土産は!?」
「お土産はないけど、ご飯を美味しくするよ」
 僕は空間収納から、上質な食材を取り出した。
 母さんが嬉しそうに料理を始める。
 夕食の時、僕たちは今日の冒険を振り返った。
「初めての実戦、どうだった?」
 僕が聞くと、ソフィア姉さんが答える。
「最初は怖かったけど…でも、訓練でやったことを思い出したら、身体が動いた」
 マルク兄さんも言う。
「訓練の大切さがわかった。あれがなかったら、絶対できなかった」
 母さんも言う。
「私も、みんなの怪我を治せて嬉しかったわ」
「これからも、一緒に頑張ろうね」
 家族全員が、笑顔で頷いた。
 この日、ヴァルトハイム家は、本当の意味で冒険者パーティーになった。
 そして、これはまだ始まりに過ぎない。
 これから、もっと多くの冒険が待っている。
 でも、家族がいれば、どんな困難も乗り越えられる。
 僕は、心からそう信じていた。
 その夜、ベッドに入る前に、窓の外を見上げた。
 満天の星空。
 その星の一つが、特に明るく輝いていた。
「セレスティア、見ていてくれた?」
 小さく呟く。
「家族みんなで、初めての冒険ができたよ」
 星が、一瞬だけさらに強く輝いた気がした。
 まるで、女神が微笑んでいるかのように。
「これからも、見守っていてね」
 そして、僕は安らかな眠りについた。
 明日も、家族と一緒に。
 新しい冒険が、待っている。


次回:第9話「訓練の日々と家族の成長」


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