42 / 49
第41話 会話
しおりを挟む
手の平にデュレンの体温が伝わってくる。
気まずくなったり息が詰まったりするようなこともなく、不思議とリアナも落ち着いてそこに座っていられた。
デュレンは黙ってまぶたを閉じる。眠っているわけではない。ただ目を閉じてじっとしている。
「訊いてもいい?」
「何を」
「あなたはどうやって狩り人になったの?」
デュレンが怪訝そうな顔で目を開けた。
「なぜ、そんなことを?」
「ロシアンナが、私が訊けば話してくれるかもって言っていたから」
デュレンがふっと笑った。
「そのことはまだ誰にも話してはいない。おまえに話すつもりもない」
「……そうよね」
やはり皆リアナを買いかぶりすぎなのだ。まだ出会ったばかりのリアナにそこまで心を開くはずがなかった。
「あなたが話してくれないから、いろんな人からいろんな話を聞いた。狩り人になったきっかけや、五年間どこかへ行ってしまったこと、その間、城を管理してくれていた叔父さんとは仲が悪いこと、帰ってきたあなたが追い出してしまったこと」
「……余計なことをベラベラ喋る奴がいるんだな」
デュレンは怒っているわけではなかったが、呆れたような声でつぶやく。
「私が何も知らないままでいるのが嫌だったのよ」
デュレンが再びまぶたを閉ざす。
「今日は青狼を仕留めたんだ。ただ相打ちになった。仕留めた証拠の尻尾を持ち帰ることはできなかった。早くその場から離れないと他の獣が集まってきて喰われてしまうからな。満身創痍の俺にはもう戦う力は残っていなかった。教会の司祭の治癒魔法はどんな怪我も治すことはできるが、死んだ者を生き返らせる力はない。死んだら終わりだ」
ぞっと背筋が寒くなるような話を、デュレンは平常心で話していた。
「でも俺はまだ死ぬわけにはいかない。やるべきことはまだたくさん残っている。獣を狩った報酬なんてどうだっていい。俺は賞金のために狩っているわけではないから。ただ、この世からすべての獣を消し去りたいだけだ。でも実際は、狩っても狩ってもきりがない。奴らはまた現れ、数を増やし、根絶やしにすることができない」
「この世に狩り人はどのぐらいいるの?」
「それは俺にもわからない。ほとんどの狩り人は身を潜め、正体を明らかにしない。俺を狩り人だと知っているのもこの城の連中ぐらいだし、国王もそのことは知らないだろう。隠してはいないから風の便りで広まってる可能性もあるが。だが、俺の狩り場に他の狩り人が現れることは滅多にない。偶然の出会いから協力して狩ることもあるが、中には手柄のために出し抜こうとする奴もいるし裏切る奴もいる。狩り人になる理由は皆違うから、同じ狩り人だからという理由で安易に仲良くなるようなこともない。中には人を狩る狩り人もいるからな」
デュレンはそこまで言うと、疲れたように吐息した。
気まずくなったり息が詰まったりするようなこともなく、不思議とリアナも落ち着いてそこに座っていられた。
デュレンは黙ってまぶたを閉じる。眠っているわけではない。ただ目を閉じてじっとしている。
「訊いてもいい?」
「何を」
「あなたはどうやって狩り人になったの?」
デュレンが怪訝そうな顔で目を開けた。
「なぜ、そんなことを?」
「ロシアンナが、私が訊けば話してくれるかもって言っていたから」
デュレンがふっと笑った。
「そのことはまだ誰にも話してはいない。おまえに話すつもりもない」
「……そうよね」
やはり皆リアナを買いかぶりすぎなのだ。まだ出会ったばかりのリアナにそこまで心を開くはずがなかった。
「あなたが話してくれないから、いろんな人からいろんな話を聞いた。狩り人になったきっかけや、五年間どこかへ行ってしまったこと、その間、城を管理してくれていた叔父さんとは仲が悪いこと、帰ってきたあなたが追い出してしまったこと」
「……余計なことをベラベラ喋る奴がいるんだな」
デュレンは怒っているわけではなかったが、呆れたような声でつぶやく。
「私が何も知らないままでいるのが嫌だったのよ」
デュレンが再びまぶたを閉ざす。
「今日は青狼を仕留めたんだ。ただ相打ちになった。仕留めた証拠の尻尾を持ち帰ることはできなかった。早くその場から離れないと他の獣が集まってきて喰われてしまうからな。満身創痍の俺にはもう戦う力は残っていなかった。教会の司祭の治癒魔法はどんな怪我も治すことはできるが、死んだ者を生き返らせる力はない。死んだら終わりだ」
ぞっと背筋が寒くなるような話を、デュレンは平常心で話していた。
「でも俺はまだ死ぬわけにはいかない。やるべきことはまだたくさん残っている。獣を狩った報酬なんてどうだっていい。俺は賞金のために狩っているわけではないから。ただ、この世からすべての獣を消し去りたいだけだ。でも実際は、狩っても狩ってもきりがない。奴らはまた現れ、数を増やし、根絶やしにすることができない」
「この世に狩り人はどのぐらいいるの?」
「それは俺にもわからない。ほとんどの狩り人は身を潜め、正体を明らかにしない。俺を狩り人だと知っているのもこの城の連中ぐらいだし、国王もそのことは知らないだろう。隠してはいないから風の便りで広まってる可能性もあるが。だが、俺の狩り場に他の狩り人が現れることは滅多にない。偶然の出会いから協力して狩ることもあるが、中には手柄のために出し抜こうとする奴もいるし裏切る奴もいる。狩り人になる理由は皆違うから、同じ狩り人だからという理由で安易に仲良くなるようなこともない。中には人を狩る狩り人もいるからな」
デュレンはそこまで言うと、疲れたように吐息した。
0
あなたにおすすめの小説
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる