スカーレットオーク

はぎわら歓

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第一部

53 静岡へ再び

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 直樹は前と同じように一般乗降場で緋紗を待った。
 車はSUV車だが前回の軽トラックよりずいぶん乗り心地が良いだろう。――そろそろ来るかな。
 緋紗が向こうから歩いてきたが直樹が見えたようで少し大きめの荷物を持ち小走りになった。
 「こんにちは。素敵な車ですね」
  息を弾ませる緋紗はグリーンの大きなチェックのシャツワンピースを着、涼しげで清楚だった。
 「疲れた?乗って」
  緋紗は直樹が言うまま乗りおとなしく座っている。
 「会いたかったです」
 「僕も」

  少し車を走らせてコンビニの前で止まった。
 一緒に店に入りコンドームを買おうとする直樹の手を緋紗は引っ張りそっと、「あの。それ。いらないです」と、恥ずかしそうに耳打ちする。
 「そうなの?」
  直樹は気を利かせて買ってきたのかと思ったが言わずに買うのをやめた。
 「何か欲しいものある?」
  特に何もないらしく手ぶらで出てまた車に乗った。

 「本当にいらなかったの?」
  尋ねると緋紗は恥ずかしそうな様子で言う。
 「私、いまピルを飲み始めたんです」
  ――避妊の薬だっけ?
その知識に乏しいので直樹は緋紗の身体を心配した。
 「大丈夫なの?」
 「大丈夫です。というか色々体調とか整うし便利なんですよ。コンドームより避妊率高いし」
  緋紗は春に抱かなかったことの理由を避妊のためだと思っているようだ。
だからきっと自分でピルを処方してもらったのだろう。
ピルについて一生懸命説明している緋紗がいじらしかったがついつい、「じゃあ好きな時にいつでも抱いていいの?」と、言ってしまった。
 緋紗は真っ赤になって、「いいです」と、小さな声で答えた。


  しばらく走ると大きな富士山が目の前に迫った。――また見れた。
 緋紗は懐かしい気持ちで富士山を見つめる。
 車の乗り心地はとても良く、軽トラックでも全然かまわなかったが、こうしてのびのびと出来ると新幹線での疲れが幾分か軽減される。――この車、直樹さんによく似合ってるなあ。
 車内は無駄なものが何一つなくカーフレグランスさえも置いていない。
 少し機械油の匂いがしてそれが緋紗には居心地を良く感じさせた。

  そのうちに山の中へと入って行く。
 道は舗装されているが町からはずいぶん遠ざかって近隣に家はないようだ。
 途中で茶畑が広がったがもう茶摘みは終わっているらしく、茶色っぽい形の揃った低い塊が見えるだけだ。
 「春になったら一面緑できれいだよ。その時にまた見よう」
  緋紗は静岡の目に入るものすべてにまた見られますようにと祈る。

  ぽつんとした一軒家の前で車が停まる。
 「ここだよ」
  古びた農家のような平屋で古民家と古い家の中間のような雰囲気だ。
 屋根は重そうな瓦で壁が土壁と木材の半々で出来ていて、家の外に洗面所がついている。
 直樹が手を洗ったので緋紗も倣って洗った。――まさか実家?
 玄関らしい引き戸を開けるとまだ土間だった。

 「どうぞ。足元気を付けて」
 「失礼します」
  緋紗は足を引っかけないように気をつけて入り高い天井の梁を見ながら、
 「直樹さんのご実家ですか」
  と、訊ねた。
 「ううん。ここは僕しか使ってないよ」
  緋紗がドギマギしていると、直樹は、「三年前に買ったんだ。組合員で退職する人が子供たちのところで暮らすことになってね。使ってもらえるんだったらって安く譲ってくれたんだよ。直すところがまあまああって住んでるのは実家だけどここは僕の隠れ家って感じだね。ここから上がって」 と、説明した。
――さすがに実家に呼ばれたりしないよね。びっくりした。

  一つ低い段があってウエッジサンダルを脱ぎあがった。
 小さなフロアは畳と板と襖で構成されていて、真夏だというのにひんやりしている。
 「涼しいですね」
 「うん。冬は寒いからあんまりこないけどね」
  障子をあけて短い廊下を渡り次の部屋に行った。
 四畳半と六畳の畳の部屋が襖一枚で仕切られているが部屋という区切りがあまり感じられない。
 「ここは書斎かな」
  パソコンデスクと本棚があった。
 本棚にはぎっしりと林業関係の本と建築関係の本が並んでいて、多少の雑誌と漫画がある。
 「いい部屋ですね」

  にっこりして直樹は次の部屋を案内する。
 「こっちが寝室だよ」
  六畳のスペースにはセミダブルくらいの木製のベッドが一つあり、硬そうなマットにシーツとガーゼのような薄掛けが置いてある。
 小さな窓に薄いベージュのカーテンがつけられていて昼間だがぼんやりとしたほの暗い部屋だ。
 「さすがに寒くないと思うけど、もっと寝具出そうか?」
 「あの」
 「ん?」
 「別々に寝るんですか?」
 「一緒でいい?」
 「じゃ。このままで大丈夫だと思います」

  緋紗がベッドに腰かけて柔らかいガーゼ生地を撫でていると直樹が隣に座りキスをしながらベッドに押し倒す。
 緋紗の眼鏡をとって上の宮棚に置きまたキスを続けた。
 「抱いていい?」
 緋紗はこくりと頷く。

 直樹はワンピースのボタンをへそのあたりまで外しそのまま下に降ろして脱がせ、ブラジャーも下着もあっという間にはぎとる。
 直樹は薄いブルーのカジュアルシャツとグレーのハーフパンツで爽やかだが緋紗は全裸で心細そうな面持ちだ。
 「他の男に触らせたりしてない?」
 「まさか」
  抗議するように言う緋紗に直樹はお構いなしで身体を撫ではじめる。
 「僕は緋紗のことだけ考えてたよ」
  ハーフパンツずらし起立した剛直をすぐさま挿入する。
 「あぁ、ぅっ」
  意地悪なのか優しいのかよくわからないまま弄られて、縋り付くしかないような気持ちで緋紗は受け入れた。
 大した愛撫もされていないのにすぐに受け入れられるようになってしまった自分の身体に驚いてしまう。――私だって直樹さんだけだよ。

 薄っすら汗ばんできた直樹は動くのをやめシャツを脱ぎ捨てた。
 逞しい胸や肩、腕を見てまた緋紗は感じてくる。
 「教えたようにした?」
  直樹の首に巻き付けていた緋紗の左手を取り乳房に置いて右手を股間に滑らせる。
 「えっ」
  緋紗は密かな自慰行為がばれたような後ろめたさと恥ずかしさで横を向いた。
 「して見せて」
  抵抗感があるのに催眠術にかかったように緋紗は言われるままに手を動かしてしまう。
 直樹のクールな目が緋紗をよりいたいけな気持ちにさせる。
 「あっ、直樹さんっ……」
  名前を呼んですぐさま達してしまう。
 「早いんだね。」
  笑って直樹は息を荒くしている緋紗にキスをした。
 「僕もイっていい?」
 「は、い」
  喘ぎ喘ぎ返事をした。――直樹さんの好きにしてくれていい。
 感じ過ぎて何も考えられなかった。
 直樹が激しく動く。
 緋紗は堪らなくなって直樹の両肩を強く握った。
 直樹も、「緋紗」と、名前を呼んでから放出した。


 横たわっている緋紗を優しく撫でてから直樹は服を着て台所へ行き冷蔵庫から水をもってきた。
 「緋紗。水飲む?」
 緋紗はシーツを巻き付けながらゆっくり身体を起こす。――相変わらずだな。
 彼女のガードが硬いのか緩いのかよくわからない行動に直樹は笑った。
 「あっ」
  緋紗が慌ててティッシュペーパーを取ろうとすると、折角巻きつけたシーツが外れてしまいまた全裸になった。
 焦る緋紗にシーツをかけてやり直樹はティッシュペーパーで太腿に流れ出てきた精液を拭きとってやった。
 「シーツを汚しちゃう」
  緋紗は済まなさそうに言う。
 「いいよ。洗えば。緋紗のせいじゃないし」
 「はい」
――かわいい。
 直樹は緋紗を抱きしめ、自分の口に水を含んでキスをし水を飲ませた。
コクっと緋紗の喉が鳴る。
もう一度飲ませる。
 目を閉じて唇を濡らした緋紗がとても色っぽい。
 舌を差し込んでキスすると緋紗がおずおずと直樹の舌を吸った。
 「備前でしたキスみたいにしてくれないの?」
 「えっ。何か違いますか?」
――やっぱり窯焚きハイか。
 「緋紗は岡山だと積極的だね」
 時計を見ると四時半を過ぎている。
 「今日の夜は『セレナーデ』でご飯食べよう」
 「え。ほんとですか。嬉しい」
 「着替えたら行こうか。慌てなくていいよ」
  直樹はさっき剥ぎ取ったワンピースと下着を緋紗に渡した。
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