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第二章 貧民街編
8 お父様の命令
「シャインよ、ブロンダとの離婚調停は成立し、向こうの親である伯爵殿からは多額の賠償金と領地をいただいた」
「左様ですか。私には権利というものがないのですか?」
「む!? どういう意味だね?」
公爵であるお父様に突っ掛かった。
今までならありえなかったかもしれないが、今の私は前世の記憶持ちなのだ。
今までのことだって、そもそもお父様に問題があったから悪い結果になったと推測できる。
貴族一家としては正しいことかもしれないし、意見を言わずに周りの言いなりに生きてきた私にも問題がある。
だが、そんなことよりも、なによりも一番の理由として、前世の私の性格の問題である。
自分では何もしないくせに、権力だけを利用して態度がデカく、自分勝手で命令ばかり言う人間が大っ嫌いなのだ。
「被害者は私でしょう? なぜお父様の元だけに慰謝料が支払われているのかが理解できません」
「いつからシャインは反抗するようになったのだ?」
「私が慰謝料を受け取るのは当然の権利だと思いますが」
殺されそうになったのも私。
不倫されていたのも私。
それらが全て証明されたので、離婚も難なく成立し向こうの両親から多額の慰謝料を請求した。
そこまではよかったのだが、何故か受取人がお父様になっているのだ。
「シャインは離婚しエフティーネという家名は消え、元どおりグレイ家に戻ってきたのだ。全ての権利は私にある」
これだから貴族社会は……。
「どうしてもというのなら、お前にもわけてやろう。いや、正確には領地を任せると言えばわかりやすいか」
「と、いいますと?」
「伯爵殿から頂戴した領地の一部をシャインに全て任せることにする」
そう言いながらお父様はニヤリと笑う。
こういうとき、ろくでもない命令をしてくるのが鉄板だろう。
「場所は王都郊外の貧民街だ」
「貧民街?」
「そうだ。ここからは馬でないと行くことも厳しい遠く離れた街の領地をまるごといただいた。だが残念なことに、その場の管理を伯爵は無関与だったらしく現在は無法地帯の貧乏民衆どもが集う場所となっているらしい。おまえをそこへ派遣し、貧民街を管理せよ」
内容が無茶苦茶だ。
仕草や発言から察するが、お父様は私のことをただの道具、むしろ邪魔者扱いとしている気がする。
貧民街へ派遣となれば、おそらく王都にはもう戻れない。
おまけに、下手をすれば無法地帯の貧民街で殺されてもおかしくはない。
なるほど、意図が読めたぞ。
「つまり、率直に言えば、私を貧民街へ送り込んで、そこで何かしらの事件に巻き込まれて私が死亡。そうすれば、王族の権限で貧民街の人間を一掃することができる。そうお考えですね」
「ほう。いつからお前は頭が回るようになったのだ?」
悪気もないようにゲラゲラと笑ってきた。
「つまり、私に死ねと?」
「そこまでは言わぬ。だが、私の決めた縁談相手をくだらぬ容疑でどん底に陥れ、私に恥をかかせた罪は重い。よって、自己責任で貧民街を改善せよ。それくらいもできぬようならば、もうお前などゴミ同然だ」
だからそれって、死ねと言っているのと一緒じゃん!
「兄上には許可は得ている。むろん、シャインがどうしても貧民街を良き町に改善したいと自ら名乗り出たということにしているがな」
「で、もしも万が一にでも私が貧民街で良い環境に改善できたらどうするおつもりで?」
「その場合には兄上から褒美が出るだろう。むろん、私としても鼻が高いのでその場合には新たな縁談相手を用意する」
「結構です。おじさま……いえ、国王陛下からの褒美だけでいいんで!」
お父様は嘲笑いながら私を見下してくる。
「お前に貧民街改革など無理だとは思うがな。むしろ、あの街で身包み剥がされ飢え死にするのがオチだろう」
この人は本当に親なのか?
それとも貴族社会とは子供を道具としてしか扱わないのか?
内心苛立ちながらも、どん底に突き落とされたかのような表情を演技して告げる。
「わかりました……。では三日後、この王都から出ていき貧民街へと向かいます」
「うむ。なんだかんだ素直でよろしい。褒美に馬車を二台ほど手配してやろう」
「それは助かります」
まさか私が演技をしなかったら、徒歩で貧民街へ向かわせるつもりじゃなかっただろうな!?
貧民街までは王都から最低でも五十キロは離れているんだぞ。
どちらにしても、これで私の困ったフリをするのはおしまいだ。
むしろ貧民街のような、国の法律が全く関与されていない場所で自由に生きれるという方が私としては光栄だ。
一緒に住んでいたアルマやエレナと別れるのは寂しいが、これでめんどくさすぎる貴族社会から離れられるなら……。
よく考えたら、これって国から追放されたのと同じなのではないかとふと思う。
こんなに私にとって好都合な追放なら問題はないが。
事情を説明するために一度、旧エフティーネ家へと帰る。
「左様ですか。私には権利というものがないのですか?」
「む!? どういう意味だね?」
公爵であるお父様に突っ掛かった。
今までならありえなかったかもしれないが、今の私は前世の記憶持ちなのだ。
今までのことだって、そもそもお父様に問題があったから悪い結果になったと推測できる。
貴族一家としては正しいことかもしれないし、意見を言わずに周りの言いなりに生きてきた私にも問題がある。
だが、そんなことよりも、なによりも一番の理由として、前世の私の性格の問題である。
自分では何もしないくせに、権力だけを利用して態度がデカく、自分勝手で命令ばかり言う人間が大っ嫌いなのだ。
「被害者は私でしょう? なぜお父様の元だけに慰謝料が支払われているのかが理解できません」
「いつからシャインは反抗するようになったのだ?」
「私が慰謝料を受け取るのは当然の権利だと思いますが」
殺されそうになったのも私。
不倫されていたのも私。
それらが全て証明されたので、離婚も難なく成立し向こうの両親から多額の慰謝料を請求した。
そこまではよかったのだが、何故か受取人がお父様になっているのだ。
「シャインは離婚しエフティーネという家名は消え、元どおりグレイ家に戻ってきたのだ。全ての権利は私にある」
これだから貴族社会は……。
「どうしてもというのなら、お前にもわけてやろう。いや、正確には領地を任せると言えばわかりやすいか」
「と、いいますと?」
「伯爵殿から頂戴した領地の一部をシャインに全て任せることにする」
そう言いながらお父様はニヤリと笑う。
こういうとき、ろくでもない命令をしてくるのが鉄板だろう。
「場所は王都郊外の貧民街だ」
「貧民街?」
「そうだ。ここからは馬でないと行くことも厳しい遠く離れた街の領地をまるごといただいた。だが残念なことに、その場の管理を伯爵は無関与だったらしく現在は無法地帯の貧乏民衆どもが集う場所となっているらしい。おまえをそこへ派遣し、貧民街を管理せよ」
内容が無茶苦茶だ。
仕草や発言から察するが、お父様は私のことをただの道具、むしろ邪魔者扱いとしている気がする。
貧民街へ派遣となれば、おそらく王都にはもう戻れない。
おまけに、下手をすれば無法地帯の貧民街で殺されてもおかしくはない。
なるほど、意図が読めたぞ。
「つまり、率直に言えば、私を貧民街へ送り込んで、そこで何かしらの事件に巻き込まれて私が死亡。そうすれば、王族の権限で貧民街の人間を一掃することができる。そうお考えですね」
「ほう。いつからお前は頭が回るようになったのだ?」
悪気もないようにゲラゲラと笑ってきた。
「つまり、私に死ねと?」
「そこまでは言わぬ。だが、私の決めた縁談相手をくだらぬ容疑でどん底に陥れ、私に恥をかかせた罪は重い。よって、自己責任で貧民街を改善せよ。それくらいもできぬようならば、もうお前などゴミ同然だ」
だからそれって、死ねと言っているのと一緒じゃん!
「兄上には許可は得ている。むろん、シャインがどうしても貧民街を良き町に改善したいと自ら名乗り出たということにしているがな」
「で、もしも万が一にでも私が貧民街で良い環境に改善できたらどうするおつもりで?」
「その場合には兄上から褒美が出るだろう。むろん、私としても鼻が高いのでその場合には新たな縁談相手を用意する」
「結構です。おじさま……いえ、国王陛下からの褒美だけでいいんで!」
お父様は嘲笑いながら私を見下してくる。
「お前に貧民街改革など無理だとは思うがな。むしろ、あの街で身包み剥がされ飢え死にするのがオチだろう」
この人は本当に親なのか?
それとも貴族社会とは子供を道具としてしか扱わないのか?
内心苛立ちながらも、どん底に突き落とされたかのような表情を演技して告げる。
「わかりました……。では三日後、この王都から出ていき貧民街へと向かいます」
「うむ。なんだかんだ素直でよろしい。褒美に馬車を二台ほど手配してやろう」
「それは助かります」
まさか私が演技をしなかったら、徒歩で貧民街へ向かわせるつもりじゃなかっただろうな!?
貧民街までは王都から最低でも五十キロは離れているんだぞ。
どちらにしても、これで私の困ったフリをするのはおしまいだ。
むしろ貧民街のような、国の法律が全く関与されていない場所で自由に生きれるという方が私としては光栄だ。
一緒に住んでいたアルマやエレナと別れるのは寂しいが、これでめんどくさすぎる貴族社会から離れられるなら……。
よく考えたら、これって国から追放されたのと同じなのではないかとふと思う。
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事情を説明するために一度、旧エフティーネ家へと帰る。
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