神速の大魔導師 〜使える魔法が一種類でも最強へと成り上がれます〜

Ss侍

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第16話 スカウト

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「ど、どうも……」


 何十人分もの目線が僕に向けられている。
 昨日は開けた場所で僕以外に注目されてる人も居たから良かったけど、今日はこの狭い部屋に僕一人が目的で皆んな集まっているからかなりの圧迫感を感じる。


「それで、どのような順番で話をするかねギアルくん」


 話す順番まで僕が決めていいのか。この校舎に来た順と言いたいところだけど、僕としては上位のギルドからお話を聞きたい。


「じゃあ、わかりやすく国内のギルド番付の序列順でお願いします。あと冒険者ギルドでない団体には申し訳ないですが、最後の方に回ってもらって……」
「ではそのようにお願いしましょう」


 用意された僕のための椅子の前に、序列順に並んでもらって先頭に来たのは優しそうな顔をしたおばあさんだった。
 この人のことは知っている。お姉ちゃんが去年まで所属していたギルド『赤ずきん』のギルドマスターだ。

 序列2位のギルドからスタートってことは、序列1位の『シンデレラ』は来ていない。
 一度事前に断った手前、顔を出しにくかったのか。それとも単純に昨日の時点でも僕に可能性を見出せなかったのか。
 どっちにしろ居たとしても僕は断るつもりだったから構わない。

 『赤ずきん』のギルドマスターが僕の目の前へ歩み寄ってきた。いよいよスカウトが始まる。


「ギアル・クロックスくん。ワタシは『赤ずきん』のギルドマスター、スワロですよ。君のお姉さんが所属していましたが、覚えていますか?」
「はい、存じております。……すいません、姉がホームシックになってたった一年で脱退してしまって。わざわざスカウトしていただいたのに」
「いいんですよ。あの子は常に家族への愛でいっぱいだった。家族に会えず日に日に弱っていくのをワタシはずっと見ていましたからねぇ……。今は元気ですか、あの子は」
「それはもう元気です」
「そうですか。それはよかった」


 お姉ちゃんに前から聞いていたとおり、かなり円満な別れ方をしたというのは本当みたいだ。
 

「そろそろ本題に入ろうかしらね。ギアルくん、見させていただきましたよ、昨日の活躍。あの子も天才の類でしたけど、まさか姉弟揃って_____」


 それらしい褒め言葉と、ギルドについての詳細がギルドマスターによって話された。
 正直このギルドに関しては.お姉ちゃんが所属候補として名前を挙げてから相応しいギルドかどうかを調べ尽くしたからよく知っている。
 ここはどちらかというと女性向けのギルド。男性も所属しているけれど、スカウト後のケアは女性にとって有利な内容になっている。
 僕は男だから恩恵は少なめかもしれない。でも、このマスターと直接お話しして、仮にお姉ちゃんの話題がしょっちゅう振られることになったとしも、ここでやっていくのも悪くないかなと思えてきた。


「だいたい、ワタシからはこんな感じですよ。後がつかえてますから、そろそろ順番を譲らなきゃね。お話を聞いてくれてありがとう」
「こちらこそありがとうございました」
「そうだ、帰りにあの子に顔を見せにいくわ。マーハちゃんにそう言っておいてくださいな」
「わかりました、姉に伝えておきます」


 『赤ずきん』のギルドマスターが僕の前から去ると、次のギルドのマスターが現れた。筋骨隆々なスキンヘッドの男性だ。
 この人のギルドは序列3位。名前は『青髭』。

 かなり力強く情熱的な喋り方で、力を求めている感じがヒシヒシと伝わってくる。実際、Sランクの冒険者の人数がこの国で序列1位の『シンデレラ』と同数、実力者揃いのようだ。
 例えばマホーク君みたいな人とは相性の良さそうなギルドだけど、僕には向かないかなと思った。

 その次は序列4位『ラプンツェル』。ギルドマスターは髪の長い綺麗で若い女の人。耳が長いことからエルフ族だと思われる。ギルド名は創設者であるこの人自身の名前らしい。
 ……序列が10位以上のギルドって四十年以上続いてるところしかなかったと記憶してるんだけど、この人何歳なんだろう。

 内容や条件の方はかなり良かったけど、このギルドはこの国の王都にはなく、別の街にある。
 正直ライバルであるアテスの活躍が耳に入りやすいよう、僕は王都に滞在したい。その上、今住んでるこの街からの距離が遠い。場所の問題で優先順位は低めだと判断した。

 それにしても、2位から4位が僕をスカウトしにくるとは。
 もちろん、向こうは僕が魔法を一種類しか使えない大魔導師だということをしっかり把握している。各々話の中でもそれに触れていた。……にも関わらずだ。
 内心、素直に喜んでおこう。

 さらにその次。やはり序列は5位。
 ギルド名は『ブレーメン』。ギルドマスターは三十歳前後にみえる男の人だ。


「俺はマルクト・ローランド。よろしく」
「よろしくお願いします」
「唐突だけど詳細を教える前に一つ聞きたいんだ。君、儀式についてどう思う?」
「儀式……ですか」


 僕の思っていることは世間と結構違う。少数派だという自覚がある。正直に答えていいものか……いや、今回は僕が選ぶ立場。もし思考がこの人と合わなくても他のところの話を受ければいいだけだ。


「僕、ある本に書かれていた『世間なんてアテにしてはいけない。人とは儀式で得た情報に縛られず、それぞれ個性を持って生きていくべきなのだ』という言葉が好きで」
「ほう……」
「間違いなく儀式は人の才能を判別してくれる神からの贈り物です。でも、それで判明した内容に頼りきって人のほぼ全てを評価している世間の流れは、少し、違うのではないかと思っています。それが僕の儀式に対する考えです」


 そう告げると、『ブレーメン』のギルドマスターは笑顔になった。満面の笑みそのものだ。
 そして僕に向けて身体を前のめりにし、顔を近づけてきた。まるで周り自分の話すことを聞かれないようにしているみたいだ。


「……一目見たときから、なんとなく君は儀式以外での個性を尊重する主義の人間なのではないかと思っていたけれど……まさか親父の本の愛読者だったとはね」
「えっ!?」
「その本の著者は間違いなく俺の親父だ。そして『ブレーメン』の創始者でもある。俺は2代目ってことだね。正直、感激している。……どうだろう、君には是非とも、うちに来て欲しい」


 まさかこの国の序列5位のギルドのマスターの父親があの本の著者だったなんて。
 本に表記されていた著作者名がこのマスターの名前とはかけ離れているけれど、たしかあの本のあとがきに「著者名は本名とは違う」と書かれていたから、これは十分あり得る話。
 こんなの予想もしていなかった。


「今の話を聞いてよりその気持ちが強くなった。……ああ、もちろん俺も親父や君と一緒の考えだ。あまり世間ウケが良くないから普段は隠してるけどね……。じゃ、改めてウチのことを教えようかな」


 前三つのどのギルドよりも話に集中したと思う。
 気がつけば僕も体が前のめりになっていた。




==========
(あとがき)
※次は明日の午後6時に投稿します。


 つい、こういう名前決める時ってグリム童話とかイソップ童話とかにしちゃうんですよ。なんかファンタジー感が出てくる気がして。そういえば一昨日、テレビでこの中の一つが放送されたばかりでしたね。


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