タイムリターン～憧れの人に告白をすると魔導師の道が開かれます。

6話

ワイワイとにぎやかな声で意識を取り戻した。チクチクと首元になにかが刺さっているのがわかる。

「ここは…… 」

お決まりのセリフでうっすら目を開けると、気を失っていたのは小屋のような場所で、俺は大量にある藁の上で寝ていたことがわかった。
意識がはっきりしてくると、ワイワイではなく、ブヒブヒと聴こえる。

「おわっ！？ え？ ブタ小屋！？ なんで！？」

状況が理解できなかった俺は、とにかくおっさんを探そうと小屋を飛び出した。
外は生い茂る木や草でおおわれていて、その先には光を反射させ、眩しく光る川が流れていた。
よく目を凝らすと、川辺には見覚えのある背中があり、急いで近づき声をかける。

「おい！おっさん。連れてくるならもう少しマシな場所はなかったのか？ なんでブタ小屋なんだよ？」

来て早々、文句が止まらない俺にたいし、川辺の男が怪訝そうに振り向く。

「おお、やっと起きたか。よかった」竹口がホッとした表情をうかべる。

「あ、やっぱりその体のままか、竹口まで連れてくることないだろ？ 」

竹口は首をかしげ、なにを言われてるか理解できていないようだった。その反応をみて、俺はうっすらと違和感に気づく。

「どういう意味だよ！俺の体がだらしないっていいたいのか？ これでも毎日腹筋してんだぞ」

「お前…… もしかして、竹口なのか？」

「他に誰がいるんだよ！ もしかして、頭でもうったのか？というかやっぱり、俺達って誰かに連れて来られたのかな？」

「……おっさんじゃないのか？」

「おっさん？ 変だぞお前。俺はお前と同じ高校生だ。それよりここはどこなんだろうな」

竹口は不安そうにあたりを見渡して、そう言った。

「もう一人髭の生えた、自分を魔法使いとか言う変なおっさんいなかったか？」

「そんなやつみてないけど、そのおっさんが俺達をこんな場所に連れてきたのか？」

「ま、まあ、そんなとこなんだけど……」

「ゆるせねぇ……、だとしたらカラオケ店の前でおれは眠らされてここに連れて来られたのか。せっかく宮上もいたのに…… 」

「そ、そうだよな。ゆるせないよな」

適当に話を合わせながらキョロキョロとおっさんを探す。

「おい！そのおっさん見つけて、俺らで警察つき出そうぜ。そしたら、新聞にのるかもしれないぞ」

「ん？ いや、俺はいい……」

おーい、ここじゃ！とおっさんの声が聴こえたのは、竹口が警察につきだした懸賞金をどう使うか、迷いはじめた時だった。
振り向くと手をあげてこっちに近づいてきている。

「おっさん！！」

「なに？ こいつが！？」

竹口の反応を無視して、おっさんに近づこうとすると「まて！」と手を出して竹口が止める。

「お前一人じゃ危険だ。ここは俺ら二人で協力するんだ」

「違うんだ竹…… あ……」

事情を説明しようとした瞬間、竹口が前にでる。

「おい、誘拐犯！ お前の目的はなんだ？ うちの家庭はごく普通の公務員で三人兄弟なんだ。金なんかないぞ」

なぜ、家族構成をここで言う必要があったのかわからない俺は改めて事情を説明しようと試みる。

「違うんだ竹……」

今度は、説明する間もなく、おっさんが右手を竹口の方へ向けて魔法をかける。

「わるかったの。お主はもう帰ってええぞ」

竹口の体が白く光ったと思ったら、その場から姿を消した。

「おい！ 竹口になにしたんだよ！」

「なにって元の世界に返したんじゃ。大丈夫じゃ、自宅の布団で目を覚ますようにしておいたからな、あの男のことだ、夢だとおもうじゃろ」

「そ、そうか。無事ならいいんだ。それよりここはどこなんだ？ ここがおっさんのいる世界なのか？」

「そうじゃ、ここは、魔法の国ラジタニア」

「ラジタニア…… それじゃあ、ここは街はずれ？ なんでこんな場所なんだ？」

辺りを見渡しても、川と木しかみえない。まるでキャンプ場みたいだ。

「今わしらがいるのは訓練の森といってな、まぁ、魔法士の訓練場所みたいなとこじゃ。お主をここに呼んだのには理由がある」

「理由ってなんだよ……」

はじめてみるおっさんの真剣な表情に息を飲む。