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トラウマ
しおりを挟む何だかすごく長い時間眠っていたような気がする。
重い瞼を上げれば、目の前に分厚い胸板が…。
あぁリースさんだ。
いつもの見慣れた光景だ。
頭を上げてリースさんの顔を見ると、燃えるような赤い目と合った。
「マオ!!目が覚めたんだな。…身体は大丈夫か?」
身体?からだ…からだ…
「わぁーーーーーー、たすけてたすけて!いやだ!いやだぁーーー」
僕は昨日のことを一気に思い出した。
ウィル殿下に襲われたこと。
そして、嫌なのに自分が感じてしまったこと。
僕はリースさんを裏切ってしまったんだ…。
「マオ!大丈夫だ。もうあいつは居ねぇし、今後あいつがマオの前に現れることはねぇ」
パニックになってる僕をリースさんがきつく抱き締めてくれるけど、身も心も汚い僕に触れちゃったらリースさんまで汚れてしまいそうな気がする。
「さわら…ないで。ぼくは…僕は汚いから…うぅ…ヒック」
「マオは汚くなんかねぇ。俺の愛する伴侶だ」
「でも…僕は、すごく嫌だったのに…身体が反応しちゃって…僕は醜い。」
こんな僕とはもう一緒に居てくれないだろう。
リースさんに申し訳なくて涙が止まらない。
「それはマオのせいじゃねぇんだ。全部薬のせいなんだ。」
「…くすり??」
「そうだ。マオはあのクソ王子が持ってきた焼き菓子を食っただろう?」
「焼き菓子…?はい、たべました」
「その菓子に痺れ薬と媚薬が仕込まれていたんだ。」
「そんなっ…。」
「だから身体に力が入らず抵抗できなかったのも、身体が反応しちまったのも全部薬のせいだ。」
「薬の…せい。そうか…そうだったんですね。よかった…僕はリースさんを裏切ってしまったのかと」
「マオ…マオが愛してるのは俺だけだろう?」
「はい。リースさんだけです。」
「なら大丈夫だ。マオはどこもかしこもキレイだぜ」
リースさんを裏切ったわけではないと分かって安心したら、今度は襲われたときの恐怖が蘇り、身体が震える。
「ぼく…こわくて…こわくて…」
「あぁ。すまねぇ。俺が側にいなかったからだ。もうマオを一人にはしねぇ」
リースさんに抱き締められながら涙が枯れるほど泣いた。
泣きすぎたからなのか頭が痛いし、身体も重い。
「マオ。薬の副作用で身体がしんどいだろう?もう少し横になろう。念のため治癒師に診てもらうから少し待っていてくれ」
リースさんは僕をベッドに横たわらせた後、寝室をでていった。
1人になった僕はその瞬間、とてつもなく不安にかられた。
リースさんは30秒程で戻ってきたけど、すごく長く感じた。
それから暫くして、治癒師さんが来た。
見たことない知らない人だった。
治癒師さんが診察のために僕の身体に手を伸ばした瞬間、僕は悲鳴を上げた。
「こないでーーーたすけてーー」
身体がブルブル震え歯がカチカチと音がなる。
自分でもわからない。ただ恐い。
目の前の知らない人が恐い。
触れられるのが恐い。
たすけてたすけてリースさん。
「マオ!!」
リースさんがすぐに治癒師さんを部屋から出してくれて、暫く抱き締めてくれてやっと落ち着いた。
それから僕は男の人が恐くなった。
心の底から信用してるエルマさんとダンさんは大丈夫だけど、この世界は男の人しかいないから、エルマさん以外はダメだった。
護衛のハリスさんとエイベルさんは触れられなければ大丈夫だったけど、近くにいると落ち着かなかった。
申し訳ないと思いながらも自分ではどうしようもなかった。
時間がたてば大丈夫になるかな?
こんなに弱いなんて僕は自分が嫌になるよ。
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