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【公爵Side】招待状

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「シャインよ。千載一遇のチャンスがやってきたぞ」
「せんざいいちぐう?」
「簡単に言えば、好機と似たような意味だ」

 シャインはまだ内容を知らされていないのにも関わらず、ご機嫌で浮かれていた。
 早くなにが好機なのか教えて欲しかったため、公爵の腕を掴んでバタバタと動かして急かす。

「王宮から直接お茶会への招待が届いている。これはもしかすれば王子との婚約の可能性も出てきたようだ」
「もしかして、第一王子と婚約になって私が王妃に……?」
「可能性もある」
「なんということでしょう! では絶対に仕留めてみせますわ!」

 シャインはすでに婚約が確定したかのように思い込んでいた。
 それもそのはずで、シャインの年齢だと、貴族界では婚約が決まる年ごろなのである。
 王宮で開催されるお茶会は貴族であれば誰でも参加ができる。
 だが、王宮からの招待となれば必ずなにかしらの理由があるのだ。
 シャインにとって、王子の誰かから婚約されることしか考えられなかったのだ。

「だがシャインよ、お茶会の嗜みに関してはまだほとんど教えていないはずだが」
「大丈夫ですよ。ルリナのような無能な結果にはなりませんよ。自信はあります」
「私としては少々心配だ。今からすぐにでもお茶会の予行練習をしようと思う」
「お断りしますわ」

 シャインが嫌そうにしながら即答で断った。
 シャインは公爵に対して、なにを馬鹿なことを言っているのだろうかと疑問になっていたのだ。

「なぜだ……?」
「それよりももっと大事なことがあるでしょう」
「なんだ?」
「王子に注目されるように、最高級のドレスとアクセサリー、それから指輪や靴も新調してくださらないと」
「ば……ばかなことを言うでない! それに新しいドレスやアクセサリーはお詫びのしるしに買ったばかりではないか」

 公爵は必死に弁明するが、シャインは全く揺るぐこともなく、首を横に振った。

「あれはお詫びでしょう。それに私は王妃になれるチャンスなのですよ。中身はバッチリなのですから見た目も完璧にしないと」
「しかし……」
「やっぱりなんだかんだ言って、お父様は私のこともルリナ同様の扱いなのですね」
「そんなことはない。シャインだけが私の大事な娘だ」
「だったらその大事な娘のためにも人肌脱いで欲しいですわ。こんなチャンス二度とないかもしれませんもの」
「それは否定できない。だが……」

 公爵は迷っていた。
 シャインのためにも婚約のためにもドレスなどを新調したほうが良い。注目を浴びるうえに婚約に有利になることは間違いないと同じ考えをもっている。
 だが、すでに公爵家の年俸を超える出費を使ってしまっていたのだ。
 これ以上の出費をした場合、公爵の秘密の楽しみが一切できなくなってしまう。
 それだけはなんとしてでも避けたいと思っていたのだ。

「シャインが婚約の際、身だしなみも完璧であれば私の評価もさらに上昇することは間違いないであろう。だが、予算が足りぬ。しばらくは普段の食事にも支障が出てしまうかもしれないが構わないか?」
「はい! でも誰かを招き入れるときくらいは見栄を張って欲しいですが」
「それは無論だ。公爵家として恥になってしまうからな。では決まりだ」
「ありがとうございますーーー!!」

 公爵もシャインも勘違いしていた。
 王宮から招待状が届いた本当の理由は、当日のお茶会で知ることになる。
 シャインはなにも知らず、お茶会のために衝動買いをしてしまったのだった。
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