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第2部 第1章「迫りくる戦火」
第27話「一年後の成長」
第27話「一年後の成長」
春の陽光が、屋敷の窓から差し込んでいる。
暖かな光が、部屋を優しく照らす。
今日は、僕の八歳の誕生日だ。
あれから一年が経った。
エルヴィンが町に来て、暗殺未遂事件があって、公開裁判があって――
色々なことがあった一年だった。
でも、全て乗り越えてきた。
家族と、仲間と、エルヴィンと共に。
「お兄ちゃん、起きて! 誕生日だよ!」
双子の声で目が覚める。
レオとリナが、ベッドに飛び乗ってくる。
「おはよう、レオ、リナ」
「おはよう! お誕生日おめでとう!」
二人が抱きついてくる。
もう五歳になった双子。
一年前より、ずっと大きくなった。
そして、魔力も着実に成長している。
毎日、一緒に訓練を続けてきた成果だ。
「ありがとう。レオ、リナ」
階下に降りると、家族全員が待っていた。
テーブルには、母さんが作った特別な朝食が並んでいる。
「おはよう、アレン。誕生日おめでとう」
父が笑顔で言う。
「ありがとうございます、父さん」
母さんが僕を抱きしめる。
「八歳になったのね。もう、こんなに大きくなって…」
「母さん…」
ソフィア姉さんとマルク兄さんも、祝福してくれる。
「おめでとう、アレン」
「八歳か。もう立派な大人だね」
ノエルも嬉しそうだ。
「アレン、おめでとう! プレゼント、後で渡すね」
「ありがとう、みんな」
そして――
エルヴィンが優しく微笑む。
「誕生日おめでとう、アレン。八歳…良い年齢だな。これから、もっと色々なことを学べる」
「エルヴィン様、ありがとうございます」
朝食を食べながら、この一年を振り返る。
町は、大きく発展した。
人口は八百人を超えた。
新しい商店が立ち並び、市場は活気に溢れている。
城壁の外にも、新しい住宅地が広がっている。
学校の生徒数は、百人を超えた。
ゲルハルト先生は、嬉しい悲鳴を上げている。
建築ギルドも順調だ。
エーリッヒの指導の下、メンバーたちの技術は向上し続けている。
近隣の村や町からの依頼も増えている。
冒険者たちも、日々レベルアップしている。
グランベルとの連携も強化され、情報交換が活発だ。
全てが、順調に進んでいる。
そして――
父の領地も、僕の領地も、共に発展している。
父と僕の領地を合わせても、子爵程度の広さしかない。
だから、両方ともこの屋敷から経営できる。
父は毎日、書斎で領地の書類仕事をしている。
僕も、父から領地経営を学びながら、一緒に仕事をしている。
魔の森に近いこの領地は、常に魔物の脅威がある。
だから、家族全員でこの屋敷に住み、いつでも対応できるようにしている。
朝食の後、父が僕を書斎に呼んだ。
「アレン、誕生日だが、少し仕事の話をさせてくれ」
「はい」
書斎の机には、両領地の報告書が積まれている。
僕と父は、毎朝ここで領地の書類仕事をしている。
「この一年で、両領地とも大きく発展した。お前の領地の人口は八百人、俺の領地は二百人。合わせて千人だ。税収も安定し、治安も良好。素晴らしいことだ」
父が満足そうに言う。
「お前は、領地経営をよくやっている。税制、治安、教育…全てがバランス良く機能している。八歳でこれだけできる領主は、王国の歴史を見ても稀だ」
「父さんが教えてくださったおかげです」
「いや、お前自身の才能だ。誇りに思う」
父が僕の肩に手を置く。
「それに、俺も驚いている。お前と一緒に領地経営をすることで、俺自身も多くを学んだ。お前の発想は、時に俺の予想を超える」
「父さん…」
「だが、今日は誕生日だ。午前中だけ仕事をして、午後は休もう」
「ありがとうございます」
午前中、僕は父と一緒に町を見回りに出た。
馬に乗って町を巡る。
「アレン代表、グレン男爵、おはようございます!」
町民たちが元気よく挨拶してくる。
「おはよう」
市場を通りかかると、商人たちが声をかけてくる。
「アレン代表、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう」
「それにしても、グレン男爵の魔法剣術、凄まじいですね。先日、魔の森でAランク魔物を一人で倒されたとか」
商人が感嘆した様子で言う。
父が謙遜する。
「いや、アレンと一緒に訓練を続けてきた成果だ」
僕は心の中で思う。
(父さん、本当に強くなったな。一年前は魔法剣術なんてなかったのに)
学校の前を通りかかると、ゲルハルト先生が出てきた。
「アレン代表、グレン男爵、おはようございます。アレン代表、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます、先生」
「生徒たちも、代表の誕生日を楽しみにしていますよ」
冒険者ギルドの前では、何人かの冒険者が集まっていた。
「あ、アレン代表! お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう」
「それにしても、ソフィアさん、Bランクおめでとうございます! 昨日、正式に昇格が決まったんですよね」
冒険者の一人が言う。
「ああ、姉さんも頑張ったからな」
僕は微笑む。
昨日、グランベルの冒険者ギルドから正式な通知が来た。
姉さんの毎日の努力が、実を結んだ。
「マルクさんの弓術も、本当にすごいですよね。『百発百中のマルク』って、グランベルでも有名ですよ」
別の冒険者が言う。
「兄さんも、毎日欠かさず訓練してるからね」
町を一周して、屋敷に戻る。
道すがら、父が言う。
「良い町になったな、アレン。町民たちの表情が明るい」
「はい。みんなが頑張ってくれているおかげです」
午後、屋敷の裏庭で、家族全員が集まった。
いつもの訓練の時間だ。
でも、今日は僕の誕生日だから、少し特別なメニューにすることになった。
「今日は、アレンの誕生日だし、いつもと違うメニューにしよう」
父が提案する。
「双子も、新しい技を披露したいって言ってたよね」
母さんが微笑む。
「うん! お兄ちゃんに見せたい!」
レオとリナが目を輝かせる。
エルヴィンも見学に来てくれた。
「では、まずは通常の訓練から始めよう」
僕が言う。
全員で、ウォーミングアップ。
ランニング、柔軟、基礎的な身体強化魔法の練習。
その後、実戦形式の訓練。
父と僕が、模擬戦闘。
父の剣が、炎をまとって襲ってくる。
速い、強い。
僕は身体強化魔法で避け、マナシールドで防ぐ。
そして、反撃。
お互いに本気ではないけど、それでも迫力がある。
「やめ!」
母さんの声で、模擬戦闘が終わる。
「二人とも、相変わらず凄いわね」
母さんが微笑む。
次は、ソフィア姉さんとマルク兄さんの連携訓練。
姉さんが前衛、兄さんが後衛。
息の合った動き。
姉さんの剣技と、兄さんの弓術が完璧に連携している。
「良いね、二人とも」
僕が褒める。
ノエルは、クラフト魔法の実技。
その場で、防御用の壁を作り出す。
速度も精度も、一年前より格段に上がっている。
「ノエル、すごいよ」
「ありがとう、アレン」
そして――
双子の番。
「お兄ちゃん、見てて!」
レオとリナが並んで立つ。
二人が同時に魔力を高める。
すると――
二人の魔力が共鳴し始める。
光が強くなる。
エルヴィンが驚く。
「これは…双子共鳴…!」
「レオ、いくよ!」
「うん!」
レオの手から、小さな雷撃が放たれる。
まだ不安定だけど、確かに雷の魔法だ。
訓練用の的に命中し、焦げ目がつく。
「雷魔法…!」
僕は驚く。
そして、リナの手から、柔らかな光が溢れる。
治癒の光。
母さんが近づいて、手のひらの小さな傷に当ててみる。
傷が、ゆっくりと癒えていく。
「リナ、本当に治癒魔法が使えるようになったのね…」
母さんが感動している。
「五歳で、ここまで…」
僕は本当に驚いた。
もちろん、双子が毎日訓練していることは知っていた。
でも、まさか、もう属性魔法が使えるようになっているとは。
双子は、僕に内緒で練習していたらしい。
誕生日のサプライズとして。
「すごいよ、レオ、リナ!」
僕は二人を抱きしめる。
「毎日、頑張って練習したの!」
「お兄ちゃんの誕生日に、見せたかったの!」
双子が嬉しそうに言う。
エルヴィンが言う。
「素晴らしい。双子の魔法使いで、しかも共鳴現象を持つ。これは、非常に稀だ。将来が楽しみだな」
父が感慨深そうに言う。
「みんな、本当によく頑張っているな。この一年、家族全員で訓練を続けてきて良かった」
母さんも微笑む。
「みんな、強くなったわね」
夕方、訓練を終えて屋敷に戻ると、特別な夕食が用意されていた。
僕の誕生日を祝う、豪華な料理。
母さんが腕を振るって作ってくれた。
家族全員で、食卓を囲む。
「アレン、八歳おめでとう。乾杯!」
父が杯を上げる。
全員で乾杯する。
(僕と双子は果物のジュース)
「ありがとうございます、みんな」
食事をしながら、この一年を振り返る。
楽しいことも、辛いこともあった。
でも、全て乗り越えてきた。
家族と、仲間と、エルヴィンと共に。
食事の後、プレゼント交換。
ソフィア姉さんからは、新しい剣帯。
マルク兄さんからは、矢筒。
ノエルからは、クラフト魔法で作った特別なペン(魔力を込めて書くと、文字が光る)。
双子からは、手作りのお守り(布に下手な刺繍で「お兄ちゃん大好き」と書いてある)。
父からは、新しい革のブーツ。
母さんからは、温かいマフラー。
そして――
エルヴィンが、一冊の本を差し出す。
「アレン、これをお前に」
「これは…?」
「わしが書いた、魔法理論書の写本だ。『魔法封印の理論』について書いてある。お前なら、理解できるだろう」
僕は驚く。
「魔法封印…!」
「ああ。魔法を一時的に封じる技術だ。使い方次第で、様々な応用ができる。研究してみてくれ」
「ありがとうございます、エルヴィン様!」
僕は本を大切に受け取る。
その夜、自分の部屋でエルヴィンからもらった本を読む。
魔法封印の理論。
複雑で、難解だけど、とても興味深い。
魔法を封じるということは、魔力の流れを止めるということ。
でも、完全に止めるのではなく、一時的に抑制する。
これができれば、暴走した魔法を止めることもできる。
敵の魔法を封じることもできる。
応用範囲は、非常に広い。
「これは…時間をかけて研究する価値がある」
僕は本を大切にしまう。
そして、窓の外を見上げる。
満天の星空。
「セレスティア様、八歳になりました。この一年、本当に色々なことがありました。でも、家族と仲間のおかげで、全て乗り越えられました。家族全員が、毎日の訓練で着実に成長しています。双子の雷魔法と治癒魔法には、本当に驚きました。これからも、見守っていてください」
心の中で呟く。
星が、優しく瞬いている。
翌日、ハインリヒが町を訪れた。
いつものように、珍しい商品を持って。
でも、今回は少し様子が違う。
「アレン男爵、お話があります」
ハインリヒが真剣な表情で言う。
「何でしょうか?」
僕たちは、屋敷の応接室に移動する。
「実は…叔父に、ミスリルの事を疑われておりまして………」
ハインリヒが深々と頭を下げる。
「私は一切お話ししておりません。しかし、叔父は私の商売の師で、王都でもかなり大きな大商人です。私の商売の規模や頻度から、何か大きな取引があると気づいたようです。そして、かなり信頼のできる方です。もしよろしければ、ご紹介させていただけないでしょうか」
僕は少し考える。
「どういう人ですか?」
「誠実で、商才に優れた人物です。そして、『将来性のある者に投資する』という信念を持っています。男爵のことを話したら、非常に興味を持ちました」
ハインリヒが続ける。
「もちろん、神眼で確認していただいて構いません。叔父は、決して悪い人間ではありません」
僕は神眼でハインリヒを見る。
嘘はついていない。
純粋に、叔父を紹介したいと思っている。
「わかりました。いつ来られますか?」
「よ!よろしいのですか?あ、はい来週、来週お連れしたいと思います!」
「了解しました。楽しみにしています」
ハインリヒが帰った後、僕は家族とエルヴィンに相談した。
全員、リビングに集まっている。
「王都の大商人が、来週来るそうです」
父が真剣な表情になる。
「グロスマン商会…聞いたことがある。王都でも五本の指に入る大商会だ」
「そんなに大きいんですか?」
「ああ。扱う商品の量も、取引先の数も、桁違いだ。もし、彼らと繋がりができれば、この町の商業は大きく発展する」
エルヴィンが言う。
「だが、慎重に。大きな力を持つ者は、時に危険でもある」
「はい。神眼で、しっかり確認します」
母さんが心配そうに言う。
「大丈夫? また、何か企まれてるんじゃ…」
「大丈夫だよ、母さん。ハインリヒさんは信用できる。それに、神眼があるから」
僕は家族を安心させる。
ソフィア姉さんが言う。
「じゃあ、来週は警備を強化しよう。私たちも準備する」
「ありがとう、姉さん」
その夜、僕は一人で考えていた。
王都の大商人。
これは、大きなチャンスかもしれない。
でも、同時にリスクもある。
慎重に、でも前向きに。
それが、僕のやり方だ。
窓の外を見上げると、星空が広がっている。
「新しい出会いが、待っている。それが良い出会いになりますように」
心の中で祈る。
星が、いつもより明るく輝いている気がした。
明日も、新しい一日が始まる。
八歳になった僕の、新しい冒険が始まる。
次回:第28話「王都の大商人」
春の陽光が、屋敷の窓から差し込んでいる。
暖かな光が、部屋を優しく照らす。
今日は、僕の八歳の誕生日だ。
あれから一年が経った。
エルヴィンが町に来て、暗殺未遂事件があって、公開裁判があって――
色々なことがあった一年だった。
でも、全て乗り越えてきた。
家族と、仲間と、エルヴィンと共に。
「お兄ちゃん、起きて! 誕生日だよ!」
双子の声で目が覚める。
レオとリナが、ベッドに飛び乗ってくる。
「おはよう、レオ、リナ」
「おはよう! お誕生日おめでとう!」
二人が抱きついてくる。
もう五歳になった双子。
一年前より、ずっと大きくなった。
そして、魔力も着実に成長している。
毎日、一緒に訓練を続けてきた成果だ。
「ありがとう。レオ、リナ」
階下に降りると、家族全員が待っていた。
テーブルには、母さんが作った特別な朝食が並んでいる。
「おはよう、アレン。誕生日おめでとう」
父が笑顔で言う。
「ありがとうございます、父さん」
母さんが僕を抱きしめる。
「八歳になったのね。もう、こんなに大きくなって…」
「母さん…」
ソフィア姉さんとマルク兄さんも、祝福してくれる。
「おめでとう、アレン」
「八歳か。もう立派な大人だね」
ノエルも嬉しそうだ。
「アレン、おめでとう! プレゼント、後で渡すね」
「ありがとう、みんな」
そして――
エルヴィンが優しく微笑む。
「誕生日おめでとう、アレン。八歳…良い年齢だな。これから、もっと色々なことを学べる」
「エルヴィン様、ありがとうございます」
朝食を食べながら、この一年を振り返る。
町は、大きく発展した。
人口は八百人を超えた。
新しい商店が立ち並び、市場は活気に溢れている。
城壁の外にも、新しい住宅地が広がっている。
学校の生徒数は、百人を超えた。
ゲルハルト先生は、嬉しい悲鳴を上げている。
建築ギルドも順調だ。
エーリッヒの指導の下、メンバーたちの技術は向上し続けている。
近隣の村や町からの依頼も増えている。
冒険者たちも、日々レベルアップしている。
グランベルとの連携も強化され、情報交換が活発だ。
全てが、順調に進んでいる。
そして――
父の領地も、僕の領地も、共に発展している。
父と僕の領地を合わせても、子爵程度の広さしかない。
だから、両方ともこの屋敷から経営できる。
父は毎日、書斎で領地の書類仕事をしている。
僕も、父から領地経営を学びながら、一緒に仕事をしている。
魔の森に近いこの領地は、常に魔物の脅威がある。
だから、家族全員でこの屋敷に住み、いつでも対応できるようにしている。
朝食の後、父が僕を書斎に呼んだ。
「アレン、誕生日だが、少し仕事の話をさせてくれ」
「はい」
書斎の机には、両領地の報告書が積まれている。
僕と父は、毎朝ここで領地の書類仕事をしている。
「この一年で、両領地とも大きく発展した。お前の領地の人口は八百人、俺の領地は二百人。合わせて千人だ。税収も安定し、治安も良好。素晴らしいことだ」
父が満足そうに言う。
「お前は、領地経営をよくやっている。税制、治安、教育…全てがバランス良く機能している。八歳でこれだけできる領主は、王国の歴史を見ても稀だ」
「父さんが教えてくださったおかげです」
「いや、お前自身の才能だ。誇りに思う」
父が僕の肩に手を置く。
「それに、俺も驚いている。お前と一緒に領地経営をすることで、俺自身も多くを学んだ。お前の発想は、時に俺の予想を超える」
「父さん…」
「だが、今日は誕生日だ。午前中だけ仕事をして、午後は休もう」
「ありがとうございます」
午前中、僕は父と一緒に町を見回りに出た。
馬に乗って町を巡る。
「アレン代表、グレン男爵、おはようございます!」
町民たちが元気よく挨拶してくる。
「おはよう」
市場を通りかかると、商人たちが声をかけてくる。
「アレン代表、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう」
「それにしても、グレン男爵の魔法剣術、凄まじいですね。先日、魔の森でAランク魔物を一人で倒されたとか」
商人が感嘆した様子で言う。
父が謙遜する。
「いや、アレンと一緒に訓練を続けてきた成果だ」
僕は心の中で思う。
(父さん、本当に強くなったな。一年前は魔法剣術なんてなかったのに)
学校の前を通りかかると、ゲルハルト先生が出てきた。
「アレン代表、グレン男爵、おはようございます。アレン代表、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます、先生」
「生徒たちも、代表の誕生日を楽しみにしていますよ」
冒険者ギルドの前では、何人かの冒険者が集まっていた。
「あ、アレン代表! お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう」
「それにしても、ソフィアさん、Bランクおめでとうございます! 昨日、正式に昇格が決まったんですよね」
冒険者の一人が言う。
「ああ、姉さんも頑張ったからな」
僕は微笑む。
昨日、グランベルの冒険者ギルドから正式な通知が来た。
姉さんの毎日の努力が、実を結んだ。
「マルクさんの弓術も、本当にすごいですよね。『百発百中のマルク』って、グランベルでも有名ですよ」
別の冒険者が言う。
「兄さんも、毎日欠かさず訓練してるからね」
町を一周して、屋敷に戻る。
道すがら、父が言う。
「良い町になったな、アレン。町民たちの表情が明るい」
「はい。みんなが頑張ってくれているおかげです」
午後、屋敷の裏庭で、家族全員が集まった。
いつもの訓練の時間だ。
でも、今日は僕の誕生日だから、少し特別なメニューにすることになった。
「今日は、アレンの誕生日だし、いつもと違うメニューにしよう」
父が提案する。
「双子も、新しい技を披露したいって言ってたよね」
母さんが微笑む。
「うん! お兄ちゃんに見せたい!」
レオとリナが目を輝かせる。
エルヴィンも見学に来てくれた。
「では、まずは通常の訓練から始めよう」
僕が言う。
全員で、ウォーミングアップ。
ランニング、柔軟、基礎的な身体強化魔法の練習。
その後、実戦形式の訓練。
父と僕が、模擬戦闘。
父の剣が、炎をまとって襲ってくる。
速い、強い。
僕は身体強化魔法で避け、マナシールドで防ぐ。
そして、反撃。
お互いに本気ではないけど、それでも迫力がある。
「やめ!」
母さんの声で、模擬戦闘が終わる。
「二人とも、相変わらず凄いわね」
母さんが微笑む。
次は、ソフィア姉さんとマルク兄さんの連携訓練。
姉さんが前衛、兄さんが後衛。
息の合った動き。
姉さんの剣技と、兄さんの弓術が完璧に連携している。
「良いね、二人とも」
僕が褒める。
ノエルは、クラフト魔法の実技。
その場で、防御用の壁を作り出す。
速度も精度も、一年前より格段に上がっている。
「ノエル、すごいよ」
「ありがとう、アレン」
そして――
双子の番。
「お兄ちゃん、見てて!」
レオとリナが並んで立つ。
二人が同時に魔力を高める。
すると――
二人の魔力が共鳴し始める。
光が強くなる。
エルヴィンが驚く。
「これは…双子共鳴…!」
「レオ、いくよ!」
「うん!」
レオの手から、小さな雷撃が放たれる。
まだ不安定だけど、確かに雷の魔法だ。
訓練用の的に命中し、焦げ目がつく。
「雷魔法…!」
僕は驚く。
そして、リナの手から、柔らかな光が溢れる。
治癒の光。
母さんが近づいて、手のひらの小さな傷に当ててみる。
傷が、ゆっくりと癒えていく。
「リナ、本当に治癒魔法が使えるようになったのね…」
母さんが感動している。
「五歳で、ここまで…」
僕は本当に驚いた。
もちろん、双子が毎日訓練していることは知っていた。
でも、まさか、もう属性魔法が使えるようになっているとは。
双子は、僕に内緒で練習していたらしい。
誕生日のサプライズとして。
「すごいよ、レオ、リナ!」
僕は二人を抱きしめる。
「毎日、頑張って練習したの!」
「お兄ちゃんの誕生日に、見せたかったの!」
双子が嬉しそうに言う。
エルヴィンが言う。
「素晴らしい。双子の魔法使いで、しかも共鳴現象を持つ。これは、非常に稀だ。将来が楽しみだな」
父が感慨深そうに言う。
「みんな、本当によく頑張っているな。この一年、家族全員で訓練を続けてきて良かった」
母さんも微笑む。
「みんな、強くなったわね」
夕方、訓練を終えて屋敷に戻ると、特別な夕食が用意されていた。
僕の誕生日を祝う、豪華な料理。
母さんが腕を振るって作ってくれた。
家族全員で、食卓を囲む。
「アレン、八歳おめでとう。乾杯!」
父が杯を上げる。
全員で乾杯する。
(僕と双子は果物のジュース)
「ありがとうございます、みんな」
食事をしながら、この一年を振り返る。
楽しいことも、辛いこともあった。
でも、全て乗り越えてきた。
家族と、仲間と、エルヴィンと共に。
食事の後、プレゼント交換。
ソフィア姉さんからは、新しい剣帯。
マルク兄さんからは、矢筒。
ノエルからは、クラフト魔法で作った特別なペン(魔力を込めて書くと、文字が光る)。
双子からは、手作りのお守り(布に下手な刺繍で「お兄ちゃん大好き」と書いてある)。
父からは、新しい革のブーツ。
母さんからは、温かいマフラー。
そして――
エルヴィンが、一冊の本を差し出す。
「アレン、これをお前に」
「これは…?」
「わしが書いた、魔法理論書の写本だ。『魔法封印の理論』について書いてある。お前なら、理解できるだろう」
僕は驚く。
「魔法封印…!」
「ああ。魔法を一時的に封じる技術だ。使い方次第で、様々な応用ができる。研究してみてくれ」
「ありがとうございます、エルヴィン様!」
僕は本を大切に受け取る。
その夜、自分の部屋でエルヴィンからもらった本を読む。
魔法封印の理論。
複雑で、難解だけど、とても興味深い。
魔法を封じるということは、魔力の流れを止めるということ。
でも、完全に止めるのではなく、一時的に抑制する。
これができれば、暴走した魔法を止めることもできる。
敵の魔法を封じることもできる。
応用範囲は、非常に広い。
「これは…時間をかけて研究する価値がある」
僕は本を大切にしまう。
そして、窓の外を見上げる。
満天の星空。
「セレスティア様、八歳になりました。この一年、本当に色々なことがありました。でも、家族と仲間のおかげで、全て乗り越えられました。家族全員が、毎日の訓練で着実に成長しています。双子の雷魔法と治癒魔法には、本当に驚きました。これからも、見守っていてください」
心の中で呟く。
星が、優しく瞬いている。
翌日、ハインリヒが町を訪れた。
いつものように、珍しい商品を持って。
でも、今回は少し様子が違う。
「アレン男爵、お話があります」
ハインリヒが真剣な表情で言う。
「何でしょうか?」
僕たちは、屋敷の応接室に移動する。
「実は…叔父に、ミスリルの事を疑われておりまして………」
ハインリヒが深々と頭を下げる。
「私は一切お話ししておりません。しかし、叔父は私の商売の師で、王都でもかなり大きな大商人です。私の商売の規模や頻度から、何か大きな取引があると気づいたようです。そして、かなり信頼のできる方です。もしよろしければ、ご紹介させていただけないでしょうか」
僕は少し考える。
「どういう人ですか?」
「誠実で、商才に優れた人物です。そして、『将来性のある者に投資する』という信念を持っています。男爵のことを話したら、非常に興味を持ちました」
ハインリヒが続ける。
「もちろん、神眼で確認していただいて構いません。叔父は、決して悪い人間ではありません」
僕は神眼でハインリヒを見る。
嘘はついていない。
純粋に、叔父を紹介したいと思っている。
「わかりました。いつ来られますか?」
「よ!よろしいのですか?あ、はい来週、来週お連れしたいと思います!」
「了解しました。楽しみにしています」
ハインリヒが帰った後、僕は家族とエルヴィンに相談した。
全員、リビングに集まっている。
「王都の大商人が、来週来るそうです」
父が真剣な表情になる。
「グロスマン商会…聞いたことがある。王都でも五本の指に入る大商会だ」
「そんなに大きいんですか?」
「ああ。扱う商品の量も、取引先の数も、桁違いだ。もし、彼らと繋がりができれば、この町の商業は大きく発展する」
エルヴィンが言う。
「だが、慎重に。大きな力を持つ者は、時に危険でもある」
「はい。神眼で、しっかり確認します」
母さんが心配そうに言う。
「大丈夫? また、何か企まれてるんじゃ…」
「大丈夫だよ、母さん。ハインリヒさんは信用できる。それに、神眼があるから」
僕は家族を安心させる。
ソフィア姉さんが言う。
「じゃあ、来週は警備を強化しよう。私たちも準備する」
「ありがとう、姉さん」
その夜、僕は一人で考えていた。
王都の大商人。
これは、大きなチャンスかもしれない。
でも、同時にリスクもある。
慎重に、でも前向きに。
それが、僕のやり方だ。
窓の外を見上げると、星空が広がっている。
「新しい出会いが、待っている。それが良い出会いになりますように」
心の中で祈る。
星が、いつもより明るく輝いている気がした。
明日も、新しい一日が始まる。
八歳になった僕の、新しい冒険が始まる。
次回:第28話「王都の大商人」
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