ペット女の愛され方

miyu.

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縛りたい

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「おー、遅かったなお前ら」


スーパーの袋三つをシロさんと分担してようやく着いた新しい我が家。
こと、ひろのお部屋。

扉を開けるとちょうど帰ってきたらしい
ネクタイを緩めてるひろがお出迎えしてくれた。


「…もう、疲れた」

「まだまだ!
これからペット歓迎パーティするよ」

「散々さっきまでずっとペットバカにしてたくせにっ!」

「それとこれと話は別。」

「はい?どこがどう別なのっ?!」

「どこがどう?どういうこと?」

「だからぁ、

 
「はい、ストーップ。」


まだ玄関先で靴も脱いでないのに
シロさんとそんなやり取りをしていたら
両手を広げて仲裁に入り込んだひろ。


「どうした、やけに仲良くなったな」

「仲良くないですよ、ずっとバカにされてて」

「バカにしてないよ?別に。
ま、とりあえず食べようか」


腹が減っては戦ができぬ、って靴を脱ぐと
わたしが持ってた袋もひょいって持ち上げて
自分の部屋のようにリビングへと向かった。


「ただいま」

「……おかえりなさい」


ほんの一瞬前までのわちゃわちゃしてた空気から一変
リビングの向こう側のキッチンでガサゴソ聞こえる中、取り残された私たち。


「ごめんな、仕事抜けれなくて迎え行けなくて」

「大丈夫です、シロさん来てくれたし」

「ふーん。ちょっと妬けるわ」

「え?」

「俺のなのに、早速シロに懐いてんだもん」


少しいじけた様子でそう言うと
シュルリと解いたネクタイを手にしながら、私の腕を取った。


「縛っときたい」

「し、しばっ、?!」


めちゃくちゃ不器用そうだけど
たどたどしく私の手首に巻いたネクタイをギューって縛って視線を上げたひろ。

こうやって視線が交わると
その瞳の奥に吸い込まれていきそうな感覚に襲われるから不思議。


「縛られんの好き?」


優しい手つきでぐちゃぐちゃなネクタイを整えるように撫でて
その度に微かに触れてしまう指先にも反応しそうになる。


「……ん、まぁ…、嫌い、ではないかな?」


現に今こうして
縛られた手首がちょっと心地いいとか思っちゃってるし。


「んふ、かーわいっ」


さっきまで拗ね顔だったのに
途端にニヤニヤと鼻の下を伸ばしてご機嫌さん。




「ミーツー!はやくー!」


その時向こうから聞こえたその声に

”おう、今行く~”

って、何事も無かったかのようにしゅるりとネクタイを解いた。


「行くか、シロうるせぇし」

「うん、いっぱい買ってきたから」

「俺も腹減ったな~」


そのままペタペタとリビングに向かうひろの背中を見つめながら
自分の心臓に手を当てた。

ドク、ドク、ドク……、と心臓が早鐘をうつように高鳴ってて、


「……あかん。」


ドキドキしちゃう。
平然としてる風に見せかけてるけど
内心ドッキドキだからね。

まぁ、あんだけイケメンに触れられてあんなん言われたら
ドキドキしない女はいないと思う。

でも
自分はペット、自分はペット…と言い聞かせて
平然装うしかないし



「ミキー、はやくー」

「はいはーい」


そんなことを考えているとリビングからそう呼ばれて
取り残されたスーパー袋を持って向かおうとすると
ひょこっと顔を覗かせたひろがそれに気付いて
どれどれ、って代わりに持って行ってくれた。
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