私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

文字の大きさ
111 / 378

110話 仕事の合間の旅行でございます!

しおりを挟む
「着きました!」


 青年が私達にそう呼びかける。
 そうか…もう着いたんだ。
 思ったより速かった気がする。
 おおよそ2日間半に及ぶ馬車の旅は、まあ…魔物と戦ったりしたけれど楽しいものだった。
 1日目にたくさん魔物が出たからか、その埋め合わせみたいな感じで2日目は全くでなかったし。
 冒険者間のイザコザも一回たりとも無かった。


「じゃあまた今度ね、アイリスちゃん」


 弓使いのお姉さんが、ロモちゃん達が呼んでいる私の名前を言いながら、まず、この馬車から一番初めに降りる。
 それに続いて次々と降りて行く冒険者達。
 最後に、私達3人が降りた。


「わぁ……っ! すごいよアイリスちゃん! 水がこんなに!」
「綺麗だねぇ…!」


 馬車から出た途端に口々に、自分の髪や目の色と同じ景色を見て眼を輝かせる双子の姉妹。
 この姉妹だけじゃなく先に出たもはや知り合いとなった冒険者達も、たくさんの水が一箇所に、それも視界では捉えきれない量存在するという景色に目を奪われているようだ。

 ____この街はとんでもなく広い湖の周辺に作られた、港町みたいな街。 
 というより、この湖自体が海と繋がってるから、この街を港町といっても差し支えないかもしれない。
 観光地としてかなり人気が高いらしいんだけど、そのほかにも魚がたくさん採れることは勿論、船の運搬業も盛んらしち。
 いろんな場所からいろんなものが入ってくるため、オークションとかも賑わっているのだとか。
 

「まずは指定された宿に行かなきゃね」
「そのあと観光しようね!」
「はい!」


 宿は私達を雇ってくれている観光会社が用意してくれてるの。冒険者達はみんな同じ宿なんだってね。
 宿泊費は雇い主側持ちで、5日間何もかも全部タダ(昼食と夕食は自前)。
 大量の魔物と難なく戦える力量があることが前提だけれど、こんなに素敵な仕事はないと私は思うの。

 馬車の停留所から近いその宿に行って入り、ほんとんど無い荷物を置く。
 私達の部屋は二階で、窓から湖の綺麗な景色が眺めることができる素敵なところ。
 ベッドは2つ。
 2つということは、今日も挟まれて眠れるわけだ。
 うへへひひひっ。


「まずはどこ観光しよーか?」
「観光の前にお昼ご飯食べようよ、お姉ちゃん! お腹空いちゃった」
「それもそうだね」


 お昼ご飯はまだ食べてないもんね。
 というわけで私達は、観光がてら街の中をブラブラしながらお店を探すことにした。


「わぁ…! お魚屋さん多いね!」
「ねー。あ、見てあれ! 水芸だって!」


 私の手を引きながら、二人はその水芸師とそれに群がってる人々の中に入っていった。
 

「すご…わぷ」
「あはははー、ロモン顔にかか…わぷ」
「お二人とも…顔を…わぷ」


 まるで天に昇る蛇のように畝る水や、霧のように分散されながら噴出する水など、まあ、なんだか主に噴水みたいな感じのものが多かったけれど、とになく水芸が顔にかかりまくる。化粧してたらどうするのか。
 しばらくして水芸が終わる。
 ちょっと張り合いたい。
 実は私の方がすごいことできるんですよーって張り合いたいけど、やめておく。


「良かったねー」
「面白いもの見れたのでは無いでしょうか」
「うん、また見かけたら見よ…ん?」


 顔にかかった水をハンカチで拭きながら、私達はお店を探してると、ロモンちゃんが途中で歩みをやめ、立ち止まった。
 そして、ある方向を見る。


「どうしたんです?」
「いや…あれ、あれの客引きが聞こえたの」


 ロモンちゃんは自分が向いてる方を指差した。
 私達はそちらを見る。
 そこでは、魚屋のおっさんらしき風貌の人が、大声で繰り返し同じことを叫んでいた。


「あぁーい! よってらっさいみてらっさい! 己の胃袋に自信がある人を募集中だよ! この巨大な食用魔物『カニーラ』を、一人で制限時間内に食べきれる人を大募集中! 60分以内に全部食べきった人は……豪華景品が贈られます!」


 本当にでかい…デカすぎるカニだ。
 人の股から頭ぐらいの大きさがあるんじゃないだろうか。
 一人の太ってる男の人がそれにがっついている。
 だけどその手がめちゃくちゃ遅い。
 もう限界なんだろうか、少し震えてる気がするけど______


「も…もぉ無理ぃ…」
「ああっと、はい残念! 時間デスゥ! 挑戦料金2万ストンお支払い頂きますよぉ。さあ、よってらっさい!!」


 さて。 
 ロモンちゃんがあれに気がついたわけはよーくわかった。


「挑戦……なさるんですか?」
「勿論!」
「すごく胃袋に自信があるからね、ボク達は」


 二人同時に、私にやる気を示すのかガッポーズをとった。
 目が…目が湖を見てる時より輝いてる気がするわ。


「じゃあ…行ってくるよ!」


◆◆◆


「ひぇ…っ」


 お店の客引きをしていたおじさんが、小さくそう叫んだ。
 私もそう叫びたい気分だよ。

 
「ぷふー。ご馳走様でした!」
「美味しかったです! 何分でしたか?」


 赤ちゃんでも居るんじゃないか、妊娠何ヶ月目なんだろうかと訊きたくなるような、そんか膨らんだお腹をさすりながら、大食い美人姉妹は満足そうに、店員さんにそう訊いた。
 いつの間にか、あの水芸師の前よりすごい人だかりができてるし。
 震える手でおじさんが、持っていた時計を見て…。


「よ、よよ、41分です…」
「あー、40分きらなかったかー」
「残念。蟹味噌が重かったのかも」


 いや、十分じゃないですかね?
 あ、ちなみに私は普通に女性一人分用の蟹さん食べてます。これだけで私は満腹ですので。


「おじさん、景品てなんですか?」
「け、景品は…ですね。この食事代無料と…このチケットでして…」


 二人が渡されたのはどうやら、観光用の船のチケットみたい。
 ニコニコしながら、ぷくっくりと膨らんだお腹を持つ姉妹はそれを受け取った。
 野次馬の視線がすごいことに二人は気がつかないのかな? ロモンちゃんなんて緊張しいだったのに。
 あれか、大会で度胸でもついたか。


「やったよアイリスちゃん、あとで行こうね!」
「一人分のお金で済むね」


 重い腰を上げながら、こちらに駆けてくる可愛らしい二人。
 うーん、このお腹は妊娠5ヶ月くらいか…?
 ここまでになるのは初めて見るけど…。


「あ…お腹? お腹はすぐに元に戻るから気にしないでね、アイリスちゃん」
「ふ…太ってなんかいないよ! ちょっと膨れてるだけだからね」


 ジロジロ見すぎていたのか、ロモンちゃんとリンネは頬を赤らめながらそんな言い訳をする。


「いえ…大丈夫かな、と心配していただけですよ。太ったなんて微塵も考えおりません。それはさておき、舟にのっての観光はお二人だけで行ってくると良いでしょう」


 余計なお金なんてかけさせる必要ないからね。
 それに…。


「えーっ、なんで、なんで!」
「一緒に行こうよ!」
「いえ…その、私は個人的に寄りたいところがあるので…」
「むーっ」

 
 やんわりと断ってみるも、二人はなかなか納得してくれない。
 ……仕方ない、オークションは毎日やってるらしいし________


「そうですね、すいません。ちょっと付き合いが悪かったです。行きましょう」
「やたー!」



########

次の投稿は1/9です!
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...