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第一章 旦那への復讐編
3 ワインのすり替え
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よく考えてみれば、アルマは前世でいうとロリフェイスでアイドルみたいな顔だ。
エレナは普段の口調がのほほんとした感じだが、癒し系で大人のお姉さんといった感じだ。
ブロンダが手を出しても不思議ではない。
そもそもこの二人を使用人として雇ったのはブロンダだし。
「大丈夫?」
「え?」
「だから、大変な目にあっちゃったのに、しかもずっと私に黙っていなければいけないストレスもあったでしょう?」
二人に対しては、寝取られた怒りの感情よりも彼女たちの心の傷が心配だった。
そもそもすでにブロンダへの愛情も感情も無に等しい。
ブロンダが誰と何をしていようが、私の心へのダメージはほとんどない。
「奥方様は怒らないのですかぁ……?」
こんな状況でも天然でのほほんとした口調のエレナが私に訴える。
口調はともかく、顔は真剣だ。
「怒るも何も……二人とも被害者じゃん。それに、ぶっちゃけ私自身、もうあの男と離婚したいくらい冷めているし」
「本来だったら、理由はなんであれ私たちは処刑されてもおかしくないのですよ……?」
そういえばこの世界の法律って、そういう不倫関係に関しては特に平民に対して恐ろしく厳しかったっけ。
夫婦になった者が他者に性的危害を加えた場合でも、両者が罰せられてしまうんだった。
それが貴族と民間人の関係ともなると、民間人は容赦無く処刑される。
だから、女性は特に異性の男には注意する傾向があるんだった。
ちなみにアルマもエレナも元々は民間人だ。
今回の場合、私が訴えれば処刑にすることも可能となる。
「むしろ、こんな家で住み込みで働いて大丈夫なのかが心配なんだけど。性的猛獣がいる家に一緒にいるんだし」
「奥方様……優しすぎます……」
「泣いちゃいますよぉ……」
おっと、この状況でブロンダが帰ってきたら私だけでなくアルマたちも毒殺されかねないからな。
「その話は後にして、二人に命令します。今私たちが話した内容はブロンダには絶対に黙ってて! 私も知らないフリをするから!」
「どういうことですかぁ?」
「二人の命を守るためだから! ところで肝心のブロンダは何時に帰ってくるって言ってた?」
「……十八時とおっしゃっていましたが」
この世界にはなぜかアナログの時計だけは存在している。
時計を確認するとすでに十七時三十分。
これは急がないとマズい。
「二人にもうひとつお願い。買い物に行ったのに、えーと……パンを買い忘れたの。二人で買ってきてくれない?」
「「かしこまりました」」
私が持っていた貨幣を渡して外出してもらった。
一応念のためである。
表情や仕草から考えれば二人が嘘をついているようには見えない。
だが、前世の記憶も加わったことで、以前の私よりも疑いやすい性格になっている。
それに、毒が家にあることを二人が知れば、余計に警戒していつブロンダにボロを出すかわからない。
特にのんびり屋のエレナが心配なのだ。
「さて、急いで毒の入ったワインボトルを……」
ブロンダの部屋へ入り、扉の奥に不自然に収納されたワインを取り出し、私が持ってきた全く同じワインボトルとすり替えた。
問題は毒入りワインをどうするかだ。
「これ、どうすれば……。この世界じゃ燃えないゴミの日とかもないし。そもそも前世の世界でも毒をゴミ捨て場に捨てたら捕まりそうだけど」
せっかくすり替えに成功したのに、これを持っていたら私が悪者みたいではないか!
しかし、こんな最悪のタイミングで、ドアの音が聞こえてきた。
足音は一人分なので、ブロンダだろう!
ひとまず、大急ぎで私の自室にある収納棚の奥に放り込んだ。
すぐにブロンダの元へ挨拶しに行く。
そんなことしたくはないが、これが基本ルールだ。
「おかえりなさいませ」
私はブロンダに向かって深くお辞儀をした。
顔を上げるとブロンダの顔が目に入る。
改めて見ると、悔しいがイケメン美男子だ。
この容姿を武器にすれば、軽い女相手なら口説こうと思えば口説けるだろう……。
「うむ。アルマとエレナはどうしたのだ?」
「買い物に行ってもらってます」
「そうか。ところで、今日は久しぶりにシャインと呑みたいのだが。良いワインも用意してある」
「えっ!?」
私は無意識に驚いてしまう。
無理もなかった。
前世の前世の記憶……この言い方やたらとめんどくさいから前世にまとめようか。
前世の記憶では、毒入りワインを発見し、その場でブロンダに見つかりそれを無理やり飲まされ殺された。
だが、今世ではまだ不倫現場のことは言ってないし、毒入りワインを探した素振りも見せていない。
それなのに、ブロンダは私をすでに毒ワインで殺そうと企んでいるのか!?
「なぜ驚く?」
あ、しまった。
ここはなんとしてでもごまかさなければ!
「申し訳ありません。ブロンダ様にお誘いを受けたのは久々だったのでつい嬉しくて……」
「そうだったな。たまにはいいだろう?」
まずいことになってしまった。
こんなに早くワインを飲ませようとしてくるのは想定外だった。
しかも、このあと毒入りとすり替えた普通のワインを私は飲むとして、演技で倒れるべきなのか、それとも平然とするべきなのか……。
うーん、こればかりは記憶にもないからどうしたらいいだろう。
エレナは普段の口調がのほほんとした感じだが、癒し系で大人のお姉さんといった感じだ。
ブロンダが手を出しても不思議ではない。
そもそもこの二人を使用人として雇ったのはブロンダだし。
「大丈夫?」
「え?」
「だから、大変な目にあっちゃったのに、しかもずっと私に黙っていなければいけないストレスもあったでしょう?」
二人に対しては、寝取られた怒りの感情よりも彼女たちの心の傷が心配だった。
そもそもすでにブロンダへの愛情も感情も無に等しい。
ブロンダが誰と何をしていようが、私の心へのダメージはほとんどない。
「奥方様は怒らないのですかぁ……?」
こんな状況でも天然でのほほんとした口調のエレナが私に訴える。
口調はともかく、顔は真剣だ。
「怒るも何も……二人とも被害者じゃん。それに、ぶっちゃけ私自身、もうあの男と離婚したいくらい冷めているし」
「本来だったら、理由はなんであれ私たちは処刑されてもおかしくないのですよ……?」
そういえばこの世界の法律って、そういう不倫関係に関しては特に平民に対して恐ろしく厳しかったっけ。
夫婦になった者が他者に性的危害を加えた場合でも、両者が罰せられてしまうんだった。
それが貴族と民間人の関係ともなると、民間人は容赦無く処刑される。
だから、女性は特に異性の男には注意する傾向があるんだった。
ちなみにアルマもエレナも元々は民間人だ。
今回の場合、私が訴えれば処刑にすることも可能となる。
「むしろ、こんな家で住み込みで働いて大丈夫なのかが心配なんだけど。性的猛獣がいる家に一緒にいるんだし」
「奥方様……優しすぎます……」
「泣いちゃいますよぉ……」
おっと、この状況でブロンダが帰ってきたら私だけでなくアルマたちも毒殺されかねないからな。
「その話は後にして、二人に命令します。今私たちが話した内容はブロンダには絶対に黙ってて! 私も知らないフリをするから!」
「どういうことですかぁ?」
「二人の命を守るためだから! ところで肝心のブロンダは何時に帰ってくるって言ってた?」
「……十八時とおっしゃっていましたが」
この世界にはなぜかアナログの時計だけは存在している。
時計を確認するとすでに十七時三十分。
これは急がないとマズい。
「二人にもうひとつお願い。買い物に行ったのに、えーと……パンを買い忘れたの。二人で買ってきてくれない?」
「「かしこまりました」」
私が持っていた貨幣を渡して外出してもらった。
一応念のためである。
表情や仕草から考えれば二人が嘘をついているようには見えない。
だが、前世の記憶も加わったことで、以前の私よりも疑いやすい性格になっている。
それに、毒が家にあることを二人が知れば、余計に警戒していつブロンダにボロを出すかわからない。
特にのんびり屋のエレナが心配なのだ。
「さて、急いで毒の入ったワインボトルを……」
ブロンダの部屋へ入り、扉の奥に不自然に収納されたワインを取り出し、私が持ってきた全く同じワインボトルとすり替えた。
問題は毒入りワインをどうするかだ。
「これ、どうすれば……。この世界じゃ燃えないゴミの日とかもないし。そもそも前世の世界でも毒をゴミ捨て場に捨てたら捕まりそうだけど」
せっかくすり替えに成功したのに、これを持っていたら私が悪者みたいではないか!
しかし、こんな最悪のタイミングで、ドアの音が聞こえてきた。
足音は一人分なので、ブロンダだろう!
ひとまず、大急ぎで私の自室にある収納棚の奥に放り込んだ。
すぐにブロンダの元へ挨拶しに行く。
そんなことしたくはないが、これが基本ルールだ。
「おかえりなさいませ」
私はブロンダに向かって深くお辞儀をした。
顔を上げるとブロンダの顔が目に入る。
改めて見ると、悔しいがイケメン美男子だ。
この容姿を武器にすれば、軽い女相手なら口説こうと思えば口説けるだろう……。
「うむ。アルマとエレナはどうしたのだ?」
「買い物に行ってもらってます」
「そうか。ところで、今日は久しぶりにシャインと呑みたいのだが。良いワインも用意してある」
「えっ!?」
私は無意識に驚いてしまう。
無理もなかった。
前世の前世の記憶……この言い方やたらとめんどくさいから前世にまとめようか。
前世の記憶では、毒入りワインを発見し、その場でブロンダに見つかりそれを無理やり飲まされ殺された。
だが、今世ではまだ不倫現場のことは言ってないし、毒入りワインを探した素振りも見せていない。
それなのに、ブロンダは私をすでに毒ワインで殺そうと企んでいるのか!?
「なぜ驚く?」
あ、しまった。
ここはなんとしてでもごまかさなければ!
「申し訳ありません。ブロンダ様にお誘いを受けたのは久々だったのでつい嬉しくて……」
「そうだったな。たまにはいいだろう?」
まずいことになってしまった。
こんなに早くワインを飲ませようとしてくるのは想定外だった。
しかも、このあと毒入りとすり替えた普通のワインを私は飲むとして、演技で倒れるべきなのか、それとも平然とするべきなのか……。
うーん、こればかりは記憶にもないからどうしたらいいだろう。
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