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114 新王
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西国に戻るや否や、京樹は西国の王ラカディラージャとして即位する。王宮のバルコニーからラカディラージャは国民に優雅に手を振る。西国の花と呼ばれたラージハニを知る国民は、その麗しさを受け継ぎ、バダサンプとは違い高潔な容貌に大歓声を上げる。
そしてラカディラージャの隣には、清楚で美しい王妃となるスターラが優しく笑んでいる。似合いの若い王と王妃は圧倒的な支持を受けてこれから西国を立て直していくだろう。
――ラカディラージャは華夏国の国境を越え、とうとう西国にやってきた。隣り合わせの国なのに、随分と森林が少なくなり空気がカラッと乾いている。西国の地に降り立った時、向こうから豪華な馬車がやってくるのが見えた。
「あれは?」
ラカディラージャが尋ねると、老いた宰相が「孫娘が出迎えに参りましたのです」と恭しく伝える。
「孫娘か」
「ええ、そして次期、王妃候補です」
「王妃候補?」
西国に王として帰国すると、もちろん国家のための結婚が待っているのは当然だった。ラカディラージャは、最後まで自分を目で追っていた星羅を想う。
ラカディラージャの乗っている馬車よりは落ちるが、輝く曲線的な馬車が止まり、若い娘がおりてきた。ココナッツ色の明るく滑らかな肌を持ち、黒目がちの丸い瞳を持つ愛らしい女性だ。豊富な髪は腰まで波打つ。
「おかえりなさいませ。ラージャ(王)」
「孫娘のスターラです。どうぞ、ここからは一緒の馬車にお乗りください」
覚悟を決めて西国に戻ったとはいえ、あからさまな政略結婚には苦笑してしまう。それでも黙ってラカディラージャは頷いて、スターラと一緒に馬車に乗り込んだ。
馬車にしばらく揺られ、彼女の甘い香りになれてきた頃ラカディラージャはスターラに話しかける。
「あなたはいいのですか?」
「やっとお声を掛けてくださいましたね」
スターラはにっこりと明るい表情を見せる。
「すみません」
「まあ、王様が謝ってはいけませんわ」
親しみがすぐに伝わるのは西国人の特徴だろうか。スターラは母の京湖ことラージハニのように屈託なく親近感を感じさせる。
「王様こそ、お嫌でしょう。いきなり会ったものが王妃候補と言われて」
「いえ、覚悟は決めてきていたので」
「そうそれならば」
愛想のよいスターラの、わずかな表情の陰りをラカディラージャは見逃さなかった。
「あなたは本当に良いのですか? お心に決めた方がいるならば、このような婚姻は……」
「お優しいのですね。確かに心に決めた人がいました。でも……」
バダサンプの暴政により、国内の王位継承者がことごとく抹殺された。その中の一人にスターラの想い人もいたのだ。
「それは辛かったでしょうね」
明るさの中に、心の傷を隠し持っているスターラに同情心が湧く。
「よくお気づきになりますね。隠し事はできませんね」
「あ、いや」
「王様は?」
スターラの心の内を知ると、ラカディラージャも隠し事をしないと決める。
「私にも想う娘がいましたが、ほかの者と結婚しました」
「王様も……」
「今は、もう彼女の幸せを願うだけです」
「それはお辛いでしょうね」
「ありがとう」
お互いの気がかりを知るとより打ち解けてきた。
「あなたの名前はどのような意味があるのですか? まだ西国の言葉は少ししか知らなくて」
「星ですわ。王様」
「星……。いい名前だね」
褒められて笑顔を見せるスターラから星がこぼれるような気がした。彼女となら一緒にやっていけるとラカディラージャは心が決まる。星羅に心から別れを告げる。
「妹よ。元気で」
ラカディラージャはもう華夏国に思いを馳せることはないだろう。
そしてラカディラージャの隣には、清楚で美しい王妃となるスターラが優しく笑んでいる。似合いの若い王と王妃は圧倒的な支持を受けてこれから西国を立て直していくだろう。
――ラカディラージャは華夏国の国境を越え、とうとう西国にやってきた。隣り合わせの国なのに、随分と森林が少なくなり空気がカラッと乾いている。西国の地に降り立った時、向こうから豪華な馬車がやってくるのが見えた。
「あれは?」
ラカディラージャが尋ねると、老いた宰相が「孫娘が出迎えに参りましたのです」と恭しく伝える。
「孫娘か」
「ええ、そして次期、王妃候補です」
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西国に王として帰国すると、もちろん国家のための結婚が待っているのは当然だった。ラカディラージャは、最後まで自分を目で追っていた星羅を想う。
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「おかえりなさいませ。ラージャ(王)」
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覚悟を決めて西国に戻ったとはいえ、あからさまな政略結婚には苦笑してしまう。それでも黙ってラカディラージャは頷いて、スターラと一緒に馬車に乗り込んだ。
馬車にしばらく揺られ、彼女の甘い香りになれてきた頃ラカディラージャはスターラに話しかける。
「あなたはいいのですか?」
「やっとお声を掛けてくださいましたね」
スターラはにっこりと明るい表情を見せる。
「すみません」
「まあ、王様が謝ってはいけませんわ」
親しみがすぐに伝わるのは西国人の特徴だろうか。スターラは母の京湖ことラージハニのように屈託なく親近感を感じさせる。
「王様こそ、お嫌でしょう。いきなり会ったものが王妃候補と言われて」
「いえ、覚悟は決めてきていたので」
「そうそれならば」
愛想のよいスターラの、わずかな表情の陰りをラカディラージャは見逃さなかった。
「あなたは本当に良いのですか? お心に決めた方がいるならば、このような婚姻は……」
「お優しいのですね。確かに心に決めた人がいました。でも……」
バダサンプの暴政により、国内の王位継承者がことごとく抹殺された。その中の一人にスターラの想い人もいたのだ。
「それは辛かったでしょうね」
明るさの中に、心の傷を隠し持っているスターラに同情心が湧く。
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「あ、いや」
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スターラの心の内を知ると、ラカディラージャも隠し事をしないと決める。
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「今は、もう彼女の幸せを願うだけです」
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「ありがとう」
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「星ですわ。王様」
「星……。いい名前だね」
褒められて笑顔を見せるスターラから星がこぼれるような気がした。彼女となら一緒にやっていけるとラカディラージャは心が決まる。星羅に心から別れを告げる。
「妹よ。元気で」
ラカディラージャはもう華夏国に思いを馳せることはないだろう。
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