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第2部 第1章「迫りくる戦火」
第30話「七ヶ月の鍛錬」
第30話「七ヶ月の鍛錬」
訓練初日。
大広場に、二百名の騎士団候補が整列している。
全員、戦場を生き抜いた歴戦の戦士だ。
でも、魔法は使えない。
これから、彼らに魔法を教える。
「まず、魔力回路の治療から始めます」
僕が説明する。
「皆さんは大人になってから魔法を使っていないので、魔力回路が硬化しています。それを治療します」
戦士たちが不安そうな表情を浮かべる。
「痛いのか?」
「いえ、痛くありません。少し温かく感じるだけです」
僕は一人一人、丁寧に治療していく。
「ヒール・サーキット」
柔らかな光が、戦士の身体を包む。
硬化した魔力回路が、ゆっくりと柔らかくなっていく。
魔力の蓋も、取り除く。
「これで…魔法が使えるようになるのか…」
戦士が驚いている。
一人、また一人。
丁寧に、確実に。
二百人全員の治療を終えるのに、三日かかった。
四日目。
本格的な訓練が始まる。
「まず、自分の魔力を感じてください」
僕が指導する。
「目を閉じて、体内の魔力を感じる。川の流れのように、魔力は常に動いています」
二百人が、一斉に目を閉じる。
集中する。
しばらくして――
「感じる…! 体の中に、何か温かいものが…!」
「これが魔力か…!」
次々と、戦士たちが魔力を感じ始める。
「良いですね。では、次はその魔力を、体全体に巡らせてください」
エルヴィンも指導する。
「魔力を、手足の先まで流す。そうすれば、身体強化魔法になる」
戦士たちが、必死に集中する。
すると――
一人の戦士の身体が、微かに光り始める。
「できた…!」
「すごい…本当に魔法が…!」
次々と、戦士たちが身体強化魔法を発動させる。
まだ不安定だけど、確実に魔法が使えるようになっている。
一ヶ月後。
全員が、基礎的な身体強化魔法を習得した。
まだ効果は弱いけど、確実に進歩している。
「では、次は属性魔法の適性を調べます」
僕が説明する。
「人には、得意な属性があります。火、水、風、土、雷、光、闇…それぞれの適性を調べて、最適な魔法を教えます」
エルヴィンが魔法の石を取り出す。
「この石に触れると、適性がわかる」
一人一人、石に触れていく。
石が、様々な色に光る。
赤く光る者、青く光る者、緑に光る者…
「お前は火属性だな」
「お前は風属性だ」
適性を調べ終わると、それぞれに合った魔法を教え始める。
二ヶ月後。
訓練は、さらに過酷になった。
朝五時から夜九時まで、休みなく訓練。
身体強化魔法の訓練。
属性魔法の訓練。
実戦形式の訓練。
父も、積極的に訓練に参加する。
「もっと速く! 魔法をかけるのに時間がかかりすぎだ!」
父の厳しい指導が飛ぶ。
でも、戦士たちは文句一つ言わない。
父を信頼しているから。
家族も、訓練に参加する。
ソフィア姉さんが、剣術を指導する。
「魔法と剣技を融合させるんです。魔法だけでは勝てません」
マルク兄さんが、弓術を指導する。
「遠距離攻撃も重要です。風魔法と組み合わせれば、射程が格段に伸びます」
母さんが、治癒魔法を教える。
「戦場では、治癒魔法も必要です。仲間を助けられるように」
ノエルが、クラフト魔法の実用例を見せる。
「即席の罠や防壁も作れます」
双子も、できる範囲で手伝う。
「お兄ちゃん、頑張って!」
「みんな、頑張って!」
みんなで、二百人の騎士団を育てていく。
三ヶ月後。
訓練の成果が、はっきりと現れ始めた。
戦士たちの動きが、明らかに速くなっている。
身体強化魔法が、自然に使えるようになっている。
属性魔法も、実戦で使えるレベルになってきた。
ある日、僕は模擬戦闘を見ていた。
二人の戦士が、剣を交える。
一人が炎の魔法を纏った剣を振るう。
もう一人が風の魔法で避ける。
速い、強い。
普通の人間では、絶対にできない動きだ。
エルヴィンが隣に立つ。
「順調だな、アレン」
「はい。みんな、本当によく頑張っています」
「お前の指導も、素晴らしい。三ヶ月でここまで成長させるとは」
エルヴィンが感心している。
「でも、まだまだです。もっと強くならないと」
四ヶ月後。
騎士団の中から、特に優秀な者たちが現れ始めた。
ノイシュテルン領の騎士団から、一人の戦士が際立っていた。
名前はディートリヒ。
四十代の、父の古い戦友だ。
父の右腕として、戦場で活躍した男だ。
彼の身体強化魔法は、他の者より格段に強力だ。
炎の魔法も、見事に使いこなす。
「ディートリヒ、すごいですね」
僕が言うと、ディートリヒが照れくさそうに笑う。
「グレンから学んだことを、ようやく形にできた気がします」
ヴァルトハイム領の騎士団からも、一人の戦士が際立っていた。
名前はヴォルフガング。
三十代の、冷静沈着な戦士だ。
彼の風魔法は、精密で美しい。
剣技も一流だ。
父が二人を呼ぶ。
「ディートリヒ、ヴォルフガング。お前たちを、それぞれの騎士団長に任命する」
二人が驚く。
「団長…ですか?」
「ああ。お前たちなら、任せられる」
五ヶ月後。
騎士団の編成が、正式に決まった。
ノイシュテルン領騎士団:
騎士団長:ディートリヒ
小隊長:カール(雷魔法使い)、エーリヒ(土魔法使い)
騎士:九十七名
ヴァルトハイム領騎士団:
騎士団長:ヴォルフガング
小隊長:ハインツ(火魔法使い)、オットー(水魔法使い)
騎士:九十七名
団長と小隊長たちは、特に厳しい訓練を受けた。
僕とエルヴィンが、直接指導する。
そして――
彼らの実力は、驚異的なレベルに達した。
エルヴィンが評価する。
「ディートリヒとヴォルフガングは、Sランク相当だ。小隊長たちは、Aランク相当。そして、一般の騎士たちも、Bランク相当になっている」
僕は驚く。
「本当ですか?」
「ああ。人族で、過去百年間、Sランクはいなかった。だが、彼ら二人は、確実にSランクの実力がある。これは、驚くべきことだ」
エルヴィンが続ける。
「お前の指導、そしてグレン殿の戦術指導。それが、彼らを人族の限界を超えさせた」
六ヶ月後。
家族も、さらに強くなっていた。
毎日、騎士団と一緒に訓練を続けてきた。
ある日、エルヴィンが家族全員を集めた。
「お前たちの実力を、評価させてもらった」
エルヴィンが真剣な表情で言う。
「レオとリナ。お前たちは、六歳にして、Aランク以上の実力がある」
双子が目を輝かせる。
「本当?」
「ああ。雷魔法と光魔法、そして双子共鳴。これは、非常に強力だ」
エルヴィンが続ける。
「そして、グレン、エレナ、ソフィア、マルク、ノエル。お前たちは、全員Sランク以上だ」
家族が驚く。
「Sランク…以上…?」
「ああ。正直に言えば、お前たちの実力は、Sランクを超えている。SSランク、いや、それ以上かもしれない。だが、そんな規格はないから、『Sランク以上』としか言えない」
エルヴィンが微笑む。
「お前たちは、人族の歴史に残る強者たちだ。誇りに思うがいい」
僕は家族を見る。
父、母、姉、兄、ノエル、双子。
みんな、本当に強くなった。
この七ヶ月間、共に訓練を続けてきた。
その成果が、はっきりと現れている。
七ヶ月目。
訓練の最終段階。
実戦形式の総合訓練を行う。
二百人の騎士団が、完璧な陣形で動く。
身体強化魔法をかけ、属性魔法を放つ。
息の合った連携。
強力な攻撃力。
そして、何より――
団結力。
みんな、仲間を信頼している。
父を信頼している。
家族を信頼している。
訓練を見ていたエルヴィンが、感嘆する。
「素晴らしい…これほどの騎士団は、見たことがない」
父も、満足そうに微笑む。
「みんな、よく頑張った」
七ヶ月の訓練が、終わった。
大広場に、二百人の騎士団が整列している。
もう、七ヶ月前の彼らではない。
全員が、人族を超える力を手に入れた。
魔法を使いこなす、精鋭の戦士たち。
父が前に出る。
「みんな、本当によく頑張った。七ヶ月間、休みなく訓練を続けた。その成果は、はっきりと現れている。お前たちは、もう普通の戦士ではない。王国最強の騎士団だ」
騎士たちが、拳を胸に当てる。
「そして、これから…本当の戦いが始まる」
父の表情が、厳しくなる。
「王国に、危機が迫っている。我々は、家族を守り、領地を守り、王国を守らなければならない。お前たちの力が、必要だ」
騎士たちが、大きな声で答える。
「はい!」
僕も前に出る。
「みなさん、七ヶ月間、ありがとうございました。みなさんの努力と、父への信頼が、この騎士団を作りました。僕も、精一杯頑張ります。一緒に、戦いましょう」
騎士たちが、また拳を胸に当てる。
エルヴィンも前に出る。
「お前たちは、人族の歴史に残る戦士たちだ。その力を、正しく使え。家族を守るために。仲間を守るために。そして、正義のために」
その夜、グロスマンが緊急で訪れた。
表情が、今まで以上に深刻だ。
「アレン男爵、グレン男爵…ついに、動き出しました」
僕たちは、書斎に集まる。
「何が…?」
「ヴェルデン王国です。大規模な軍の移動が確認されました。国境に向かっています」
グロスマンが地図を広げる。
「そして…王国内部でも、動きがあります。複数の貴族が、領地の兵を集めています。反乱の準備です」
父が厳しい表情になる。
「ついに、来たか…」
「はい。おそらく、数週間以内に…戦争が始まります」
グロスマンが続ける。
「それと…もう一つ、悪い知らせがあります」
「何ですか?」
「闇ギルドが動いています。王族派の貴族を、暗殺し始めました」
全員が息を呑む。
「暗殺…?」
「はい。すでに、三名の貴族が殺されました。全員、国王陛下の改革を支持していた方々です」
エルヴィンが言う。
「内部から切り崩すつもりか…」
「その通りです。王族派の貴族を排除し、内部を混乱させ、そして外部から攻める。完璧な作戦です」
グロスマンが悔しそうに言う。
「国王陛下も、対応に追われています。しかし、敵は多い。王族派は、守勢に回っています」
僕は考える。
戦争が、目前に迫っている。
でも――
僕たちは準備ができている。
二百人の精鋭騎士団。
そして、家族。
「グロスマンさん、情報ありがとうございます」
「いえ。これは、私にとっても重要なことです。この王国が滅べば、私の商売も終わります」
グロスマンが真剣に言う。
「アレン男爵、グレン男爵。私も、できる限り協力します。情報面で、支援します」
「ありがとうございます」
グロスマンが帰った後、家族で会議を開いた。
「ついに、来るね」
ソフィア姉さんが言う。
「ああ。でも、俺たちは準備ができている」
父が力強く言う。
「二百人の騎士団。全員、信頼できる戦士たちだ。そして、家族も、かつてないほど強くなった」
母さんが心配そうに言う。
「でも…戦争よ…」
「大丈夫だよ、母さん」
僕は微笑む。
「僕たちには、力がある。仲間がいる。エルヴィン様もいる。そして、セレスティア様も見守ってくれている」
双子も元気よく言う。
「僕たちも戦う!」
「家族を守る!」
ノエルが言う。
「みんなで、乗り越えよう」
窓の外を見上げると、冬の星空が広がっていた。
もうすぐ、春が来る。
でも、その前に――
嵐が来る。
戦争という、大きな嵐が。
僕たちは、その嵐に立ち向かう。
家族と、仲間と、共に。
次回:第31話「開戦前夜」
訓練初日。
大広場に、二百名の騎士団候補が整列している。
全員、戦場を生き抜いた歴戦の戦士だ。
でも、魔法は使えない。
これから、彼らに魔法を教える。
「まず、魔力回路の治療から始めます」
僕が説明する。
「皆さんは大人になってから魔法を使っていないので、魔力回路が硬化しています。それを治療します」
戦士たちが不安そうな表情を浮かべる。
「痛いのか?」
「いえ、痛くありません。少し温かく感じるだけです」
僕は一人一人、丁寧に治療していく。
「ヒール・サーキット」
柔らかな光が、戦士の身体を包む。
硬化した魔力回路が、ゆっくりと柔らかくなっていく。
魔力の蓋も、取り除く。
「これで…魔法が使えるようになるのか…」
戦士が驚いている。
一人、また一人。
丁寧に、確実に。
二百人全員の治療を終えるのに、三日かかった。
四日目。
本格的な訓練が始まる。
「まず、自分の魔力を感じてください」
僕が指導する。
「目を閉じて、体内の魔力を感じる。川の流れのように、魔力は常に動いています」
二百人が、一斉に目を閉じる。
集中する。
しばらくして――
「感じる…! 体の中に、何か温かいものが…!」
「これが魔力か…!」
次々と、戦士たちが魔力を感じ始める。
「良いですね。では、次はその魔力を、体全体に巡らせてください」
エルヴィンも指導する。
「魔力を、手足の先まで流す。そうすれば、身体強化魔法になる」
戦士たちが、必死に集中する。
すると――
一人の戦士の身体が、微かに光り始める。
「できた…!」
「すごい…本当に魔法が…!」
次々と、戦士たちが身体強化魔法を発動させる。
まだ不安定だけど、確実に魔法が使えるようになっている。
一ヶ月後。
全員が、基礎的な身体強化魔法を習得した。
まだ効果は弱いけど、確実に進歩している。
「では、次は属性魔法の適性を調べます」
僕が説明する。
「人には、得意な属性があります。火、水、風、土、雷、光、闇…それぞれの適性を調べて、最適な魔法を教えます」
エルヴィンが魔法の石を取り出す。
「この石に触れると、適性がわかる」
一人一人、石に触れていく。
石が、様々な色に光る。
赤く光る者、青く光る者、緑に光る者…
「お前は火属性だな」
「お前は風属性だ」
適性を調べ終わると、それぞれに合った魔法を教え始める。
二ヶ月後。
訓練は、さらに過酷になった。
朝五時から夜九時まで、休みなく訓練。
身体強化魔法の訓練。
属性魔法の訓練。
実戦形式の訓練。
父も、積極的に訓練に参加する。
「もっと速く! 魔法をかけるのに時間がかかりすぎだ!」
父の厳しい指導が飛ぶ。
でも、戦士たちは文句一つ言わない。
父を信頼しているから。
家族も、訓練に参加する。
ソフィア姉さんが、剣術を指導する。
「魔法と剣技を融合させるんです。魔法だけでは勝てません」
マルク兄さんが、弓術を指導する。
「遠距離攻撃も重要です。風魔法と組み合わせれば、射程が格段に伸びます」
母さんが、治癒魔法を教える。
「戦場では、治癒魔法も必要です。仲間を助けられるように」
ノエルが、クラフト魔法の実用例を見せる。
「即席の罠や防壁も作れます」
双子も、できる範囲で手伝う。
「お兄ちゃん、頑張って!」
「みんな、頑張って!」
みんなで、二百人の騎士団を育てていく。
三ヶ月後。
訓練の成果が、はっきりと現れ始めた。
戦士たちの動きが、明らかに速くなっている。
身体強化魔法が、自然に使えるようになっている。
属性魔法も、実戦で使えるレベルになってきた。
ある日、僕は模擬戦闘を見ていた。
二人の戦士が、剣を交える。
一人が炎の魔法を纏った剣を振るう。
もう一人が風の魔法で避ける。
速い、強い。
普通の人間では、絶対にできない動きだ。
エルヴィンが隣に立つ。
「順調だな、アレン」
「はい。みんな、本当によく頑張っています」
「お前の指導も、素晴らしい。三ヶ月でここまで成長させるとは」
エルヴィンが感心している。
「でも、まだまだです。もっと強くならないと」
四ヶ月後。
騎士団の中から、特に優秀な者たちが現れ始めた。
ノイシュテルン領の騎士団から、一人の戦士が際立っていた。
名前はディートリヒ。
四十代の、父の古い戦友だ。
父の右腕として、戦場で活躍した男だ。
彼の身体強化魔法は、他の者より格段に強力だ。
炎の魔法も、見事に使いこなす。
「ディートリヒ、すごいですね」
僕が言うと、ディートリヒが照れくさそうに笑う。
「グレンから学んだことを、ようやく形にできた気がします」
ヴァルトハイム領の騎士団からも、一人の戦士が際立っていた。
名前はヴォルフガング。
三十代の、冷静沈着な戦士だ。
彼の風魔法は、精密で美しい。
剣技も一流だ。
父が二人を呼ぶ。
「ディートリヒ、ヴォルフガング。お前たちを、それぞれの騎士団長に任命する」
二人が驚く。
「団長…ですか?」
「ああ。お前たちなら、任せられる」
五ヶ月後。
騎士団の編成が、正式に決まった。
ノイシュテルン領騎士団:
騎士団長:ディートリヒ
小隊長:カール(雷魔法使い)、エーリヒ(土魔法使い)
騎士:九十七名
ヴァルトハイム領騎士団:
騎士団長:ヴォルフガング
小隊長:ハインツ(火魔法使い)、オットー(水魔法使い)
騎士:九十七名
団長と小隊長たちは、特に厳しい訓練を受けた。
僕とエルヴィンが、直接指導する。
そして――
彼らの実力は、驚異的なレベルに達した。
エルヴィンが評価する。
「ディートリヒとヴォルフガングは、Sランク相当だ。小隊長たちは、Aランク相当。そして、一般の騎士たちも、Bランク相当になっている」
僕は驚く。
「本当ですか?」
「ああ。人族で、過去百年間、Sランクはいなかった。だが、彼ら二人は、確実にSランクの実力がある。これは、驚くべきことだ」
エルヴィンが続ける。
「お前の指導、そしてグレン殿の戦術指導。それが、彼らを人族の限界を超えさせた」
六ヶ月後。
家族も、さらに強くなっていた。
毎日、騎士団と一緒に訓練を続けてきた。
ある日、エルヴィンが家族全員を集めた。
「お前たちの実力を、評価させてもらった」
エルヴィンが真剣な表情で言う。
「レオとリナ。お前たちは、六歳にして、Aランク以上の実力がある」
双子が目を輝かせる。
「本当?」
「ああ。雷魔法と光魔法、そして双子共鳴。これは、非常に強力だ」
エルヴィンが続ける。
「そして、グレン、エレナ、ソフィア、マルク、ノエル。お前たちは、全員Sランク以上だ」
家族が驚く。
「Sランク…以上…?」
「ああ。正直に言えば、お前たちの実力は、Sランクを超えている。SSランク、いや、それ以上かもしれない。だが、そんな規格はないから、『Sランク以上』としか言えない」
エルヴィンが微笑む。
「お前たちは、人族の歴史に残る強者たちだ。誇りに思うがいい」
僕は家族を見る。
父、母、姉、兄、ノエル、双子。
みんな、本当に強くなった。
この七ヶ月間、共に訓練を続けてきた。
その成果が、はっきりと現れている。
七ヶ月目。
訓練の最終段階。
実戦形式の総合訓練を行う。
二百人の騎士団が、完璧な陣形で動く。
身体強化魔法をかけ、属性魔法を放つ。
息の合った連携。
強力な攻撃力。
そして、何より――
団結力。
みんな、仲間を信頼している。
父を信頼している。
家族を信頼している。
訓練を見ていたエルヴィンが、感嘆する。
「素晴らしい…これほどの騎士団は、見たことがない」
父も、満足そうに微笑む。
「みんな、よく頑張った」
七ヶ月の訓練が、終わった。
大広場に、二百人の騎士団が整列している。
もう、七ヶ月前の彼らではない。
全員が、人族を超える力を手に入れた。
魔法を使いこなす、精鋭の戦士たち。
父が前に出る。
「みんな、本当によく頑張った。七ヶ月間、休みなく訓練を続けた。その成果は、はっきりと現れている。お前たちは、もう普通の戦士ではない。王国最強の騎士団だ」
騎士たちが、拳を胸に当てる。
「そして、これから…本当の戦いが始まる」
父の表情が、厳しくなる。
「王国に、危機が迫っている。我々は、家族を守り、領地を守り、王国を守らなければならない。お前たちの力が、必要だ」
騎士たちが、大きな声で答える。
「はい!」
僕も前に出る。
「みなさん、七ヶ月間、ありがとうございました。みなさんの努力と、父への信頼が、この騎士団を作りました。僕も、精一杯頑張ります。一緒に、戦いましょう」
騎士たちが、また拳を胸に当てる。
エルヴィンも前に出る。
「お前たちは、人族の歴史に残る戦士たちだ。その力を、正しく使え。家族を守るために。仲間を守るために。そして、正義のために」
その夜、グロスマンが緊急で訪れた。
表情が、今まで以上に深刻だ。
「アレン男爵、グレン男爵…ついに、動き出しました」
僕たちは、書斎に集まる。
「何が…?」
「ヴェルデン王国です。大規模な軍の移動が確認されました。国境に向かっています」
グロスマンが地図を広げる。
「そして…王国内部でも、動きがあります。複数の貴族が、領地の兵を集めています。反乱の準備です」
父が厳しい表情になる。
「ついに、来たか…」
「はい。おそらく、数週間以内に…戦争が始まります」
グロスマンが続ける。
「それと…もう一つ、悪い知らせがあります」
「何ですか?」
「闇ギルドが動いています。王族派の貴族を、暗殺し始めました」
全員が息を呑む。
「暗殺…?」
「はい。すでに、三名の貴族が殺されました。全員、国王陛下の改革を支持していた方々です」
エルヴィンが言う。
「内部から切り崩すつもりか…」
「その通りです。王族派の貴族を排除し、内部を混乱させ、そして外部から攻める。完璧な作戦です」
グロスマンが悔しそうに言う。
「国王陛下も、対応に追われています。しかし、敵は多い。王族派は、守勢に回っています」
僕は考える。
戦争が、目前に迫っている。
でも――
僕たちは準備ができている。
二百人の精鋭騎士団。
そして、家族。
「グロスマンさん、情報ありがとうございます」
「いえ。これは、私にとっても重要なことです。この王国が滅べば、私の商売も終わります」
グロスマンが真剣に言う。
「アレン男爵、グレン男爵。私も、できる限り協力します。情報面で、支援します」
「ありがとうございます」
グロスマンが帰った後、家族で会議を開いた。
「ついに、来るね」
ソフィア姉さんが言う。
「ああ。でも、俺たちは準備ができている」
父が力強く言う。
「二百人の騎士団。全員、信頼できる戦士たちだ。そして、家族も、かつてないほど強くなった」
母さんが心配そうに言う。
「でも…戦争よ…」
「大丈夫だよ、母さん」
僕は微笑む。
「僕たちには、力がある。仲間がいる。エルヴィン様もいる。そして、セレスティア様も見守ってくれている」
双子も元気よく言う。
「僕たちも戦う!」
「家族を守る!」
ノエルが言う。
「みんなで、乗り越えよう」
窓の外を見上げると、冬の星空が広がっていた。
もうすぐ、春が来る。
でも、その前に――
嵐が来る。
戦争という、大きな嵐が。
僕たちは、その嵐に立ち向かう。
家族と、仲間と、共に。
次回:第31話「開戦前夜」
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タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
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虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。