私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

文字の大きさ
366 / 378

357話 私の記憶でございます。 5

しおりを挟む
「これで全員?」
「ええ、そのようです」


 今度の場面はいつごろだろう。私も勝負くんも髪・目・肌の色以外は今とだいぶ近くなっているから、高校生活も終盤に入った頃と考えて良さそうだ。

 そして地面には六人ほどの拳銃をもった暴漢が転がっている。全員、私と彼にのされた後のようだ。


「二人ともどこか傷はない?」
「おかげさまで」
「今日もありがとう、勝負さん」
「いえいえ、なんのなんの」


 これが何回目かの襲撃かはわからない。おそらく二桁を超えた頃だろうとは思う。だがらだろう、相手が拳銃を持っていたにもかかわらず私達全員の表情に慌てたような素振りがない。慣れ切っている。

 ……勝負君もとい、ガーベラさんがこの場にいる理由は簡単だ。私に前で宣言した『できる限り助けに行く』というのを実行しているんだ、この人は。


「でも勝負さんが助けたいのって私じゃなくて、ばぁやでしょ? ばぁやのために今回含めて5回も……うーん、妬けるなー!」
「……! あ、いや……その……俺の正義感がこういった暴挙を許さないだけですから……!」
「だってさ、ばぁや。どう思う?」
「さぁ、私には何とも」


 お嬢様は少なくとも勝負くんの気持ちの方には気がついてるみたいだ。この頃の私は彼に対して何て思ってたか、なんとなく思い出しつつある。
 たしか、『こんなたびたび都合よく助けに現れるとは、まさか私のストーカーか?』『でもまあ彼ならいいか』……って感じだったような。


「……っと、こんな時間だ! 俺、掃除当番だった! それじゃ!」


 少し赤い顔をした勝負くんは走り去っていった。おそらく私が走っても追いつけない速さで。身体能力だけならこの頃から彼の方が上だった。
 まあ、この昔の私が彼を追いかけるなんてことしないでしょうけれど。


「あ、行っちゃった。本当にお世話になってるし、今度菓子折りでも送ろうか」
「そうですね」
「それともばぁやを送ろうか……」
「私を送ってなにかなるんですかね?」
「あ、やっぱり気が付いてない?」
「……?」
「まあまあ、気にしなくていいよ。いつものように警察に連絡して授業に戻ろ、ばぁや」
「ええ、そうですね」


 ああ、そうだそうだ。お嬢様の命を狙ってる一味は結構前から普通に学校まで侵入してきて襲ってきてるんだった。たぶん、この時はお昼休みが何かだ。
 ……昔の私の日常だったとはいえ物騒すぎる。まだ、魔物と自分から戦っていた方が安全かもしれない。


◆◆◆


「入れ」
「失礼します」


 今度はお父様に呼び出された。
 お父様は昔の私を神妙な面持ちで眺めている。……正直、私とお父様の仲はあまり良くなかった。お嬢様が私の前で、私の両親の話をあまりしようとしないくらいには。

 いや、仲良くないというよりお互い興味がなかったと言った方がいいのかもしれない。仕事が忙しすぎてもう何年もろくに話していないから。
 今こうしてみても、お父様の私に対する扱いは自分の子供というよりは仕事の後輩、親しくない他人だ。


「お久しぶりでございます、お父様」
「話は聞いています。お嬢様をきちんとお守りできているようだですね」
「当然の役目ですので」
「ですが、噂だと最近、道場のあの息子さんと親しげにしているらしいではないですか。……あなたに色恋沙汰などしている暇はないことは、理解していますね?」
「え? ええ」
「そもそも、我々は決められた相手としか結婚してはなりません。それをゆめゆめ忘れぬよう」
「承知しております」


 無難な返事。しかしお父様は納得した様子は見せていない。というより今の返答のせいで怒っているようだった。
 この時の私自身は、なぜお父様がより不機嫌そうになったのか、よくわかっていなかった記憶がある。

 だが、父様と同じ位置について同じ目線から私自身を見て、その謎が今解けた。……昔の私の目が赤くなり、見る人から見れば泣きそうだと判断できる表情をしているのだ。


「……はぁ。まあいいでしょう。要件はそれだけじゃありまけん。愛理、あなた、高校で教員にに将来の夢は『イケメンのお金持ちと結婚して玉の輿になる』と言ったそうですね。授業の一環で」
「ええ、その頃ちょうどお嬢様と生まれ変わったらどうしたい、というお話をして、そのような結論がでましたので。夢は夢ですから、言うだけ良いかと」
「石上家の人間がそんなんじゃダメなのです。あなたはお嬢様の側近、右腕! 成績は優秀とはいえ、考えがそのようではいけません。最近ではお嬢様はこんな古臭い従事制度を無くし、我々を自由にしたいと仰っていると聞きます。あなたがなにか吹き込んだのではないですか?」
「いえ、そんなことは……」
「だいたい……」


 お説教が始まった。ようするに、軟弱な考えをし始めている昔の私を叱りたかったらしい。お嬢様に影響が出始めていることも疑っているようだ。これだから不仲だなんて言われる。

 でも、お父様はお父様でこの従事する伝統を守り続けたきだけなんだ。これが私達石上家にとって最高の人生だと、名誉あることだと、そう本気で考えているから。

 昔の私は何も言わずただ怒られているが、今の私でもお父様のことを考えたら同じ状況で反論なんてできないでしょう。
 そもそも彼の観点から見たら今の私なんてまるで別人みたいだろうし。……一回記憶を無くしてから形成された人格だから、それもあながち間違いではないけれど。

 もし、もし地球に戻ったら今の私のずいぶん軟化した性格を見て、お父様は何ていうのかしら。


◆◆◆


「旧校舎に……ですか?」
「そうなんだ」


 高校も卒業間近となった頃の場面。
 昔の私は、教員の一人から学校の旧校舎の様子を見てきてくれないかと頼まれた。なんでも、不審者が入り浸っている気配があるらしい。

 そこで、数々の死戦をお嬢様を守りながらくぐり抜けてきた猛者である私に様子を見てきて欲しいのだという。


「確かに私は強いです。しかしそれは、いち女子生徒に頼む内容ではないかと思います。それこそ、警察へ行くべきでしょう」

 
 昔の私のその言葉は正論でしかない。仮に私がガーベラさんのように強い男性だったとしても、普通、教師は生徒にそんなことを頼まない。
 その教員は昔の私の返答を聞くなり、やけに口角を上げ、責め立てるように言葉を続けた。


「それじゃあダメなんだよ、石上さん。まあ、流石に校内成績1位がこんな子供騙しじゃ動かないか。では本当のことを伝えよう。蛇神の娘は預かった。旧校舎にいる。一人で来い」
「なっ……!?」


 途端に寒気がした。昔の私でなく、今の私が。なぜなら私は、この日より先の記憶が……思い出そうとしても思い出せないから。そのことに今、気がついたから。
 そう、そうだ。強烈に記憶が残っているのはこの直後まで。ここから先の記憶は……記憶は……!

 
「くっ……」


 昔の私は走り出した。お嬢様が居るであろう旧校舎まで向かって。
 昔の自分を掴んで冷静になれと声をかけたい。しかし、それは不可能なことだった。そもそも今までずっと、記憶の中では地面や壁以外にどこにも触れることはできなかったのだから。


「お嬢様……!」


 昔の私は旧校舎へたどり着き、出入り口を蹴破って中に入った。
 お嬢様のことを呼びながら、中を散策する。そして3階の教室の一室にて、返答があった。


「え!? ばぁや!?」
「お嬢様!!」


 そこにはお嬢様が居た。しかし、特に拘束されているわけでもなく、ただ、普通にそこに佇んでいるだけだった。


「な、何でここにいるの? ばぁや」
「あ、あれ……私、お嬢様が緊急事態と……」
「私は別に何ともないよ」
「では何故ここへ?」
「それは、先生から用事があるからって呼ばれて……」


 嫌な予感しかしなかった。……今の私だから言える、その予感は当たっていた。
 

「しまった! お嬢様、これは罠です! 早く逃げなければ!」
「う、うん!」


 お嬢様の手を乱暴に引き、この教室から出ようとしたその時だった。巨大な爆発音があたりに響き、旧校舎全体が揺れる。
 この旧校舎の一階のからだった。窓には黒い煙が登っている様子が見える。


「きゃっ!」
「だ、大丈夫です。お嬢様、私が必ず御守りしますから……!」


 私は、それが無理なことを知っている。





#####

次の投稿は2/2の予定です。
変更がある場合はこの欄に事前に連絡いたします。

追記
予定変更します。卒業論文の発表会があり疲労したため、次の投稿は2/9にします。申し訳ありません。

さらに追記
すいません、今回も書ききれませんでした。明日か明後日に投稿します。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処理中です...