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第2部 第2章「改革の波」
第36話「時間加速魔法と醸造の始まり」
第36話「時間加速魔法と醸造の始まり」
リトヴァル族の受け入れから、翌日。
さっそく、住居建設プロジェクトが始まった。
オスカーが、建築ギルドの職人たち五十名を率いて到着した。
「アレン様、お久しぶりです」
「オスカーさん! 来てくれたんだね」
「はい。エーリッヒさんから連絡を受けました。リトヴァル族の住居建設、お任せください」
オスカーが、リトヴァル族の人々を見る。
「身長が百から百二十センチ…一部の方は百五十センチ。通常の家では天井が高すぎますね」
リトアが前に出る。
「はい。私たちには、私たちのサイズに合った家が必要です」
「わかりました。ただ…」
オスカーが考える表情を見せる。
「人族の客人が訪れることもあるでしょう。客間やトイレは、人族のサイズに合わせた方が良いですね」
リトアが驚く。
「そこまで考えてくださるんですか…?」
「当然です。住む人が快適でなければ建築の意味がありません。そして、客人を迎えられる家でなければ、交流も生まれません」
オスカーが、さっそく図面を描き始める。
「客間、玄関、トイレ、そして廊下の一部は人族サイズ。天井も高く、ドアも大きく作ります」
「一方で、寝室、子供部屋、台所、居間はリトヴァル族のサイズに合わせます。天井を低くし、使いやすい高さに調整します」
図面を見せると、リトアが感動する。
「素晴らしい…両方の種族に配慮してくださって…」
「これが、多種族が共に暮らす社会のあるべき姿だと思います」
オスカーが微笑む。
建築ギルドの仕事は、驚くほど速かった。
わずか二週間で、百戸の住居が完成した。
リトヴァル族の人々が、新しい家を見て驚いている。
「こんなに早く…」
「しかも、こんなに立派な…」
一家族が、家の中を案内される。
玄関は人族サイズで、広々としている。
客間も天井が高く、人族の客人が来ても快適だ。
トイレも人族サイズ。
でも、居間に入ると、天井が低くなる。
リトヴァル族にちょうど良い高さだ。
台所も、リトヴァル族が使いやすい高さに調整されている。
寝室、子供部屋も、リトヴァル族のサイズにぴったり。
「完璧です…」
リトアが涙を流す。
「私たちのことも、人族の客人のことも、両方考えてくださって…」
オスカーが微笑む。
「喜んでいただけて、何よりです」
子供たちが、嬉しそうに家の中を走り回る。
母親たちが、台所で料理を作り始める。
老人たちが、客間で休んでいる。
みんな、幸せそうだ。
僕も嬉しくなる。
「オスカーさん、ありがとう」
「いえ、これが私の仕事ですから」
同時に、田んぼ作りも始まった。
リトヴァル族の農業技術者たちが、土地を選定する。
「ここが良いでしょう」
平らな土地で、近くに川がある。
水田を作るには、理想的な場所だ。
「では、水田の整備を始めましょう」
リトヴァル族の人々が、土を耕し始める。
でも、水路を作るのは大変だ。
「水路は、僕が作るよ」
僕はクラフト魔法を発動する。
「アース・モールド」
土が動き、形を変えていく。
川から水田まで、真っ直ぐな水路ができる。
さらに、水田の区画も整える。
リトヴァル族の人々が、驚いている。
「すごい…魔法で、こんなことが…」
「これなら、すぐに水田ができます」
一週間後、水田が完成した。
水が引かれ、田んぼらしくなっている。
でも、まだ苗は植えない。
リトヴァル族の農業技術者が説明する。
「まず、苗代を作ります。そこで種籾から苗を育てます」
「苗代…?」
「はい。田んぼに直接種籾を植えるのではなく、別の場所で苗を育ててから、田んぼに植えるんです」
なるほど、そういう仕組みなのか。
前世でも田植えは見たことがあるけど、詳しい工程は知らなかった。
田んぼの端に、小さな苗代が作られる。
そこに、種籾を丁寧に播いていく。
一粒一粒、大切に。
「一ヶ月ほどで苗が育ちます。それから、田植えです」
「そして、秋には収穫ができます」
僕は、その光景を見ていた。
前世で見た光景だ。
日本の稲作。
懐かしい。
「来年の今頃には、たくさんの米が収穫できるでしょう」
リトアが隣に立つ。
「はい。きっと、良い米が育ちます」
次は、醸造施設の建設だ。
味噌蔵、醤油蔵、酒蔵。
三つの施設が必要だ。
「オスカーさん、これも頼めますか?」
「もちろんです。ただ、醸造施設は特殊ですので、リトヴァル族の方々に相談しながら作りたいです」
「わかりました」
リトヴァル族の醸造職人たちが、要望を伝える。
蔵の大きさ、温度管理、換気…
細かい要件がたくさんある。
オスカーが、全てメモする。
「なるほど。では、この設計で」
図面を見せると、職人たちが感心する。
「素晴らしい…私たちの要望を、完璧に形にしてくれている…」
二週間後、三つの蔵が完成した。
本格的な施設だ。
僕もクラフト魔法で、細かい部分を作った。
樽、桶、道具類…
職人たちが、目を輝かせる。
「こんな立派な蔵…夢のようです…」
一人の老職人が、涙を流している。
「私たちは、長年逃げ続けてきました。まともな設備もなく、作りたい酒も作れませんでした。でも、ここなら…」
「ここなら、最高の酒が作れます」
蔵の見学を終えた後、僕はリトアと職人たちに提案した。
「あの、一つ提案があるんだけど」
「何でしょうか?」
「蒸留酒というものを知っていますか?」
職人たちが、首を傾げる。
「蒸留酒…?」
「聞いたことがありません」
「どんな酒ですか?」
僕は説明する。
「醸造酒を、さらに加工すると、アルコール度数の高い酒ができるんです」
「加工…?」
「蒸留という方法です。酒を加熱して、蒸気を冷やして、液体に戻す。その過程で、純度の高いアルコールが得られます」
職人たちが、興味深そうに聞いている。
「それで、どんな酒になるんですか?」
「ウイスキーやブランデーと呼ばれる、高級な酒です。アルコール度数が高くて、深い味わいがあります」
僕はクラフト魔法で、小さな蒸留器を作って見せる。
銅製の、美しい蒸留器だ。
職人たちが、驚嘆する。
「これは…なんて精巧な…」
「こんな装置、見たことがありません…」
老職人が、蒸留器に触れる。
「これを使えば…新しい酒が作れるんですか…」
「はい。穀物から醸造酒を作って、それを蒸留すればウイスキーになります。果実酒を蒸留すれば、ブランデーです」
「穀物から…醸造酒を…?」
「はい。麦などを発酵させて、ビールのような醸造酒を作ります。それを蒸留すると、ウイスキーになるんです」
僕は続ける。
「果実からはワインのような酒を作って、それを蒸留すればブランデーになります」
「なるほど…」
職人たちが、理解し始める。
「でも、蒸留しただけでは完成ではありません」
「と、言いますと?」
「樽で熟成させる必要があるんです」
職人たちが、首を傾げる。
「熟成…?」
「はい。木の樽に入れて、何年も寝かせます。その間に、樽の香りが酒に移って、まろやかになるんです」
「何年も…ですか?」
「ウイスキーなら最低三年、できれば十年以上。ブランデーも同じです」
老職人が、少し困った顔をする。
「それは…長いですね…」
他の職人たちも頷く。
「数年も待つのは…」
「でも、その分、素晴らしい酒になるんです」
僕は前世の知識を思い出しながら説明する。
「熟成が進むと、色も琥珀色に変わって、香りも豊かになります。味も深みが出て…」
職人たちの目が、輝き始める。
「それは…飲んでみたい…」
「作ってみたい…!」
「でも、やはり時間が…」
僕も、少し残念に思う。
その時――
エルヴィンが横から声をかけてきた。
「時間加速魔法を使えば良い」
「時間加速魔法…?」
エルヴィンが説明する。
「時間加速魔法は、特定の空間の時間を加速させる魔法だ。高度な魔法だが、お前なら習得できる」
「どういう仕組みなんですか?」
「結界を張って、その内部の時間の流れを速くする。外の世界では一ヶ月でも、結界内では一年経過する、といった具合だ」
僕は驚く。
「そんなことが…」
「ああ。ただし、制約がある」
エルヴィンが続ける。
「まず、魔力消費が非常に大きい。広範囲には使えない。せいぜい、小さな部屋一つ分だ」
「それでも、十分です!」
「それと、定期的に魔力を供給する必要がある。または、魔石を使って自動化する」
「魔石なら、ミスリルの売却益で買えます」
エルヴィンが頷く。
「では、教えよう。ただし、習得は簡単ではないぞ」
その日から、時間加速魔法の修行が始まった。
エルヴィンが、理論から教えてくれる。
「時間とは、空間の一部だ。空間を歪めることで、時間の流れも変えられる」
難しい理論だ。
でも、前世で物理学を少し学んでいた僕には、何となく理解できる。
「まず、小さな結界から始めよう」
エルヴィンが、手のひらサイズの結界を作る。
微かに光る、透明な球体だ。
「この中に、果物を入れる」
リンゴを一つ、結界の中に入れる。
「そして、時間を加速させる」
エルヴィンが魔法を唱える。
結界が、少し光る。
「外の世界で一時間待つ。結界内では、一日経過する」
一時間後――
結界を解くと、リンゴが少ししなびている。
一日分、老化したのだ。
「これが、時間加速魔法だ」
「すごい…」
「では、お前もやってみなさい」
最初は、うまくいかなかった。
結界は作れるが、時間を加速させられない。
何度も、何度も練習する。
一週間後――
ようやく、成功した。
手のひらサイズの結界内で、時間が加速する。
果物が、数時間で数日分老化する。
「できた…!」
エルヴィンが微笑む。
「よくやった。では、徐々に規模を大きくしていこう」
次は、箱サイズの結界。
その次は、小さな部屋サイズ。
徐々に、徐々に大きくしていく。
一ヶ月後――
僕は、部屋一つ分の結界に、時間加速魔法をかけられるようになった。
「これで、熟成室が作れるね」
専用の熟成室を建設した。
石造りの、頑丈な部屋だ。
温度と湿度が一定に保たれるように、設計されている。
僕は、この部屋全体に結界を張る。
「テンポラル・アクセラレーション」
結界が、部屋を包む。
微かに光る、透明な膜のようなもの。
「そして、時間加速を設定する」
外界一ヶ月 = 結界内一年。
これくらいの比率が、ちょうど良いだろう。
問題は、魔力供給だ。
常に魔法をかけ続けるのは、大変だ。
「魔石を使おう」
グロスマンから購入した、大きな魔石を設置する。
そして、自動的に魔力を供給する仕組みを作る。
これで、僕が定期的に魔力を補充すれば、結界は維持される。
「完成だ」
醸造が始まった。
リトヴァル族の職人たちが、次々と仕込んでいく。
日本酒。
米を蒸し、麹を作り、発酵させる。
味噌。
大豆を煮て、麹と塩を混ぜる。
醤油。
大豆と小麦を発酵させる。
そして、蒸留酒用の醸造酒。
穀物を発酵させて、ビールのような醸造酒を作る。
果実を発酵させて、ワインのような醸造酒を作る。
それらを蒸留器にかける。
蒸気が上がり、冷やされて、透明な液体になる。
これが、ウイスキーとブランデーの原酒だ。
全て、樽に詰めて、熟成室に運ぶ。
日本酒、味噌、醤油は、発酵・熟成のために。
ウイスキーとブランデーは、樽熟成のために。
「これで、外の世界で数ヶ月待てば…」
老職人が、期待に満ちた表情だ。
「数年分の熟成ができる…」
「楽しみですね」
同じ頃、僕は管理領地九領地の視察も始めていた。
最初の領地は、旧フェルゼン男爵領。
ディートリヒと数名の騎士を連れて訪れた。
町に入ると――
荒廃していた。
道路は整備されておらず、家々も古い。
人々の表情も、暗い。
「これは…ひどいな」
ディートリヒが呟く。
代官屋敷に向かうと、太った男が出迎えた。
「ああ、新しい領主様ですか。ようこそ」
表面上は丁寧だが、その態度には傲慢さが滲み出ている。
僕は神眼で確認する。
悪意がある。
腐敗している。
前の貴族と癒着し、私腹を肥やしてきた。
横領、着服、賄賂…様々な悪事が見える。
そして――
証拠の在り処も見える。
執務室の壁の裏、隠し金庫。
そこに、帳簿と金貨が隠されている。
「代官殿、失礼ですが、執務室を見せていただけますか?」
男が、少し警戒する。
「執務室…ですか? 別に構いませんが…」
執務室に案内される。
立派な机、本棚、そして壁には絵画。
僕は、神眼で確認した場所に近づく。
壁の一部、絵画の裏。
「ディートリヒさん、この壁、調べてみてください」
「わかりました」
ディートリヒが絵画を外す。
壁を叩く。
コン、コン、コン――
一部だけ、音が違う。
「ここ、空洞があります」
男の顔が、青ざめる。
「な、何を…」
「この壁、壊してください」
ディートリヒが剣で壁を壊す。
すると――
小さな金庫が現れた。
「何ですか、これは?」
男が慌てる。
「そ、それは…私の個人的な…」
「開けてください」
「し、しかし…」
「開けられないなら、こちらで壊します」
ディートリヒが金庫に手をかける。
男が観念して、鍵を取り出す。
「わ、わかりました…」
震える手で、金庫を開ける。
中には――
大量の金貨。
そして、帳簿が数冊。
僕は帳簿を取り出す。
ページをめくる。
そこには、詳細な記録があった。
「税収:金貨500枚。王国への上納:金貨200枚。差額300枚…着服」
「商人ギルドからの賄賂:金貨50枚」
「地主からの賄賂:金貨30枚」
次々と、不正の記録が出てくる。
「これは…どういうことですか?」
僕が、男を見る。
男は、もう顔面蒼白だ。
「そ、それは…」
「あなたは、この領地の人々から重税を取り立て、その大半を着服していた。そして、商人や地主から賄賂を受け取り、不正な便宜を図っていた」
僕は帳簿を突きつける。
「全て、ここに書いてありますね。あなた自身の筆跡で」
「ち、違います! それは…誰かが…」
「誰かが、あなたの筆跡を真似て、あなたの隠し金庫に、こんな詳細な記録を入れたと?」
男が、言葉に詰まる。
ディートリヒが、金貨を数える。
「金貨…約800枚あります。これは、明らかに代官の給料では持てない額です」
僕は、他の騎士たちに指示する。
「この屋敷を捜索してください。他にも証拠があるはずです」
騎士たちが、屋敷中を捜索する。
寝室から、さらに金貨が見つかる。
地下室から、高価な品々が見つかる。
全て、着服した金で買ったものだ。
男は、もう何も言えない。
ただ、震えている。
「あなたを、横領、着服、収賄、背任の罪で逮捕します」
ディートリヒが、男を拘束する。
「お、お待ちください! 私には家族が…」
「あなたの家族は、あなたの罪とは関係ありません。調査の上、問題がなければ保護します」
僕は冷静に言う。
「しかし、あなた自身は、裁判で罪を問われることになります」
男が、泣き始める。
「許してください…私は…私は…」
「あなたが搾取した領民たちに、言うべき言葉ですね」
代官を拘束した後、町の人々を集めた。
「みなさん、聞いてください」
人々が、恐る恐る集まってくる。
「私は、アレン・フォン・ノイシュテルン。この領地の管理を任された者です」
人々が、驚いている。
「子供…?」
「まだ十歳くらいでは…」
「でも、伯爵様なんだ…」
僕は続ける。
「代官は、逮捕しました。横領、着服、収賄の罪です」
どよめきが起こる。
「本当に…?」
「代官が…逮捕された…?」
僕は、証拠の帳簿を掲げる。
「ここに、全ての証拠があります。彼は、みなさんから集めた税金の大半を着服していました」
人々の表情が、怒りに変わる。
「やはり…」
「だから、こんなに重税だったのか…」
「許せない…!」
僕は、冷静に言う。
「彼は、裁判で罪を問われます。有罪となれば、重い罰が下るでしょう。おそらく、全財産没収と奴隷落ちです」
人々が、少し安堵する。
「本当に…裁かれるんですね…」
「アレン様…ありがとうございます…」
でも、まだ不安そうな顔も多い。
「また裏切られるんじゃ…」
「次の代官も、同じことをするんじゃ…」
その時、一人の男が前に出た。
三十歳くらい。
真面目そうな顔つきだ。
「あなたが、神童アレンですか?」
「神童かどうかはわからないけど、アレンです」
男が、深々と頭を下げる。
「私はマティアス。この村の者です。もし本当に、この領地を良くしてくださるなら…私たちは協力します」
僕は神眼で確認する。
マティアス…善良、誠実、統率力がある、頭が良い。
「マティアスさん、あなたに頼みたいことがあるんだ」
「何でしょうか?」
「この領地の仮代官になってください」
マティアスが、驚く。
「私に…?」
「はい。あなたなら、できます」
マティアスが、少し考える。
そして、頷く。
「…わかりました。精一杯、やらせていただきます」
町の人々が、拍手する。
「マティアスなら!」
「彼なら、信頼できる!」
こうして、フェルゼン領の改革が始まった。
その夜、宿で休んでいると、エルヴィンが部屋に来た。
「アレン、よくやっている」
「エルヴィン様…」
「お前は、本当に成長したな。統治者としても、魔法使いとしても」
エルヴィンが微笑む。
「時間加速魔法も、一ヶ月で習得した。普通なら、数年かかる魔法なのに」
「エルヴィン様の指導が、素晴らしかったからです」
「いや、お前の才能だ」
エルヴィンが窓の外を見る。
「これから、もっと忙しくなるぞ。九つの領地、全てを改革するのは、容易ではない」
「わかっています。でも、やり遂げます」
「ああ。お前なら、できる」
窓の外、星空が広がっている。
新しい領地。
新しい仲間。
新しい挑戦。
全てが、始まったばかりだ。
次回:第37話「抵抗勢力との戦い」
リトヴァル族の受け入れから、翌日。
さっそく、住居建設プロジェクトが始まった。
オスカーが、建築ギルドの職人たち五十名を率いて到着した。
「アレン様、お久しぶりです」
「オスカーさん! 来てくれたんだね」
「はい。エーリッヒさんから連絡を受けました。リトヴァル族の住居建設、お任せください」
オスカーが、リトヴァル族の人々を見る。
「身長が百から百二十センチ…一部の方は百五十センチ。通常の家では天井が高すぎますね」
リトアが前に出る。
「はい。私たちには、私たちのサイズに合った家が必要です」
「わかりました。ただ…」
オスカーが考える表情を見せる。
「人族の客人が訪れることもあるでしょう。客間やトイレは、人族のサイズに合わせた方が良いですね」
リトアが驚く。
「そこまで考えてくださるんですか…?」
「当然です。住む人が快適でなければ建築の意味がありません。そして、客人を迎えられる家でなければ、交流も生まれません」
オスカーが、さっそく図面を描き始める。
「客間、玄関、トイレ、そして廊下の一部は人族サイズ。天井も高く、ドアも大きく作ります」
「一方で、寝室、子供部屋、台所、居間はリトヴァル族のサイズに合わせます。天井を低くし、使いやすい高さに調整します」
図面を見せると、リトアが感動する。
「素晴らしい…両方の種族に配慮してくださって…」
「これが、多種族が共に暮らす社会のあるべき姿だと思います」
オスカーが微笑む。
建築ギルドの仕事は、驚くほど速かった。
わずか二週間で、百戸の住居が完成した。
リトヴァル族の人々が、新しい家を見て驚いている。
「こんなに早く…」
「しかも、こんなに立派な…」
一家族が、家の中を案内される。
玄関は人族サイズで、広々としている。
客間も天井が高く、人族の客人が来ても快適だ。
トイレも人族サイズ。
でも、居間に入ると、天井が低くなる。
リトヴァル族にちょうど良い高さだ。
台所も、リトヴァル族が使いやすい高さに調整されている。
寝室、子供部屋も、リトヴァル族のサイズにぴったり。
「完璧です…」
リトアが涙を流す。
「私たちのことも、人族の客人のことも、両方考えてくださって…」
オスカーが微笑む。
「喜んでいただけて、何よりです」
子供たちが、嬉しそうに家の中を走り回る。
母親たちが、台所で料理を作り始める。
老人たちが、客間で休んでいる。
みんな、幸せそうだ。
僕も嬉しくなる。
「オスカーさん、ありがとう」
「いえ、これが私の仕事ですから」
同時に、田んぼ作りも始まった。
リトヴァル族の農業技術者たちが、土地を選定する。
「ここが良いでしょう」
平らな土地で、近くに川がある。
水田を作るには、理想的な場所だ。
「では、水田の整備を始めましょう」
リトヴァル族の人々が、土を耕し始める。
でも、水路を作るのは大変だ。
「水路は、僕が作るよ」
僕はクラフト魔法を発動する。
「アース・モールド」
土が動き、形を変えていく。
川から水田まで、真っ直ぐな水路ができる。
さらに、水田の区画も整える。
リトヴァル族の人々が、驚いている。
「すごい…魔法で、こんなことが…」
「これなら、すぐに水田ができます」
一週間後、水田が完成した。
水が引かれ、田んぼらしくなっている。
でも、まだ苗は植えない。
リトヴァル族の農業技術者が説明する。
「まず、苗代を作ります。そこで種籾から苗を育てます」
「苗代…?」
「はい。田んぼに直接種籾を植えるのではなく、別の場所で苗を育ててから、田んぼに植えるんです」
なるほど、そういう仕組みなのか。
前世でも田植えは見たことがあるけど、詳しい工程は知らなかった。
田んぼの端に、小さな苗代が作られる。
そこに、種籾を丁寧に播いていく。
一粒一粒、大切に。
「一ヶ月ほどで苗が育ちます。それから、田植えです」
「そして、秋には収穫ができます」
僕は、その光景を見ていた。
前世で見た光景だ。
日本の稲作。
懐かしい。
「来年の今頃には、たくさんの米が収穫できるでしょう」
リトアが隣に立つ。
「はい。きっと、良い米が育ちます」
次は、醸造施設の建設だ。
味噌蔵、醤油蔵、酒蔵。
三つの施設が必要だ。
「オスカーさん、これも頼めますか?」
「もちろんです。ただ、醸造施設は特殊ですので、リトヴァル族の方々に相談しながら作りたいです」
「わかりました」
リトヴァル族の醸造職人たちが、要望を伝える。
蔵の大きさ、温度管理、換気…
細かい要件がたくさんある。
オスカーが、全てメモする。
「なるほど。では、この設計で」
図面を見せると、職人たちが感心する。
「素晴らしい…私たちの要望を、完璧に形にしてくれている…」
二週間後、三つの蔵が完成した。
本格的な施設だ。
僕もクラフト魔法で、細かい部分を作った。
樽、桶、道具類…
職人たちが、目を輝かせる。
「こんな立派な蔵…夢のようです…」
一人の老職人が、涙を流している。
「私たちは、長年逃げ続けてきました。まともな設備もなく、作りたい酒も作れませんでした。でも、ここなら…」
「ここなら、最高の酒が作れます」
蔵の見学を終えた後、僕はリトアと職人たちに提案した。
「あの、一つ提案があるんだけど」
「何でしょうか?」
「蒸留酒というものを知っていますか?」
職人たちが、首を傾げる。
「蒸留酒…?」
「聞いたことがありません」
「どんな酒ですか?」
僕は説明する。
「醸造酒を、さらに加工すると、アルコール度数の高い酒ができるんです」
「加工…?」
「蒸留という方法です。酒を加熱して、蒸気を冷やして、液体に戻す。その過程で、純度の高いアルコールが得られます」
職人たちが、興味深そうに聞いている。
「それで、どんな酒になるんですか?」
「ウイスキーやブランデーと呼ばれる、高級な酒です。アルコール度数が高くて、深い味わいがあります」
僕はクラフト魔法で、小さな蒸留器を作って見せる。
銅製の、美しい蒸留器だ。
職人たちが、驚嘆する。
「これは…なんて精巧な…」
「こんな装置、見たことがありません…」
老職人が、蒸留器に触れる。
「これを使えば…新しい酒が作れるんですか…」
「はい。穀物から醸造酒を作って、それを蒸留すればウイスキーになります。果実酒を蒸留すれば、ブランデーです」
「穀物から…醸造酒を…?」
「はい。麦などを発酵させて、ビールのような醸造酒を作ります。それを蒸留すると、ウイスキーになるんです」
僕は続ける。
「果実からはワインのような酒を作って、それを蒸留すればブランデーになります」
「なるほど…」
職人たちが、理解し始める。
「でも、蒸留しただけでは完成ではありません」
「と、言いますと?」
「樽で熟成させる必要があるんです」
職人たちが、首を傾げる。
「熟成…?」
「はい。木の樽に入れて、何年も寝かせます。その間に、樽の香りが酒に移って、まろやかになるんです」
「何年も…ですか?」
「ウイスキーなら最低三年、できれば十年以上。ブランデーも同じです」
老職人が、少し困った顔をする。
「それは…長いですね…」
他の職人たちも頷く。
「数年も待つのは…」
「でも、その分、素晴らしい酒になるんです」
僕は前世の知識を思い出しながら説明する。
「熟成が進むと、色も琥珀色に変わって、香りも豊かになります。味も深みが出て…」
職人たちの目が、輝き始める。
「それは…飲んでみたい…」
「作ってみたい…!」
「でも、やはり時間が…」
僕も、少し残念に思う。
その時――
エルヴィンが横から声をかけてきた。
「時間加速魔法を使えば良い」
「時間加速魔法…?」
エルヴィンが説明する。
「時間加速魔法は、特定の空間の時間を加速させる魔法だ。高度な魔法だが、お前なら習得できる」
「どういう仕組みなんですか?」
「結界を張って、その内部の時間の流れを速くする。外の世界では一ヶ月でも、結界内では一年経過する、といった具合だ」
僕は驚く。
「そんなことが…」
「ああ。ただし、制約がある」
エルヴィンが続ける。
「まず、魔力消費が非常に大きい。広範囲には使えない。せいぜい、小さな部屋一つ分だ」
「それでも、十分です!」
「それと、定期的に魔力を供給する必要がある。または、魔石を使って自動化する」
「魔石なら、ミスリルの売却益で買えます」
エルヴィンが頷く。
「では、教えよう。ただし、習得は簡単ではないぞ」
その日から、時間加速魔法の修行が始まった。
エルヴィンが、理論から教えてくれる。
「時間とは、空間の一部だ。空間を歪めることで、時間の流れも変えられる」
難しい理論だ。
でも、前世で物理学を少し学んでいた僕には、何となく理解できる。
「まず、小さな結界から始めよう」
エルヴィンが、手のひらサイズの結界を作る。
微かに光る、透明な球体だ。
「この中に、果物を入れる」
リンゴを一つ、結界の中に入れる。
「そして、時間を加速させる」
エルヴィンが魔法を唱える。
結界が、少し光る。
「外の世界で一時間待つ。結界内では、一日経過する」
一時間後――
結界を解くと、リンゴが少ししなびている。
一日分、老化したのだ。
「これが、時間加速魔法だ」
「すごい…」
「では、お前もやってみなさい」
最初は、うまくいかなかった。
結界は作れるが、時間を加速させられない。
何度も、何度も練習する。
一週間後――
ようやく、成功した。
手のひらサイズの結界内で、時間が加速する。
果物が、数時間で数日分老化する。
「できた…!」
エルヴィンが微笑む。
「よくやった。では、徐々に規模を大きくしていこう」
次は、箱サイズの結界。
その次は、小さな部屋サイズ。
徐々に、徐々に大きくしていく。
一ヶ月後――
僕は、部屋一つ分の結界に、時間加速魔法をかけられるようになった。
「これで、熟成室が作れるね」
専用の熟成室を建設した。
石造りの、頑丈な部屋だ。
温度と湿度が一定に保たれるように、設計されている。
僕は、この部屋全体に結界を張る。
「テンポラル・アクセラレーション」
結界が、部屋を包む。
微かに光る、透明な膜のようなもの。
「そして、時間加速を設定する」
外界一ヶ月 = 結界内一年。
これくらいの比率が、ちょうど良いだろう。
問題は、魔力供給だ。
常に魔法をかけ続けるのは、大変だ。
「魔石を使おう」
グロスマンから購入した、大きな魔石を設置する。
そして、自動的に魔力を供給する仕組みを作る。
これで、僕が定期的に魔力を補充すれば、結界は維持される。
「完成だ」
醸造が始まった。
リトヴァル族の職人たちが、次々と仕込んでいく。
日本酒。
米を蒸し、麹を作り、発酵させる。
味噌。
大豆を煮て、麹と塩を混ぜる。
醤油。
大豆と小麦を発酵させる。
そして、蒸留酒用の醸造酒。
穀物を発酵させて、ビールのような醸造酒を作る。
果実を発酵させて、ワインのような醸造酒を作る。
それらを蒸留器にかける。
蒸気が上がり、冷やされて、透明な液体になる。
これが、ウイスキーとブランデーの原酒だ。
全て、樽に詰めて、熟成室に運ぶ。
日本酒、味噌、醤油は、発酵・熟成のために。
ウイスキーとブランデーは、樽熟成のために。
「これで、外の世界で数ヶ月待てば…」
老職人が、期待に満ちた表情だ。
「数年分の熟成ができる…」
「楽しみですね」
同じ頃、僕は管理領地九領地の視察も始めていた。
最初の領地は、旧フェルゼン男爵領。
ディートリヒと数名の騎士を連れて訪れた。
町に入ると――
荒廃していた。
道路は整備されておらず、家々も古い。
人々の表情も、暗い。
「これは…ひどいな」
ディートリヒが呟く。
代官屋敷に向かうと、太った男が出迎えた。
「ああ、新しい領主様ですか。ようこそ」
表面上は丁寧だが、その態度には傲慢さが滲み出ている。
僕は神眼で確認する。
悪意がある。
腐敗している。
前の貴族と癒着し、私腹を肥やしてきた。
横領、着服、賄賂…様々な悪事が見える。
そして――
証拠の在り処も見える。
執務室の壁の裏、隠し金庫。
そこに、帳簿と金貨が隠されている。
「代官殿、失礼ですが、執務室を見せていただけますか?」
男が、少し警戒する。
「執務室…ですか? 別に構いませんが…」
執務室に案内される。
立派な机、本棚、そして壁には絵画。
僕は、神眼で確認した場所に近づく。
壁の一部、絵画の裏。
「ディートリヒさん、この壁、調べてみてください」
「わかりました」
ディートリヒが絵画を外す。
壁を叩く。
コン、コン、コン――
一部だけ、音が違う。
「ここ、空洞があります」
男の顔が、青ざめる。
「な、何を…」
「この壁、壊してください」
ディートリヒが剣で壁を壊す。
すると――
小さな金庫が現れた。
「何ですか、これは?」
男が慌てる。
「そ、それは…私の個人的な…」
「開けてください」
「し、しかし…」
「開けられないなら、こちらで壊します」
ディートリヒが金庫に手をかける。
男が観念して、鍵を取り出す。
「わ、わかりました…」
震える手で、金庫を開ける。
中には――
大量の金貨。
そして、帳簿が数冊。
僕は帳簿を取り出す。
ページをめくる。
そこには、詳細な記録があった。
「税収:金貨500枚。王国への上納:金貨200枚。差額300枚…着服」
「商人ギルドからの賄賂:金貨50枚」
「地主からの賄賂:金貨30枚」
次々と、不正の記録が出てくる。
「これは…どういうことですか?」
僕が、男を見る。
男は、もう顔面蒼白だ。
「そ、それは…」
「あなたは、この領地の人々から重税を取り立て、その大半を着服していた。そして、商人や地主から賄賂を受け取り、不正な便宜を図っていた」
僕は帳簿を突きつける。
「全て、ここに書いてありますね。あなた自身の筆跡で」
「ち、違います! それは…誰かが…」
「誰かが、あなたの筆跡を真似て、あなたの隠し金庫に、こんな詳細な記録を入れたと?」
男が、言葉に詰まる。
ディートリヒが、金貨を数える。
「金貨…約800枚あります。これは、明らかに代官の給料では持てない額です」
僕は、他の騎士たちに指示する。
「この屋敷を捜索してください。他にも証拠があるはずです」
騎士たちが、屋敷中を捜索する。
寝室から、さらに金貨が見つかる。
地下室から、高価な品々が見つかる。
全て、着服した金で買ったものだ。
男は、もう何も言えない。
ただ、震えている。
「あなたを、横領、着服、収賄、背任の罪で逮捕します」
ディートリヒが、男を拘束する。
「お、お待ちください! 私には家族が…」
「あなたの家族は、あなたの罪とは関係ありません。調査の上、問題がなければ保護します」
僕は冷静に言う。
「しかし、あなた自身は、裁判で罪を問われることになります」
男が、泣き始める。
「許してください…私は…私は…」
「あなたが搾取した領民たちに、言うべき言葉ですね」
代官を拘束した後、町の人々を集めた。
「みなさん、聞いてください」
人々が、恐る恐る集まってくる。
「私は、アレン・フォン・ノイシュテルン。この領地の管理を任された者です」
人々が、驚いている。
「子供…?」
「まだ十歳くらいでは…」
「でも、伯爵様なんだ…」
僕は続ける。
「代官は、逮捕しました。横領、着服、収賄の罪です」
どよめきが起こる。
「本当に…?」
「代官が…逮捕された…?」
僕は、証拠の帳簿を掲げる。
「ここに、全ての証拠があります。彼は、みなさんから集めた税金の大半を着服していました」
人々の表情が、怒りに変わる。
「やはり…」
「だから、こんなに重税だったのか…」
「許せない…!」
僕は、冷静に言う。
「彼は、裁判で罪を問われます。有罪となれば、重い罰が下るでしょう。おそらく、全財産没収と奴隷落ちです」
人々が、少し安堵する。
「本当に…裁かれるんですね…」
「アレン様…ありがとうございます…」
でも、まだ不安そうな顔も多い。
「また裏切られるんじゃ…」
「次の代官も、同じことをするんじゃ…」
その時、一人の男が前に出た。
三十歳くらい。
真面目そうな顔つきだ。
「あなたが、神童アレンですか?」
「神童かどうかはわからないけど、アレンです」
男が、深々と頭を下げる。
「私はマティアス。この村の者です。もし本当に、この領地を良くしてくださるなら…私たちは協力します」
僕は神眼で確認する。
マティアス…善良、誠実、統率力がある、頭が良い。
「マティアスさん、あなたに頼みたいことがあるんだ」
「何でしょうか?」
「この領地の仮代官になってください」
マティアスが、驚く。
「私に…?」
「はい。あなたなら、できます」
マティアスが、少し考える。
そして、頷く。
「…わかりました。精一杯、やらせていただきます」
町の人々が、拍手する。
「マティアスなら!」
「彼なら、信頼できる!」
こうして、フェルゼン領の改革が始まった。
その夜、宿で休んでいると、エルヴィンが部屋に来た。
「アレン、よくやっている」
「エルヴィン様…」
「お前は、本当に成長したな。統治者としても、魔法使いとしても」
エルヴィンが微笑む。
「時間加速魔法も、一ヶ月で習得した。普通なら、数年かかる魔法なのに」
「エルヴィン様の指導が、素晴らしかったからです」
「いや、お前の才能だ」
エルヴィンが窓の外を見る。
「これから、もっと忙しくなるぞ。九つの領地、全てを改革するのは、容易ではない」
「わかっています。でも、やり遂げます」
「ああ。お前なら、できる」
窓の外、星空が広がっている。
新しい領地。
新しい仲間。
新しい挑戦。
全てが、始まったばかりだ。
次回:第37話「抵抗勢力との戦い」
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