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風の住処(番外編)
15 初めての夜
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クリスマスソングが流れる時期だ。
今日はやっと早苗のアパートで一緒に過ごせることになった。
二人で鍋パーティをするのだ。
颯介はそわそわと座って鍋が来るのを待っている。
「颯介。鍋行くよ」
「俺が持とうか」
「ううん。グラグラじゃないから平気」
土鍋をカセットコンロの上に置いて火をつけた。
「もう少しここで煮るね」
「ビールでも飲むか」
「うん」
二人で乾杯した。
颯介は飲める方でしかもあまり酔わなかった。
早苗は嫌いではないようだが弱いらしく、少し飲んだビールでもう顔を赤くしている。
「なんだ。飲めないなら無理するなよ」
「ふふ。気分だけだね」
(可愛いな)
あれから二人は何度かキスを交わしただけだった。
輝彦と慶子の一件で颯介の中に結婚に対するわだかまりが消え、ますます早苗への気持ちが募ってきている。
(今時やってないけど結婚ってありかなあ……)
二十代のころと違って体の関係を性急に求めることはなかったが、無いのも心配だった。
(プロポーズが先かセックスが先か……)
卵と鶏の関係のように颯介は悩んでいたのだった。
「煮えたよ。食べよ。ほら入れてあげる」
甲斐甲斐しく器によそう。
「サンキュ。美味そうだな」
二人で鍋を囲んでいると、ごちゃごちゃ考えることが面倒になって颯介は食事を楽しむことにした。
(流れに任せるか)
鍋が空っぽになったころ、早苗はお茶を運んできた。
「おなか一杯」
「よく食べたな」
颯介も肘をついてお茶を啜った。
早苗が機嫌良さそうにしているのを見計らって、
「なあ。今日泊まっていいか?」
と尋ねた。
「え」
「嫌だったら帰るよ」
早苗は下を向いたまま小さい声で、
「いいよ」
と、言う。
「よかった。そういってくれると思ってお泊りセットもってきた」
笑いながら言う颯介に少し呆れた顔で早苗は、
「準備いいね。」
と、言った。
明日は珍しく二人の休日が揃う。
颯介はこのチャンスを逃さないつもりだったし、早苗もある程度覚悟はしていた。
(今夜。やっぱり……)
初めて二人で過ごす夜なので早苗も考えられずにはいられなかった。
「お風呂ためるから待ってて」
「うん」
早苗が風呂場に向かっている間に、颯介は食事の後片付けを始める。
(今日いけるかなあ。とりあえず迫ってみるか)
気楽に考えて機嫌よく片付けた。
風呂から上がると早苗は布団を敷いていた。
「来客用の布団がないから私の布団で寝てくれる?」
「え。一緒に寝るんだよ」
早苗はやっぱりそうなのかという顔をしたが、
「狭いよ?私こたつで寝るけど」
と言う。
「泊まる意味ないじゃんよ」
颯介は笑った。
早苗はまた下を向いて、
「じゃ私もお風呂入ってくる」
と風呂場へ向かった。
今日はやっと早苗のアパートで一緒に過ごせることになった。
二人で鍋パーティをするのだ。
颯介はそわそわと座って鍋が来るのを待っている。
「颯介。鍋行くよ」
「俺が持とうか」
「ううん。グラグラじゃないから平気」
土鍋をカセットコンロの上に置いて火をつけた。
「もう少しここで煮るね」
「ビールでも飲むか」
「うん」
二人で乾杯した。
颯介は飲める方でしかもあまり酔わなかった。
早苗は嫌いではないようだが弱いらしく、少し飲んだビールでもう顔を赤くしている。
「なんだ。飲めないなら無理するなよ」
「ふふ。気分だけだね」
(可愛いな)
あれから二人は何度かキスを交わしただけだった。
輝彦と慶子の一件で颯介の中に結婚に対するわだかまりが消え、ますます早苗への気持ちが募ってきている。
(今時やってないけど結婚ってありかなあ……)
二十代のころと違って体の関係を性急に求めることはなかったが、無いのも心配だった。
(プロポーズが先かセックスが先か……)
卵と鶏の関係のように颯介は悩んでいたのだった。
「煮えたよ。食べよ。ほら入れてあげる」
甲斐甲斐しく器によそう。
「サンキュ。美味そうだな」
二人で鍋を囲んでいると、ごちゃごちゃ考えることが面倒になって颯介は食事を楽しむことにした。
(流れに任せるか)
鍋が空っぽになったころ、早苗はお茶を運んできた。
「おなか一杯」
「よく食べたな」
颯介も肘をついてお茶を啜った。
早苗が機嫌良さそうにしているのを見計らって、
「なあ。今日泊まっていいか?」
と尋ねた。
「え」
「嫌だったら帰るよ」
早苗は下を向いたまま小さい声で、
「いいよ」
と、言う。
「よかった。そういってくれると思ってお泊りセットもってきた」
笑いながら言う颯介に少し呆れた顔で早苗は、
「準備いいね。」
と、言った。
明日は珍しく二人の休日が揃う。
颯介はこのチャンスを逃さないつもりだったし、早苗もある程度覚悟はしていた。
(今夜。やっぱり……)
初めて二人で過ごす夜なので早苗も考えられずにはいられなかった。
「お風呂ためるから待ってて」
「うん」
早苗が風呂場に向かっている間に、颯介は食事の後片付けを始める。
(今日いけるかなあ。とりあえず迫ってみるか)
気楽に考えて機嫌よく片付けた。
風呂から上がると早苗は布団を敷いていた。
「来客用の布団がないから私の布団で寝てくれる?」
「え。一緒に寝るんだよ」
早苗はやっぱりそうなのかという顔をしたが、
「狭いよ?私こたつで寝るけど」
と言う。
「泊まる意味ないじゃんよ」
颯介は笑った。
早苗はまた下を向いて、
「じゃ私もお風呂入ってくる」
と風呂場へ向かった。
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