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13話 ソフィアはアーヴァインに相談してみる
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――自由とはいったいなんなのだろう……。
私はそんな状況にある。
掃除や洗濯を手伝うと言ったら、ウィンさんに全力で止められてしまった。
『成長のためにも彼女たちにやらせてあげていただきたいのです』
と、ウィンさんは言う。
言われてみれば納得もいく。
私だって毎日掃除洗濯炊事を全てやってきたから、それなりにはこなせるようになった。
ウィンさんがメイドたちに教えているのは大変そうだと思ってはいたが、やはり陛下の側近執事長を務めていただけのことはあるようで、扱いがうまい。
しかも、過労にならないように的確に仕事担当を振り分けている。
ベテラン執事長の言葉は全て従っていたほうがメイドたちの成長にもなるのだろう。
ところで、私の成長はどうしたらいいのだろう。
このままなにもしなければ、確実にぐーたら生活になってしまう。
だが、なにもしなくていいという状況に困っていた。
ふと、ドアの外で私の護衛を担当してくれているアーヴァイン様に声をかけた。
彼は、騎士団の演習以外の時間は全て私の護衛として近くにいる。
なお、執事長のウィンさんも護衛経験があるため、アーヴァイン様が不在の時はウィンさんが代わりに私の護衛をしてくれている。
「落ち着きませんか?」
「実はやりたいことがあるんですけれど、ちょっと相談したいなと思いまして」
「私でよろしければ是非」
なぜかアーヴァイン様は嬉しそうだった。
部屋の中へ入ってもらい、ひとまず常備している紅茶をふたつのカップにそれぞれ注ぐ。
「護衛として活動中なので……」
アーヴァイン様は申し訳なさそうな顔をしながら紅茶を飲むのを断ってきた。
「今の時期は比較的暑いですからね。なにも飲まずでは倒れてしまうかもしれませんよ。健康管理の一環として考えたら飲んでもいいでしょう?」
「で……、ではいただきましょう。ソフィア様は優しいのですね」
優しいもなにも……。
お互いに紅茶を飲みはじめたところで私が長い間やりたいと思っていたことを喋る。
これは今まで誰にも喋ったことがない。
「実は、私は小さいころの記憶がありません。助けてくれた人から教えてもらったこととしては、一人で荒野でウロウロとしていたそうです」
「ほう……」
「私の両親は果たしているのか、どうして私は荒野にいたのか知りたくて……」
「なるほど……」
アーヴァイン様は時折ひとことだけ返事をしてくれるだけで、最後まで真剣に聞いてくれていた。
「そのために情報を得たかったため、王都を目指していました」
「助けてくれたというお方に相談はしなかったのですか?」
「それは……」
ここで痛いところを聞かれてしまった。
私が奴隷として伯爵邸に招き入れられたりしたことや、どこから来たかは誰にも伝えていない。
いくら陛下のサイン入り通行手形を受け取ったとしても、余計な危険は作りたくないのだ。
それだけ私のトラウマは大きい……。
「失礼しました。なにかしら事情があるのですね。そうですねぇ……」
アーヴァイン様は真剣に考えてくれているようだ。
私一人ではこれ以上情報を集めることが困難だったため、勇気を出して喋って良かったと思っている。
「魔力は基本的には遺伝します。ソフィア様の魔力や適正が規格外であるということは、ご両親のどちらかあるいは双方が優れた魔力をお持ちである可能性は高いでしょう」
アーヴァイン様の発言を聞き、私の知らない情報がどんどん入ってくる。
魔力は遺伝するということを今初めて知った。
「魔力の優れた方を探すにはその専門の人物を尋ねてみるのも一つの手かと思います」
「知り合いにいるのですか?」
「表向きには知られていませんが、陛下の弟である公爵様は国の中でも五本の指に入るほどの魔法の使い手です」
「すごい……。私などが会えるのでしょうか?」
「もちろんですよ。陛下にも許可をとれば確実です。ただ、公爵様は現在王都から遠く離れた辺境地で静かに過ごしているので、大旅行にはなってしまいますね……」
私にとってはむしろ嬉しい限りだ。
公爵様が住んでいるという場所さえ教えてくれれば旅を含めて移動できると思う。
モンスターが襲ってきても、今度は魔法を駆使してなんとかなりそうだし。
アーヴァイン様も、私が長旅をしている間は騎士団のほうに戻っていただければ……。
「もちろんソフィア様が行くのであれば私も同行しましょう」
「へ!?」
「以前は負傷していた手前、お恥ずかしながら騎士団として逃げるような場面を見せてしまいましたが、本来はモンスターに遭遇したら積極的に立ち向かっていくものなのです。ソフィア様を全力でお守り捨のが護衛の務めでもあります」
「でも、そんなに長い期間騎士団の団長ともあろうお方が留守にしてしまっても?」
「ソフィア様が変境地へ向かうとなれば、陛下からの命令で騎士団の半分をソフィア様に同行するよう指示すると思います」
いったい私の立ち位置ってどういうふうになっているのだろうか。
もちろん長旅で人がいっぱいいてくれたほうが楽しいだろうし、スムーズに移動できるようになるだろう。
私としてはものすごく助かる。
「あくまで推測なので、一度陛下にお尋ねしてみましょうというのが私の提案ですがどうでしょう?」
「ありがとうございます! でも、騎士としての仕事は大丈夫なのですか? 私が余計なことをしてしまって仕事を増やしてしまうのでは?」
「ははは、まぁ仕事は増えるでしょう。ですが、私個人としましてはむしろご一緒に辺境地までの旅ができると考えたらワクワクしてしまいますがね」
アーヴァイン様は顔を赤らめながら恥ずかしそうにしていた。
アーヴァイン様も旅をしたりすることが好きなのだろうか。
騎士団長という立場上、あまりプライベートで王都を離れることができないだろう。
恥ずかしがりながら言ってくれたと思ったため、これ以上は深く理由は聞かないでおこう。
私はそんな状況にある。
掃除や洗濯を手伝うと言ったら、ウィンさんに全力で止められてしまった。
『成長のためにも彼女たちにやらせてあげていただきたいのです』
と、ウィンさんは言う。
言われてみれば納得もいく。
私だって毎日掃除洗濯炊事を全てやってきたから、それなりにはこなせるようになった。
ウィンさんがメイドたちに教えているのは大変そうだと思ってはいたが、やはり陛下の側近執事長を務めていただけのことはあるようで、扱いがうまい。
しかも、過労にならないように的確に仕事担当を振り分けている。
ベテラン執事長の言葉は全て従っていたほうがメイドたちの成長にもなるのだろう。
ところで、私の成長はどうしたらいいのだろう。
このままなにもしなければ、確実にぐーたら生活になってしまう。
だが、なにもしなくていいという状況に困っていた。
ふと、ドアの外で私の護衛を担当してくれているアーヴァイン様に声をかけた。
彼は、騎士団の演習以外の時間は全て私の護衛として近くにいる。
なお、執事長のウィンさんも護衛経験があるため、アーヴァイン様が不在の時はウィンさんが代わりに私の護衛をしてくれている。
「落ち着きませんか?」
「実はやりたいことがあるんですけれど、ちょっと相談したいなと思いまして」
「私でよろしければ是非」
なぜかアーヴァイン様は嬉しそうだった。
部屋の中へ入ってもらい、ひとまず常備している紅茶をふたつのカップにそれぞれ注ぐ。
「護衛として活動中なので……」
アーヴァイン様は申し訳なさそうな顔をしながら紅茶を飲むのを断ってきた。
「今の時期は比較的暑いですからね。なにも飲まずでは倒れてしまうかもしれませんよ。健康管理の一環として考えたら飲んでもいいでしょう?」
「で……、ではいただきましょう。ソフィア様は優しいのですね」
優しいもなにも……。
お互いに紅茶を飲みはじめたところで私が長い間やりたいと思っていたことを喋る。
これは今まで誰にも喋ったことがない。
「実は、私は小さいころの記憶がありません。助けてくれた人から教えてもらったこととしては、一人で荒野でウロウロとしていたそうです」
「ほう……」
「私の両親は果たしているのか、どうして私は荒野にいたのか知りたくて……」
「なるほど……」
アーヴァイン様は時折ひとことだけ返事をしてくれるだけで、最後まで真剣に聞いてくれていた。
「そのために情報を得たかったため、王都を目指していました」
「助けてくれたというお方に相談はしなかったのですか?」
「それは……」
ここで痛いところを聞かれてしまった。
私が奴隷として伯爵邸に招き入れられたりしたことや、どこから来たかは誰にも伝えていない。
いくら陛下のサイン入り通行手形を受け取ったとしても、余計な危険は作りたくないのだ。
それだけ私のトラウマは大きい……。
「失礼しました。なにかしら事情があるのですね。そうですねぇ……」
アーヴァイン様は真剣に考えてくれているようだ。
私一人ではこれ以上情報を集めることが困難だったため、勇気を出して喋って良かったと思っている。
「魔力は基本的には遺伝します。ソフィア様の魔力や適正が規格外であるということは、ご両親のどちらかあるいは双方が優れた魔力をお持ちである可能性は高いでしょう」
アーヴァイン様の発言を聞き、私の知らない情報がどんどん入ってくる。
魔力は遺伝するということを今初めて知った。
「魔力の優れた方を探すにはその専門の人物を尋ねてみるのも一つの手かと思います」
「知り合いにいるのですか?」
「表向きには知られていませんが、陛下の弟である公爵様は国の中でも五本の指に入るほどの魔法の使い手です」
「すごい……。私などが会えるのでしょうか?」
「もちろんですよ。陛下にも許可をとれば確実です。ただ、公爵様は現在王都から遠く離れた辺境地で静かに過ごしているので、大旅行にはなってしまいますね……」
私にとってはむしろ嬉しい限りだ。
公爵様が住んでいるという場所さえ教えてくれれば旅を含めて移動できると思う。
モンスターが襲ってきても、今度は魔法を駆使してなんとかなりそうだし。
アーヴァイン様も、私が長旅をしている間は騎士団のほうに戻っていただければ……。
「もちろんソフィア様が行くのであれば私も同行しましょう」
「へ!?」
「以前は負傷していた手前、お恥ずかしながら騎士団として逃げるような場面を見せてしまいましたが、本来はモンスターに遭遇したら積極的に立ち向かっていくものなのです。ソフィア様を全力でお守り捨のが護衛の務めでもあります」
「でも、そんなに長い期間騎士団の団長ともあろうお方が留守にしてしまっても?」
「ソフィア様が変境地へ向かうとなれば、陛下からの命令で騎士団の半分をソフィア様に同行するよう指示すると思います」
いったい私の立ち位置ってどういうふうになっているのだろうか。
もちろん長旅で人がいっぱいいてくれたほうが楽しいだろうし、スムーズに移動できるようになるだろう。
私としてはものすごく助かる。
「あくまで推測なので、一度陛下にお尋ねしてみましょうというのが私の提案ですがどうでしょう?」
「ありがとうございます! でも、騎士としての仕事は大丈夫なのですか? 私が余計なことをしてしまって仕事を増やしてしまうのでは?」
「ははは、まぁ仕事は増えるでしょう。ですが、私個人としましてはむしろご一緒に辺境地までの旅ができると考えたらワクワクしてしまいますがね」
アーヴァイン様は顔を赤らめながら恥ずかしそうにしていた。
アーヴァイン様も旅をしたりすることが好きなのだろうか。
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恥ずかしがりながら言ってくれたと思ったため、これ以上は深く理由は聞かないでおこう。
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