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第2部 第4章「闇ギルドの影」
第55話「闇の組織」
第55話「闇の組織」
子供たちを救出した翌日。
僕は、再び牢でグスタフたちを尋問した。
今度は、より深く。
神眼を使って、記憶を詳しく読む。
グスタフの記憶を辿る。
黒ローブの男との出会いは、半年前だけではなかった。
実は、数ヶ月前からの付き合いだった。
半年前。
グスタフたち三人は、元傭兵だった。
ヴェルデン王国で傭兵をしていたが、仕事が減った。
金に困っていた。
そんな時、酒場で黒ローブの男に声をかけられた。
「良い仕事がある」
最初の仕事は、密輸だった。
違法な魔導具を、国境を越えて運ぶ。
報酬は、金貨十枚。
簡単な仕事だった。
次の仕事は、情報収集。
ある貴族の動向を調べる。
報酬は、金貨二十枚。
徐々に、仕事の内容がエスカレートしていった。
そして、三ヶ月前。
リトヴァル族の子供の誘拐。
最初は、ガス。七歳の男の子。
報酬は、金貨百枚。
次に、ソラン。八歳の女の子。
そして、リンク。六歳の男の子。
そして、ミーナで四人目だった。
記憶を読み進める。
黒ローブの男は、一人ではなかった。
組織があった。
「闇ギルド」
そう呼ばれる、違法組織。
人身売買、暗殺、密輸、情報売買。
様々な違法行為を請け負う。
人間国全土に、ネットワークを持っている。
本部は、王都。
各地に支部がある。
ノイブルク近郊にも、支部があるらしい。
メンバーは、約五十名。
グスタフたちは、下っ端だった。
黒ローブの男は、中堅幹部の一人。
名前は、ヴォルター。
さらに記憶を読む。
リトヴァル族の子供が狙われる理由。
それは、奴隷市場での価値だった。
リトヴァル族は、珍しい種族。
小柄で、器用で、従順。
奴隷として、高値で売れる。
特に、子供は訓練しやすい。
でも、それだけではなかった。
リトヴァル族には、特別な特性があった。
精霊に近い種族。
心が綺麗な者が多い。
そのため、魔法との相性が非常に良い。
身体強化魔法は、人族の何倍も強く発現する。
さらに――
元々、人族より力が強い。
小柄な体格に似合わず、驚くほどの力を持つ。
これらの特性が、リトヴァル族の価値を高めていた。
子供一人あたり、金貨五百枚から千枚で取引される。
四人を売れば、少なくとも金貨二千枚。
大金だ。
そして――
ヴォルターからの新しい指示があった。
一週間前のことだ。
「次は、大人を狙え」
大人のリトヴァル族の誘拐計画。
ヴォルターが、詳しく説明してくれた。
「ノイブルクのリトヴァル族は、特別だ」
「特別…?」
「ああ。日本食文化の製造技術、蒸留酒の製造技術。これらを習得した大人のリトヴァル族は、一人あたり金貨二千枚から三千枚で売れる」
「そんなに…!」
「ああ。だから、大人を狙う」
ヴォルターが、続ける。
「まずは、蒸留酒工房で働く者。名前は、ゲンゾウ。次に、日本食レストランで働く者。サクラという女だ」
「わかった」
「それと、身体強化魔法を使える戦士も狙え。カイト、レイナ、ダイゴの三人だ」
「戦士は…強いだろう?」
グスタフが、不安そうに聞く。
「ああ。リトヴァル族の戦士は、身体強化魔法を使うと非常に強い。正面から戦えば、お前たちでは勝てない」
「では、どうするんだ?」
「薬だ。これを使え」
ヴォルターが、小瓶を三つ渡してくれた。
睡眠薬だ。
「リトヴァル族は、素直で騙されやすい者も多い。信頼させてから、酒や食事に混ぜろ」
「わかった」
「眠らせてから、これを着けろ」
ヴォルターが、金属製の首輪を見せる。
奴隷の首輪だ。
「これを着けられると、もう抵抗できない。命令に逆らうと激痛で動けなくなる。逆らい続けると、脳が壊れる」
「そんな恐ろしいものが…」
「外すには、奴隷解放の魔法が必要だ。この魔法を使える者は、極わずかしかいない。大抵は、奴隷商になるか、奴隷商の元で働いている」
ヴォルターが、不敵に笑う。
「つまり、一度着けられたら、もう逃げられない。完璧な奴隷になる」
計画は、詳細に立てられていた。
まず、ゲンゾウを狙う。
蒸留酒工房の近くで、仕事を手伝うふりをして近づく。
信頼を得てから、一緒に酒を飲む。
その時に、睡眠薬を盛る。
眠ったところで、奴隷の首輪を着ける。
次に、サクラ。
日本食レストランの客として通う。
親しくなってから、食事に睡眠薬を混ぜる。
最後に、戦士三人。
これが、一番難しい。
でも、リトヴァル族は素直だ。
訓練を手伝うふりをして近づく。
訓練後の食事に、睡眠薬を混ぜる。
計画は、来月から実行する予定だった。
でも――
子供四人の誘拐が失敗し、グスタフたちは捕まった。
大人の誘拐計画は、実行されずに終わった。
記憶を読み終えて、僕は目を開ける。
吐き気がする。
人身売買。
子供だけでなく、大人も狙っていた。
しかも、詳細な計画まで立てていた。
許せない。
グスタフが、怯えた目で僕を見る。
「な、何を見た…?」
「全てです」
僕は、冷たく言う。
「闇ギルドのこと。ヴォルターのこと。奴隷市場のこと」
「くっ…」
「そして、大人のリトヴァル族を誘拐する計画も」
グスタフの顔が、青ざめる。
「どうして…それを…」
「あなたの記憶を読みました」
「くそっ…」
「幸い、計画は実行されませんでした。あなたたちが捕まったので」
僕は、牢を出る。
すぐにリトアとヴォルフを呼んだ。
「リトアさん、ヴォルフさん、重要な情報があります」
「はい」
「闇ギルドは、大人のリトヴァル族も狙っていました」
二人が、顔色を変える。
「大人も…?」
「はい。具体的には、ゲンゾウさん、サクラさん、カイトさん、レイナさん、ダイゴさんの五人です」
リトアが、息を呑む。
「その五人は…蒸留酒工房や日本食レストランで働いている者、そして我々の戦士です」
「はい。幸い、まだ誘拐されていません。計画段階でした」
「良かった…」
ヴォルフが、安堵する。
「でも、今後も狙われる可能性があります。五人には、警戒するよう伝えてください」
「わかりました」
執務室に戻ると、父グレンとエルヴィンが待っていた。
「アレン、どうだった?」
「闇ギルドです」
僕は、報告する。
人身売買のネットワーク。
リトヴァル族の子供が標的。
そして、大人も標的にする計画があった。
ノイブルクのリトヴァル族は特に高価値。
ノイブルク支部のメンバーは約五十名。
中堅幹部のヴォルター。
全てを、話す。
父が、深刻な顔をする。
「大人も狙われていたのか…」
「はい。でも、計画段階でした。グスタフたちが捕まったので、実行されませんでした」
エルヴィンが、腕を組む。
「リトヴァル族は、精霊に近い種族だからな」
「精霊に近い…?」
「ああ。リトヴァル族は、心が綺麗な者が多い。そのため、精霊や魔法との相性が非常に良い」
エルヴィンが、説明する。
「身体強化魔法は、人族の何倍も強く発現する。それに、元々人族より力が強い」
「だから、戦士としても価値が高い」
「その通りだ。そして、ノイブルクのリトヴァル族は、さらに技術も持っている」
「人身売買組織にとって、最高の『商品』になる」
僕は、拳を握る。
「許せない」
その午後、再び会議を開いた。
父グレン、エルヴィン、ディートリヒ、コンラート、ヴォルフ、リトア、そしてエレボス。
「グスタフの記憶から得た情報を報告します」
僕は、説明する。
「闇ギルドという違法組織が存在します。本部は王都、ノイブルク支部は約五十名」
全員が、緊張する。
「そして、リトヴァル族の子供だけでなく、大人も狙う計画がありました」
リトアとヴォルフが、緊張する。
「具体的には、ゲンゾウさん、サクラさん、カイトさん、レイナさん、ダイゴさんの五人です」
ヴォルフが、拳を握る。
「我々の仲間が…」
「幸い、まだ誘拐されていません。計画段階でした」
リトアが、安堵する。
「良かった…」
「でも、闇ギルドのメンバーは、まだ約五十名います。今後も狙われる可能性があります」
ディートリヒが言う。
「組織的です。人身売買、暗殺、密輸、情報売買。様々な違法行為を請け負っています」
コンラートが、資料を見ながら言う。
「つまり、子供も大人も、組織的に狙われている、と」
「はい。そして、今後も続く可能性があります」
僕は、リトヴァル族の特性について説明する。
「リトヴァル族は、精霊に近い種族です」
全員が、注目する。
「心が綺麗な者が多く、魔法との相性が非常に良い。身体強化魔法は、人族の何倍も強く発現します」
ヴォルフが、頷く。
「その通りです。我々リトヴァル族は、魔法の才能が高いのです」
「さらに、元々人族より力が強い」
リトアが、付け加える。
「小柄な体格ですが、力は人族の成人男性と同等か、それ以上です」
「これらの特性が、リトヴァル族の価値を高めています」
僕は、続ける。
「そして、ノイブルクのリトヴァル族は、さらに技術も持っている」
コンラートが、資料を見る。
「日本食文化の製造技術、蒸留酒の製造技術。これらを習得した大人のリトヴァル族は、一人あたり金貨二千枚から三千枚で取引されるそうです」
全員が、息を呑む。
「子供は、まだ技術を持っていません。でも、将来的に習得できる可能性がある。そのため、金貨五百枚から千枚で取引される」
僕は、奴隷の首輪についても説明する。
「それと、重要な情報があります。奴隷の首輪というものが存在します」
全員が、注目する。
「これを着けられると、命令に逆らうと激痛で動けなくなります。逆らい続けると、脳が壊れます」
母エレナが、顔色を変える。
「そんな恐ろしいものが…」
「外すには、奴隷解放の魔法が必要です」
エルヴィンが、頷く。
「ああ。この魔法を使える者は、極わずかしかいない」
「大抵は、奴隷商になるか、奴隷商の元で働いている」
僕は、続ける。
「つまり、一度奴隷にされると、解放するのは非常に困難です」
リトアが、震える。
「もし、我々が捕まっていたら…」
「でも、大丈夫です」
僕は、微笑む。
「エルヴィン様も、僕も、奴隷解放の魔法を使えます」
全員が、驚く。
「本当ですか!」
「はい」
エルヴィンが、説明する。
「わしは、元々使える。そして、前世でアレンに教えた」
「魔王を倒した後、多くの奴隷を解放する必要があったからな」
僕は、頷く。
「はい。覚えています」
ヴォルフが、安堵する。
「ならば、もし誰かが捕まっても、解放できる…」
「はい。ただし、捕まる前に防ぐのが一番です」
父グレンが言う。
「では、どうする? 五十名の闇ギルドメンバーを、全員捕らえるのか?」
「はい」
僕は、頷く。
「でも、一度に五十名は無理です。計画的に動きます」
「どうするつもりだ?」
「まず、ヴォルターを捕らえます」
僕は、説明する。
「グスタフたちは、明日ヴォルターに四人の子供を引き渡す予定でした」
「つまり、ヴォルターが来る」
「はい。その時に、待ち伏せします」
ディートリヒが、頷く。
「なるほど。ヴォルターを捕らえれば、さらに情報が得られる」
「その通りです」
エルヴィンが言う。
「だが、ヴォルターは中堅幹部だ。それなりの実力者だろう」
「はい。でも、エレボスがいます」
エレボスが、頷く。
「私の体は、半神級です。人間の中堅幹部程度なら、問題ありません」
「それに、僕も戦えます」
僕は、続ける。
「ヴォルターを生け捕りにして、尋問します。そこから、他のメンバーの情報を得ます」
コンラートが言う。
「一人ずつ、確実に捕らえていく、と」
「はい。時間はかかりますが、確実です」
父グレンが、作戦を確認する。
「では、明日の夜、ヴォルターを捕らえる。場所は?」
「南の森、廃屋です。グスタフたちが子供四人を引き渡す予定だった場所」
「わかった。兵力は?」
「僕とエレボス、そしてディートリヒさんの騎士十名、ヴォルフさんのリトヴァル族戦士十名」
ディートリヒが、頷く。
「了解しました」
ヴォルフも、頷く。
「我々も、全力で協力します」
翌日の夜。
僕たちは、南の森の廃屋に向かった。
月明かりが、薄暗い道を照らしている。
静かな夜だ。
廃屋に到着する。
ディートリヒたちが、すでに配置についている。
ヴォルフたちも、周辺を警戒している。
僕とエレボスは、廃屋の中に入る。
暗い。
僕は、暗視魔法を使う。
廃屋の中が、はっきり見える。
エレボスと共に、隅に隠れる。
そして、待つ。
一時間ほど待った頃。
エレボスが、囁く。
「来ました」
「何人?」
「一人です。おそらく、ヴォルター」
足音が聞こえる。
廃屋の扉が、開く。
黒いローブを着た男が、入ってくる。
フードを深く被っている。
顔は見えない。
ヴォルターだ。
ヴォルターが、周囲を見回す。
「…誰もいないな」
低い声だ。
ヴォルターが、中央に立つ。
「グスタフ、どこだ?」
返事はない。
ヴォルターが、不審に思う。
「おかしいな…」
その時――
エレボスが、動く。
一瞬で、ヴォルターの背後に回る。
そして、首を掴む。
「動くな」
ヴォルターが、驚く。
「な、何だ!」
抵抗しようとする。
でも、エレボスの力には敵わない。
「魔法を使えば、首を折ります」
エレボスの声が、冷たい。
ヴォルターが、動きを止める。
僕は、前に出る。
光魔法で、廃屋の中を照らす。
ヴォルターの顔が、見える。
四十代の男。
鋭い目つき。
傷だらけの顔。
歴戦の戦士だ。
「あなたが、ヴォルターですね」
ヴォルターが、僕を見る。
「貴様…誰だ…」
「アレン・フォン・ノイシュテルンです。この領地の領主です」
ヴォルターの目が、見開かれる。
「領主…まさか、子供が…」
「はい。子供です」
僕は、冷静に言う。
「あなたを、逮捕します。人身売買、誘拐未遂、その他多数の罪で」
「くっ…」
ヴォルターが、悔しそうに唸る。
ディートリヒたちが、廃屋に入ってくる。
「アレン様、捕らえましたか!」
「はい。連行してください」
「了解しました!」
ヴォルターに、縄をかける。
そして、牢に連行する。
牢で、ヴォルターを尋問する。
でも、ヴォルターは黙っている。
「何も話しません」
「そうですか」
僕は、神眼を発動する。
ヴォルターの記憶を、読む。
強い抵抗がある。
さすが、中堅幹部。
でも――
僕の魔力の方が、圧倒的に上だ。
防御を、突破する。
ヴォルターの記憶が、流れ込んでくる。
闇ギルドの組織図。
本部は、王都にある。
ボスの名前は、ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。
元子爵。
内戦で領地を失った。
復讐のために、闇ギルドを作った。
幹部は、五名。
支部は、人間国全土に十箇所。
ノイブルク支部のメンバーは、五十三名。
ヴォルターは、ノイブルク支部の責任者。
そして――
奴隷市場の詳細。
王都の地下に、違法奴隷市場がある。
リトヴァル族は、特に人気が高い。
理由は、精霊に近い種族という特性。
魔法の才能が高く、力も強い。
そして、ノイブルクのリトヴァル族は、技術も持っている。
技術を習得した大人は、金貨二千枚から三千枚。
子供は、将来性を見込んで、金貨五百枚から千枚。
そして――
重要な情報。
闇ギルドは、魔王軍の残党と繋がっていた。
正確には――
魔王軍の残党が、闇ギルドを利用していた。
資金源として。
情報網として。
そして――
人身売買で得た金を、魔王復活の準備に使っていた。
魔王が復活すれば、世界を支配する。
魔族以外の全種族を、奴隷にする。
その準備として、人身売買のネットワークを構築していた。
奴隷の首輪も、魔王軍の技術だった。
魔王復活後、全種族を奴隷にするための道具。
それを、今から準備している。
記憶を読み終えて、僕は目を開ける。
ヴォルターが、荒い息をしている。
「貴様…俺の記憶を…」
「読ませてもらいました」
僕は、冷たく言う。
「闇ギルドと魔王軍が、繋がっていますね」
「…」
「人身売買で得た金を、魔王復活の準備に使っている」
ヴォルターが、黙る。
「なぜ、協力しているんですか?」
「…金だ」
ヴォルターが、吐き捨てるように言う。
「魔王軍の残党は、金払いが良い。それだけだ」
「魔王が復活したら、どうなるか考えましたか?」
「知ったことか」
ヴォルターが、冷たく言う。
「俺は、金が欲しいだけだ。魔王だろうが何だろうが、関係ねえ」
「魔王は、世界を支配します。魔族以外は、全て奴隷になります」
「だから何だ」
ヴォルターが、嘲笑する。
「その頃には、俺は金持ちになって、どこかで優雅に暮らしてる。関係ねえ」
僕は、拳を握る。
この男には、罪悪感がない。
魔王が復活すれば、世界が支配される。
魔族以外は、全て奴隷になる。
その恐ろしさを、理解していない。
いや――
理解していても、気にしていない。
目先の金だけが、目的だ。
翌朝。
父グレンに報告する。
「闇ギルドの全貌がわかりました」
「本当か」
「はい。ボスの名前も、組織図も」
僕は、詳しく説明する。
ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。
元子爵。
内戦で領地を失い、復讐のために闇ギルドを作った。
そして――
魔王軍の残党との繋がり。
人身売買で得た金を、魔王復活の準備に使っている。
魔王が復活すれば、世界を支配し、魔族以外を全て奴隷にする。
父が、深刻な顔をする。
「ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ…聞いたことがある名前だ」
「え?」
「内戦の時、王政派の貴族だった。でも、内戦で領地を失い、没落した」
父が、続ける。
「復讐に燃えていると、噂では聞いていたが…まさか、闇ギルドを作っていたとは」
「そして、魔王軍の残党と繋がっている」
「それは…厄介だ」
エルヴィンが、腕を組む。
「魔王軍の残党が、闇ギルドを資金源と情報網として使っている」
「はい」
「つまり、闇ギルドを潰せば、魔王軍の資金源を断てる、と」
「その通りです」
会議を開く。
全員が集まる。
「闇ギルドと魔王軍の繋がりが判明しました」
僕は、説明する。
全員が、緊張する。
そして――
魔王の目的も伝える。
「魔王は、世界を支配することを目的としています。魔族以外の全種族を、奴隷にします」
全員が、息を呑む。
「つまり、人族だけの問題ではありません。エルフ族、ドワーフ族、獣人族、リトヴァル族、全ての種族が危機に瀕しています」
コンラートが言う。
「つまり、闇ギルドを潰すことは、魔王復活を遅らせることにも繋がる」
「はい」
ディートリヒが、拳を握る。
「ならば、絶対に潰さなければなりません」
「でも、本部は王都だ」
父グレンが言う。
「簡単には手が出せない」
「まず、ノイブルク支部を完全に壊滅させます」
僕は、決意を込めて言う。
「五十三名、全員を捕らえます」
「どうやって?」
「ヴォルターの記憶から、メンバーの顔と名前がわかりました」
僕は、説明する。
「エレボスの悪意察知と、僕の神眼を使って、一人ずつ確実に捕らえます」
「時間がかかるぞ」
「はい。でも、確実です」
その日から、闇ギルド狩りが始まった。
エレボスが、街中で悪意を感じ取る。
僕が、神眼で確認する。
闇ギルドのメンバーかどうか。
確認できたら、捕らえる。
一日に、二、三名ずつ。
最初は、下っ端から。
市場で商売をしているふりをしている男。
捕らえる。
酒場で情報を集めている男。
捕らえる。
宿屋で働いているふりをしている女。
捕らえる。
一週間で、十五名を捕らえた。
闇ギルドも、気づき始める。
メンバーが次々と消えている。
警戒を強める。
でも――
エレボスの悪意察知は、逃げ隠れしても無駄だ。
確実に、見つけ出す。
二週間目。
闇ギルドのメンバーたちが、隠れ始めた。
街中に出なくなった。
でも、エレボスが見つける。
「あの家の地下に、悪意があります」
突入する。
三名を捕らえる。
「森の中に、隠れ家があります」
突入する。
五名を捕らえる。
二週間で、三十名を捕らえた。
残りは、二十三名。
そして――
ある夜、重要な情報が手に入った。
捕らえた中堅メンバーの一人――名前はカールという――を尋問した時。
神眼で記憶を読むと、驚くべき事実が判明した。
闇ギルドのメンバーの中に、魔王軍の残党が直接潜入していた。
名前は、わからない。
でも、黒いローブを着た男。
ザインと同じローブ。
その男が、ノイブルク支部に時々来ていた。
ヴォルターに指示を出していた。
そして――
その男は、魔族だった。
人間に変装していたが、カールは一度、その正体を見てしまった。
角がある。
魔族の証だ。
僕は、すぐに報告した。
「魔族が、直接潜入しています」
全員が、緊張する。
「魔族…」
エルヴィンが、深刻な顔をする。
「魔王軍の残党だ。おそらく、四天王の配下」
「はい」
「危険だな」
父グレンが、腕を組む。
「魔族は、人間より強い。しかも、魔王の配下だった者なら、さらに強い可能性がある」
「でも、倒さなければなりません」
僕は、決意を込めて言う。
「その魔族を捕らえて、尋問します。そこから、四天王の情報を得ます」
三週間目。
残る二十三名の中から、さらに十名を捕らえた。
残りは、十三名。
そして――
エレボスが、強い悪意を感じ取った。
「アレン様、これは…普通の人間ではありません」
「魔族ですか?」
「おそらく」
エレボスが、緊張する。
「とても強い悪意です。そして…魔力も強い」
「どこですか?」
「街の北、森の中です」
「行きましょう」
森の中に入る。
エレボスが、先導する。
しばらく進むと――
開けた場所に出る。
そこに、黒いローブの男が立っていた。
フードを被っている。
でも、フードの下から、角が見える。
魔族だ。
「よく来たな、人間」
低い声だ。
「お前が、アレン・フォン・ノイシュテルンか」
「そうです」
僕は、冷静に答える。
「あなたは、誰ですか?」
「名乗る必要はない」
魔族が、フードを取る。
若い男の顔。
でも、目が冷たい。
そして、頭に角がある。
間違いない、魔族だ。
「闇ギルドを、潰しているそうだな」
「はい」
「邪魔だ」
魔族が、魔力を放出する。
強い。
B+ランクくらいか。
「エレボス、僕が戦います。あなたは、援護を」
「了解しました」
僕は、魔力を集中する。
戦いが、始まる。
次回:第56話「父の秘密」
子供たちを救出した翌日。
僕は、再び牢でグスタフたちを尋問した。
今度は、より深く。
神眼を使って、記憶を詳しく読む。
グスタフの記憶を辿る。
黒ローブの男との出会いは、半年前だけではなかった。
実は、数ヶ月前からの付き合いだった。
半年前。
グスタフたち三人は、元傭兵だった。
ヴェルデン王国で傭兵をしていたが、仕事が減った。
金に困っていた。
そんな時、酒場で黒ローブの男に声をかけられた。
「良い仕事がある」
最初の仕事は、密輸だった。
違法な魔導具を、国境を越えて運ぶ。
報酬は、金貨十枚。
簡単な仕事だった。
次の仕事は、情報収集。
ある貴族の動向を調べる。
報酬は、金貨二十枚。
徐々に、仕事の内容がエスカレートしていった。
そして、三ヶ月前。
リトヴァル族の子供の誘拐。
最初は、ガス。七歳の男の子。
報酬は、金貨百枚。
次に、ソラン。八歳の女の子。
そして、リンク。六歳の男の子。
そして、ミーナで四人目だった。
記憶を読み進める。
黒ローブの男は、一人ではなかった。
組織があった。
「闇ギルド」
そう呼ばれる、違法組織。
人身売買、暗殺、密輸、情報売買。
様々な違法行為を請け負う。
人間国全土に、ネットワークを持っている。
本部は、王都。
各地に支部がある。
ノイブルク近郊にも、支部があるらしい。
メンバーは、約五十名。
グスタフたちは、下っ端だった。
黒ローブの男は、中堅幹部の一人。
名前は、ヴォルター。
さらに記憶を読む。
リトヴァル族の子供が狙われる理由。
それは、奴隷市場での価値だった。
リトヴァル族は、珍しい種族。
小柄で、器用で、従順。
奴隷として、高値で売れる。
特に、子供は訓練しやすい。
でも、それだけではなかった。
リトヴァル族には、特別な特性があった。
精霊に近い種族。
心が綺麗な者が多い。
そのため、魔法との相性が非常に良い。
身体強化魔法は、人族の何倍も強く発現する。
さらに――
元々、人族より力が強い。
小柄な体格に似合わず、驚くほどの力を持つ。
これらの特性が、リトヴァル族の価値を高めていた。
子供一人あたり、金貨五百枚から千枚で取引される。
四人を売れば、少なくとも金貨二千枚。
大金だ。
そして――
ヴォルターからの新しい指示があった。
一週間前のことだ。
「次は、大人を狙え」
大人のリトヴァル族の誘拐計画。
ヴォルターが、詳しく説明してくれた。
「ノイブルクのリトヴァル族は、特別だ」
「特別…?」
「ああ。日本食文化の製造技術、蒸留酒の製造技術。これらを習得した大人のリトヴァル族は、一人あたり金貨二千枚から三千枚で売れる」
「そんなに…!」
「ああ。だから、大人を狙う」
ヴォルターが、続ける。
「まずは、蒸留酒工房で働く者。名前は、ゲンゾウ。次に、日本食レストランで働く者。サクラという女だ」
「わかった」
「それと、身体強化魔法を使える戦士も狙え。カイト、レイナ、ダイゴの三人だ」
「戦士は…強いだろう?」
グスタフが、不安そうに聞く。
「ああ。リトヴァル族の戦士は、身体強化魔法を使うと非常に強い。正面から戦えば、お前たちでは勝てない」
「では、どうするんだ?」
「薬だ。これを使え」
ヴォルターが、小瓶を三つ渡してくれた。
睡眠薬だ。
「リトヴァル族は、素直で騙されやすい者も多い。信頼させてから、酒や食事に混ぜろ」
「わかった」
「眠らせてから、これを着けろ」
ヴォルターが、金属製の首輪を見せる。
奴隷の首輪だ。
「これを着けられると、もう抵抗できない。命令に逆らうと激痛で動けなくなる。逆らい続けると、脳が壊れる」
「そんな恐ろしいものが…」
「外すには、奴隷解放の魔法が必要だ。この魔法を使える者は、極わずかしかいない。大抵は、奴隷商になるか、奴隷商の元で働いている」
ヴォルターが、不敵に笑う。
「つまり、一度着けられたら、もう逃げられない。完璧な奴隷になる」
計画は、詳細に立てられていた。
まず、ゲンゾウを狙う。
蒸留酒工房の近くで、仕事を手伝うふりをして近づく。
信頼を得てから、一緒に酒を飲む。
その時に、睡眠薬を盛る。
眠ったところで、奴隷の首輪を着ける。
次に、サクラ。
日本食レストランの客として通う。
親しくなってから、食事に睡眠薬を混ぜる。
最後に、戦士三人。
これが、一番難しい。
でも、リトヴァル族は素直だ。
訓練を手伝うふりをして近づく。
訓練後の食事に、睡眠薬を混ぜる。
計画は、来月から実行する予定だった。
でも――
子供四人の誘拐が失敗し、グスタフたちは捕まった。
大人の誘拐計画は、実行されずに終わった。
記憶を読み終えて、僕は目を開ける。
吐き気がする。
人身売買。
子供だけでなく、大人も狙っていた。
しかも、詳細な計画まで立てていた。
許せない。
グスタフが、怯えた目で僕を見る。
「な、何を見た…?」
「全てです」
僕は、冷たく言う。
「闇ギルドのこと。ヴォルターのこと。奴隷市場のこと」
「くっ…」
「そして、大人のリトヴァル族を誘拐する計画も」
グスタフの顔が、青ざめる。
「どうして…それを…」
「あなたの記憶を読みました」
「くそっ…」
「幸い、計画は実行されませんでした。あなたたちが捕まったので」
僕は、牢を出る。
すぐにリトアとヴォルフを呼んだ。
「リトアさん、ヴォルフさん、重要な情報があります」
「はい」
「闇ギルドは、大人のリトヴァル族も狙っていました」
二人が、顔色を変える。
「大人も…?」
「はい。具体的には、ゲンゾウさん、サクラさん、カイトさん、レイナさん、ダイゴさんの五人です」
リトアが、息を呑む。
「その五人は…蒸留酒工房や日本食レストランで働いている者、そして我々の戦士です」
「はい。幸い、まだ誘拐されていません。計画段階でした」
「良かった…」
ヴォルフが、安堵する。
「でも、今後も狙われる可能性があります。五人には、警戒するよう伝えてください」
「わかりました」
執務室に戻ると、父グレンとエルヴィンが待っていた。
「アレン、どうだった?」
「闇ギルドです」
僕は、報告する。
人身売買のネットワーク。
リトヴァル族の子供が標的。
そして、大人も標的にする計画があった。
ノイブルクのリトヴァル族は特に高価値。
ノイブルク支部のメンバーは約五十名。
中堅幹部のヴォルター。
全てを、話す。
父が、深刻な顔をする。
「大人も狙われていたのか…」
「はい。でも、計画段階でした。グスタフたちが捕まったので、実行されませんでした」
エルヴィンが、腕を組む。
「リトヴァル族は、精霊に近い種族だからな」
「精霊に近い…?」
「ああ。リトヴァル族は、心が綺麗な者が多い。そのため、精霊や魔法との相性が非常に良い」
エルヴィンが、説明する。
「身体強化魔法は、人族の何倍も強く発現する。それに、元々人族より力が強い」
「だから、戦士としても価値が高い」
「その通りだ。そして、ノイブルクのリトヴァル族は、さらに技術も持っている」
「人身売買組織にとって、最高の『商品』になる」
僕は、拳を握る。
「許せない」
その午後、再び会議を開いた。
父グレン、エルヴィン、ディートリヒ、コンラート、ヴォルフ、リトア、そしてエレボス。
「グスタフの記憶から得た情報を報告します」
僕は、説明する。
「闇ギルドという違法組織が存在します。本部は王都、ノイブルク支部は約五十名」
全員が、緊張する。
「そして、リトヴァル族の子供だけでなく、大人も狙う計画がありました」
リトアとヴォルフが、緊張する。
「具体的には、ゲンゾウさん、サクラさん、カイトさん、レイナさん、ダイゴさんの五人です」
ヴォルフが、拳を握る。
「我々の仲間が…」
「幸い、まだ誘拐されていません。計画段階でした」
リトアが、安堵する。
「良かった…」
「でも、闇ギルドのメンバーは、まだ約五十名います。今後も狙われる可能性があります」
ディートリヒが言う。
「組織的です。人身売買、暗殺、密輸、情報売買。様々な違法行為を請け負っています」
コンラートが、資料を見ながら言う。
「つまり、子供も大人も、組織的に狙われている、と」
「はい。そして、今後も続く可能性があります」
僕は、リトヴァル族の特性について説明する。
「リトヴァル族は、精霊に近い種族です」
全員が、注目する。
「心が綺麗な者が多く、魔法との相性が非常に良い。身体強化魔法は、人族の何倍も強く発現します」
ヴォルフが、頷く。
「その通りです。我々リトヴァル族は、魔法の才能が高いのです」
「さらに、元々人族より力が強い」
リトアが、付け加える。
「小柄な体格ですが、力は人族の成人男性と同等か、それ以上です」
「これらの特性が、リトヴァル族の価値を高めています」
僕は、続ける。
「そして、ノイブルクのリトヴァル族は、さらに技術も持っている」
コンラートが、資料を見る。
「日本食文化の製造技術、蒸留酒の製造技術。これらを習得した大人のリトヴァル族は、一人あたり金貨二千枚から三千枚で取引されるそうです」
全員が、息を呑む。
「子供は、まだ技術を持っていません。でも、将来的に習得できる可能性がある。そのため、金貨五百枚から千枚で取引される」
僕は、奴隷の首輪についても説明する。
「それと、重要な情報があります。奴隷の首輪というものが存在します」
全員が、注目する。
「これを着けられると、命令に逆らうと激痛で動けなくなります。逆らい続けると、脳が壊れます」
母エレナが、顔色を変える。
「そんな恐ろしいものが…」
「外すには、奴隷解放の魔法が必要です」
エルヴィンが、頷く。
「ああ。この魔法を使える者は、極わずかしかいない」
「大抵は、奴隷商になるか、奴隷商の元で働いている」
僕は、続ける。
「つまり、一度奴隷にされると、解放するのは非常に困難です」
リトアが、震える。
「もし、我々が捕まっていたら…」
「でも、大丈夫です」
僕は、微笑む。
「エルヴィン様も、僕も、奴隷解放の魔法を使えます」
全員が、驚く。
「本当ですか!」
「はい」
エルヴィンが、説明する。
「わしは、元々使える。そして、前世でアレンに教えた」
「魔王を倒した後、多くの奴隷を解放する必要があったからな」
僕は、頷く。
「はい。覚えています」
ヴォルフが、安堵する。
「ならば、もし誰かが捕まっても、解放できる…」
「はい。ただし、捕まる前に防ぐのが一番です」
父グレンが言う。
「では、どうする? 五十名の闇ギルドメンバーを、全員捕らえるのか?」
「はい」
僕は、頷く。
「でも、一度に五十名は無理です。計画的に動きます」
「どうするつもりだ?」
「まず、ヴォルターを捕らえます」
僕は、説明する。
「グスタフたちは、明日ヴォルターに四人の子供を引き渡す予定でした」
「つまり、ヴォルターが来る」
「はい。その時に、待ち伏せします」
ディートリヒが、頷く。
「なるほど。ヴォルターを捕らえれば、さらに情報が得られる」
「その通りです」
エルヴィンが言う。
「だが、ヴォルターは中堅幹部だ。それなりの実力者だろう」
「はい。でも、エレボスがいます」
エレボスが、頷く。
「私の体は、半神級です。人間の中堅幹部程度なら、問題ありません」
「それに、僕も戦えます」
僕は、続ける。
「ヴォルターを生け捕りにして、尋問します。そこから、他のメンバーの情報を得ます」
コンラートが言う。
「一人ずつ、確実に捕らえていく、と」
「はい。時間はかかりますが、確実です」
父グレンが、作戦を確認する。
「では、明日の夜、ヴォルターを捕らえる。場所は?」
「南の森、廃屋です。グスタフたちが子供四人を引き渡す予定だった場所」
「わかった。兵力は?」
「僕とエレボス、そしてディートリヒさんの騎士十名、ヴォルフさんのリトヴァル族戦士十名」
ディートリヒが、頷く。
「了解しました」
ヴォルフも、頷く。
「我々も、全力で協力します」
翌日の夜。
僕たちは、南の森の廃屋に向かった。
月明かりが、薄暗い道を照らしている。
静かな夜だ。
廃屋に到着する。
ディートリヒたちが、すでに配置についている。
ヴォルフたちも、周辺を警戒している。
僕とエレボスは、廃屋の中に入る。
暗い。
僕は、暗視魔法を使う。
廃屋の中が、はっきり見える。
エレボスと共に、隅に隠れる。
そして、待つ。
一時間ほど待った頃。
エレボスが、囁く。
「来ました」
「何人?」
「一人です。おそらく、ヴォルター」
足音が聞こえる。
廃屋の扉が、開く。
黒いローブを着た男が、入ってくる。
フードを深く被っている。
顔は見えない。
ヴォルターだ。
ヴォルターが、周囲を見回す。
「…誰もいないな」
低い声だ。
ヴォルターが、中央に立つ。
「グスタフ、どこだ?」
返事はない。
ヴォルターが、不審に思う。
「おかしいな…」
その時――
エレボスが、動く。
一瞬で、ヴォルターの背後に回る。
そして、首を掴む。
「動くな」
ヴォルターが、驚く。
「な、何だ!」
抵抗しようとする。
でも、エレボスの力には敵わない。
「魔法を使えば、首を折ります」
エレボスの声が、冷たい。
ヴォルターが、動きを止める。
僕は、前に出る。
光魔法で、廃屋の中を照らす。
ヴォルターの顔が、見える。
四十代の男。
鋭い目つき。
傷だらけの顔。
歴戦の戦士だ。
「あなたが、ヴォルターですね」
ヴォルターが、僕を見る。
「貴様…誰だ…」
「アレン・フォン・ノイシュテルンです。この領地の領主です」
ヴォルターの目が、見開かれる。
「領主…まさか、子供が…」
「はい。子供です」
僕は、冷静に言う。
「あなたを、逮捕します。人身売買、誘拐未遂、その他多数の罪で」
「くっ…」
ヴォルターが、悔しそうに唸る。
ディートリヒたちが、廃屋に入ってくる。
「アレン様、捕らえましたか!」
「はい。連行してください」
「了解しました!」
ヴォルターに、縄をかける。
そして、牢に連行する。
牢で、ヴォルターを尋問する。
でも、ヴォルターは黙っている。
「何も話しません」
「そうですか」
僕は、神眼を発動する。
ヴォルターの記憶を、読む。
強い抵抗がある。
さすが、中堅幹部。
でも――
僕の魔力の方が、圧倒的に上だ。
防御を、突破する。
ヴォルターの記憶が、流れ込んでくる。
闇ギルドの組織図。
本部は、王都にある。
ボスの名前は、ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。
元子爵。
内戦で領地を失った。
復讐のために、闇ギルドを作った。
幹部は、五名。
支部は、人間国全土に十箇所。
ノイブルク支部のメンバーは、五十三名。
ヴォルターは、ノイブルク支部の責任者。
そして――
奴隷市場の詳細。
王都の地下に、違法奴隷市場がある。
リトヴァル族は、特に人気が高い。
理由は、精霊に近い種族という特性。
魔法の才能が高く、力も強い。
そして、ノイブルクのリトヴァル族は、技術も持っている。
技術を習得した大人は、金貨二千枚から三千枚。
子供は、将来性を見込んで、金貨五百枚から千枚。
そして――
重要な情報。
闇ギルドは、魔王軍の残党と繋がっていた。
正確には――
魔王軍の残党が、闇ギルドを利用していた。
資金源として。
情報網として。
そして――
人身売買で得た金を、魔王復活の準備に使っていた。
魔王が復活すれば、世界を支配する。
魔族以外の全種族を、奴隷にする。
その準備として、人身売買のネットワークを構築していた。
奴隷の首輪も、魔王軍の技術だった。
魔王復活後、全種族を奴隷にするための道具。
それを、今から準備している。
記憶を読み終えて、僕は目を開ける。
ヴォルターが、荒い息をしている。
「貴様…俺の記憶を…」
「読ませてもらいました」
僕は、冷たく言う。
「闇ギルドと魔王軍が、繋がっていますね」
「…」
「人身売買で得た金を、魔王復活の準備に使っている」
ヴォルターが、黙る。
「なぜ、協力しているんですか?」
「…金だ」
ヴォルターが、吐き捨てるように言う。
「魔王軍の残党は、金払いが良い。それだけだ」
「魔王が復活したら、どうなるか考えましたか?」
「知ったことか」
ヴォルターが、冷たく言う。
「俺は、金が欲しいだけだ。魔王だろうが何だろうが、関係ねえ」
「魔王は、世界を支配します。魔族以外は、全て奴隷になります」
「だから何だ」
ヴォルターが、嘲笑する。
「その頃には、俺は金持ちになって、どこかで優雅に暮らしてる。関係ねえ」
僕は、拳を握る。
この男には、罪悪感がない。
魔王が復活すれば、世界が支配される。
魔族以外は、全て奴隷になる。
その恐ろしさを、理解していない。
いや――
理解していても、気にしていない。
目先の金だけが、目的だ。
翌朝。
父グレンに報告する。
「闇ギルドの全貌がわかりました」
「本当か」
「はい。ボスの名前も、組織図も」
僕は、詳しく説明する。
ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。
元子爵。
内戦で領地を失い、復讐のために闇ギルドを作った。
そして――
魔王軍の残党との繋がり。
人身売買で得た金を、魔王復活の準備に使っている。
魔王が復活すれば、世界を支配し、魔族以外を全て奴隷にする。
父が、深刻な顔をする。
「ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ…聞いたことがある名前だ」
「え?」
「内戦の時、王政派の貴族だった。でも、内戦で領地を失い、没落した」
父が、続ける。
「復讐に燃えていると、噂では聞いていたが…まさか、闇ギルドを作っていたとは」
「そして、魔王軍の残党と繋がっている」
「それは…厄介だ」
エルヴィンが、腕を組む。
「魔王軍の残党が、闇ギルドを資金源と情報網として使っている」
「はい」
「つまり、闇ギルドを潰せば、魔王軍の資金源を断てる、と」
「その通りです」
会議を開く。
全員が集まる。
「闇ギルドと魔王軍の繋がりが判明しました」
僕は、説明する。
全員が、緊張する。
そして――
魔王の目的も伝える。
「魔王は、世界を支配することを目的としています。魔族以外の全種族を、奴隷にします」
全員が、息を呑む。
「つまり、人族だけの問題ではありません。エルフ族、ドワーフ族、獣人族、リトヴァル族、全ての種族が危機に瀕しています」
コンラートが言う。
「つまり、闇ギルドを潰すことは、魔王復活を遅らせることにも繋がる」
「はい」
ディートリヒが、拳を握る。
「ならば、絶対に潰さなければなりません」
「でも、本部は王都だ」
父グレンが言う。
「簡単には手が出せない」
「まず、ノイブルク支部を完全に壊滅させます」
僕は、決意を込めて言う。
「五十三名、全員を捕らえます」
「どうやって?」
「ヴォルターの記憶から、メンバーの顔と名前がわかりました」
僕は、説明する。
「エレボスの悪意察知と、僕の神眼を使って、一人ずつ確実に捕らえます」
「時間がかかるぞ」
「はい。でも、確実です」
その日から、闇ギルド狩りが始まった。
エレボスが、街中で悪意を感じ取る。
僕が、神眼で確認する。
闇ギルドのメンバーかどうか。
確認できたら、捕らえる。
一日に、二、三名ずつ。
最初は、下っ端から。
市場で商売をしているふりをしている男。
捕らえる。
酒場で情報を集めている男。
捕らえる。
宿屋で働いているふりをしている女。
捕らえる。
一週間で、十五名を捕らえた。
闇ギルドも、気づき始める。
メンバーが次々と消えている。
警戒を強める。
でも――
エレボスの悪意察知は、逃げ隠れしても無駄だ。
確実に、見つけ出す。
二週間目。
闇ギルドのメンバーたちが、隠れ始めた。
街中に出なくなった。
でも、エレボスが見つける。
「あの家の地下に、悪意があります」
突入する。
三名を捕らえる。
「森の中に、隠れ家があります」
突入する。
五名を捕らえる。
二週間で、三十名を捕らえた。
残りは、二十三名。
そして――
ある夜、重要な情報が手に入った。
捕らえた中堅メンバーの一人――名前はカールという――を尋問した時。
神眼で記憶を読むと、驚くべき事実が判明した。
闇ギルドのメンバーの中に、魔王軍の残党が直接潜入していた。
名前は、わからない。
でも、黒いローブを着た男。
ザインと同じローブ。
その男が、ノイブルク支部に時々来ていた。
ヴォルターに指示を出していた。
そして――
その男は、魔族だった。
人間に変装していたが、カールは一度、その正体を見てしまった。
角がある。
魔族の証だ。
僕は、すぐに報告した。
「魔族が、直接潜入しています」
全員が、緊張する。
「魔族…」
エルヴィンが、深刻な顔をする。
「魔王軍の残党だ。おそらく、四天王の配下」
「はい」
「危険だな」
父グレンが、腕を組む。
「魔族は、人間より強い。しかも、魔王の配下だった者なら、さらに強い可能性がある」
「でも、倒さなければなりません」
僕は、決意を込めて言う。
「その魔族を捕らえて、尋問します。そこから、四天王の情報を得ます」
三週間目。
残る二十三名の中から、さらに十名を捕らえた。
残りは、十三名。
そして――
エレボスが、強い悪意を感じ取った。
「アレン様、これは…普通の人間ではありません」
「魔族ですか?」
「おそらく」
エレボスが、緊張する。
「とても強い悪意です。そして…魔力も強い」
「どこですか?」
「街の北、森の中です」
「行きましょう」
森の中に入る。
エレボスが、先導する。
しばらく進むと――
開けた場所に出る。
そこに、黒いローブの男が立っていた。
フードを被っている。
でも、フードの下から、角が見える。
魔族だ。
「よく来たな、人間」
低い声だ。
「お前が、アレン・フォン・ノイシュテルンか」
「そうです」
僕は、冷静に答える。
「あなたは、誰ですか?」
「名乗る必要はない」
魔族が、フードを取る。
若い男の顔。
でも、目が冷たい。
そして、頭に角がある。
間違いない、魔族だ。
「闇ギルドを、潰しているそうだな」
「はい」
「邪魔だ」
魔族が、魔力を放出する。
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