星につむぐ物語-イストリア-

冬原水稀

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18. VSヒツジで大ピンチ!?

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 羊? と、藍ちゃんの話に男子三人は顔をしかめた。何を言っているんだろうって顔。
 でも私と、一度おそわれたひぃちゃんの顔色は変わった。羊……間違いない。暗黒星座の羊だ! 
 心が、体が、固くなるのを感じる。アレが何なのか分かるのは私だけだ。しっかりしなきゃ!
「藍ちゃん! 連れ去られたって、何人!?」
「え、えっと、えっと……ふ、二人」
 二人も!? そんなに、どうして。
「他の二人はどうしたの? 御子柴みこしばさんのチームは五人だったはずだけど」
 隣から、冷静にひぃちゃんが問いかけてくれる。そのやわらかい低音に、少し落ち着いた様子で、
「た、助け出そうとして、けが、しちゃって……落ち着いたところで休ませてるよ。わた、私だけ、助けを呼びにきたの……!!」
「藍ちゃん、そのヒツジが今どこにいるか分かる?」
「七星! 場所を知ってどうするの? 何かする気?」
「私が何とかしに行く」
 ぎょっとした二人の視線が、私に集まった。あのヒツジの怖さを知った、二人の目。じわじわうるんだ藍ちゃんの目からは涙が落ちて、ひぃちゃんの目は次第に怒ったようなものになった。
「だ、だめだよ七星ぇっ」
「そうだよ、一人でなんて危険すぎる! 大人たちにまかせた方がいい!」
 ううん、大人でもダメなの。だってあれは普通のヒツジじゃない。私の制服のポケットに今も入ってる、指輪じゃないと何とか出来ないの……と、説明することは出来ない。
 話が突拍子もないし、何よりそんな時間、無い。
 何も言えない代わり、私はひぃちゃんの目をじっと見つめた。
 するどくて、でも私を心配してくれるやさしい瞳。お願い、私を信じて! 声には出さないけど、心の中でたくさん叫んだ。
 しばらく、無言の時間が続く。
 ……やがて、ひぃちゃんが息を吐いた。
「止めても、ダメそうだね……でも約束して、危ないことはしないで」
「ひぃちゃん……うん、絶対約束する!!」
 私が力強くうなずくのを見て、ひぃちゃんは強気に笑った。何をするのか、詳しいことを私に聞かない。やさしさだ。ありがとう、ひぃちゃん。
 ひぃちゃんはくるっと短い髪をなびかせ、男子三人を振り返る。
「南雲、藤! お前らはけが人を保健室に連れて行くの、手伝って! 一条は、先生に話をしてきて。すぐに生徒を教室に呼び戻したほうがいいって」
「何かよくわかんねーけど……」「分かった! まかせろよ」「りょうか~い」
 藤くん、南雲くん、一条くんの順番にうなずく。
「御子柴さんは、私と一緒に行こう」
「う、うん。あ、七星、羊の場所はね……!」
 その時、タイミング良く鳴るチャイム音。
 ──キーンコーンカーンコーン……
『連絡です。今、学校に入りこんだ羊が、体育館で、暴れています。みなさん、体育館から離れてください。体育館にいる生徒は、落ち着いて、速やかに、体育館から出てください、繰り返します……』
 体育館、ね。
 藍ちゃんはコクコクと首を縦に振った。私は安心させてあげるように笑う。そして、体育館のある方向へと走っていった。


「ナナセナナセーっ!!」
「ホクト!!」
 みんなの姿が、振り返っても見えなくなったころ。物陰からひょこひょこと姿を現したのは小さい白くま。私は一旦足を止めて、ホクトを抱き上げた。私が抱えて走ったほうが早いもんね。
 腕の中のホクトが、不安そうに私を見上げる。
「大変なことになっちゃったねー……」
「うん……レクどころじゃなくなっちゃった」
 私なりに、がんばってレクを計画した。ひぃちゃんと一緒に、みんなを楽しませようって。それなのに、藍ちゃんのあんな苦しそうな顔を見ることになるなんて。
「せっかくうまくいって、ナナセも楽しそうだったのに」
「ありがとうホクト。私は大丈夫だよ」
 本当は、ちょっとくやしいけど。でも、あの羊さんを怒っても、仕方ない気がするから。からす座の時と同じで。きっとあの羊も、なにか事情があるんじゃないかな。
「ナナセは……やさしいね。そのやさしさがあれば、きっと助けられるよ。あのヒツジさんも!!」
 そう……かな。そうだったらいいな。
 私の視界に、体育館の入り口が見えてくる。大きな出入口以外のドアは閉めきられていて……そのドア一つから、生徒が我先にと逃げ出していた。勢いよくホースから飛び出す水みたいに。
 そんな、どうして他のドアからも逃げないの!?
『メェェェェェーーーー!!!!』
「キャア!」
「早く逃げろ!!」
 体育館の中から、羊の声と悲鳴がもれている。
 早く中に入らないと……でも、一番大きな入り口は、出てくる人でいっぱい。他のドアから……っ!?
「どうしたの、ナナセ」
「内側から鍵がかかってる……!!」
 まさか、他のドアから逃げないのはこれのせい? みんなパニックになってて、他のドアから出て行こうとしないんだ! それに、開いている入り口からは羊の苦手な光が入ってきていて、きっと羊が近づいてこないから。
「じゃあ、あのドアから入るしかないってこと!?」
 そうみたい……。あの流れの中に飛び込んで逆走したら、誰かを転ばせて、それが連鎖して、みんなドミノ倒しになる可能性だってあるのに……考えると、ゾッとした。
 すると、ホクトがマジメな顔をして、「んー」と考えこんだ。なにか、ジッと下の方を見つめている。その先には……小さな木の格子窓。格子ごしに、体育館の中が真っ暗だってことが分かる。
「……ホクト?」
「ワタシが先に中に入って、このドアを開けるよ! カギを開けたらいいんだよね!?」
 こんな小さな隙間から!? いや、確かにホクトなら無理やり押しこめば入るかもしれないけど。でも危なくないかな……。
 ホクトの目は強気で、自信マンマンで。ついでに胸をそらす。
「なんとかするよ! ワタシもナナセの役に立ちたいもの」
 何気なく出た言葉に、私は何も言えなくなった。その隙に、ホクトがぴょんと私の腕から降りる。
 しげしげ。格子から中の様子を確かめると、勢いよく頭をツッコんだ!!
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
 見た感じが不安だよ。「へーきへーき!」と甲高いホクトの声。それから必死に右手を入れて左手を入れて。お腹を通したあと、おしりをふりふり。長いしっぽが揺れた。
 おしりが入ったあとは、もうスムーズに、体育館の中に入って行ってしまった。ほ、本当に行っちゃった。
「気をつけてよ!!」
 私は小声でそう叫んだけど、返事はなかった。
 とりあえず、ホクトの入っていった木格子の一番近くにある扉の前で待つ。
 大きい出入り口からは、まだたくさんの人、人、人。どのくらいのクラスが、体育館でレクをしていたんだろう。泣いている子の手を引っ張ったり、背中を押したりして逃げている。
 みんなおびえた顔で、叫んだりしながら。
「ナナセーーッ!!!!」
 呼ばれて、ハッとドアに顔を戻した。ドアごしだから、ちょっとか細く聞こえる。けどちゃんと聞こえた。この向こうに、ホクトがいる!
「ホクト!! 開きそう!?」
「カギは、たぶん開いた! ワタシにはドアが重いの! ナナセ、せーのでドア開けて!」
 せーの!!
 私は掛け声とともに、ドアを横に開ける。真っ暗な体育館の中に、私の背中から差しこむ日の光。開いた……! 私の影の中に、ちょこんとホクトが座り込んでいる。
『メェェエエエエエ!!』
「キャーーーッ!」
 さっきより近くで聞こえて来る、羊の鳴き声。悲鳴。扉を開けて差し込んだ日の光が、真っ暗だった体育館の中をぼんやりと浮かび上がらせるように照らしてくれた。
「ナナセ、羊さんがこっち見た!」
 ! きっと、苦手な光に気付いたんだ。
 真っ黒に影が差した瞳。怒っているようにも見える。そのすぐ側には、腰を抜かして座り込んでいる女の子。助けなきゃ!
「ホクト、一回あの羊の気を引き付けてくれる?」
「わかった!」
 小さい子ぐまが暗闇の中を走っていく。「こっちだよー!」とホクトが叫ぶと、一度雄叫びをあげた羊が、追うように走っていった。
 私は女の子の元に駆け寄る。同じ年かな、私を見上げると、口をわなわなさせた。
「もう大丈夫だよ、今私が開けた、あっちのドアから逃げて。そっちの方が近いから!」
「わ、わた、……わたし、たてなくて」
 震えた声で言う女の子。そっか、足から力が抜けちゃったんだ。
 隣にかがんで、腕を私の肩に回す。
「一緒にあそこまで行こう。せーので立ち上がるから、なるべく頑張って!」
 コクコクとうなずく女の子。私がせーの、って、言おうとした時だった。
『……レェェ!!!!』
 っ! 羊がこっちに!
 ひっと隣から息を飲む音。私の肩にかかる重さがいっそう重くなる。また力が抜けちゃった!
 羊を見る。黒く光るひづめが体育館の床を蹴り、こっちに全速力で向かってくる。ガガガガガガッ。こっちに猛突進! ど、どうしよう。この子を置いていけない。よけられないよ!
ェェェェ!!』
 ま、またその名前!
「違うよ! 聞いて、この子はヘレじゃないよ!!」
 伝わらないと分かっていても、そう叫ぶ。パニックで熱くなった頭で。どうしよう、どうしよう! ……だけどその一方で、まだ頭の片隅にほんの少し残った冷静な私がいた。
 この羊が持ってる後悔、分かったかもしれない。
『メェェェェ』
「っ、誰か……!!」
 私はとっさに、震えている女の子を抱きしめた。
 ……ううん、待って。こんな時こそ指輪だよ。星座を作って、今この子を逃がす方法を考えたらいいんだ! きっとパニックになってるから、この女の子に指輪の力が何か、気にする余裕はないはず。
 羊が、床を蹴る。
 思いっきり、飛び上がって、私たちの頭上に飛びかかるっ!!
「お願い、力を貸して!!」
 人差し指に指輪をはめた。
 真っ暗闇の中で、一本指を立てた右手をかかげる。
 ……けど。

 ……

 指輪は光らない。
 星座を作る時に体にあふれる、あの独特の熱も、何も。ない。刹那の時。沈黙。頭が真っ白になる。うそ、何で。羊の叫びが、むき出しの歯が、ひづめが、目前まで迫って──!!
「とぉぉぉりゃぁぁあああ!!!!」
 その時、羊に突っ込んだ白い毛玉が!
『メェェェッッ』
 羊の右側から突っ込んできた、その勢いで、羊の着地地点が私たちより左にそれる。白いふわふわは、羊の顔にはりついたまま。
 ドシャッ!!
 一緒に床に倒れこんだ。打ちつけられるように。
「ホ、ホクトだいじょっ」
「いいから! 早くその子、っ、逃がして!」
『メェェェェェェ!!』
 ブンブン!! 羊は、目をふさいでるホクトを振り落とそうと何回も頭を振っていた。しがみつくホクトの顔が苦しそうにゆがむ。
 ごめん、ホクト……!
「っ、行こう!」
 女の子を肩にかつぎなおす。ダメ。泣いちゃダメ。ダメなのに、今さらみたいに怖くて、涙が出る。
 私はひざに力を入れて、女の子を出口まで連れて行った。
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