魔法系男子のゆふるわな日常(希望)

ねじまる

文字の大きさ
55 / 59
第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者

それはそれ! これはこれ!

しおりを挟む



「ありのままの自分に戻ったところで不便なだけだと説いたのですが、あやつめ、まったく聞く耳も持たず……」

 カウロの言葉を聞きながら、村人達が顔を見合わせ、

「元の姿じゃあ、食費は掛かるわ、寝床を確保するのも大変だわ、良いことなんてあんまりないよなぁ」

「経済的じゃねぇし」

「そうそう」

 巨体を維持するためのエネルギーを確保するには、食べる量も半端ではないのだろう。
 眠るにしても小山サイズの巨体だ。
 平らで広い場所を探さなければならない。
 何より、経済的ではない。

 世界最強のドラゴンがそんなことを気にしているなんて、ちょっと親近感が湧く。

 そんな彼等がホワイトドラゴンと分かれば、気になるのが市場に出回っているマントや鎧の数々。
 脳裏にあの、防具屋で見かけたカモフラージュ性ゼロの純白マントが浮かぶ。

「そうなると、市場に出回っているホワイトドラゴンの装備って……」

 この人達の仲間を狩って、作られたと考えるべきだろう。
 あるいは、村出身の人かもしれない。

 目の前にこうして人型として存在すると、途端に残酷に思えてくるから人間とは勝手なものだ。

「ご心配なく。素材は我らの脱皮した皮を市場に流しております」

 目を細めてカウロが答えた。

 数年に一度、彼らは元の姿に戻り、脱皮し、それを売るのだという。
 ついでに、老人達の長くなった髪やヒゲを切って糸として紡げば、マントの原料のできあがり。
 俺が手にしていたスリッパの原料もそれである。

 もし、ホワイトドラゴンの素材がこの村からしか出ないとなると、市場は独占状態だろう。
 いったい、どれだけ儲けているのか、俺には興味のある話だ。

「そういえば、村長が言いかけていた『キャベ』って何です?」

 村の子孫繁栄には欠かせないものらしいのだが、自分の知識を総動員してもそれっぽい言葉が見つからない。
 カウロはふぇふぇふぇと笑った。

「この土地でしか実らない、迷彩キャベツのことですよ。我々ホワイトドラゴンは、十年に一度実る、迷彩キャベツから生まれるのです」

 そ、そんなバカな。

「愛し合う者同士が迷彩キャベツに祈りを捧げると、キャベツから子が授かるのです」

 事実は小説より奇なりと言うが、これは特殊だろう。
 さすがはまだ生態が謎に満ちているホワイトドラゴンである。
 俺が知っている知識といえば、彼等は十二年周期で一歳と数える、長命な種族だということ。

「殿下! 私は汚らわしいこやつらを、グレンギヌスより追放せんと奮闘していたのですぞ。感謝されこそすれ、このような仕打ちを受ける覚えはありません!」

 おっさんが、きいきいと耳障りな金切り声で叫ぶ。

 そもそも、おっさんがその事実を知ったのは先程じゃないか。 
 後付け設定で自分の正当性を認めろなんて、無理な話だ。 
 最初から彼等をただの村人として見て、リゾート開発のために追い出そうとしていたのだから。
 なんとしても、土地の没収と爵位剥奪を免れたいのだろう。

「先刻まで私を始末しようとしていた人間が、なぁにを寝ぼけたことを言っている」

 ホワイトドラゴンを追放しようと奮闘しても、麻薬が確定していないにしても、王子を殺そうとしたことは事実である。
 よって、おっさんは罪に問われるワケで。
 王子はバッサリと吐き捨てた。

 固まること数秒、自分がしでかしたことを思い出したようだ。

「あぁ、あぁあぁあぁ……」

 いずれにせよ、おっさんの貴族人生にはピリオドを打たれたのだ。

 脱力してうなだれるおっさんの頭から、ふさっと髪が落ちて寂しい頭髪が現れる。

 やっぱり、ヅラだったか。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

処理中です...