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第2部 第4章「闇ギルドの影」
第56話「父の秘密」
第56話「父の秘密」
魔族が、魔力を放出する。
強い圧力だ。
B+ランク。
でも――
僕の方が、上だ。
「エレボス、援護をお願いします」
「了解しました」
エレボスが、距離を取る。
僕は、魔力を集中する。
魔族が、攻撃してくる。
「闇の槍!」
黒い槍が、飛んでくる。
僕は、結界で防ぐ。
槍が、結界に当たって消える。
「ほう…子供のくせに、やるな」
魔族が、不敵に笑う。
「だが、所詮は人間だ」
魔族が、さらに魔力を高める。
でも――
僕は、冷静だ。
前世で、魔族とは何度も戦った。
その経験がある。
「光の剣」
僕は、光属性の魔法剣を生成する。
魔族に対しては、光属性が有効だ。
「光属性か…面倒な」
魔族が、警戒する。
僕は、一気に距離を詰める。
身体強化魔法で加速。
魔族が、驚く。
「速い…!」
僕の剣が、魔族の腕を切る。
浅い傷だが、確実にダメージを与えた。
「くっ…!」
魔族が、後退する。
そして、闇の魔法を連射してくる。
でも、僕は全て避ける。
あるいは、結界で防ぐ。
そして――
反撃する。
「光の矢」
光の矢が、魔族の肩に刺さる。
「ぐあっ…!」
魔族が、膝をつく。
僕は、すぐに拘束魔法を使う。
光の鎖が、魔族を縛る。
「動くな」
魔族が、抵抗しようとする。
でも、光属性の鎖は、魔族には効果的だ。
簡単には解けない。
「くそっ…子供のくせに…こんな力が…」
魔族が、悔しそうに唸る。
エレボスが、近づく。
「アレン様、見事です」
「ありがとう、エレボス」
僕は、魔族を見る。
「あなたに聞きたいことがあります」
「…何も話さん」
「そうですか」
僕は、神眼を発動する。
魔族の記憶を、読む。
強い抵抗がある。
でも――
光の鎖で拘束されている今なら、突破できる。
魔族の記憶が、流れ込んでくる。
魔族の名前は、ゲルハルト。
魔王軍の残党。
四天王グリードの配下だった。
魔王が倒された後、生き延びた。
そして、四天王たちの計画に従って動いている。
ゲルハルトの役目は、人間国での工作活動。
闇ギルドとの連絡役。
魔王軍からの資金を提供する。
そして、大局的な指示を出す。
人身売買で得た金を、魔王復活の準備に使う。
そして――
重要な情報。
ゲルハルトは、ある暗殺事件に関わっていた。
開戦前夜、六名の国王派貴族が暗殺された事件。
その中の一人が、フランツ・フォン・ハルトマン。
父グレン伯爵の親友だった。
記憶を詳しく読む。
開戦前夜。
エルデンハイム王国は、内部分裂の危機にあった。
国王の改革に反対する貴族たちが、反乱を企てていた。
そして、ヴェルデン王国が、それに乗じて侵攻を準備していた。
ゲルハルトは、この混乱を利用することにした。
闇ギルドのボス、ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツに指示を出した。
「好機だ。国王派貴族を弱体化させろ。今がチャンスだ」
ヴォルフガングは、計画を立てた。
「六名の国王派貴族を一度に暗殺する」
そして――
反乱貴族たちに接触した。
「国王派貴族を暗殺してほしい。闇ギルドが実行する」
反乱貴族たちは、金を払った。
闇ギルドに、暗殺を依頼した。
表面上は、反乱貴族たちの依頼という形。
でも、本当の黒幕は、ゲルハルトだった。
その六名の中に、フランツ・フォン・ハルトマンも含まれていた。
フランツは、国王派貴族として改革を支持していた。
正義感が強く、曲がったことが嫌いな男。
そして――
フランツは、偶然闇ギルドの秘密を知ってしまった。
王都の地下にある、違法奴隷市場。
そこで、リトヴァル族の子供が売られているのを目撃した。
フランツは、すぐに国王に報告しようとした。
でも――
闇ギルドが、それを察知した。
ヴォルフガングは、決断した。
「フランツは特に危険だ。国王派貴族であり、違法奴隷市場の秘密も知っている。最優先で始末する」
そして――
開戦前夜、六名の国王派貴族が暗殺された。
フランツは、その一人だった。
暗殺を実行したのは、ルートヴィヒ。
闇ギルドの暗殺専門の男。
毒を使った。
誰にも気づかれない、特殊な毒。
表面上は、反乱貴族たちの依頼で暗殺が行われた。
戦後、反乱貴族たちは全員処刑された。
でも――
本当の黒幕は、ゲルハルトだった。
魔王軍の残党だった。
そして、ルートヴィヒとヴォルフガングは、今も生きている。
でも――
フランツは、死ぬ前に手紙を書いていた。
父グレン伯爵への手紙。
闇ギルドの存在を伝える手紙。
でも、その手紙は、闇ギルドが奪った。
父グレン伯爵には、届かなかった。
記憶を読み終えて、僕は目を開ける。
怒りが、込み上げてくる。
フランツを暗殺した。
父の親友を。
しかも、国王派貴族六名を一度に。
王国を混乱させるために。
そして――
本当の黒幕は、魔王軍の残党だった。
反乱貴族たちは、利用されただけだった。
許せない。
ゲルハルトが、荒い息をしている。
「貴様…俺の記憶を…」
「読ませてもらいました」
僕は、冷たく言う。
「開戦前夜、フランツ・フォン・ハルトマンを含む六名の国王派貴族を暗殺するよう、ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツに指示を出しましたね」
ゲルハルトが、黙る。
「父の親友を…王国の柱となる人たちを…許せません」
「…くくく」
ゲルハルトが、笑う。
「そうか、フランツはお前の父親の友人だったのか」
「黙れ」
「良い作戦だったぞ。反乱貴族たちを利用して、六名を一度に消した」
ゲルハルトが、嘲笑する。
「おかげで、ヴェルデン王国の侵攻がスムーズになった。内戦も激化した」
「反乱貴族たちは、処刑されました。でも、あなたは生き延びた」
「その通りだ」
ゲルハルトが、不敵に笑う。
「あの愚かな貴族たちは、俺たちに利用されたことも気づかずに死んでいった」
「あなたが、愚かです」
僕は、拳を握る。
「正義を貫こうとした人を、暗殺する。王国を混乱させる。それが、魔王軍のやり方ですか」
「魔王様が復活すれば、全てが変わる」
ゲルハルトが、狂信的な目で言う。
「人間も、エルフも、ドワーフも、全て魔王様の奴隷になる。それが、世界の正しい姿だ」
「そんなことは、させません」
僕は、ゲルハルトを連行する。
牢に入れる。
そして――
父グレン伯爵に報告しなければ。
フランツの死の真相を。
屋敷に戻ると、父が執務室にいた。
「アレン、魔族は?」
「捕らえました」
「よくやった」
父が、頷く。
「それで、何か情報は得られたか?」
「…はい」
僕は、少し躊躇する。
でも、伝えなければならない。
「父さん、フランツ叔父さんのことです」
父の顔が、険しくなる。
「フランツのことが…何かわかったのか」
「はい。開戦前夜に暗殺された六名の国王派貴族の件です」
父が、拳を握る。
「あの事件か…」
父の声が、低く唸る。
「裏切りの貴族たちが、闇ギルドに依頼して暗殺した。戦後、その裏切り者たちは全員、首を刎ねられた」
「はい」
「取り敢えずは、解決した形になった」
父が、続ける。
「だが、俺は忘れていなかった。闇ギルドへの復讐を」
「父さん…」
「必ず全て潰す。そう決めていた」
父の目が、鋭い。
「でも、まだ動けていなかった。領地経営、戦後処理、新しい領地の統治…やることが多すぎた」
「そうだったんですか」
「ああ。だが…」
父が、僕を見る。
「今回、何かわかったのか?」
「はい。本当の黒幕が判明しました」
僕は、ゲルハルトの記憶を伝える。
「魔族ゲルハルト。魔王軍の残党です。彼が、闇ギルドに指示を出していました」
父が、息を呑む。
「魔族…魔王軍の残党まで絡んでいたのか…」
「はい。裏切りの貴族たちは、闇ギルドに依頼しました。でも、その裏切り貴族たちに接触して、暗殺を持ちかけたのも闇ギルドでした」
僕は、詳しく説明する。
「ゲルハルトがヴォルフガング・フォン・シュヴァルツに指示を出しました。『国王派貴族を弱体化させろ』と」
「ヴォルフガングは、反乱貴族たちに接触して、暗殺を持ちかけました」
「反乱貴族たちは、金を払って闇ギルドに依頼しました」
「でも、本当の黒幕は、魔族ゲルハルトでした」
父の顔が、青ざめる。
「つまり…反乱貴族たちも、利用されただけだったのか…」
「はい」
「そして、その反乱貴族たちを処刑しても、本当の黒幕は野放しだった…」
「そうです」
父が、拳を強く握る。
震えている。
「フランツ…すまない…」
父の声が、震える。
「俺は、お前の仇を討ったと思っていた…反乱貴族たちが処刑されて、終わったと…」
「父さん…」
「だが、違った。本当の敵は、まだ生きている」
父が、立ち上がる。
「それに…」
僕は、続ける。
「フランツ叔父さんは、違法奴隷市場の秘密も知っていました」
「違法奴隷市場…?」
「はい。王都の地下にある、違法奴隷市場です。リトヴァル族の子供が売られていました」
父が、顔色を変える。
「つまり、フランツは二重の意味で狙われた…」
「はい。国王派貴族として改革を支持していたこと。そして、違法奴隷市場の秘密を知ってしまったこと」
「そして、今回のリトヴァル族誘拐事件も、闇ギルドの仕業だ」
「はい」
父が、拳を強く握る。
「もう待てない」
父の目には、強い決意がある。
「アレン、闇ギルドを潰すことを早める」
「はい」
「ノイブルク支部だけじゃない。本部も。王都の闇ギルドも。全てを」
父が、僕の肩に手を置く。
「必ず潰す。フランツのために。六名の国王派貴族のために。リトヴァル族の子供たちのために」
「そして、魔王軍の野望を阻止するために」
「父さん、一緒に戦いましょう」
「ああ。共に、全てを終わらせる」
その夜、父と二人で作戦を立てた。
残る闇ギルドメンバーは、十三名。
その中には、幹部級が二名いる。
ゲルハルトの記憶から、その情報を得ていた。
一人は、ルートヴィヒ。
暗殺専門の男。
フランツを含む六名の暗殺を実行したのが、この男だ。
もう一人は、ベルンハルト。
情報収集の専門家。
ノイブルクの貴族や商人に潜入している。
「まず、この二人を捕らえる」
父が、地図を広げる。
「特に、ルートヴィヒは…」
父の声が、怒りに震える。
「フランツを直接殺した男だ。絶対に捕らえる」
「はい」
「ルートヴィヒは、街の東の廃屋に潜伏している」
「ベルンハルトは?」
「商人に変装して、街中にいる。でも、エレボスが悪意を感じ取れるはずだ」
「わかりました」
僕は、作戦を考える。
「まず、ベルンハルトを捕らえます。街中なので、慎重に」
「ああ」
「その後、ルートヴィヒを襲撃します」
「ルートヴィヒは、暗殺者だ。危険だぞ」
父が、心配そうに言う。
「大丈夫です。エレボスがいます」
「…わかった」
父が、続ける。
「この戦いは、フランツのためだけじゃない」
「はい」
「六名の国王派貴族のため。そして、リトヴァル族のため」
父が、拳を握る。
「全ての犠牲者のために、闇ギルドを潰す」
翌朝。
僕とエレボスは、街中を巡回した。
エレボスが、悪意を探る。
「…見つけました」
「どこですか?」
「市場です。商人に変装しています」
僕たちは、市場に向かう。
そこに、果物を売っている商人がいる。
四十代の男。
人当たりの良い笑顔。
でも――
エレボスが、確認する。
「間違いありません。この人です」
僕は、神眼で確認する。
記憶を読む。
ベルンハルトだ。
闇ギルドの情報収集担当。
様々な貴族や商人の秘密を握っている。
僕たちは、商人として近づく。
「果物、買いたいんですが」
「ああ、いらっしゃい」
ベルンハルトが、笑顔で応える。
でも、その目は冷たい。
僕を値踏みしている。
「良い果物がありますよ」
「ありがとうございます」
僕は、果物を選ぶふりをする。
そして――
エレボスが、動く。
一瞬で、ベルンハルトの背後に回る。
そして、首を掴む。
「動くな」
ベルンハルトが、驚く。
「な、何を…」
「ベルンハルト、闇ギルドのメンバーですね」
僕は、冷静に言う。
「あなたを逮捕します」
ベルンハルトの顔が、青ざめる。
「ば、馬鹿な…俺の正体を…」
「知っています。全て」
ベルンハルトを牢に入れる。
そして、尋問する。
神眼で記憶を読む。
ルートヴィヒの居場所。
街の東、廃屋。
そして――
残る十一名の情報も得る。
全員の顔と名前。
居場所。
これで、闇ギルドを完全に壊滅できる。
その夜。
父グレン伯爵と僕、そしてディートリヒ率いる騎士二十名で、ルートヴィヒを襲撃した。
街の東、廃屋。
月明かりが、建物を照らしている。
僕たちは、静かに近づく。
そして――
突入する。
でも――
廃屋の中は、空っぽだった。
「いない…」
ディートリヒが、周囲を確認する。
「逃げられましたか?」
「いや」
父が、言う。
「罠だ」
その時――
廃屋の外から、声がする。
「よく来たな、グレン・フォン・ヴァルトハイム伯爵」
低い声だ。
僕たちは、外に出る。
そこに、黒い服を着た男が立っていた。
三十代。
痩せた体。
冷たい目。
暗殺者の目だ。
「お前が、ルートヴィヒか」
父が、剣を抜く。
「ああ。そして、お前の友人フランツを殺した男だ」
ルートヴィヒが、不敵に笑う。
「フランツは、良い標的だった。正義感が強すぎて、警戒心が薄い」
父の拳が、震える。
「貴様…」
「あの夜は、楽しかったぞ。六名を一度に始末するなんて、滅多にない仕事だ」
ルートヴィヒが、続ける。
「フランツには、毒を盛った。ワインに混ぜるだけだ」
「フランツは、最後まで俺を信じていた。『友人』だと思っていたからな」
「黙れ!」
父が、斬りかかる。
でも、ルートヴィヒは素早い。
避ける。
そして、反撃する。
短剣が、父の腕を切る。
「くっ…」
「グレン、お前も殺す。フランツの後を追え」
僕は、すぐに介入する。
光の剣で、ルートヴィヒの短剣を弾く。
「父さん、下がってください」
「アレン…」
「この男は、僕が倒します」
僕は、ルートヴィヒを見る。
ルートヴィヒが、興味深そうに僕を見る。
「ほう…子供が出てくるのか」
「あなたは、許せません」
僕は、魔力を集中する。
「フランツ叔父さんを暗殺し、他の五名の国王派貴族も殺し、父さんまで殺そうとした」
「そうだ。そして、お前も殺す」
ルートヴィヒが、短剣を構える。
でも――
僕の方が、速い。
身体強化魔法で加速。
一瞬で、ルートヴィヒの背後に回る。
ルートヴィヒが、驚く。
「速い…!」
僕の剣が、ルートヴィヒの足を切る。
ルートヴィヒが、倒れる。
そして、拘束魔法で縛る。
「動くな」
ルートヴィヒが、悔しそうに唸る。
「くそっ…子供のくせに…」
父が、近づく。
ルートヴィヒを見下ろす。
「ルートヴィヒ、お前に聞きたいことがある」
「…何だ」
「フランツは、最後に何を言っていた?」
ルートヴィヒが、笑う。
「『グレンに伝えてくれ』と言っていた」
「何を?」
「『正義を諦めるな』と」
父が、拳を握る。
「そうか…」
そして、ルートヴィヒに言う。
「お前を、法の裁きにかける。フランツが信じた正義を、六名の国王派貴族が信じた正義を、俺が実現する」
「そして…」
父の目が、鋭くなる。
「お前の背後にいる闇ギルド、ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ、そして魔王軍の残党。全てを、必ず潰す」
ルートヴィヒを牢に入れる。
そして、残る十一名も、次々と捕らえていく。
一週間で、全員を捕獲した。
闇ギルドノイブルク支部、完全壊滅。
五十三名全員を、捕らえた。
その夜、父と二人で酒を飲んだ。
「アレン、ありがとう」
父が、言う。
「フランツの本当の仇を、捕らえることができた」
「いえ、僕も…フランツ叔父さんのために。そして、六名の国王派貴族のために」
「フランツは、お前を可愛がっていた」
父が、微笑む。
「『グレンの子供は、きっと立派になる』と言っていた」
「そうだったんですか」
「ああ。そして、本当に立派になった」
父が、僕の頭を撫でる。
「フランツも、他の五名の貴族も、喜んでいるだろう」
「父さん…」
「そして、国王陛下にも報告しよう」
父が、続ける。
「闇ギルドノイブルク支部を壊滅させた。六名の国王派貴族暗殺の真相も判明した、と」
「はい」
「それに…」
父が、真剣な顔になる。
「もう待てない。闇ギルド本部を潰すことを早める」
「父さん」
「ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。そして、魔族ゲルハルト」
父が、拳を握る。
「必ず、全てを潰す」
翌日。
リトヴァル族の人々に報告した。
「闇ギルドノイブルク支部を、完全に壊滅させました」
全員が、歓声を上げる。
「アレン様、ありがとうございます!」
リトアが、深々と頭を下げる。
「これで、我々も安心して暮らせます」
「でも、まだ油断はできません」
僕は、続ける。
「闇ギルドの本部は、王都にあります。いつか、そこも潰さなければなりません」
「その時は、我々も協力します」
ヴォルフが、言う。
「アレン様のために、何でもします」
「ありがとうございます」
その夜、父と執務室で話した。
「アレン、国王陛下への報告書を書いた」
父が、書類を見せる。
「闇ギルドノイブルク支部壊滅。五十三名全員捕獲。そして…」
父が、続ける。
「開戦前夜の六名の国王派貴族暗殺の真相も、書いた」
「真相…」
「ああ。反乱貴族たちは、闇ギルドに利用されただけだった。本当の黒幕は、魔族ゲルハルトと闇ギルドのヴォルフガング・フォン・シュヴァルツだった、と」
「国王陛下は、どう思われるでしょうか」
「驚かれるだろう」
父が、真剣な顔になる。
「そして、怒られるはずだ。六名の国王派貴族の仇が、まだ討たれていなかったのだから」
「でも、本部は王都にあります」
「ああ。それも、報告書に書いた」
父が、拳を握る。
「ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。元子爵。王都で闇ギルドの本部を運営している」
「そして、魔族ゲルハルトのことも書いた。魔王軍の残党が、闇ギルドを利用していることも」
「魔王復活まで、あと十年です」
「ああ。だからこそ、今のうちに闇ギルドを潰さなければならない」
父が、僕を見る。
「もう待てない。俺は、すぐにでも王都に向かって、闇ギルド本部を潰したい」
「でも、国王陛下の許可が必要です」
「わかっている。だから、報告書を送る」
父が、続ける。
「そして、闇ギルド本部討伐の許可を、陛下に求める」
「国王陛下が、許可してくださるでしょうか」
「わからない。でも、試す価値はある」
父が、強く言う。
「フランツのために。六名の国王派貴族のために。リトヴァル族のために」
「そして、王国のために。世界のために」
「必ず、闇ギルドを潰す」
その夜、ベッドに入る前。
窓の外を見る。
星空が、美しい。
平和な夜だ。
闇ギルドノイブルク支部は、壊滅した。
フランツ叔父さんの本当の仇も判った。
六名の国王派貴族の真相も判明した。
でも――
戦いは、まだ続く。
本部は、王都にある。
ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。
魔族ゲルハルト。
そして、魔王軍の残党。
全てと、戦わなければならない。
でも、今は――
少しだけ、休もう。
父さんも、決意を新たにしている。
フランツ叔父さんも、天国で見守っているはずだ。
それで、良い。
モーモーから、念話が来る。
「主様、お疲れ様でした」
「ありがとう、モーモー」
「闇ギルドを壊滅させたのですね」
「うん。ノイブルク支部だけだけど」
「それでも、素晴らしいです」
モーモーが、優しく言う。
「主様は、正義を実現しました。フランツ様も、六名の国王派貴族の方々も、喜んでいるはずです」
「そうだね」
「そして、お父様も、決意を新たにされたのですね」
「うん。父さんは、ずっと闇ギルドへの復讐を考えていたんだ。でも、今回のことで、それを早めることにした」
「主様も、お父様と共に戦うのですね」
「もちろん」
「おやすみなさい、主様」
「おやすみ、モーモー」
温かい声に包まれて、眠りに落ちる。
明日も、やることがたくさんある。
でも、今は――
この平和を、楽しもう。
そう思いながら、深い眠りに落ちていく。
第2部 第4章「闇ギルドの影」完
魔族が、魔力を放出する。
強い圧力だ。
B+ランク。
でも――
僕の方が、上だ。
「エレボス、援護をお願いします」
「了解しました」
エレボスが、距離を取る。
僕は、魔力を集中する。
魔族が、攻撃してくる。
「闇の槍!」
黒い槍が、飛んでくる。
僕は、結界で防ぐ。
槍が、結界に当たって消える。
「ほう…子供のくせに、やるな」
魔族が、不敵に笑う。
「だが、所詮は人間だ」
魔族が、さらに魔力を高める。
でも――
僕は、冷静だ。
前世で、魔族とは何度も戦った。
その経験がある。
「光の剣」
僕は、光属性の魔法剣を生成する。
魔族に対しては、光属性が有効だ。
「光属性か…面倒な」
魔族が、警戒する。
僕は、一気に距離を詰める。
身体強化魔法で加速。
魔族が、驚く。
「速い…!」
僕の剣が、魔族の腕を切る。
浅い傷だが、確実にダメージを与えた。
「くっ…!」
魔族が、後退する。
そして、闇の魔法を連射してくる。
でも、僕は全て避ける。
あるいは、結界で防ぐ。
そして――
反撃する。
「光の矢」
光の矢が、魔族の肩に刺さる。
「ぐあっ…!」
魔族が、膝をつく。
僕は、すぐに拘束魔法を使う。
光の鎖が、魔族を縛る。
「動くな」
魔族が、抵抗しようとする。
でも、光属性の鎖は、魔族には効果的だ。
簡単には解けない。
「くそっ…子供のくせに…こんな力が…」
魔族が、悔しそうに唸る。
エレボスが、近づく。
「アレン様、見事です」
「ありがとう、エレボス」
僕は、魔族を見る。
「あなたに聞きたいことがあります」
「…何も話さん」
「そうですか」
僕は、神眼を発動する。
魔族の記憶を、読む。
強い抵抗がある。
でも――
光の鎖で拘束されている今なら、突破できる。
魔族の記憶が、流れ込んでくる。
魔族の名前は、ゲルハルト。
魔王軍の残党。
四天王グリードの配下だった。
魔王が倒された後、生き延びた。
そして、四天王たちの計画に従って動いている。
ゲルハルトの役目は、人間国での工作活動。
闇ギルドとの連絡役。
魔王軍からの資金を提供する。
そして、大局的な指示を出す。
人身売買で得た金を、魔王復活の準備に使う。
そして――
重要な情報。
ゲルハルトは、ある暗殺事件に関わっていた。
開戦前夜、六名の国王派貴族が暗殺された事件。
その中の一人が、フランツ・フォン・ハルトマン。
父グレン伯爵の親友だった。
記憶を詳しく読む。
開戦前夜。
エルデンハイム王国は、内部分裂の危機にあった。
国王の改革に反対する貴族たちが、反乱を企てていた。
そして、ヴェルデン王国が、それに乗じて侵攻を準備していた。
ゲルハルトは、この混乱を利用することにした。
闇ギルドのボス、ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツに指示を出した。
「好機だ。国王派貴族を弱体化させろ。今がチャンスだ」
ヴォルフガングは、計画を立てた。
「六名の国王派貴族を一度に暗殺する」
そして――
反乱貴族たちに接触した。
「国王派貴族を暗殺してほしい。闇ギルドが実行する」
反乱貴族たちは、金を払った。
闇ギルドに、暗殺を依頼した。
表面上は、反乱貴族たちの依頼という形。
でも、本当の黒幕は、ゲルハルトだった。
その六名の中に、フランツ・フォン・ハルトマンも含まれていた。
フランツは、国王派貴族として改革を支持していた。
正義感が強く、曲がったことが嫌いな男。
そして――
フランツは、偶然闇ギルドの秘密を知ってしまった。
王都の地下にある、違法奴隷市場。
そこで、リトヴァル族の子供が売られているのを目撃した。
フランツは、すぐに国王に報告しようとした。
でも――
闇ギルドが、それを察知した。
ヴォルフガングは、決断した。
「フランツは特に危険だ。国王派貴族であり、違法奴隷市場の秘密も知っている。最優先で始末する」
そして――
開戦前夜、六名の国王派貴族が暗殺された。
フランツは、その一人だった。
暗殺を実行したのは、ルートヴィヒ。
闇ギルドの暗殺専門の男。
毒を使った。
誰にも気づかれない、特殊な毒。
表面上は、反乱貴族たちの依頼で暗殺が行われた。
戦後、反乱貴族たちは全員処刑された。
でも――
本当の黒幕は、ゲルハルトだった。
魔王軍の残党だった。
そして、ルートヴィヒとヴォルフガングは、今も生きている。
でも――
フランツは、死ぬ前に手紙を書いていた。
父グレン伯爵への手紙。
闇ギルドの存在を伝える手紙。
でも、その手紙は、闇ギルドが奪った。
父グレン伯爵には、届かなかった。
記憶を読み終えて、僕は目を開ける。
怒りが、込み上げてくる。
フランツを暗殺した。
父の親友を。
しかも、国王派貴族六名を一度に。
王国を混乱させるために。
そして――
本当の黒幕は、魔王軍の残党だった。
反乱貴族たちは、利用されただけだった。
許せない。
ゲルハルトが、荒い息をしている。
「貴様…俺の記憶を…」
「読ませてもらいました」
僕は、冷たく言う。
「開戦前夜、フランツ・フォン・ハルトマンを含む六名の国王派貴族を暗殺するよう、ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツに指示を出しましたね」
ゲルハルトが、黙る。
「父の親友を…王国の柱となる人たちを…許せません」
「…くくく」
ゲルハルトが、笑う。
「そうか、フランツはお前の父親の友人だったのか」
「黙れ」
「良い作戦だったぞ。反乱貴族たちを利用して、六名を一度に消した」
ゲルハルトが、嘲笑する。
「おかげで、ヴェルデン王国の侵攻がスムーズになった。内戦も激化した」
「反乱貴族たちは、処刑されました。でも、あなたは生き延びた」
「その通りだ」
ゲルハルトが、不敵に笑う。
「あの愚かな貴族たちは、俺たちに利用されたことも気づかずに死んでいった」
「あなたが、愚かです」
僕は、拳を握る。
「正義を貫こうとした人を、暗殺する。王国を混乱させる。それが、魔王軍のやり方ですか」
「魔王様が復活すれば、全てが変わる」
ゲルハルトが、狂信的な目で言う。
「人間も、エルフも、ドワーフも、全て魔王様の奴隷になる。それが、世界の正しい姿だ」
「そんなことは、させません」
僕は、ゲルハルトを連行する。
牢に入れる。
そして――
父グレン伯爵に報告しなければ。
フランツの死の真相を。
屋敷に戻ると、父が執務室にいた。
「アレン、魔族は?」
「捕らえました」
「よくやった」
父が、頷く。
「それで、何か情報は得られたか?」
「…はい」
僕は、少し躊躇する。
でも、伝えなければならない。
「父さん、フランツ叔父さんのことです」
父の顔が、険しくなる。
「フランツのことが…何かわかったのか」
「はい。開戦前夜に暗殺された六名の国王派貴族の件です」
父が、拳を握る。
「あの事件か…」
父の声が、低く唸る。
「裏切りの貴族たちが、闇ギルドに依頼して暗殺した。戦後、その裏切り者たちは全員、首を刎ねられた」
「はい」
「取り敢えずは、解決した形になった」
父が、続ける。
「だが、俺は忘れていなかった。闇ギルドへの復讐を」
「父さん…」
「必ず全て潰す。そう決めていた」
父の目が、鋭い。
「でも、まだ動けていなかった。領地経営、戦後処理、新しい領地の統治…やることが多すぎた」
「そうだったんですか」
「ああ。だが…」
父が、僕を見る。
「今回、何かわかったのか?」
「はい。本当の黒幕が判明しました」
僕は、ゲルハルトの記憶を伝える。
「魔族ゲルハルト。魔王軍の残党です。彼が、闇ギルドに指示を出していました」
父が、息を呑む。
「魔族…魔王軍の残党まで絡んでいたのか…」
「はい。裏切りの貴族たちは、闇ギルドに依頼しました。でも、その裏切り貴族たちに接触して、暗殺を持ちかけたのも闇ギルドでした」
僕は、詳しく説明する。
「ゲルハルトがヴォルフガング・フォン・シュヴァルツに指示を出しました。『国王派貴族を弱体化させろ』と」
「ヴォルフガングは、反乱貴族たちに接触して、暗殺を持ちかけました」
「反乱貴族たちは、金を払って闇ギルドに依頼しました」
「でも、本当の黒幕は、魔族ゲルハルトでした」
父の顔が、青ざめる。
「つまり…反乱貴族たちも、利用されただけだったのか…」
「はい」
「そして、その反乱貴族たちを処刑しても、本当の黒幕は野放しだった…」
「そうです」
父が、拳を強く握る。
震えている。
「フランツ…すまない…」
父の声が、震える。
「俺は、お前の仇を討ったと思っていた…反乱貴族たちが処刑されて、終わったと…」
「父さん…」
「だが、違った。本当の敵は、まだ生きている」
父が、立ち上がる。
「それに…」
僕は、続ける。
「フランツ叔父さんは、違法奴隷市場の秘密も知っていました」
「違法奴隷市場…?」
「はい。王都の地下にある、違法奴隷市場です。リトヴァル族の子供が売られていました」
父が、顔色を変える。
「つまり、フランツは二重の意味で狙われた…」
「はい。国王派貴族として改革を支持していたこと。そして、違法奴隷市場の秘密を知ってしまったこと」
「そして、今回のリトヴァル族誘拐事件も、闇ギルドの仕業だ」
「はい」
父が、拳を強く握る。
「もう待てない」
父の目には、強い決意がある。
「アレン、闇ギルドを潰すことを早める」
「はい」
「ノイブルク支部だけじゃない。本部も。王都の闇ギルドも。全てを」
父が、僕の肩に手を置く。
「必ず潰す。フランツのために。六名の国王派貴族のために。リトヴァル族の子供たちのために」
「そして、魔王軍の野望を阻止するために」
「父さん、一緒に戦いましょう」
「ああ。共に、全てを終わらせる」
その夜、父と二人で作戦を立てた。
残る闇ギルドメンバーは、十三名。
その中には、幹部級が二名いる。
ゲルハルトの記憶から、その情報を得ていた。
一人は、ルートヴィヒ。
暗殺専門の男。
フランツを含む六名の暗殺を実行したのが、この男だ。
もう一人は、ベルンハルト。
情報収集の専門家。
ノイブルクの貴族や商人に潜入している。
「まず、この二人を捕らえる」
父が、地図を広げる。
「特に、ルートヴィヒは…」
父の声が、怒りに震える。
「フランツを直接殺した男だ。絶対に捕らえる」
「はい」
「ルートヴィヒは、街の東の廃屋に潜伏している」
「ベルンハルトは?」
「商人に変装して、街中にいる。でも、エレボスが悪意を感じ取れるはずだ」
「わかりました」
僕は、作戦を考える。
「まず、ベルンハルトを捕らえます。街中なので、慎重に」
「ああ」
「その後、ルートヴィヒを襲撃します」
「ルートヴィヒは、暗殺者だ。危険だぞ」
父が、心配そうに言う。
「大丈夫です。エレボスがいます」
「…わかった」
父が、続ける。
「この戦いは、フランツのためだけじゃない」
「はい」
「六名の国王派貴族のため。そして、リトヴァル族のため」
父が、拳を握る。
「全ての犠牲者のために、闇ギルドを潰す」
翌朝。
僕とエレボスは、街中を巡回した。
エレボスが、悪意を探る。
「…見つけました」
「どこですか?」
「市場です。商人に変装しています」
僕たちは、市場に向かう。
そこに、果物を売っている商人がいる。
四十代の男。
人当たりの良い笑顔。
でも――
エレボスが、確認する。
「間違いありません。この人です」
僕は、神眼で確認する。
記憶を読む。
ベルンハルトだ。
闇ギルドの情報収集担当。
様々な貴族や商人の秘密を握っている。
僕たちは、商人として近づく。
「果物、買いたいんですが」
「ああ、いらっしゃい」
ベルンハルトが、笑顔で応える。
でも、その目は冷たい。
僕を値踏みしている。
「良い果物がありますよ」
「ありがとうございます」
僕は、果物を選ぶふりをする。
そして――
エレボスが、動く。
一瞬で、ベルンハルトの背後に回る。
そして、首を掴む。
「動くな」
ベルンハルトが、驚く。
「な、何を…」
「ベルンハルト、闇ギルドのメンバーですね」
僕は、冷静に言う。
「あなたを逮捕します」
ベルンハルトの顔が、青ざめる。
「ば、馬鹿な…俺の正体を…」
「知っています。全て」
ベルンハルトを牢に入れる。
そして、尋問する。
神眼で記憶を読む。
ルートヴィヒの居場所。
街の東、廃屋。
そして――
残る十一名の情報も得る。
全員の顔と名前。
居場所。
これで、闇ギルドを完全に壊滅できる。
その夜。
父グレン伯爵と僕、そしてディートリヒ率いる騎士二十名で、ルートヴィヒを襲撃した。
街の東、廃屋。
月明かりが、建物を照らしている。
僕たちは、静かに近づく。
そして――
突入する。
でも――
廃屋の中は、空っぽだった。
「いない…」
ディートリヒが、周囲を確認する。
「逃げられましたか?」
「いや」
父が、言う。
「罠だ」
その時――
廃屋の外から、声がする。
「よく来たな、グレン・フォン・ヴァルトハイム伯爵」
低い声だ。
僕たちは、外に出る。
そこに、黒い服を着た男が立っていた。
三十代。
痩せた体。
冷たい目。
暗殺者の目だ。
「お前が、ルートヴィヒか」
父が、剣を抜く。
「ああ。そして、お前の友人フランツを殺した男だ」
ルートヴィヒが、不敵に笑う。
「フランツは、良い標的だった。正義感が強すぎて、警戒心が薄い」
父の拳が、震える。
「貴様…」
「あの夜は、楽しかったぞ。六名を一度に始末するなんて、滅多にない仕事だ」
ルートヴィヒが、続ける。
「フランツには、毒を盛った。ワインに混ぜるだけだ」
「フランツは、最後まで俺を信じていた。『友人』だと思っていたからな」
「黙れ!」
父が、斬りかかる。
でも、ルートヴィヒは素早い。
避ける。
そして、反撃する。
短剣が、父の腕を切る。
「くっ…」
「グレン、お前も殺す。フランツの後を追え」
僕は、すぐに介入する。
光の剣で、ルートヴィヒの短剣を弾く。
「父さん、下がってください」
「アレン…」
「この男は、僕が倒します」
僕は、ルートヴィヒを見る。
ルートヴィヒが、興味深そうに僕を見る。
「ほう…子供が出てくるのか」
「あなたは、許せません」
僕は、魔力を集中する。
「フランツ叔父さんを暗殺し、他の五名の国王派貴族も殺し、父さんまで殺そうとした」
「そうだ。そして、お前も殺す」
ルートヴィヒが、短剣を構える。
でも――
僕の方が、速い。
身体強化魔法で加速。
一瞬で、ルートヴィヒの背後に回る。
ルートヴィヒが、驚く。
「速い…!」
僕の剣が、ルートヴィヒの足を切る。
ルートヴィヒが、倒れる。
そして、拘束魔法で縛る。
「動くな」
ルートヴィヒが、悔しそうに唸る。
「くそっ…子供のくせに…」
父が、近づく。
ルートヴィヒを見下ろす。
「ルートヴィヒ、お前に聞きたいことがある」
「…何だ」
「フランツは、最後に何を言っていた?」
ルートヴィヒが、笑う。
「『グレンに伝えてくれ』と言っていた」
「何を?」
「『正義を諦めるな』と」
父が、拳を握る。
「そうか…」
そして、ルートヴィヒに言う。
「お前を、法の裁きにかける。フランツが信じた正義を、六名の国王派貴族が信じた正義を、俺が実現する」
「そして…」
父の目が、鋭くなる。
「お前の背後にいる闇ギルド、ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ、そして魔王軍の残党。全てを、必ず潰す」
ルートヴィヒを牢に入れる。
そして、残る十一名も、次々と捕らえていく。
一週間で、全員を捕獲した。
闇ギルドノイブルク支部、完全壊滅。
五十三名全員を、捕らえた。
その夜、父と二人で酒を飲んだ。
「アレン、ありがとう」
父が、言う。
「フランツの本当の仇を、捕らえることができた」
「いえ、僕も…フランツ叔父さんのために。そして、六名の国王派貴族のために」
「フランツは、お前を可愛がっていた」
父が、微笑む。
「『グレンの子供は、きっと立派になる』と言っていた」
「そうだったんですか」
「ああ。そして、本当に立派になった」
父が、僕の頭を撫でる。
「フランツも、他の五名の貴族も、喜んでいるだろう」
「父さん…」
「そして、国王陛下にも報告しよう」
父が、続ける。
「闇ギルドノイブルク支部を壊滅させた。六名の国王派貴族暗殺の真相も判明した、と」
「はい」
「それに…」
父が、真剣な顔になる。
「もう待てない。闇ギルド本部を潰すことを早める」
「父さん」
「ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。そして、魔族ゲルハルト」
父が、拳を握る。
「必ず、全てを潰す」
翌日。
リトヴァル族の人々に報告した。
「闇ギルドノイブルク支部を、完全に壊滅させました」
全員が、歓声を上げる。
「アレン様、ありがとうございます!」
リトアが、深々と頭を下げる。
「これで、我々も安心して暮らせます」
「でも、まだ油断はできません」
僕は、続ける。
「闇ギルドの本部は、王都にあります。いつか、そこも潰さなければなりません」
「その時は、我々も協力します」
ヴォルフが、言う。
「アレン様のために、何でもします」
「ありがとうございます」
その夜、父と執務室で話した。
「アレン、国王陛下への報告書を書いた」
父が、書類を見せる。
「闇ギルドノイブルク支部壊滅。五十三名全員捕獲。そして…」
父が、続ける。
「開戦前夜の六名の国王派貴族暗殺の真相も、書いた」
「真相…」
「ああ。反乱貴族たちは、闇ギルドに利用されただけだった。本当の黒幕は、魔族ゲルハルトと闇ギルドのヴォルフガング・フォン・シュヴァルツだった、と」
「国王陛下は、どう思われるでしょうか」
「驚かれるだろう」
父が、真剣な顔になる。
「そして、怒られるはずだ。六名の国王派貴族の仇が、まだ討たれていなかったのだから」
「でも、本部は王都にあります」
「ああ。それも、報告書に書いた」
父が、拳を握る。
「ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。元子爵。王都で闇ギルドの本部を運営している」
「そして、魔族ゲルハルトのことも書いた。魔王軍の残党が、闇ギルドを利用していることも」
「魔王復活まで、あと十年です」
「ああ。だからこそ、今のうちに闇ギルドを潰さなければならない」
父が、僕を見る。
「もう待てない。俺は、すぐにでも王都に向かって、闇ギルド本部を潰したい」
「でも、国王陛下の許可が必要です」
「わかっている。だから、報告書を送る」
父が、続ける。
「そして、闇ギルド本部討伐の許可を、陛下に求める」
「国王陛下が、許可してくださるでしょうか」
「わからない。でも、試す価値はある」
父が、強く言う。
「フランツのために。六名の国王派貴族のために。リトヴァル族のために」
「そして、王国のために。世界のために」
「必ず、闇ギルドを潰す」
その夜、ベッドに入る前。
窓の外を見る。
星空が、美しい。
平和な夜だ。
闇ギルドノイブルク支部は、壊滅した。
フランツ叔父さんの本当の仇も判った。
六名の国王派貴族の真相も判明した。
でも――
戦いは、まだ続く。
本部は、王都にある。
ヴォルフガング・フォン・シュヴァルツ。
魔族ゲルハルト。
そして、魔王軍の残党。
全てと、戦わなければならない。
でも、今は――
少しだけ、休もう。
父さんも、決意を新たにしている。
フランツ叔父さんも、天国で見守っているはずだ。
それで、良い。
モーモーから、念話が来る。
「主様、お疲れ様でした」
「ありがとう、モーモー」
「闇ギルドを壊滅させたのですね」
「うん。ノイブルク支部だけだけど」
「それでも、素晴らしいです」
モーモーが、優しく言う。
「主様は、正義を実現しました。フランツ様も、六名の国王派貴族の方々も、喜んでいるはずです」
「そうだね」
「そして、お父様も、決意を新たにされたのですね」
「うん。父さんは、ずっと闇ギルドへの復讐を考えていたんだ。でも、今回のことで、それを早めることにした」
「主様も、お父様と共に戦うのですね」
「もちろん」
「おやすみなさい、主様」
「おやすみ、モーモー」
温かい声に包まれて、眠りに落ちる。
明日も、やることがたくさんある。
でも、今は――
この平和を、楽しもう。
そう思いながら、深い眠りに落ちていく。
第2部 第4章「闇ギルドの影」完
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