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第4話 蝶は発情する
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ふた月が過ぎた。
その間、俺は毎日のように客を取り、毎日のようにいろんな男と寝た。
霧也を超える男はいなかった。
気づけば俺は、彼を待ち焦がれるようになっていた。
他の男に抱かれている時も、心の中では霧也を想っていた。
籠の中のオメガは夢を見る。
いつか彼が連れ出してくれるのを。
だけど心のどこかではわかっている。
そんな都合のいい夢などないことを。
ヒートになった。
早く早くと願った。
他の客が来る前に、早く俺を確保してくれと。
身体が熱い。
下腹部に熱が集まり、なにもしなくても勃ちっぱなしになる。
呼吸が乱れ、誰でもいいから突っ込んでくれと願うようになる。
全身からフェロモンを撒き散らし、近くにいるアルファもベータもすべて狂わせる。
それがヒート。
発情期。
籠の中のオメガは、客以外の誰とも接触できなくなる時期でもある。
オメガ同士なら大丈夫だ。なにも起こらない。
ヒート中になにかあった時は、発情していないオメガに助けを乞うことになっている。
部屋の電話が鳴った。
「……はい」
「客だ。おまえを指名してきた」
霧也だろうか。
違っていたらどうしよう。
「ヒート中であることは説明してある」
「……わかりました」
姿を見るまで、誰が来たのかはわからない。
どうかどうか。霧也でありますように。
扉をノックする音。
客が来た。
開かれた扉から姿を見せたのは、霧也だった。
俺は、心の底から安堵した。
オメガのヒートに当てられた霧也は、ラットを引き起こした。
その後はもう、狂ったようにセックスをするだけだった。
理性などどこかへ吹き飛び、ただただ本能に突き動かされるように交わる。
オメガのヒートは約一週間ほどは続く。
オメガのヒートがおさまるまで、アルファのラットも終わらない。
「うぁっ、あっ、んぁ……っ」
全裸でベッドの中で身悶える。
喘ぎすぎて喉が嗄れてきた。
仰向けの俺の上に、霧也がいる。
左右に大きく開かれた足の間に、霧也はいた。
全身汗だくで、瞳の奥には獣のような情欲しかない。
達しても達しても達してもまた勃起するのがヒートとラットだ。
飽きることなく身体を繋ぎ続ける。
もう何度身体の奥に出されただろう。
ラットのアルファは通常よりも絶倫になり、精液の量も無尽蔵になる。
「うっ、出すぞ」
「ひぁぁぁ……っ!」
霧也は最奥に出すために、がっしりと互いの股間を密着させた。
ラット中のアルファの怒張は、通常の射精とは違うことをする。
竿の根元にノットというコブのようなものが浮きあがり、俺の孔にふたをする。
そこはロックされたようになり、射精の瞬間は動かせなくなる。
「いっ……あっ、あぁっ……!」
より最奥に、より多く、確実に種づけされる。
日頃からピルを飲んでいなかったら、間違いなく妊娠する。
ラット中のアルファの射精時間は長く、量も多い。
その間、俺はベッドの上でのたうちながら、狂いそうなほどの快感から逃れられなくなる。
腹の奥も性感帯と化して、精液を浴びるたびに、とてつもない快感に襲われる。
「うああっ、あぁっ、ああ……あ、ああああああぁっ……!」
びくんびくんと全身を跳ねあげながら、気が変になりそうなほどの快感を享受するしかなかった。
ほぼ一週間、ずっとこんな状態だ。
空腹に襲われると何かを食べたりするし、眠くなると睡眠も取るが、通常よりも腹は減らないし、それほど眠くもならない。
これはアルファもオメガも同じような状態になる。
もちろん他の客を取れるはずもなく、俺は霧也と濃厚すぎる一週間を送った。
ヒートのオメガを一週間貸し切りにすると、とても金がかかる。
通常は、オメガがどれほどひどいヒートでも、客のアルファがラットでも、払った金額の時間しか一緒にはいられない。
ヒートのオメガは他の客と寝ることになるし、ラットのアルファは抑制剤を打たれることになる。金を払えない客には容赦がない。
霧也は払ったんだ。俺と一週間一緒にいられる金額を。
そう思ったら嬉しくなった。
ただの性欲処理かもしれないし、誰にも邪魔されずにラットを解放したかっただけかもしれない。
でも、その相手に俺を選んだことだけは間違いないのだ。
幼い頃からこの仕事をしているので、ヒート中にラットのアルファとセックスしたのは実は初めてではない。
でもその時は、ここまで気持ちよくはならなかった。
気持ちよすぎて死ぬって思ったのは霧也が初めてだった。
その間、俺は毎日のように客を取り、毎日のようにいろんな男と寝た。
霧也を超える男はいなかった。
気づけば俺は、彼を待ち焦がれるようになっていた。
他の男に抱かれている時も、心の中では霧也を想っていた。
籠の中のオメガは夢を見る。
いつか彼が連れ出してくれるのを。
だけど心のどこかではわかっている。
そんな都合のいい夢などないことを。
ヒートになった。
早く早くと願った。
他の客が来る前に、早く俺を確保してくれと。
身体が熱い。
下腹部に熱が集まり、なにもしなくても勃ちっぱなしになる。
呼吸が乱れ、誰でもいいから突っ込んでくれと願うようになる。
全身からフェロモンを撒き散らし、近くにいるアルファもベータもすべて狂わせる。
それがヒート。
発情期。
籠の中のオメガは、客以外の誰とも接触できなくなる時期でもある。
オメガ同士なら大丈夫だ。なにも起こらない。
ヒート中になにかあった時は、発情していないオメガに助けを乞うことになっている。
部屋の電話が鳴った。
「……はい」
「客だ。おまえを指名してきた」
霧也だろうか。
違っていたらどうしよう。
「ヒート中であることは説明してある」
「……わかりました」
姿を見るまで、誰が来たのかはわからない。
どうかどうか。霧也でありますように。
扉をノックする音。
客が来た。
開かれた扉から姿を見せたのは、霧也だった。
俺は、心の底から安堵した。
オメガのヒートに当てられた霧也は、ラットを引き起こした。
その後はもう、狂ったようにセックスをするだけだった。
理性などどこかへ吹き飛び、ただただ本能に突き動かされるように交わる。
オメガのヒートは約一週間ほどは続く。
オメガのヒートがおさまるまで、アルファのラットも終わらない。
「うぁっ、あっ、んぁ……っ」
全裸でベッドの中で身悶える。
喘ぎすぎて喉が嗄れてきた。
仰向けの俺の上に、霧也がいる。
左右に大きく開かれた足の間に、霧也はいた。
全身汗だくで、瞳の奥には獣のような情欲しかない。
達しても達しても達してもまた勃起するのがヒートとラットだ。
飽きることなく身体を繋ぎ続ける。
もう何度身体の奥に出されただろう。
ラットのアルファは通常よりも絶倫になり、精液の量も無尽蔵になる。
「うっ、出すぞ」
「ひぁぁぁ……っ!」
霧也は最奥に出すために、がっしりと互いの股間を密着させた。
ラット中のアルファの怒張は、通常の射精とは違うことをする。
竿の根元にノットというコブのようなものが浮きあがり、俺の孔にふたをする。
そこはロックされたようになり、射精の瞬間は動かせなくなる。
「いっ……あっ、あぁっ……!」
より最奥に、より多く、確実に種づけされる。
日頃からピルを飲んでいなかったら、間違いなく妊娠する。
ラット中のアルファの射精時間は長く、量も多い。
その間、俺はベッドの上でのたうちながら、狂いそうなほどの快感から逃れられなくなる。
腹の奥も性感帯と化して、精液を浴びるたびに、とてつもない快感に襲われる。
「うああっ、あぁっ、ああ……あ、ああああああぁっ……!」
びくんびくんと全身を跳ねあげながら、気が変になりそうなほどの快感を享受するしかなかった。
ほぼ一週間、ずっとこんな状態だ。
空腹に襲われると何かを食べたりするし、眠くなると睡眠も取るが、通常よりも腹は減らないし、それほど眠くもならない。
これはアルファもオメガも同じような状態になる。
もちろん他の客を取れるはずもなく、俺は霧也と濃厚すぎる一週間を送った。
ヒートのオメガを一週間貸し切りにすると、とても金がかかる。
通常は、オメガがどれほどひどいヒートでも、客のアルファがラットでも、払った金額の時間しか一緒にはいられない。
ヒートのオメガは他の客と寝ることになるし、ラットのアルファは抑制剤を打たれることになる。金を払えない客には容赦がない。
霧也は払ったんだ。俺と一週間一緒にいられる金額を。
そう思ったら嬉しくなった。
ただの性欲処理かもしれないし、誰にも邪魔されずにラットを解放したかっただけかもしれない。
でも、その相手に俺を選んだことだけは間違いないのだ。
幼い頃からこの仕事をしているので、ヒート中にラットのアルファとセックスしたのは実は初めてではない。
でもその時は、ここまで気持ちよくはならなかった。
気持ちよすぎて死ぬって思ったのは霧也が初めてだった。
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