59 / 140
第一部
59 誕生日
しおりを挟む
今朝は隣に直樹がいる。
緋紗は眼鏡をはずした彼の睫毛を見ながら、「ダーリン。おはよう」と、小さく言った。――言っちゃった。
一人でにやけていると、「おはよう。ハニー」と、直樹が目を閉じたまま言う。
「やだっ。もうっ。直樹さん」
緋紗は中に潜った。
直樹も潜ってきて緋紗を抱きしめる。
緋紗は嬉しくて照れくさくてたまらなかった。
こんなに甘ったるく幸せな朝は初めてだった。
ゆっくりと二人で甘い時間を過ごす。
何をしていても楽しかったし何もしなくても楽しかった。
ペンションへ行く時間になり緋紗は最後の日に着ようと思っていた赤いノースリーブスのワンピースに着替えて腕をみた。――Tシャツの跡がついてなくてよかった。
このワンピースが着たくて、夏は日焼けに気を使った。
夏の陶芸の仕事は主に粘土づくりだ。
粘土は最初から滑らかではなく砂や石、ゴミが混じり、すぐ使える状態ではない。
水簸すいひと言って石やら砂やら粘土やらが混じっている状態から粘土質だけを取り出していく。
水をふんだんに使い泥をかぶるようなことも多々あるので、屋外でやる夏の作業にぴったりなのだ。
毎年、緋紗はTシャツの形そのままに日焼けをしていて、いつもはそれを気にすることもなかったが、今年の夏は直樹と過ごすことになったので、初めて日焼け止めを使って仕事をしたのだった。
少し化粧もしてみる。――眼鏡どうしようかな。
外してみたほうが良さそうなのではずしておいた。
多少、視界はぼやけるが何とかなるだろう。
支度が出来たころ直樹がやってきて「赤がよく似合うね」と、言ってくれたので嬉しかった。
「ちょっと座って」
ベッドに腰掛けると緋紗の後ろに直樹が座って何か首につける。
「プレゼント」
「えっ、洗面所に行ってきていいですか?」
「どうぞ」
鏡の前に立ってみる。
小さいリンゴ形の台にルビーが散りばめられたペンダントだ。――なんて可愛い。
「気に入ってくれたかな」
直樹は照れ臭そうだ。
「本当はプロポーズするときに渡したかったんだけど……」
「嬉しいです。私の誕生石知ってたんですか?」
「えっ。ルビーって7月だよね?先月、誕生日だったの?」
「はい」
「ごめん。知らなかった」
「いえ。言ってなかったですよね」
年齢は教えあっていたが誕生日には触れてなかったし必要だとも思っていなかった。
「石の色で選んだんだ。似合うと思ったし。指輪も考えたけど陶芸の邪魔になるといけないから」
緋紗は単に誕生石で選ばれるより嬉しく思ったし、陶芸のことまで気にしてくれている直樹に自分への愛情を感じた。
「すごく嬉しいです。いいんですか?」
「ずっとつけてくれるかな」
「もちろんです」
指先でそっとなぞりながらここに直樹の気持ちが結晶化してることを想像する。
「直樹さんはいつなんですか?お誕生日」
「――実は緋紗と初めて会った日が誕生日だったんだ」
「ウソ!言ってくれたらよかったのに」
「いやあ。誕生日を気にする歳でもないし。初対面の男に『僕の誕生日なんだ』って言われても困るだろ」
直樹は笑った。
「それはそうですけど」
せっかくの誕生日を祝えなかったことが今更ながらに残念な気がする。
「でも緋紗がプレゼントのようなものだったからね」
ニヤリとして言う直樹に緋紗は二の句が告げられず口をパクパクさせた。
「最初は黒のワンピースだったね」
真顔で直樹が緋紗の肩から乳房にかけて指先でなぞる。
「あっ」
思わず声を出してしまう。
「抱きたくなったけど帰ってくるまで我慢しようかな」
直樹のキスに緋紗はとろけそうになっていたが呼吸を整えて気持ちを切り替え、「ありがとうございます。一生大事にします」 と、改めて直樹にお礼を言った。
そして腕を初めて組んで二人は出かけることにした。
緋紗は眼鏡をはずした彼の睫毛を見ながら、「ダーリン。おはよう」と、小さく言った。――言っちゃった。
一人でにやけていると、「おはよう。ハニー」と、直樹が目を閉じたまま言う。
「やだっ。もうっ。直樹さん」
緋紗は中に潜った。
直樹も潜ってきて緋紗を抱きしめる。
緋紗は嬉しくて照れくさくてたまらなかった。
こんなに甘ったるく幸せな朝は初めてだった。
ゆっくりと二人で甘い時間を過ごす。
何をしていても楽しかったし何もしなくても楽しかった。
ペンションへ行く時間になり緋紗は最後の日に着ようと思っていた赤いノースリーブスのワンピースに着替えて腕をみた。――Tシャツの跡がついてなくてよかった。
このワンピースが着たくて、夏は日焼けに気を使った。
夏の陶芸の仕事は主に粘土づくりだ。
粘土は最初から滑らかではなく砂や石、ゴミが混じり、すぐ使える状態ではない。
水簸すいひと言って石やら砂やら粘土やらが混じっている状態から粘土質だけを取り出していく。
水をふんだんに使い泥をかぶるようなことも多々あるので、屋外でやる夏の作業にぴったりなのだ。
毎年、緋紗はTシャツの形そのままに日焼けをしていて、いつもはそれを気にすることもなかったが、今年の夏は直樹と過ごすことになったので、初めて日焼け止めを使って仕事をしたのだった。
少し化粧もしてみる。――眼鏡どうしようかな。
外してみたほうが良さそうなのではずしておいた。
多少、視界はぼやけるが何とかなるだろう。
支度が出来たころ直樹がやってきて「赤がよく似合うね」と、言ってくれたので嬉しかった。
「ちょっと座って」
ベッドに腰掛けると緋紗の後ろに直樹が座って何か首につける。
「プレゼント」
「えっ、洗面所に行ってきていいですか?」
「どうぞ」
鏡の前に立ってみる。
小さいリンゴ形の台にルビーが散りばめられたペンダントだ。――なんて可愛い。
「気に入ってくれたかな」
直樹は照れ臭そうだ。
「本当はプロポーズするときに渡したかったんだけど……」
「嬉しいです。私の誕生石知ってたんですか?」
「えっ。ルビーって7月だよね?先月、誕生日だったの?」
「はい」
「ごめん。知らなかった」
「いえ。言ってなかったですよね」
年齢は教えあっていたが誕生日には触れてなかったし必要だとも思っていなかった。
「石の色で選んだんだ。似合うと思ったし。指輪も考えたけど陶芸の邪魔になるといけないから」
緋紗は単に誕生石で選ばれるより嬉しく思ったし、陶芸のことまで気にしてくれている直樹に自分への愛情を感じた。
「すごく嬉しいです。いいんですか?」
「ずっとつけてくれるかな」
「もちろんです」
指先でそっとなぞりながらここに直樹の気持ちが結晶化してることを想像する。
「直樹さんはいつなんですか?お誕生日」
「――実は緋紗と初めて会った日が誕生日だったんだ」
「ウソ!言ってくれたらよかったのに」
「いやあ。誕生日を気にする歳でもないし。初対面の男に『僕の誕生日なんだ』って言われても困るだろ」
直樹は笑った。
「それはそうですけど」
せっかくの誕生日を祝えなかったことが今更ながらに残念な気がする。
「でも緋紗がプレゼントのようなものだったからね」
ニヤリとして言う直樹に緋紗は二の句が告げられず口をパクパクさせた。
「最初は黒のワンピースだったね」
真顔で直樹が緋紗の肩から乳房にかけて指先でなぞる。
「あっ」
思わず声を出してしまう。
「抱きたくなったけど帰ってくるまで我慢しようかな」
直樹のキスに緋紗はとろけそうになっていたが呼吸を整えて気持ちを切り替え、「ありがとうございます。一生大事にします」 と、改めて直樹にお礼を言った。
そして腕を初めて組んで二人は出かけることにした。
0
あなたにおすすめの小説
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる