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215話 デート当日でございます! 2
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「美味しそうですね」
「うん」
頼んだ物が届いた。見た目的にも、やはり普通はランチじゃ使わないような金額をかけたとわかる。
私のトマト煮込みも、ガーベラさんのも美味しそう。
そうだ、こういうとき彼女って、彼にアーンってしてあげるのが普通じゃないのかしら。
初デートだけどやった方がいいかなぁ? 恥ずかしいなぁ。
でもその方がガーベラさん、喜んでくれるかしら。
私からの食べさせる行為なんて、価値があるのかどうか。……い、一応やってみようかな、この際だし。
「あ、あの!」
「なんだい?」
「ひ、一口食べてみますか……?」
私はほぼ無意識に切り分けていた鶏肉を一口分、フォークで刺して彼に向けた。ガーベラさんは目を丸くして、私とフォークを交互に見る。
「いいの?」
「ど、どうぞ! お嫌でなければ!」
「そっか、付き合ってるもんね。じゃあもらおうかな」
ガーベラさんの頬が少し赤くなった気がする。私の持っていたフォークの先から、ガーベラさんは鶏肉を口の中に入れた。こ、これがアーンってやつか!
何故だか懐かしい感じもするし……新鮮な感じもする。
「ん、美味しい。俺からもやった方がいいかな?」
「私はっ……!」
まって、別にいらないだなんて言うわけにはいかない。今私が食べさせて、向こうからお返しにやってあげると言われた。
じゃあなんて答えをだすべきか。それはたぶん、彼のことが生理的に無理じゃない限り断るべきじゃない。
私の彼氏だものね、ええ。私からやり出したことだし……それに恥ずかしいだけで嫌ってわけじゃないじゃない?
「いただきます」
向けられたフォークに口をつける。味……そんなのわかんない。こ、こんかにドキドキするものだったのねこれって。ガーベラさんも実はドキドキして味がわからなかった……とかないかな。私に対してドキドキしてくれてるみたいだし、見る限り。
「どう?」
「……美味しい」
「そ、それは良かったです!」
さ、さて、そろそろちゃんと目の前のものを食べないと。あんまり惚気ててもご飯が冷めてしまう。
フォークを再び持ち直すと、とあることを思い出した。
そう、これに一番最初に口をつけたのは私ではなくガーベラさん。
つまり、このまま食べたら関節キスってことになる。
ま、まだ付き合い始めたばっかりなのにキスなんて早いよ……! そっか、そこまで計算してから行動すべきだった。紙ナプキンで先を拭くのは有りえないほど失礼だし、ガーベラさんのことを不潔だと思ってしまっているということになる。
イケメンだから本当はこのままパクついちゃっても全然いいんだけど…!
「ねー、お母様、どうしてあそこのお二人は、同じポーズのまま、フォークを見て固まってるのですか?」
「あら、あれはお付き合いを始めたばっかりで、すこしお互いの中に到達してないことをしちゃったところね。ふふふ、若いって素敵ねー」
このまま固まってるわけにもいかないか。とりあえず……鶏肉を一口、このフォークで刺して口の中に入れた。本当は匂い的にきついトマト味がするんでしょうけれど、また味が全然わかんないや。
ううん、もしかしたら実はこれがガーベラさんの味なのかしら。
◆◆◆
「お、美味しかったね」
「そ、そうですね!」
どうしよう、最後の最後まで味がわからなかった。
それにまた彼の顔をまともに見れない。さっきどこかのご家族が身の丈に合ってないことをしていると言っていたような気がしたけど、本当にその通りかも。まだ早かったのかしらね。
「次はどこに行きますか?」
「……遊園地とかって言いたいところだけど、そんなものないしな。路上パフォーマーがたくさん集まっているところにでも行こうか」
「そんなところがあるんですか?」
「うん、ここからちょっと遠いけどね」
まだ町の半分くらいしか見て回ったないから知らなかった。ガーベラさんは道案内をするように歩いてくれる。私はその斜め後ろをついて行く。
今は隣で並んで歩くの恥ずかしい。
20分ほど、お互いに無言でひたすら目的地へと歩いていた。
「ああ、ついた」
「おお…面白そうなところですね」
ガーベラさんの言う通り、路上パフォーマーや屋台、露店や行商などさまざまな物がずらりと集まっている。
人もかなり多い。
「見て回ろうか」
「はいっ!」
カットしたフルーツを売ってる屋台に、ジャグリングをしている人、爆発魔法でド派手にパフォーマンスしている人、楽器を持っている人、本当にさまざま。
バイオリンのような楽器をもった人が気になり、私はその前で立ち止まった。
「ん、聴いてくのか?」
「はいっ……お願いします」
こういうのの相場がわからないから、とりあえずおひねりを入れるための帽子に3000ストンくらい入れておいた。バイオリンの人は深々とお辞儀をする。
「ありがとうございます……お二人はみたところ、お付き合いをされているようですね」
「はい……えーと、実は今日初デートでして」
「なるほど、それならば明るく甘酸っぱい恋の一曲を、どうぞ」
なんだかまともに音楽を聴くのってすごーく久しぶりな気がする。私も少しは弾けるような気がするけれど……なぜかやってみようとは思わない。
バイオリンの人の演奏は4分ほどで終わった。確かになんだか恋してる気分になる曲だったわ。
パチパチと拍手をする。
「どーも。それではデートを楽しんで」
「はいっ。ガーベラさん、次行きましょう!」
「すっかり楽しんでもらえてるようで良かったよ」
あの曲を聴いて、別に付き合うことに恥ずかしがるなんてことはないんだとちょっと気が付かされた。
もう一回、ガーベラさんの隣に並んで歩いてみる。うん、さっきよりは大丈夫かな。
「あれ見ていかない?」
「魔法芸ですね、いいですよ」
と、まあ色んなところをそうやって見て回った。私の感覚的には、だんだんとデートというより友達と遊んでる感覚の方が大きくなっていったけど、でも、案外付き合うってそんなものなのかもしれない。
結構楽しく過ごしたので時間もあっという間にたち、私とガーベラさんは夕食を食べにレストランに入った。
これまたちょっと高そうなところ。
「お酒飲む?」
「いえ、あの場でしか基本飲みませんので」
「そっか。じゃあ俺も……その、アイリス」
「はい?」
改まった顔でガーベラさんは私を見つめた。
思わず私もガーベラさんを見つめる。
「これからも付き合いを続けてくれる?」
「ええ、告白されてオーケーしたのですから、勿論」
「そっか、良かった……いや、このデートがアイリスにとって楽しくなかったらどうしようと思っていたんだ」
「そんなの杞憂ですよ、十分に楽しめました」
うん、男の人とこうやって遊ぶのも悪くないかなーって思った。ただ、それはやっぱりガーベラさんくらい信頼できる人とじゃないと終始身構えちゃってそうだけど。
ええ、きっとガーベラさんだからこそ楽しかったんだと思う。
「あの、今日……デートに誘ってくださってありがとうございました」
「いや、こっちこそ……半ば俺のワガママのようなものだし」
「ふふ、でもやっぱり私、ガーベラさん好きみたいです」
「えっ……あ、うん!」
「これからもよろしくお願いします」
ディナーはなんかちょっといつもと違う味がした。
代金は見栄を張らせてくれとガーベラさんが全部持ってくれる。それから私達が泊まっている宿屋の前まで送ってくれ、そこで今日のデートを終わりにした。
きっと、明日から色んな人にいじられるんでしょうね。
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次の投稿は3/8です!
「うん」
頼んだ物が届いた。見た目的にも、やはり普通はランチじゃ使わないような金額をかけたとわかる。
私のトマト煮込みも、ガーベラさんのも美味しそう。
そうだ、こういうとき彼女って、彼にアーンってしてあげるのが普通じゃないのかしら。
初デートだけどやった方がいいかなぁ? 恥ずかしいなぁ。
でもその方がガーベラさん、喜んでくれるかしら。
私からの食べさせる行為なんて、価値があるのかどうか。……い、一応やってみようかな、この際だし。
「あ、あの!」
「なんだい?」
「ひ、一口食べてみますか……?」
私はほぼ無意識に切り分けていた鶏肉を一口分、フォークで刺して彼に向けた。ガーベラさんは目を丸くして、私とフォークを交互に見る。
「いいの?」
「ど、どうぞ! お嫌でなければ!」
「そっか、付き合ってるもんね。じゃあもらおうかな」
ガーベラさんの頬が少し赤くなった気がする。私の持っていたフォークの先から、ガーベラさんは鶏肉を口の中に入れた。こ、これがアーンってやつか!
何故だか懐かしい感じもするし……新鮮な感じもする。
「ん、美味しい。俺からもやった方がいいかな?」
「私はっ……!」
まって、別にいらないだなんて言うわけにはいかない。今私が食べさせて、向こうからお返しにやってあげると言われた。
じゃあなんて答えをだすべきか。それはたぶん、彼のことが生理的に無理じゃない限り断るべきじゃない。
私の彼氏だものね、ええ。私からやり出したことだし……それに恥ずかしいだけで嫌ってわけじゃないじゃない?
「いただきます」
向けられたフォークに口をつける。味……そんなのわかんない。こ、こんかにドキドキするものだったのねこれって。ガーベラさんも実はドキドキして味がわからなかった……とかないかな。私に対してドキドキしてくれてるみたいだし、見る限り。
「どう?」
「……美味しい」
「そ、それは良かったです!」
さ、さて、そろそろちゃんと目の前のものを食べないと。あんまり惚気ててもご飯が冷めてしまう。
フォークを再び持ち直すと、とあることを思い出した。
そう、これに一番最初に口をつけたのは私ではなくガーベラさん。
つまり、このまま食べたら関節キスってことになる。
ま、まだ付き合い始めたばっかりなのにキスなんて早いよ……! そっか、そこまで計算してから行動すべきだった。紙ナプキンで先を拭くのは有りえないほど失礼だし、ガーベラさんのことを不潔だと思ってしまっているということになる。
イケメンだから本当はこのままパクついちゃっても全然いいんだけど…!
「ねー、お母様、どうしてあそこのお二人は、同じポーズのまま、フォークを見て固まってるのですか?」
「あら、あれはお付き合いを始めたばっかりで、すこしお互いの中に到達してないことをしちゃったところね。ふふふ、若いって素敵ねー」
このまま固まってるわけにもいかないか。とりあえず……鶏肉を一口、このフォークで刺して口の中に入れた。本当は匂い的にきついトマト味がするんでしょうけれど、また味が全然わかんないや。
ううん、もしかしたら実はこれがガーベラさんの味なのかしら。
◆◆◆
「お、美味しかったね」
「そ、そうですね!」
どうしよう、最後の最後まで味がわからなかった。
それにまた彼の顔をまともに見れない。さっきどこかのご家族が身の丈に合ってないことをしていると言っていたような気がしたけど、本当にその通りかも。まだ早かったのかしらね。
「次はどこに行きますか?」
「……遊園地とかって言いたいところだけど、そんなものないしな。路上パフォーマーがたくさん集まっているところにでも行こうか」
「そんなところがあるんですか?」
「うん、ここからちょっと遠いけどね」
まだ町の半分くらいしか見て回ったないから知らなかった。ガーベラさんは道案内をするように歩いてくれる。私はその斜め後ろをついて行く。
今は隣で並んで歩くの恥ずかしい。
20分ほど、お互いに無言でひたすら目的地へと歩いていた。
「ああ、ついた」
「おお…面白そうなところですね」
ガーベラさんの言う通り、路上パフォーマーや屋台、露店や行商などさまざまな物がずらりと集まっている。
人もかなり多い。
「見て回ろうか」
「はいっ!」
カットしたフルーツを売ってる屋台に、ジャグリングをしている人、爆発魔法でド派手にパフォーマンスしている人、楽器を持っている人、本当にさまざま。
バイオリンのような楽器をもった人が気になり、私はその前で立ち止まった。
「ん、聴いてくのか?」
「はいっ……お願いします」
こういうのの相場がわからないから、とりあえずおひねりを入れるための帽子に3000ストンくらい入れておいた。バイオリンの人は深々とお辞儀をする。
「ありがとうございます……お二人はみたところ、お付き合いをされているようですね」
「はい……えーと、実は今日初デートでして」
「なるほど、それならば明るく甘酸っぱい恋の一曲を、どうぞ」
なんだかまともに音楽を聴くのってすごーく久しぶりな気がする。私も少しは弾けるような気がするけれど……なぜかやってみようとは思わない。
バイオリンの人の演奏は4分ほどで終わった。確かになんだか恋してる気分になる曲だったわ。
パチパチと拍手をする。
「どーも。それではデートを楽しんで」
「はいっ。ガーベラさん、次行きましょう!」
「すっかり楽しんでもらえてるようで良かったよ」
あの曲を聴いて、別に付き合うことに恥ずかしがるなんてことはないんだとちょっと気が付かされた。
もう一回、ガーベラさんの隣に並んで歩いてみる。うん、さっきよりは大丈夫かな。
「あれ見ていかない?」
「魔法芸ですね、いいですよ」
と、まあ色んなところをそうやって見て回った。私の感覚的には、だんだんとデートというより友達と遊んでる感覚の方が大きくなっていったけど、でも、案外付き合うってそんなものなのかもしれない。
結構楽しく過ごしたので時間もあっという間にたち、私とガーベラさんは夕食を食べにレストランに入った。
これまたちょっと高そうなところ。
「お酒飲む?」
「いえ、あの場でしか基本飲みませんので」
「そっか。じゃあ俺も……その、アイリス」
「はい?」
改まった顔でガーベラさんは私を見つめた。
思わず私もガーベラさんを見つめる。
「これからも付き合いを続けてくれる?」
「ええ、告白されてオーケーしたのですから、勿論」
「そっか、良かった……いや、このデートがアイリスにとって楽しくなかったらどうしようと思っていたんだ」
「そんなの杞憂ですよ、十分に楽しめました」
うん、男の人とこうやって遊ぶのも悪くないかなーって思った。ただ、それはやっぱりガーベラさんくらい信頼できる人とじゃないと終始身構えちゃってそうだけど。
ええ、きっとガーベラさんだからこそ楽しかったんだと思う。
「あの、今日……デートに誘ってくださってありがとうございました」
「いや、こっちこそ……半ば俺のワガママのようなものだし」
「ふふ、でもやっぱり私、ガーベラさん好きみたいです」
「えっ……あ、うん!」
「これからもよろしくお願いします」
ディナーはなんかちょっといつもと違う味がした。
代金は見栄を張らせてくれとガーベラさんが全部持ってくれる。それから私達が泊まっている宿屋の前まで送ってくれ、そこで今日のデートを終わりにした。
きっと、明日から色んな人にいじられるんでしょうね。
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