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「お久しぶりですね。立派になられて……」

「今度、高等学校に行くんです。奨学金が得られたので」

「そうなんですか」

 少年はもうすっかり青年だ。

珠子のことを覚えていたらしい。

青年は「あっ」と声を出し、珠子の後ろの方へ手を振った。

振り返ると二人の修道女が買い物かごを手に持ち近寄ってくる。



「よ、葉子かあさまっ」

 珠子は驚いて手で口を隠し、下を俯く。

「シスター。キヨさんですよ。いつかおイモをくださった」

「まあまあ。お礼が言えなくて……」

 葉子が祈るような姿で珠子のそばに近づき、顔をあげた。



「!」

 一瞬時が止まったように動きを止める葉子に、ゆっくりと珠子は手を下におろし彼女を見つめた。

「た、珠子さん!」

「葉子かあさま……」

 葉子は珠子の両手を取り、ひしっと掴み、愛し気に目をつむり「ああ、どうしてこんなところに」と呟いた。



 青年は不思議そうな顔で二人を見比べ合っている。

もう一人の修道女に「お知り合いだったようですね」と話しかけた。

「そのようですね」

 若い修道女はにっこりと微笑み「私たちは先に参りましょう」と、頭を下げて青年と立ち去った。

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