『転生勇者の俺、家族に正体を隠さず話した結果、家族も最強になった件』

アルさんのシッポ

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第2部 第3章「魔の森の封印」

第53話「束の間の平和」

第53話「束の間の平和」


 ヴェルデン王国との和平条約が締結された翌日。
 僕は、再びザインと対面した。
 牢の中に入れられたまま、拘束されている。
 でも、その目には余裕がある。
「また来たか、勇者ハルト」
「アレンです。今は」
「そうだったな」
 ザインが、嘲笑する。
「転生して、貴族の息子になったんだったな」
「昨日は、基本的な情報しか聞きませんでした」
 僕は、椅子に座る。
「今日は、詳しく聞かせてもらいます」
「俺が、素直に話すと思うか?」
「いいえ」
 僕は、神眼を発動する。
 ザインの記憶を、直接読む。
 ザインが、顔色を変える。
「貴様…! 精神に侵入する気か!」
「はい」
 僕は、冷静に言う。
「あなたが話さなくても、記憶を読めばいい」
「くっ…!」
 ザインが、抵抗する。
 精神防御の魔法を使っている。
 さすが、四天王。
 でも――
 僕の魔力の方が、上だ。
 防御を、突破する。
 ザインの記憶が、流れ込んでくる。
 五百年前。
 魔王が、勇者パーティーに倒された。
 五人のパーティー。
 勇者ハルト。
 戦士ライオス。
 魔法使いセリナ。
 僧侶ベルナルド。
 盗賊リック。
 五人で、魔王を倒した。
 でも、四天王は生き延びた。
 ザイン、グリード、エンヴィ、ラース。
 四人の幹部たち。
 彼らは、魔王の死体を持ち去った。
 そして、隠した。
 人間の手の届かない、深い地下に。
 魔王の復活には、時間がかかる。
 五百年。
 その間、四天王たちは各地で暗躍した。
 人間国を混乱させるために。
 戦争を起こし、国力を削る。
 そうすれば、魔王が復活した時、抵抗できない。
 ザインは、ヴェルデン王国を担当した。
 新王リチャードに近づき、呪いをかけた。
 洗脳の呪い。
 そして、傀儡として操った。
 戦争を起こさせた。
 でも――
 勇者ハルトの転生、アレンが邪魔をした。
 クーデターを支援し、平和を取り戻した。
 計画は、失敗した。
 記憶を読み終えて、僕は目を開ける。
 ザインが、荒い息をしている。
「貴様…俺の記憶を…」
「読ませてもらいました」
 僕は、冷静に言う。
「残る三人の四天王の情報も、得ました」
「くっ…」
「グリードは、獣人国を担当」
「…」
「エンヴィは、エルフ国を担当」
「…」
「ラースは、ドワーフ国を担当」
 僕は、立ち上がる。
「それぞれが、各国を混乱させようとしている」
「そうだ」
 ザインが、笑う。
「お前が俺を捕らえても、無駄だ。残る三人が、計画を進める」
「わかっています」
「魔王様は、必ず復活する。その時、お前も、この世界も、全て滅ぼす」
「させません」
 僕は、真剣に言う。
「今度は、違います」
「違う…?」
 ザインが、興味深そうに見る。
「前世では、五人で魔王を倒しました」
 僕は、正直に言う。
「でも、その仲間たちに裏切られました」
「ああ、知っているぞ」
 ザインが、嘲笑する。
「魔王を倒した後、お前の仲間たちが暗殺者としてお前を襲った」
「…」
「ライオス、セリナ、ベルナルド、リック。全員だ」
 ザインが、楽しそうに言う。
「お前、どんな気持ちだった? 信じていた仲間に裏切られて」
 僕の拳が、震える。
 前世の記憶が、蘇る。
 魔王を倒した祝宴の夜。
 自室を襲った暗殺者の集団。
 その中にいた、仲間たちの顔。
 ライオスの剣。
 セリナの魔法。
 ベルナルドの毒。
 リックの短剣。
 全てが、僕に向けられた。
「楽しかったぞ、あの光景は」
 ザインが、笑う。
「お前の絶望した顔が、最高だった」
「…見ていたんですか」
「ああ。俺たち四天王は、遠くから見ていた」
 ザインが、続ける。
「人間は、面白いな。魔王を倒した勇者を、自分たちで殺そうとする」
「…」
「王侯貴族たちが、お前を恐れた。強すぎる勇者を」
「そうです」
「だから、仲間たちを買収した。金と地位で」
 ザインが、嘲笑する。
「お前の仲間たち、簡単に裏切ったぞ。金のために」
 僕は、深呼吸する。
 怒りを、抑える。
 前世の記憶。
 あの裏切り。
 今でも、鮮明に覚えている。
 でも――
「今は、違います」
 僕は、ザインを見る。
「今の家族は、本物です。仲間も、本物です」
「本当にそうかな?」
 ザインが、笑う。
「また、裏切られるぞ。人間は信用できない」
「それは…」
 僕は、少し迷う。
 確かに、その不安はある。
 また裏切られるのではないか。
 その恐怖は、消えていない。
 でも――
「今の家族は、前世の仲間とは違います」
 僕は、確信を持って言う。
「父は、僕を愛してくれています。母も、姉も、兄も、ノエルも、双子も」
「今はな」
「今も、これからも」
 僕は、強く言う。
「前世とは、違う」
「そうかな」
 ザインが、不敵に笑う。
「楽しみにしているぞ。お前が、また裏切られる瞬間を」
 牢を出ると、エレボスが待っていた。
「アレン様、大丈夫ですか?」
「はい」
「顔色が、悪いです」
「少し…疲れました」
 僕は、正直に言う。
 神眼で記憶を読むのは、魔力を消耗する。
 それに――
 ザインの言葉が、心に引っかかっている。
「また、裏切られるぞ」
 その言葉が。
 エレボスが、僕の肩に手を置く。
「アレン様、私は裏切りません」
「え…?」
「主様が、私を救ってくださいました。千年の孤独から」
 エレボスが、優しく言う。
「だから、私は主様に絶対の忠誠を誓います」
「エレボス…」
「そして、他の方々も同じです」
 エレボスが、続ける。
「グレン様、エレナ様、ソフィア様、マルクス様、ノエル様、双子様。皆、主様を愛しています」
「…ありがとう」
 少し、心が軽くなる。
 でも――
 前世の仲間たちも、最初は信頼していた。
 ライオスは、親友だと思っていた。
 セリナは、恋人だと思っていた。
 ベルナルドは、兄のように思っていた。
 リックは、弟のように思っていた。
 でも、全員が裏切った。
 その記憶が、消えない。
 執務室に戻ると、父グレンが待っていた。
「アレン、ザインから情報は得られたか?」
「はい」
 僕は、報告する。
 四天王のこと。
 グリード、エンヴィ、ラースが各国で暗躍していること。
 魔王復活まで、あと十年であること。
 全てを、話す。
 父が、深刻な表情をする。
「つまり、これは始まりに過ぎない、と」
「はい」
「残る三人の四天王も、同じように各国を混乱させようとしている」
「はい」
 父が、腕を組む。
「エルフ国、ドワーフ国、獣人国…全てに警告を送る必要があるな」
「でも、信じてもらえるでしょうか」
「わからない」
 父が、正直に言う。
「魔王復活など、荒唐無稽に聞こえるだろう」
「でも、試す価値はあります」
「そうだな」
 父が、頷く。
「グロスマンに手紙を書く。商人ネットワークを使って、各国に情報を流してもらう」
「ありがとうございます、父さん」
 父が、僕の肩に手を置く。
「アレン、お前は疲れている」
「…はい」
「今日は、ゆっくり休め」
「でも…」
「良いんだ」
 父が、優しく言う。
「お前は、十歳だ。もっと子供らしく過ごしても良い」
「父さん…」
「戦争も終わった。しばらくは平和だ。だから、休め」
 父の温かい言葉が、心に染みる。
 その日の夕方。
 家族全員で夕食を取った。
 母エレナが、温かい料理を作ってくれている。
 双子が、元気に話している。
「お兄ちゃん、戦争終わったんだよね!」
「うん、終わったよ」
「良かった! もう心配しなくていいね!」
 双子の無邪気な笑顔。
 この笑顔を、守りたい。
 ノエルが言う。
「アレン、疲れてる?」
「少しね」
「無理しないでね」
「ありがとう、ノエル」
 母が、僕の皿に料理を追加する。
「アレン、たくさん食べなさい。魔力を回復するには、栄養が必要よ」
「はい、母さん」
 父が、ワインを飲みながら言う。
「アレン、今回は本当によくやった」
「ありがとうございます」
「ヴェルデン王国との和平も成立した。捕虜も解放される。戦争は、完全に終わった」
 父が、続ける。
「しばらくは、平和だろう」
「…そうですね」
 僕は、少し複雑な気持ちだ。
 確かに、戦争は終わった。
 でも、より大きな脅威が迫っている。
 魔王の復活。
 四天王の暗躍。
 でも――
 今は、家族と過ごす時間を大切にしよう。
 そう思う。
 この人たちは、裏切らない。
 そう、信じたい。
 夕食後、書斎で一人になった。
 エルヴィンが、訪ねてくる。
「アレン、少し話があるか?」
「はい、どうぞ」
 エルヴィンが、椅子に座る。
「お前、ザインの記憶を読んだんだろう?」
「はい」
「前世の仲間たちのことも、思い出したか?」
 僕は、驚く。
 エルヴィンは、知っているのか。
「…はい」
「辛かったろう」
 エルヴィンが、優しく言う。
「信じていた仲間に、裏切られた」
「エルヴィン様は…知っていたんですか」
「ああ」
 エルヴィンが、頷く。
「だからエルフ族は人間を嫌うようになった」
 僕は、驚く。
「それは…」
「そうだったね」
 僕は、その事実を改めて思い出す。
 前世の裏切りが、エルフ族全体に影響を与えた。
「アレン、聞いてくれ」
 エルヴィンが、真剣に言う。
「当時、わしはお前の魔法の師匠だった。パーティーメンバーではなかったが、お前のことは気にかけていた」
「はい」
「そして、あの事件が起きた。ライオス、セリナ、ベルナルド、リック…全員が、お前を裏切った」
 エルヴィンの声が、怒りに震える。
「あの時、わしはエルフ国にいた。後から話を聞いて、激怒した」
「エルヴィン様…」
「そして、女神セレスティア様が教会に神託を下した。全ての真実を明かし、教会が王国を糾弾した」
 エルヴィンが続ける。
「王国から全ての加護が消え、民衆が逃げ出した。数年で、滅亡した」
「…はい」
 僕も、神界からその光景を見ていた。
 虚しかった。
 復讐は、何も残さなかった。
「あの事件が、エルフ族全体に影響を与えた」
 エルヴィンが、深刻な表情で言う。
「人間の勇者を、わしは認めていた。お前を、信じていた」
「…」
「でも、人間たちはお前を裏切った。仲間さえも、金と地位で裏切った」
 エルヴィンの目が、悲しげになる。
「それ以来、エルフ族は人間を信用しなくなった。今でも、基本的には嫌っている」
「そうでしたか…」
 僕は、申し訳ない気持ちになる。
 僕の前世の出来事が、種族間の関係を悪化させた。
「でも」
 エルヴィンが、僕を見る。
「お前が転生して戻ってきた。そして、今度は違う」
「違う…?」
「お前の家族は、本物だ。グレンも、エレナも、子供たちも。皆、お前を愛している」
 エルヴィンが、優しく言う。
「だから、わしはここにいる。お前を見守るために」
「エルヴィン様…」
「そして、お前のおかげで、エルフ族と人間族の関係も少しずつ変わり始めている」
「そうですか?」
「ああ。わしの弟子たちが、時々この領地を訪れるようになった」
 エルヴィンが、微笑む。
「少しずつだが、交流が始まっている」
「それは…嬉しいです」
「アレン、聞いてくれ」
 エルヴィンが、真剣に言う。
「今の家族は、前世の仲間とは違う」
「…」
「グレンは、本当にお前を愛している。エレナも、子供たちも」
「わかっています」
「本当にわかっているか?」
 エルヴィンが、僕を見る。
「お前、まだ疑っているだろう」
「…」
 僕は、何も言えない。
 図星だ。
 心のどこかで、まだ疑っている。
 また裏切られるのではないか、と。
「アレン、それで良い」
 エルヴィンが、意外なことを言う。
「疑うことは、悪いことではない」
「え…?」
「前世で学んだ教訓だ。簡単に信じてはいけない、と」
 エルヴィンが、続ける。
「でも、疑いながらも、信じる努力をしろ」
「信じる努力…」
「ああ。疑いを完全に捨てる必要はない。でも、信じようとする気持ちを持て」
 エルヴィンが、優しく言う。
「それが、お前の今世の課題だ」
「…わかりました」
 僕は、深く頷く。
 疑いながらも、信じる。
 矛盾しているようで、それが現実なのかもしれない。
 その夜、モーモーから念話が来た。
「主様、お疲れ様でした」
「ありがとう、モーモー」
「戦争が終わって、良かったです」
「うん」
「でも…主様、悩んでいますね」
 モーモーが、僕の心を読む。
「…わかる?」
「はい。主様の心は、私に伝わります」
 モーモーが、優しく言う。
「前世の仲間たちのこと、考えているのですね」
「モーモーは…知ってるんですか」
「はい。五百年前、私も見ていました」
 モーモーが、静かに言う。
「主様が、仲間たちに裏切られた夜」
「モーモー…」
「あの時、私は何もできませんでした。ただ、見ていることしか」
 モーモーの声が、悲しげになる。
「でも、今は違います」
「今は…?」
「今の私は、主様の側にいます。そして、絶対に裏切りません」
 モーモーが、強く言う。
「前世でも、今世でも、私は主様の味方です」
「ありがとう、モーモー」
「でも、今の主様は違います。温かい家族に囲まれています」
「はい」
「だから、大丈夫です。今度は、裏切られません」
 モーモーの声が、優しい。
「おやすみなさい、主様」
「おやすみ」
 翌朝。
 エレボスが、いつものように僕を起こしに来る。
「アレン様、おはようございます」
「おはよう、エレボス」
「本日の朝食は、パン、卵料理、聖牛のミルク、フルーツです」
 エレボスが、カーテンを開ける。
 朝日が差し込む。
 美しい朝だ。
「戦争が終わって、街も落ち着きました」
 エレボスが、窓の外を見る。
「人々が、笑顔で歩いています」
「良かった」
 僕も、窓の外を見る。
 ノイブルクの街。
 平和な景色。
 人々が、普通の生活を送っている。
 この平和を、守りたい。
 午前中、領地を巡回した。
 街の人々が、僕に挨拶してくる。
「アレン様、お疲れ様でした!」
「戦争に勝ってくださって、ありがとうございます!」
 リトヴァル族の人々も、喜んでいる。
「アレン様のおかげで、平和が戻りました!」
 子供たちが、駆け寄ってくる。
「アレン様!」
 僕は、子供たちの頭を撫でる。
「みんな、元気だった?」
「うん!」
 子供たちの笑顔。
 この笑顔を、守るために戦う。
 そう、改めて思う。
 牧場に行くと、モーモーたち聖牛が集まっている。
 ゾルンとルナも、元気だ。
「アレンお兄ちゃん!」
 二頭が、駆け寄ってくる。
「ゾルン、ルナ、元気だった?」
「うん! ママが、アレンお兄ちゃんが戦争に勝ったって言ってた!」
「そうだよ」
 モーモーが、近づいてくる。
「主様、本当にお疲れ様でした」
「ありがとう、モーモー」
「これで、しばらくは平和ですね」
「…そうだね」
 僕は、少し複雑な気持ちだ。
 表面的には、平和だ。
 でも、水面下では、脅威が迫っている。
 魔王の復活。
 四天王の暗躍。
 でも――
 今は、この平和を楽しもう。
 そう思う。
 午後、商業ギルドとの会議。
 ギルド長が、嬉しそうに言う。
「アレン様、戦争が終わって、交易が再開されました」
「良かったです」
「ヴェルデン王国との国境も開きました。商人たちが、自由に行き来できます」
「それは、何よりです」
 ギルド長が、続ける。
「それと、ヴェルデン王国から、感謝の印として、特別な交易権をいただきました」
「特別な交易権…?」
「はい。関税が半額になります。これは、大きな利益です」
「それは、良いですね」
 経済が、回復していく。
 それは、領地にとって重要だ。
 夕方、リトヴァル族の学校を訪問した。
 子供たちが、歓声を上げる。
「アレン様だ!」
「エレボスさんも!」
 エレボスが、子供たちに囲まれる。
「エレボスさん、戦争で戦ったんでしょ?」
「はい。少しだけ」
「すごい!」
 先生のミラが、僕に言う。
「アレン様、戦争が終わって、子供たちも安心しています」
「良かったです」
「それに、新しい家族が増えました」
「新しい家族…?」
「はい。ヴェルデン王国から逃げてきた、リトヴァル族の家族です」
 ミラが、一組の家族を紹介してくれる。
 両親と、子供三人。
「初めまして。私はリーラと言います」
 母親が、丁寧に挨拶する。
「ヴェルデン王国で、戦争が始まって…怖くて逃げてきました」
「ここなら、安全です」
 僕は、微笑む。
「ゆっくり休んでください」
「ありがとうございます、アレン様」
 リトヴァル族のコミュニティが、また拡大する。
 それは、良いことだ。
 その夜、書斎で一人になった時。
 僕は、この一ヶ月を振り返る。
 魔の森の封印強化。
 エレボスの誕生。
 ヴェルデン王国との戦争。
 クーデターの支援。
 和平条約の締結。
 ザインの捕獲。
 そして、魔王復活の情報。
 多くのことがあった。
 でも――
 一つ一つ、乗り越えてきた。
 家族と、仲間と、一緒に。
 窓の外を見る。
 ノイブルクの夜景。
 平和な景色。
 でも、この平和は、脆い。
 魔王が復活すれば、全てが崩れる。
 だから――
 準備をしなければならない。
 十年で、できることを全てやる。
 力をつける。
 仲間を増やす。
 情報を集める。
 そして、魔王の復活場所を見つける。
 やるべきことは、山ほどある。
 でも――
 今は、少しだけ休もう。
 そう思う。
 エレボスが、部屋に入ってくる。
「アレン様、本日の報告書です」
「ありがとう、エレボス」
「それと、セレスティア様から念話がありました」
「セレスティア様から?」
「はい。『よくやりました』とのことです」
「…そうですか」
 少し、心が軽くなる。
「エレボス、本体の調子はどうですか?」
「はい。良好です」
 エレボスが、微笑む。
「混沌が、さらに減りました。そして、安定しています」
「良かった」
「世界が、少しずつ浄化されています」
 それは、唯一の明るいニュースだ。
「エレボス、ありがとう」
「いえ、こちらこそ」
 エレボスが、深々と頭を下げる。
「主様が、私を救ってくださったから、こうして世界の浄化に貢献できています」
「一緒に、頑張りましょう」
「はい」
 ベッドに入る前、最後にもう一度窓の外を見る。
 星空が、美しい。
 平和な夜だ。
 でも、この平和は、いつまで続くのだろう。
 十年後――
 魔王が復活する。
 その時、また戦う。
 でも、今度は違う。
 前世では、五人のパーティーだった。
 ライオス、セリナ、ベルナルド、リック。
 そして、その仲間たちに裏切られた。
 でも、今は――
 家族がいる。
 モーモーがいる。
 エレボスがいる。
 本当の仲間がいる。
 そう信じたい。
 いや、信じる。
 疑いながらも、信じる努力をする。
 エルヴィンが言った通り。
 その決意を、胸に刻む。
 モーモーから、最後の念話が来る。
「主様、おやすみなさい」
「おやすみ、モーモー」
「明日も、良い日になります」
「うん」
「主様は、強いです。優しいです。前世とは違います。だから、必ず勝てます」
「ありがとう」
 温かい声に包まれて、眠りに落ちる。
 明日も、やることがたくさんある。
 領地を守る。
 民を守る。
 家族を守る。
 そして――
 迫り来る脅威に、備える。
 魔王の復活。
 四天王。
 それらと、いずれ戦うことになる。
 でも、今は――
 この束の間の平和を、大切にする。
 そう思いながら、深い眠りに落ちていく。
第2部 第3章「魔の森の封印」完
第3章まとめ:
魔の森の封印を強化(五百年の猶予)
混沌の獣の正体判明(世界が生み出した影の側面)
エレボス誕生(執事長として活躍)
ヴェルデン王国との戦争(圧倒的勝利、死者ゼロ)
クーデター支援、和平条約締結
捕虜600億で解放
魔王四天王の一人ザイン捕獲
魔王復活まで10年と判明
前世の仲間たち(ライオス、セリナ、ベルナルド、リック)の裏切りを改めて回想
裏切り事件がエルフ族と人間族の関係悪化の原因と判明
エルヴィンの弟子たちが訪れ始め、少しずつ交流が開始
残る三人の四天王(グリード、エンヴィ、ラース)が各国で暗躍中
混沌の浄化成功(世界のバランス回復)

次章予告:第4章「闇ギルドの影」

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