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エピソード二
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『なら、取り残された生者は誰が保護するんだろうって。』
「...」
『俺の話聞いてくれるか?』
「もちろんです。」
『そうか、ちっと長いぞ。』
「構いませんよ。僕は寝たりしませんから。」
『ハハ、んじゃ話すぞ。...俺が生まれてすぐ俺の村は戦場にされて、親もカスミのように殺された。親がかばったこともあって奇跡的に俺は生き延びた。...でも生き延びたから幸せかというとそうじゃなかった。はじめは、親が助けてくれた命をありがたく思った。でも、俺には親戚もいなかったから一人で生きるしかなくて何度も死にかけた。そして、気がついたら恨み始めていた。』
「...両親を殺した奴ら、ですか?」
『それもある。が両親もだ。』
「え...」
『親が子どもを守るのは普通だ...でもなんで俺を助けたんだ。俺も一緒に連れて逝ってくれればよかったのに。気づけばこの世を恨んでいた。全員殺してやるってさ。』
「...」
『安心しな。全くっていうと嘘になるが今はそんなに恨んじゃいねーよ。』
「そうですか。」
『んで、殺された奴らは俺達、霊保隊に恨みをはらしてもらって、結果保護されるだろ?』
「ですね。」
『じゃあ俺みたいに残された奴らは誰か保護してくれるか?恨みを聞いてくれるか?はらしてくれるか?しねぇだろ。誰もいない、一人なんだから...』
「...確かに、取り残された生者は助けてくれる人がいないかも知れません。...でも、でも!生きているじゃないですか!...見えてるじゃないですか!!」
『!?』
「...今どれだけ孤独でも助けてもらえなくても、あんたにはあんたがあるんだから、この先、助けてくれる人がきっと現れる。この世を恨む心でいっぱいでもいつか恨みが消えるほどの希望の光が差すかもしれない。でももう僕達は、その光すら差さない。何故かわかりますか?」
『...死んでしまったから』
「はい、助けを求めても誰も気づいてくれない、愛しい家族と話したくても声すら届かない、大切な友人や恋人の危機を救いたくても何も出来ない。僕達は自分があるけどないんです。でもあんたは生きてる、あんた次第でどうとでもなる。」
『俺次第で...』
「ヤマトさんは唯一の支えなんです。あなたのおかげで恨みも消えて居場所も出来て無の存在は有の存在に近づけたんです。あなたに会って死んでよかったって始めて思ったんです。僕だけじゃない、みんな言ってました。」
『みんなが?』
「はい、だからそんなこと考えないでください。ヤマトさんは十分救っています。もう一人じゃないです。助けてくれる家族がいます。それにきっと残された生者達も、こんなふうに新しい家族に出会って楽しく生きてますよ。」
『ずいぶん都合がいい考えだな』
「どっかのバカが言ってました。世の中ってやつは都合良く出来ているって。」
『...そうだな。この世は都合良く出来てるに違いない。そう、信じよう。』
「...」
『俺の話聞いてくれるか?』
「もちろんです。」
『そうか、ちっと長いぞ。』
「構いませんよ。僕は寝たりしませんから。」
『ハハ、んじゃ話すぞ。...俺が生まれてすぐ俺の村は戦場にされて、親もカスミのように殺された。親がかばったこともあって奇跡的に俺は生き延びた。...でも生き延びたから幸せかというとそうじゃなかった。はじめは、親が助けてくれた命をありがたく思った。でも、俺には親戚もいなかったから一人で生きるしかなくて何度も死にかけた。そして、気がついたら恨み始めていた。』
「...両親を殺した奴ら、ですか?」
『それもある。が両親もだ。』
「え...」
『親が子どもを守るのは普通だ...でもなんで俺を助けたんだ。俺も一緒に連れて逝ってくれればよかったのに。気づけばこの世を恨んでいた。全員殺してやるってさ。』
「...」
『安心しな。全くっていうと嘘になるが今はそんなに恨んじゃいねーよ。』
「そうですか。」
『んで、殺された奴らは俺達、霊保隊に恨みをはらしてもらって、結果保護されるだろ?』
「ですね。」
『じゃあ俺みたいに残された奴らは誰か保護してくれるか?恨みを聞いてくれるか?はらしてくれるか?しねぇだろ。誰もいない、一人なんだから...』
「...確かに、取り残された生者は助けてくれる人がいないかも知れません。...でも、でも!生きているじゃないですか!...見えてるじゃないですか!!」
『!?』
「...今どれだけ孤独でも助けてもらえなくても、あんたにはあんたがあるんだから、この先、助けてくれる人がきっと現れる。この世を恨む心でいっぱいでもいつか恨みが消えるほどの希望の光が差すかもしれない。でももう僕達は、その光すら差さない。何故かわかりますか?」
『...死んでしまったから』
「はい、助けを求めても誰も気づいてくれない、愛しい家族と話したくても声すら届かない、大切な友人や恋人の危機を救いたくても何も出来ない。僕達は自分があるけどないんです。でもあんたは生きてる、あんた次第でどうとでもなる。」
『俺次第で...』
「ヤマトさんは唯一の支えなんです。あなたのおかげで恨みも消えて居場所も出来て無の存在は有の存在に近づけたんです。あなたに会って死んでよかったって始めて思ったんです。僕だけじゃない、みんな言ってました。」
『みんなが?』
「はい、だからそんなこと考えないでください。ヤマトさんは十分救っています。もう一人じゃないです。助けてくれる家族がいます。それにきっと残された生者達も、こんなふうに新しい家族に出会って楽しく生きてますよ。」
『ずいぶん都合がいい考えだな』
「どっかのバカが言ってました。世の中ってやつは都合良く出来ているって。」
『...そうだな。この世は都合良く出来てるに違いない。そう、信じよう。』
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