追放された元貴族令嬢は隠し子を幸せにするために平穏な村で仲良く子育てしています 〜追放した貴族たちは仲悪く破滅していきます〜

よどら文鳥

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7、夜会でのできごと

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 私から尋ねる前に、シークベット公爵様が先に話をしてきたのである。

「その上で改めて謝りたいことがある。もちろん信じてくれなくても構わないが……」
「いえ、しっかりお聞きしたいです」
「わかった」

 シークベット公爵様はひと呼吸してからゆっくりと口を開いた。

「四年前の夜会だ。私は参加が遅れてね。到着したときにはすでにミミナ殿が酔い潰れていたのだよ。服装とそのときの寝相が、皆から視線が集中していたため、咄嗟に救護部屋に運ぼうと抱き上げた。私の目的のためにも……」
「そうだったのですね……」
「救護部屋のベッドにミミナ殿を横にさせたときだったよ。なにものかに急に襲われ、私も一時的に意識を失ってしまった」
「え!?」
「意識が戻ったときには……その……私は服を脱いでいる状態でなおかつ……」
「はい!?」
「つまり……ミミナ殿とだな……」

 それ以上のことは話さなくてもなんとなく理解できた。
 だが、もう起こってしまったことは仕方がない。真実を知れてよかったとも思っている。
 それよりも気になることが増えてしまった。

「誰に襲われたか、犯人はどうなったのですか?」
「いや、この件を公にしてしまうとミミナ殿にとてつもない迷惑がかかる。今もなお信頼できる者に内密で調査をしている。そう判断するしかできなかったのだ……」

 残念ながら貴族制度は徹底されているため、下のものの立場は弱い。
 今回の事件を発表したとしたら、私とシークベット公爵様が不本意ながらもそういうことになっていたことも知られていたはずだ。
 そうなれば、どんなにシークベット公爵様が弁明してくれたとしても、酔った状況で勝手にそういうことをしたとみなされ、私が処刑される可能性があった。

 この国の貴族の法律はズルいことが多い。
 公爵を襲うだなんて国家レベルの大事件だ。
 それなのに、たった一人の追放寸前の私のことを考えて黙秘してくれた。
 これがどれほど救われていたのか、今知ることができた。

「本当にすまないと思っている。ずっと昔からミミナ殿のことが好きで好きで仕方がなかった。そのうえでなぜかあの状況下。我慢することはできなかった。ゆえにクルウス殿と私の血が繋がっているのだろう……」

 シークベット公爵様が頭を下げてきた。そんなことまで言わせるために聞いたわけではないし、謝ってほしいだなんて微塵も思っていない。
 むしろ私はその事実を知って救われた。

「ど、どうか頭をあげてください」
「許されるべきことではないとわかっている。私はどのようなことでもミミナ殿に従おう。たとえ公爵を剥奪し国外追放、もしくは処刑でもミミナ殿が望むなら従う!」
「そんなこと考えていませんよ! とにかく、どうか顔だけでもあげてください。怒っていませんし、今の話は全て信じます」

 ゆっくりとシークベット公爵様が顔を戻す。
 私の顔を確認するように見てきたことで、余計に自分の顔が真っ赤になってしまった。

「怪我は大丈夫でしたか?」
「ミミナ殿は優しすぎる。普通勝手に犯した相手にそのようなことは聞かない」
「クルウスのことが可愛いですから。父親の安否を大事にしたいです」

 実のところ、私はすでにシークベット公爵様のことを好きになってきている。
 知らないうちに命を救われていたり、クルウスのことを最初から可愛がってくれていたり、なにより起こったことを全て話してくれたことや親身になって平民の私と接してくれていることも嬉しかった。
 だが、今は立場上一緒になることなんてできるわけがない。
 確実に迷惑をかけてしまう。
 だから好きという気持ちは私の心の中にしまっておくことにした。

「私にも回復治癒魔法が使える。多少の怪我など平気だよ」
「ならひとまずはよかった……」

 それにしても犯人は誰で、なんの目的で気絶させたのだろう。
 命を狙っているとしたら確実に殺せていただろうし……。
 私とシークベット公爵様の不貞という形で私を処刑させたかったのかもしれない。
 だが、あのときの状況を予測できる人なんていない気がするし、無計画ではこんなことはできないはずだ。
 私の中で四年前の夜会のモヤモヤが増えてしまった。

 そう思っていると、馬車にいたピシッとした格好の男性が近づいてくる。

「旦那様……そろそろお時間が」
「そうか、もうそんな時間か。わかった。あと少ししたらすぐ戻る」
「かしこまりました」

 深くお辞儀をして戻っていく。
 シークベット公爵様はそれからすぐに私に顔を向け、真剣な表情になった。

「こんなことをお願いするのも酷かもしれないが……」
「なんでしょうか?」
「クルウス殿……いや、クルウスのことだ。私の血が混ざっているということは、まだ伏せておいてほしい」
「むしろよろしいのですか?」

 意外な提案に私は聞き直してしまった。

「このことが知られれば間違いなく国の管理下が入る。そうなればミミナ殿たちの平穏な生活が脅かされてしまうことだろう。この村での生活も不可能になり王都へ戻される」
「私たちのために……?」
「もちろんだよ。楽しそうにしている二人を見てすぐに理解できた。この村で平穏に生活していたほうが幸せなのだろうなと。それに、最初にミミナ殿は絶対にクルウスをここから離さないという意思も伝わっていた」
「は、はい……とても毎日充実しています。だからここでの生活は今は辞めたくないです」

 シークベット公爵様だって自分の子と一緒に生活したい気持ちはきっとある。
 それなのに、あくまで私たちの幸せを考えてこんな提案をしてくれていることが嬉しかった。
 ますますシークベット公爵様のことが好きになってしまう。

「時間がないから、また今度来たときに最初に出会ったことについて謝罪させてほしい」
「謝罪はしなくともいいので、ぜひお越しください。今度いらっしゃったときはおいしい焼き魚やスープをご用意したいなと思います」
「ああ。ありがとう! 楽しみにしているよ。それと……クルウスには決して無理はしないでほしい」
「は、はい?」

 日常的に無理はしていないと思う。
 なんのことだろうと思っていた矢先、私のことを軽くギュッと抱きしめてくれた。
 どうして私のことを好きになってくださったのかはわからないままだが、大事にされていることはとても伝わった。
 また早く逢いたい。
 簡単にまた来れるような立場の人ではないだろうから、気長に待つことにしよう。
 クルウスには、いつかシークベット公爵様がパパなんだよと紹介できる日がきっとくる。
 そう思えただけで、私にのしかかっていた鎖が一気に解放された気持ちになった。

 今からは、より楽しく村での生活を満喫できそうだ。
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