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エピローグ 長い時を経て
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小高い気持ちの良い風が吹く丘に、二人の老夫婦が上ってくる。二人は古い本を片手にあちこち見回していた。
「きっとこのあたりだと思うわ」
「ああ、そのようだ」
疲れた二人は柔らかい草の上に腰を下ろす。そんなに高い丘ではないのに遠くまで見通せる景観の良い場所だ。
「遠くまで見えるのね」
「あの辺りは昔の都があった場所だろう」
夫が指をさす場所は広々とした平原になっている。ふっと妻が横に目を向けると若い男女の二人組が見えた。
「あら、こんなところに先客がいたのね」
振り返った夫は男と目が合い頭を軽く下げる。座っている二人のところに、若い男女が近づいてきた。
「こんにちは」
男は外国人だろう。ハンチング帽の下から金髪が出ていて目が薄いブルーだ。女性のほうはベレー帽をかぶり黒いショートボブの髪が見える。
「ご旅行ですか?」
気の良さそうな若い男は綺麗な発音で訪ねてくる。夫婦は立ち上がり挨拶をしてから答える。
「ええ、幻の女軍師の墓がここにあると古書で見つけましてね」
「幻の女軍師ですかあ」
「あなたたちもご旅行ですか? ここにはその伝説くらいで何もないですけどね」
「僕たちは、とくにあてのない旅行なのでふらっと立ち寄っただけなのですよ」
「いいですね。私たちはやっと旅行ができました」
夫が妻を顔を見ると、妻は優しく笑んで頷いた。
「仲がいいんですのね」
若い女が、老夫婦の手がしっかり握られていることに気付く。
「あら、恥ずかしい。あの、なぜかついつい握ってしまうんです。彼の左手ばかり」
妻は頬を染め少しだけ手の力を緩めた。若い女は笑んで「お探しの場所はあのあたりだと思いますわ」と大きな木の影を指さす。
「え?」
「さっきふらふら歩いているときに見つけましたの。小さな石板のようなものがありますわよ」
「そうなんですか。ありがとうございます!」
「じゃあ見てこよう」
老夫婦は嬉しそうにまた手を握る。
「では僕たちはこれで。よい旅を」
「ありがとうございます。お二人もお元気で」
それぞれ手を振って別れた。老夫婦は木の下に行き、少し埋もれている平たい岩を見つける。手でそっと土を払っていくと彫られた文字が見えた。『郭蒼樹 朱星羅』
「まあ! ここがそうなのね」
「良かったな。見つかって」
「やはり女性だったのよ」
「正史では男名で性別が書かれていなかったが、この野史の通りだったな」
夫は古びた本を見て感心している。
「初めての旅行なのに付き合わせてしまってごめんなさいね」
「いいんだ。君の行きたいところへ行こう」
「ありがとう」
老夫婦はしばらく墓のそばで悠久の時を偲び続けた。
男は女に「もういいのか?」と尋ねる。
「ええ、二人とも幸せそうだわ」
「彼は怪我がもとで長く生きることはできなかったんだよね」
「彼女だけが長く長く孤独の中を生きたわ」
「今回は結ばれるのが相当遅かったようだが」
「だからこの場所に、二人の長く過ごした時間を感じにやってきたのよ」
「さて、今度はいつ会えるかな」
「さあね。行きましょう」
若い男女は静かに丘から消え去った。
その後、墓を訪れるものは誰もいない。
「きっとこのあたりだと思うわ」
「ああ、そのようだ」
疲れた二人は柔らかい草の上に腰を下ろす。そんなに高い丘ではないのに遠くまで見通せる景観の良い場所だ。
「遠くまで見えるのね」
「あの辺りは昔の都があった場所だろう」
夫が指をさす場所は広々とした平原になっている。ふっと妻が横に目を向けると若い男女の二人組が見えた。
「あら、こんなところに先客がいたのね」
振り返った夫は男と目が合い頭を軽く下げる。座っている二人のところに、若い男女が近づいてきた。
「こんにちは」
男は外国人だろう。ハンチング帽の下から金髪が出ていて目が薄いブルーだ。女性のほうはベレー帽をかぶり黒いショートボブの髪が見える。
「ご旅行ですか?」
気の良さそうな若い男は綺麗な発音で訪ねてくる。夫婦は立ち上がり挨拶をしてから答える。
「ええ、幻の女軍師の墓がここにあると古書で見つけましてね」
「幻の女軍師ですかあ」
「あなたたちもご旅行ですか? ここにはその伝説くらいで何もないですけどね」
「僕たちは、とくにあてのない旅行なのでふらっと立ち寄っただけなのですよ」
「いいですね。私たちはやっと旅行ができました」
夫が妻を顔を見ると、妻は優しく笑んで頷いた。
「仲がいいんですのね」
若い女が、老夫婦の手がしっかり握られていることに気付く。
「あら、恥ずかしい。あの、なぜかついつい握ってしまうんです。彼の左手ばかり」
妻は頬を染め少しだけ手の力を緩めた。若い女は笑んで「お探しの場所はあのあたりだと思いますわ」と大きな木の影を指さす。
「え?」
「さっきふらふら歩いているときに見つけましたの。小さな石板のようなものがありますわよ」
「そうなんですか。ありがとうございます!」
「じゃあ見てこよう」
老夫婦は嬉しそうにまた手を握る。
「では僕たちはこれで。よい旅を」
「ありがとうございます。お二人もお元気で」
それぞれ手を振って別れた。老夫婦は木の下に行き、少し埋もれている平たい岩を見つける。手でそっと土を払っていくと彫られた文字が見えた。『郭蒼樹 朱星羅』
「まあ! ここがそうなのね」
「良かったな。見つかって」
「やはり女性だったのよ」
「正史では男名で性別が書かれていなかったが、この野史の通りだったな」
夫は古びた本を見て感心している。
「初めての旅行なのに付き合わせてしまってごめんなさいね」
「いいんだ。君の行きたいところへ行こう」
「ありがとう」
老夫婦はしばらく墓のそばで悠久の時を偲び続けた。
男は女に「もういいのか?」と尋ねる。
「ええ、二人とも幸せそうだわ」
「彼は怪我がもとで長く生きることはできなかったんだよね」
「彼女だけが長く長く孤独の中を生きたわ」
「今回は結ばれるのが相当遅かったようだが」
「だからこの場所に、二人の長く過ごした時間を感じにやってきたのよ」
「さて、今度はいつ会えるかな」
「さあね。行きましょう」
若い男女は静かに丘から消え去った。
その後、墓を訪れるものは誰もいない。
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