『転生勇者の俺、家族に正体を隠さず話した結果、家族も最強になった件』

アルさんのシッポ

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第1部 第6章「絆の深化」

第26話「公開裁判と新たな決意」

第26話「公開裁判と新たな決意」


 公開裁判の前日
 朝早く、僕と父は王都に向かった。
 今回は、母さんたちは町に残る。
 エルヴィンが家族を守ってくれる。
「行ってきます」
「気をつけてね、アレン」
 母さんが心配そうに見送ってくれる。
 ソフィア姉さんとマルク兄さん、ノエル、双子も見送ってくれた。
「お兄ちゃん、頑張って!」
「早く帰ってきてね!」
 エルヴィンが言う。
「アレン、無理はするな。何かあれば、すぐに戻ってこい」
「はい、エルヴィン様」
 王都への道中、今夜の野営地で父が言う。
「アレン、明日の裁判は重要だ。貴族たちが、どう反応するか…それが、今後の王国の方向性を決める」
「方向性…ですか?」
 父が説明する。
「ああ。明日の裁判で、国王陛下は明確なメッセージを送る。『旧弊な考えを持つ者たちは、もう許さない』と。それに賛同する貴族もいれば、反発する貴族もいるだろう。王国は、分岐点に立っている」
「僕も、何かできることはありますか?」
「お前がそこにいるだけで、十分だ。お前は、新しい時代の象徴なんだから」
 父が微笑む。
 翌日王都に到着すると、すでに多くの人々が集まっていた。
 公開裁判は、王宮の大広間で行われる。
 貴族だけでなく、一般市民も傍聴できる。
 大広間は、人で溢れていた。
 貴族たちは前方の席に座り、市民たちは後方に立っている。
 僕と父は、国王が用意してくれた特別席に案内された。
 前方の、よく見える場所だ。
 周囲の貴族たちが、僕を見て囁き合っている。
「あれが、七歳の男爵…」
「女神の使徒だという…」
「本当に子供だな…」
 僕は、気にしないようにする。
 やがて、国王アルブレヒトが入場する。
 全員が立ち上がり、頭を下げる。
 国王が玉座に座ると、宰相レオンハルトが前に出る。
「これより、公開裁判を開始する。被告人を連行せよ」
 騎士たちが、六人の貴族を連れてくる。
 先頭が、ゲルハルト・フォン・シュヴァルツブルク伯爵。
 太った中年男性。傲慢そうな表情。
 その後ろに、五人の貴族。
 全員、鎖で拘束されている。
 広間がざわつく。
「シュヴァルツブルク伯爵が…」
「まさか、本当に…」
 レオンハルトが宣言する。
「被告人、ゲルハルト・フォン・シュヴァルツブルク伯爵。そして、バルトロメウス・フォン・リヒター男爵、エーベルハルト・フォン・フォーゲル男爵、オットー・フォン・クライン男爵、ヴィルヘルム・フォン・シュタイナー男爵、フリードリヒ・フォン・ヴォルフ男爵。お前たちは、アレン・フォン・ノイシュテルン男爵の暗殺を企てた罪で告発されている」
 シュヴァルツブルク伯爵が叫ぶ。
「馬鹿な! 私が暗殺など企てるわけがない! これは陰謀だ! あの平民上がりの小僧が、私を陥れようと…」
「黙れ」
 国王の声が、広間に響く。
 冷たく、厳しい声。
 シュヴァルツブルク伯爵が黙る。
「証拠を提示せよ」
 レオンハルトが頷く。
「まず、暗殺者の証言。暗殺ギルドの構成員五名が、全員、依頼主はシュヴァルツブルク伯爵であると証言している」
「それは…拷問で無理やり…」
「拷問は行っていない。彼らは、取引に応じた。罪を軽減する代わりに、真実を話すと」
 レオンハルトが資料を読み上げる。
「次に、密会の記録。諜報部が、お前たち六名の密会を記録している。場所は、シュヴァルツブルク伯爵の屋敷。日時は、暗殺未遂の二週間前。内容は、『アレン・フォン・ノイシュテルン男爵の排除について』」
 五人の貴族が動揺している。
「そして、金銭のやり取りの記録。シュヴァルツブルク伯爵から、暗殺ギルドに、金貨五百枚が支払われている。銀行の記録が残っている」
 シュヴァルツブルク伯爵の顔が、真っ青になる。
「これは…でっち上げだ…」
「でっち上げではない。証拠は全て、複数の情報源から裏付けが取れている」
 レオンハルトが厳しい表情で言う。
 国王が立ち上がる。
「ゲルハルト・フォン・シュヴァルツブルク。お前は、なぜアレン男爵を殺そうとした?」
 シュヴァルツブルク伯爵が、しばらく黙っている。
 そして――
「…恐れたからだ」
 小さな声で呟く。
「恐れた…?」
「ああ。あの小僧が…いや、アレン男爵が、あまりにも急速に力をつけた。七歳で男爵、女神の使徒、陛下の友人…しかも平民出身。このままでは、我々古い貴族の立場が…」
「立場が、何だ?」
 国王が冷たく聞く。
「…脅かされる。平民上がりの者が力を持てば、貴族の権威が失われる。秩序が乱れる。だから…排除しなければ…」
 広間が、静まり返る。
 国王が、深く息を吐く。
「そうか。お前は、自分の地位を守るために、罪のない少年を殺そうとしたのか」
「…はい」
「ならば、判決を下す」
 国王が宣言する。
「ゲルハルト・フォン・シュヴァルツブルク。お前の罪は、暗殺教唆、貴族の品位を汚す行為、王国の秩序を乱す行為。判決は、爵位剥奪、全財産没収、終身投獄」
 シュヴァルツブルク伯爵が崩れ落ちる。
「そんな…」
「そして、共犯者五名。お前たちも、爵位剥奪、財産没収、十年の投獄」
 五人も、絶望的な表情を浮かべる。
 国王が続ける。
「さらに、お前たちの家族は、平民に落とす。財産は全て、国庫に納める」
 これで、六つの貴族家が、消滅する。
 広間がざわつく。
 国王が、全ての貴族を見回す。
「よく聞け、貴族たちよ。この王国は、変わる。旧弊な考えを持つ者、既得権益にしがみつく者、民を顧みない者…そのような者たちは、もう許さない。貴族であろうと、平民であろうと、才能ある者、努力する者、民のために働く者が、評価される。それが、私の目指す王国だ」
 国王の声が、広間に響く。
「そして、アレン・フォン・ノイシュテルン男爵。前に出よ」
 僕は驚く。
 でも、立ち上がって前に出る。
 国王の前で、跪く。
「アレン男爵。お前は、この度の暗殺未遂の被害者だ。そして、お前は七歳にして男爵位を得た。それは、お前の功績が認められたからだ。村を発展させ、町を作り、民を豊かにした。それは、誰にでもできることではない」
 国王が続ける。
「お前は、新しい時代の象徴だ。才能と努力で、地位を得た者の象徴だ。これからも、その道を進んでほしい。そして、この王国を、より良いものにしてほしい」
「ありがたき幸せです」
 僕は深々と頭を下げる。
「顔を上げよ、友よ」
 国王が優しく微笑む。
 僕は顔を上げる。
 国王が、全ての人々に向かって宣言する。
「これをもって、公開裁判を終了する。正義は、必ず勝つ。それを、忘れるな」
 裁判が終わると、僕と父は国王に呼ばれた。
 執務室で、三人だけで話す。
「アレン、グレン男爵。今日は、よく来てくれた」
「陛下、ありがとうございました」
 僕は頭を下げる。
「礼には及ばない。当然のことをしたまでだ」
 国王が椅子に座る。
「しかし…これで、全てが解決したわけではない。シュヴァルツブルク伯爵の一派は、六名だけだ。他にも、同じ考えを持つ貴族がいるだろう。彼らは、今日の裁判を見て、表向きは大人しくなる。しかし、裏では何をするかわからない」
 宰相レオンハルトも言う。
「諜報部を使って、監視は続けます。しかし、完全に防ぐことはできません」
 僕は頷く。
「わかっています。これからも、警戒を続けます」
「それと…」
 国王が、羊皮紙を差し出す。
「シュヴァルツブルク伯爵の財産だ。金貨約二千枚、屋敷、土地…かなりの額になる。本来は国庫に入れるが…アレン、お前が被害者だ。半分は、お前に譲渡する」
 僕は驚く。
「そんな…いただけません」
「遠慮するな。お前は、町を発展させるために、資金が必要だろう。それに、お前が受け取らなければ、他の貴族たちが不満を持つ。『被害者なのに、何ももらえないのか』と」
 父が言う。
「アレン、受け取りなさい。陛下の言う通りだ」
 僕は少し考えた。
 そして――
「わかりました。ありがたくいただきます。この資金は、町の発展のために使わせていただきます」
「それで良い」
 国王が微笑む。
 その日の夕方、僕たちは町に戻った。
 家族が、玄関で出迎えてくれる。
「お帰りなさい!」
「ただいま」
 双子が飛びついてくる。
「お兄ちゃん、大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だよ」
 エルヴィンも、安堵した表情だ。
「無事で良かった」
 その夜、僕は家族とエルヴィンに、裁判の結果を報告した。
「シュヴァルツブルク伯爵と、その一派は、全員有罪になりました。爵位剥奪、財産没収、投獄です」
 家族が安堵する。
「良かった…」
 母さんが胸を撫で下ろす。
「でも、まだ油断はできません。他にも、同じ考えを持つ貴族がいるかもしれません」
 僕は続ける。
「これからも、警戒を続けます」
 父が言う。
「そうだな。だが、今日の裁判で、大きな一歩を踏み出した。国王陛下が、明確に『変革』を宣言された。これは、大きな意味がある」
 エルヴィンが言う。
「人間の社会は、常に変化する。良い変化もあれば、悪い変化もある。今日の裁判は、良い変化への第一歩だ」
 ソフィア姉さんが言う。
「アレン、これからどうするの?」
 僕は少し考えた。
 そして――
「これからも、今までと同じです。町を発展させ、民を豊かにし、家族を守る。それだけです」
 マルク兄さんが言う。
「でも、また狙われるかもしれないよ」
「その時は、みんなで戦えばいい。僕は一人じゃない。家族がいる。エルヴィン様がいる。国王陛下も味方だ。だから、大丈夫」
 僕は家族を見回す。
 みんな、温かく微笑んでいる。
 ノエルが言う。
「私も、アレンを守るよ」
「ありがとう、ノエル」
 双子も元気よく言う。
「僕たちも守る!」
「私たちも!」
 僕は微笑む。
「みんな、ありがとう」
 エルヴィンが言う。
「アレン、お前は本当に強くなったな。力だけでなく、心も」
「エルヴィン様のおかげです」
「いや、お前自身の力だ。五百年前のお前も強かったが、今のお前はもっと強い。なぜなら、守るべきものがあるから」
 エルヴィンが優しく微笑む。
「家族を守るために戦う者は、最も強い」
 僕は頷く。
 その夜、窓の外を見上げると、満天の星空が広がっていた。
「セレスティア様…今日、正義が勝ちました。でも、まだ戦いは終わっていません。これからも、家族を守り、町を守り、正しいことを続けていきます。見守っていてください」
 心の中で呟く。
 星が、優しく瞬いている。
 明日も、新しい一日が始まる。
 そして、新しい挑戦が待っている。
 でも、恐れはない。
 家族がいる。
 仲間がいる。
 エルヴィンがいる。
 だから、どんな困難も乗り越えられる。
 僕の二度目の人生は、まだまだ続いていく。

第1部 完

第2部へ続く

第1章「拡大する影響力」

第27話「一年後の成長」

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