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第一部
第41話 俺からのエール 前編
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「さて……まずはお集まりいただいき感謝する、と言うべきなのかな? 何で集められたのか知っているのか?」
俺はドロシア嬢以外の三人のうち、現状、一番しっかりとした返答ができそうな、ブリギオに目線をむける。
彼はいかにも深刻そうな声色で、ゆっくりと返答し始めた。
三日前も彼が四人のまとめ役みたいな立ち回りをしていたからな、とりあえず迷ったらこの人に話を振れば間違いなさそうだ。
「我々はドロシアに、一度君とじっくり話をするべきだと提案を持ちかけられたんだ。それ以外は何も聞いていない」
「つーかよ、その提案されてすぐに『明日本人と約束してあるから』つってよ、少し驚いたぜ」
「……ん、ごめん」
なるほど、ドロシア嬢は俺と約束があること以外ほぼ何も話していないわけか。
まあ、仲間のためを思って単独で行動したことを自白するだなんて、俺みたいな性格じゃなければ、できるもんじゃないよな。
そして、この状況は好都合だとも言える。
今はとにかく、最終的にこの三人を励ませばいい。
その励まし方の自由が俺という紳士に委ねられているってわけだから、とてもやりやすいわけだ。
早速、話を進めよう。
「そうか。まあ、結論から言うと俺はアンタらを元気づけるためにココに居るんだ。聞いた噂じゃ、何人かは引退を考えるほど思い詰めているらしいな?」
そう問うと、黙ってしまうか、答えようとしているが口をパクパクさせるだけで声が出せていない……そんな反応を見せた。
まあ、この反応自体が今の答えみたいなもんだよな。
「……ったく、おかしい話だよな。俺はこんなに元気なのに、アンタらの方が思い詰めてる。俺はもうあの程度のこと、これっぽっちも気にしていないんだがな」
ていうのは嘘で、今でもロナの成長を見るたびに俺も魔法とか術技とか使って、レベルも上げられて、カッコよく、強くなりたいとは思ってしまうが……それは、今は必要のない感情だ。
そして俺の言葉に、ここで初めてカカ嬢が顔を上げた。
目を赤くし涙ぐんだ上目遣い……精神的には大人なレディだろうから失礼な例えではあるが、その表情を見ると幼い子供を泣かしてしまった気分になる。
「あ、あの程度なんてことは無いのです……! あ、アタシは、アタシはキミに本当に大変なことを……したのですよ……?」
「いいや、それは一つ間違いがあるぜ。キミが俺を呪ったんじゃないのさレディ。あれは俺が勝手に動いて、あの箱のキャッチに失敗しただけ。いうなら俺がしたいことをして呪われただけなんだよ」
「そ、それは……」
そもそも、リオが彼女を脅かさなければ何も起こらなかったが……様子を見るに本人もかなり反省してるし、彼を責めるのはこの集まりの趣旨と真反対のことだから伏せておこう。
「あー、あと、価値観も違うな。俺ってやつは多才でな。あの日去り際に言ったように、農家だろうが商人だろうが、あとは料理人とかか? やろうと思えば何でもできるんだ。だから俺からしてみればあんたらが何でそこまで深刻に捉えてるかがサッパリなのさ」
「「「……」」」
うーん、これだけあの出来事を気にしていないとその被害者本人が伝え続ければ、ある程度は気持ちが軽くなってくれるもんだと考えて今まで発言してみたが……まだ足りないみたいだな。
『強制互角』のことは切り札だからもう少し寝かせておくとして、次は……そうだな、彼らの強い責任感やクソ真面目さを逆手にとって説得してみるか。
「……まあ、反省することは非常にいいことだと思うぜ? アンタらSランクの冒険者なんて地位を手に入れてるにも関わらず、こうしてイチ初心者に対して悲しみ、心を痛めてる。とても立派な話だ。でもわからないか? その反省のしすぎがむしろ大勢を苦しめるってことを」
「ど、どういう意味だよ、それ」
「ちょっと考えればいい話さ。アンタらは四人ともSランク、いわばギルドの看板を背負ってる人間だ。そんなのが全員揃っていつまでも暗く深刻なムードでいてみろ。他のギルドメンバーやギルド自体の周囲の評価はどうなる? それでどんな支障が出る? 依頼とかどうなるよ。俺一人なんかじゃない、より身近でよりたくさんの人が困ると思わないか? 既に俺本人に話しが届くまでになっているんだぜ?」
ま、ヘレストロイア解散の危機ってのも、ギルド全体が暗くなってるってのも、ドロシア嬢本人から聞いた話だ。
だから本当はどれほどこれらの噂が世間に広まってるかはわからないのが本音なんだが、そんなことはどうだっていい。
「お……お前、なんかうちのギルドマスターみたいなこと言うな」
「ああ、全くだ」
「……わかる」
「どう見てもアタシ達の方が年上なのに……。とても立派なのです」
「そうか? ふっふっふ……ま、俺はスーパー紳士だからなっ! このくらいは当然さ」
む、急に褒められたらちょっと照れる。
やっぱり人を謝らせるより、褒められるほうが気分がいいよな。
それにさっきのはなかなか有効だったようで、ドロシア嬢とリオはもうすっかり気分が立ち直りつつあり、カカ嬢とブリギオは『彼(俺)がそう言うなら考え直してみよう』と思っていてそうな顔つきになった……気がする。
半ば俺が一方的に話しただけだが……まあ、人の気分を良い方向に変えるんだったらこれで間違いなかったはずだ。
これならあともう一押しから二押しすればパーフェクトに解決できるかもな。
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俺はドロシア嬢以外の三人のうち、現状、一番しっかりとした返答ができそうな、ブリギオに目線をむける。
彼はいかにも深刻そうな声色で、ゆっくりと返答し始めた。
三日前も彼が四人のまとめ役みたいな立ち回りをしていたからな、とりあえず迷ったらこの人に話を振れば間違いなさそうだ。
「我々はドロシアに、一度君とじっくり話をするべきだと提案を持ちかけられたんだ。それ以外は何も聞いていない」
「つーかよ、その提案されてすぐに『明日本人と約束してあるから』つってよ、少し驚いたぜ」
「……ん、ごめん」
なるほど、ドロシア嬢は俺と約束があること以外ほぼ何も話していないわけか。
まあ、仲間のためを思って単独で行動したことを自白するだなんて、俺みたいな性格じゃなければ、できるもんじゃないよな。
そして、この状況は好都合だとも言える。
今はとにかく、最終的にこの三人を励ませばいい。
その励まし方の自由が俺という紳士に委ねられているってわけだから、とてもやりやすいわけだ。
早速、話を進めよう。
「そうか。まあ、結論から言うと俺はアンタらを元気づけるためにココに居るんだ。聞いた噂じゃ、何人かは引退を考えるほど思い詰めているらしいな?」
そう問うと、黙ってしまうか、答えようとしているが口をパクパクさせるだけで声が出せていない……そんな反応を見せた。
まあ、この反応自体が今の答えみたいなもんだよな。
「……ったく、おかしい話だよな。俺はこんなに元気なのに、アンタらの方が思い詰めてる。俺はもうあの程度のこと、これっぽっちも気にしていないんだがな」
ていうのは嘘で、今でもロナの成長を見るたびに俺も魔法とか術技とか使って、レベルも上げられて、カッコよく、強くなりたいとは思ってしまうが……それは、今は必要のない感情だ。
そして俺の言葉に、ここで初めてカカ嬢が顔を上げた。
目を赤くし涙ぐんだ上目遣い……精神的には大人なレディだろうから失礼な例えではあるが、その表情を見ると幼い子供を泣かしてしまった気分になる。
「あ、あの程度なんてことは無いのです……! あ、アタシは、アタシはキミに本当に大変なことを……したのですよ……?」
「いいや、それは一つ間違いがあるぜ。キミが俺を呪ったんじゃないのさレディ。あれは俺が勝手に動いて、あの箱のキャッチに失敗しただけ。いうなら俺がしたいことをして呪われただけなんだよ」
「そ、それは……」
そもそも、リオが彼女を脅かさなければ何も起こらなかったが……様子を見るに本人もかなり反省してるし、彼を責めるのはこの集まりの趣旨と真反対のことだから伏せておこう。
「あー、あと、価値観も違うな。俺ってやつは多才でな。あの日去り際に言ったように、農家だろうが商人だろうが、あとは料理人とかか? やろうと思えば何でもできるんだ。だから俺からしてみればあんたらが何でそこまで深刻に捉えてるかがサッパリなのさ」
「「「……」」」
うーん、これだけあの出来事を気にしていないとその被害者本人が伝え続ければ、ある程度は気持ちが軽くなってくれるもんだと考えて今まで発言してみたが……まだ足りないみたいだな。
『強制互角』のことは切り札だからもう少し寝かせておくとして、次は……そうだな、彼らの強い責任感やクソ真面目さを逆手にとって説得してみるか。
「……まあ、反省することは非常にいいことだと思うぜ? アンタらSランクの冒険者なんて地位を手に入れてるにも関わらず、こうしてイチ初心者に対して悲しみ、心を痛めてる。とても立派な話だ。でもわからないか? その反省のしすぎがむしろ大勢を苦しめるってことを」
「ど、どういう意味だよ、それ」
「ちょっと考えればいい話さ。アンタらは四人ともSランク、いわばギルドの看板を背負ってる人間だ。そんなのが全員揃っていつまでも暗く深刻なムードでいてみろ。他のギルドメンバーやギルド自体の周囲の評価はどうなる? それでどんな支障が出る? 依頼とかどうなるよ。俺一人なんかじゃない、より身近でよりたくさんの人が困ると思わないか? 既に俺本人に話しが届くまでになっているんだぜ?」
ま、ヘレストロイア解散の危機ってのも、ギルド全体が暗くなってるってのも、ドロシア嬢本人から聞いた話だ。
だから本当はどれほどこれらの噂が世間に広まってるかはわからないのが本音なんだが、そんなことはどうだっていい。
「お……お前、なんかうちのギルドマスターみたいなこと言うな」
「ああ、全くだ」
「……わかる」
「どう見てもアタシ達の方が年上なのに……。とても立派なのです」
「そうか? ふっふっふ……ま、俺はスーパー紳士だからなっ! このくらいは当然さ」
む、急に褒められたらちょっと照れる。
やっぱり人を謝らせるより、褒められるほうが気分がいいよな。
それにさっきのはなかなか有効だったようで、ドロシア嬢とリオはもうすっかり気分が立ち直りつつあり、カカ嬢とブリギオは『彼(俺)がそう言うなら考え直してみよう』と思っていてそうな顔つきになった……気がする。
半ば俺が一方的に話しただけだが……まあ、人の気分を良い方向に変えるんだったらこれで間違いなかったはずだ。
これならあともう一押しから二押しすればパーフェクトに解決できるかもな。
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