ホーリーノヴァ

虎キリン

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ホーリー大穴 一層

戦果

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戦果

 林に戻って、カークの後を追った。道は、ミの村に続く一本道。そこには、激しい戦闘の後が続く。今回は、人間様の勝利だ。力関係がはっきりしたなと思いながらカウリーの水場を目指した。草原に出ると、樹齢2500年は経つ巨木が見える。草原からは、これを目標に逃げればいい。

 カークたちは、どうしているかな。

 ピューイ
 白い風燕が、鳴き声を上げたと思ったら、頭の中で、遠くの映像が拡大された。

 まだ、戦っているのか。さすがに、キングラビットは、しつこい。各チームの代表が、カウリーの水場に集まっていた。

 カウリーの水場に向かう先々で、ホーンラビットを解体している戦士たちに、声を掛けられた。

「遅せえぞオビト」
「終戦の合図は上がってねえ。急げ」
「まだ間に合う」

 もう、称号:修行を極める者から派生した。スキル:1/10負荷を自分に掛けているので、スピードが上がらない。必死で走った。

 そして口々に、オビトが連れている風燕に驚いた。

「ありゃあ、風燕じゃねえか。なんで人に懐くんだ」
「それで遅れたんだろうよ」
「いいことじゃねえか」

 歓迎ムードで、風燕を見送った。風燕は、人家の軒先に巣を作る。村人たちが大事にしている鳥。


 ミの村近くのカウリーの巨木。その下に広がる水場。ここで、ホーンラビット7匹と人10人の戦いが繰り広げられていた。

 カークは、ここまで逃げきった。18匹いたホーンラビットは6匹が逃げ5匹が狩られた。しかし、キングラビットとキングラビットの取り巻き6匹とはしぶとい。普通ウサギ族は、臆病で、ここまでしつこく相手を攻撃することはない。しかし今は、自分たちから進化する者が現れた。キングを敬い、キングを慕い、キングにプライドを持っている。キングを足蹴にした、あの、飛べない鳥もどきは許さん。その気迫が、彼らを森から、この草原の果てまで突き動かした。
 しかし。最後まで従ってきたホーンラビットの内、2匹が狩られ2匹が退散した。人も10人の内6人リタイヤ。その中に、救護に回ったサキも含まれる。

 ホーンラビット3vs人種4。内、散々道中で戦ってきてグロッキーな戦士が一人。その戦士が、ラビットキックをもろに受けてしまった。

「まずい、サイカ、バリヤーだ。サキ、救出しろ」

 サイカの父、サイガの的確な指示のおかげで、こちらは死人無し。その間カイが。キングラビットを牽制。ケガ人に近寄らせない。サイガは、2匹のラビットと戦っている。

 そこに2羽の風燕が、風を纏ってホーンラビットに突進した。

 ピューイ
 ピューイ

 空を自在に飛び回る鎌イタチとなった風燕が、2匹のホーンラビットを襲う。

「そりゃあ」

 風燕の応援を得たサイガが、1匹の右耳を半分切り落とした。これを嫌がったホーンラビットが逃げる。これを見たもう一匹と、キングラビットも退散した。

 サイガとカイは、冷や汗をだらだらかいていた。サイカが、もう少し大きくなっていたら、こっちが優位だったかもしれないが、本当に危ないところだった。

「みんな大丈夫か」
 ハアハア、息を切らして、やっとオビトが到着した

「オビト、遅い」
 サイカも、危ないと思ってオビトを待っていた。

「ごめん、でも、見てくれ。ジャイアントベアの魔石だ。それも完全な形の魔石が6個。死体は、二層入り口の前にある。おじさん、みんなで取りに行ってくれ」

「バカやろう、森には入るなといっただろ」

「カイのあんちゃんごめん。でも、こいつらが教えてくれたんだ。風燕の粋(スイ)と鵺(ヌエ)だ。カイのあんちゃんが危ないって言うから高い木に昇ったんだ。そこで友達になった。さっきもこいつらが役に立っただろ」

「おう、風燕の粋(スイ)と鵺(ヌエ)か、さっきはありがとうな。カイだ」

 ピューイ
 ピューイ

「アハハ、喜んでるよ」

「オビト、二層の入り口だな。ジャイアントベアの毛皮は、冬に役立つ。肉は堅いが、食えないことはない。元気なのを集めて持って来よう。悪いが、6つの魔石の内3つは、それぞれの村に納めてくれ。ジャイアントベアの魔石は、土魔法の触媒だ。壁とか穴掘りとか、役に立つ。よくやったとほめてやりたいが、命を粗末にするんじゃない。カイは、ついて来い。サイカは、みんなの治療だ。サキ、終戦の合図を頼む」
「おう!」
「分かった。オビトも手伝って」

 ズドーンと、煙玉が上がった。狩り終了だ。

「待ってくれ、カークは?」
「ココダ、オレ、ズット、ネラワレテタ」

 カークは、カウリーの巨木の後ろから現れた。サイガとカイは、もう草原に向かって歩き出した。

「はーよかった」
「キングラビットニ、ニゲラレタ」
「後で、イスタールの町に行って美味しいものをおごるさ。お疲れさん」

 風燕の粋(スイ)と鵺(ヌエ)が、カークにとまった。カークは、二羽を振り解こうとしない。

「お前ら、二羽ともメスだろう。カークは、オスを自分に乗せないんだ」
 ピューイ
 ピューイ
 カーウン「コイツラ、ナンダ」
「どうしたの、この子たち」
「友達になったんだ。その話はあとでいいだろ。治癒をしよう」

 おれは、カークの鞍についているサイドポケットから、包帯を取り出した。



 今回も、大勝利に終わった。実力が試される少人数での狩りだったため、ケガ人が多いが、みんないい顔をしている。ミの村の村の広場で、宴を始めた。みんなホーンラビットの肉をほおばった。酒は、ヒの村のおれのじいちゃんとカークのじいちゃんの差し入れだ。つまりカークの家族も来ている。カークは、嬉しくて仕方ないようだ。なんせ、ジャイアントベアの肉がある。カークの家族が腹いっぱい食べても、まだ5体も残るぐらいの大収穫。後でカークの家族にもう一体を届けようという話になったぐらいだ。

 ミの村の村長が、ヒの村とユの村の村長と三人で、高いところに上がった。戦果報告だ。

「皆の衆。今回は、前回より増して戦利品が手に入った。それは、ヒの村のオビトと友達になってくれた風燕の粋(スイ)と鵺(ヌエ)のおかげじゃ」

 うちの村長がおれを手招きした。
「オビトもスイとヌエを連れて壇上に上がるんじゃ」
「スイが眠そうなんだ」
「ええから、早よ来い」

 こっくりこっくりしているスイを両手で持って壇上に上がった。風燕なので、みんなに大人気。大声援になった。

 オーーーー
「白い風燕なんて見たことない。もう片方は黒いぞ。紺色じゃないのか」
「可愛い」
「スイちゃーーん。ヌエちゃーーーん」

「すごい人気だな」

 夜元気なヌエは、おれの肩で胸を張り、こっくりこっくりしていたスイは、大声援に、はっと気づいて周りをきょろきょろしている。

「テームじゃないんじゃな」
「そりゃそうじゃろ。オビトより風燕の方が格上じゃ」
「不思議なこともあるもんじゃな」
「そうでもないんじゃ。オビトは、妖精に好かれとる」
「ほう、妖精に」

 ミの村の村長の後ろで、ユの村とヒの村の村長が、ひそひそ話している。

「風燕の粋(スイ)と鵺(ヌエ)のおかげで、ジャイアントベアの死骸を持って帰ることが出来た。たぶん強い冒険者が、ホーリー大穴のダンジョンに入って行ったんじゃろが、おかげで、わしら3つの村に、土の魔石が手に入ったぞ。そこでじゃ、みんなにいい知らせじゃ。ユの村の、頼む」

 そう言われて、ユの村の村長が前に出た。

「うちの村もそうじゃが、ミの村の衆もヒの村の衆も喜べ。これから1年間、この3つの村は、温泉に入り放題じゃ。代わりに、温泉の整備を頼みたい。湯治小屋も立派にしたいんじゃ。どうじゃ、ええ話じゃろ」

 ウオーーーーーー

 割れんばかりの歓声に拍手。

「カークの家族が入れるぐらいの風呂場を作ってもらえんじゃろか」
「ディノニクスが風呂に入るなんて聞いたことないぞ」
「あそこのじいさんと親父さんは、酒好きでの、最近わしも相伴にあずかっとるのよ。無理やり風呂を覚えさようや。どうじゃ、風呂場で一杯」
「ええな。なら、カークを持ち上げんとな」

 今度は、ミの村とヒの村の村長がひそひそ話。

「よっしゃ、次は、今回の狩りの功労者じゃ。カークこっちに来い」
 カーウン

 カークは、おれと入れ替わりに壇上に上がった。

「カークは、ラビットキングを蹴って、ミの村のカウリーまでおびき寄せた。それが、今回の戦果に繋がった。カークは、キングラビットたちから逃げきったんじゃ。どうじゃ、凄いじゃろ」

 ひゅーひゅー
「カークよくやった」
「えらいぞ」
「オレの肉を食え」

 みんな言いたい放題だが、温かい声援だ。

「今日は、カークの家族も招待した。なんせジャイアントベアーが6体じゃ。もう一体、カークの家族に分け前をやってもええじゃろ」

「いいぞ」
「当り前だ」
「いっぱい食べてくれ」

 カークのお母さんは、「カーク、立派になって」と、泣きそうだ。

「カークの家族も、温泉に入っていいじゃろ。ユの村の」
「おいおい、ミの村の」
「ええじゃないか、ここのいるんじゃから」
「おいおい、ヒの村の……、仕方ないのう。カークの家族が入るかどうかは別にして、大きな風呂場を作る。それでええか」

 オーーー
 カーウン
 大きな風呂場と聞いて、みんなテンションが上がった。

 白い風燕スイは、おれの手の中で眠ってしまった。昼間は、これが逆転する。ヌエは、朝方と夕方は元気だが、日中眠っている。どちらも眷属の主が主だから極端だ。だから、2羽で一羽だと思うことにした。それでも2羽には自由な時間が結構ある。2羽は、朝夕、自由に村の中を飛び回って愛想を振りまき、村の人気者になった。



 その翌日。今日は、戦果を実感する日だ。おれたちは、エルフの町イスタールに来ている。7歳になったから、おれとサイカとカークだけで来た。なんか一人前になったような気分だ。それに、風燕のスイとヌエを換金所の姉ちゃんに紹介しないといけない。それで、2羽とも元気なうちにと朝一番で換金所に来た。ただ、じいちゃんが言うには、ジャイアントベアの完全な魔石はとっても高価だから、換金するのはいいが、その金は、換金所に預けろと言われた。後で、じいちゃんが取りに来てくれることになっている。とにかく一人前になった気分を味わいたいので、このメンバーで来た。

 ジャイアントベアの魔石は、おれとサイカで一個づつ。もう一個は、覚えたい魔法があるので、取っておく。その魔法は、おれができてもいいしサイカができてもいいと思っている。

 チリリン

「いらっしゃいませ。あら、オビト君、勇者様は?」

 じいちゃんは、イスタールで勇者と呼ばれている。50年前の大食い選手権でそうなったのだが、未だに大人気だ。

「おれたち、7歳になったんだ。一人前だからな」

「はいはい、それで今日の交換品は?」

 おれとサイカとカークは、目を合わせてニヤッと笑った。いつものスライムの魔石の欠片に一角ウサギの角。この間の分け前でもらったホーンラビットの角。これだけでも大戦果なのに、更にとっておきがある。おれたちは、これら交換品の横に、ドンと、ジャイアントベアーの魔石を置いた。

「ちょっと、オビト君、サイカちゃん、カーク君も、これどうしたの?」

「この子たちが、見つけて教えてくれたんです」
「おれの友達だ。スイとヌエって言うんだ。昨日から仲間なんだ」
 カーウンカーウン

 受付嬢がカークをよく見ると羽毛の中に2羽の風燕が埋もれていた。飛んでイスタールのツリーシティに来ることが出来る癖に、楽してカークの中に隠れていた。もう少し時間が立ったら、ヌエが眠くなるので、この後、ナポリに行ってマリーさんに挨拶したら、ヌエは、ここで寝るのだろう。

 受付嬢は、大物のアイテムが舞い込んできたので慌てた。

「ちょっと待ってね。店長、店長大変です」

 おれたちは再び目を合わせてニヤッとした。サイカは、ニコッとだけどね。おれとカークは、悪人面でニヤッとした。じいちゃんがめちゃめちゃな値段が付くと言ったからだ。

 甘かった。おれたちは店長に別室に呼ばれて、事の経緯を根掘り葉掘り聞かれた。子供が、ジャイアントベアを倒せるはずがない。おれたちは、ずいぶん店長に絞られた。偶々換金に来たミの村のおじさんが証人になってくれたので助かったけど、ヌエは、カークの羽毛の中で眠ってしまった。
 それというのも、ジャイアントベアとの戦い方は、やはり魔石を砕くのが早道。それが完全な形で、ここに有るのだから、店長が経緯を聞きたがる。店長に怒られながらそう言う話を聞いた。

「はなしは、分かったけど」
「二人共、お金は、大人に取りに来てもらいなさい」

「そうする予定です」
「それで幾らになるんだ?」
 カーク〈オレモソレ〉

「150万デナールだ」

「えっ?」
 カーク?
「もう一回言ってもらえますか」

「150万デナール。正価の半額だからね。でも、150枚の金貨が見たいだろ。二人合わせて300枚の金貨を用意しよう」
「見るだけですよ。ここで触るのは、構いません」

 わー
 子供なんで大はしゃぎした。これ、子供の特権。一回やってみたかった。ヌエが何事かとカークの上で、きょときょろしている。スイは、おれの頭の上にとまった。

「やっぱり、山積みがいいわよね」
 受付のお姉さんは、優しい。平置きしてくれた。これが、50枚づつ紙に包まれていたら、ほんのちょっとにしか見えない。

「おおーー、山吹色」
「きれい」
「ヤッタ」

「それとは別に、スライムの欠片100。一角ウサギの角5本。ホーンラビットの角が多いのね。7本。締めて42500ディナールよ。これだけでも、大戦果ね。二人共、金貨4枚に銀貨2枚500ディナール硬貨1枚でいいかしら」

「お願いします」

 そうなのだ。こっちは、本当におれたちの実力。二人合わせて8万5千ディナール。今まで貯めたお金と合わせて25万ディナールになる。この2年間、会った事が無いDの店長の度肝を抜いてやる。絶対呼び出して『スライムの完全な魔石の取り出し方』のヒントを貰うんだ。

 換金所を出てナポリに行った。換金所の店長に絞られたせいで、ナポリの店が開いていた。裏口から入って挨拶すると、表に回っていいわよと言われた。スイとヌエを紹介すると香草のサラダをくれた。寝ているヌエも起こして食べさせたのだが、野菜なので嫌っていた。でも、マリーさんの「お残しは、許しません」に怯えて食べてみると、行ける口みたいで、その後は、黙々と食べていた。
 おれたちもスパゲティを腹いっぱい食べた。この後バザールを通って、モノレール乗り場に行く。バザールの誘惑に負けないために、お腹をいっぱいにした。


 おれたちは、Dの店前で、看板をにらんだ。今日、おれたちは、Dの店で、ハーフスタッフをオーダーメイドする。これなら、大人になっても使える。おれ用の剣は、家に有るし、今だったらハーフサイズなので、村長の家で借りてもいい。でも、ハーフスタッフは、ヒの村にもミの村にもない。サイカは召喚士だが、ここのところ魔法の成長具合がとてもいい。将来のことを考えるとスタッフを今から持っていたほうがいいに決まっているが、大人用は長すぎる。ここは奮発することにした。ついでに、店長から『スライムの完全な魔石の取り出し方』のヒントを聞き出してやるんだ。

「お店、開いていたね」
「よし、予定通りだ」
「ウンガ、ヨカッタ」

 そうなのだ、ここは、店が開いているだけでも幸運なのだ。おれたちは、鼻息荒く店に入った。

 チリリン

「いらっしゃいませ。おやあ、お孫さんたちだけですか。勇者様は?」

「おれたち、7歳になったんだぞ。一人で来れるようになったんだ」

「それはそれは、それで、今日は、どんな御用で?」

「えっと、私用のスタッフを作ってもらいたいんです」
「ハーフスタッフ、ナンダロ」
「25万貯めたんだ。作ってくれ」

「それじゃあ、柄の部分だけになると思うんですが、親方、親方ー。オーダーメイドのお客さんです。25万で、ハーフスタッフを作ってほしいそうです」

「それじゃあ、柄の部分しか作れんだろ。どれ、本人を見てやるか」

 出てきたのが、見覚え有るエルダードワーフだったから驚いた。向こうも、子供なのを見て、目をこすっている。

「ドレイク!」
「お前さん、名無しか」
「名無しじゃない、オビトダ」
「ソウダゾ」
 ピルルー
「えっと、私のスタッフを作ってもらいたいんです」

「親方、勇者のお孫さんです」
「そりゃディノニクスを連れているからな、見りゃ分かる。オビトか、後で話がある。それより嬢ちゃんだ。なんでスタッフがほしいんだ。まだいいだろ」

「私たち、最初、私のわがままで『スライムの完全な魔石の取り出し方』って冊子をここで買ったんです。それで私、ずっとバリヤーと砂化の魔法を練習しています。この間、ラビットキングの斬波をバリヤーで防御したら、みんなに褒められました。もっと魔法を習いたいっていったらオビトが、スタッフを買おうっていうんです」

「なんで、バリヤーと砂化の魔法を覚えたら、スライムの完全な魔石を取り出せるんだ?」

「そりゃあ、サウンドバリヤーをやれば一発だからな」
「親方!」
「そい、しまった」

「サウンドバリヤーって、なんだ!」

「これ以上は内緒だ。こっちも商売だからな。名無しの性で、大失敗したわい」ブツブツ、ブツブツ。

 おれたちは顔を見合わせた。大ヒントを貰ったに違いない。
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