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第二部 悪魔とダンス
十
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「なんであたしに見せた」
六人はオートマトン船で帰した。記録はマザーを通して本土の警察に送ってもらった。
あゆみはなぜか誘われるまま白シャツ男の部屋に行き、『カクブンレツ』の四人と遅い夕食をとった。肉じゃが、ご飯、豆腐と油揚げの味噌汁。まともな食事だった。
その部屋も食事と同じくらいまともだった。本土なら中くらいたが、ここでは上流といえる。清潔で、質素だが必要なものはそろっていた。
食後、これもちゃんとした茶を飲みながらあゆみは聞いた。
「『何かを知りたいなら自分の目で見るか触らなきゃだめだ』、だろ?」白シャツはそう答えた。あゆみはうなずく。
「だよね。たしかに見てよかった。つらいけど。自分があんなのに関わってたなんて」
ざくろオートマトンは窓の外だった。風にふらふらしている。
「ねえ」と電気女が茶のお代わりを注いでくれた。「わたしはファーリー」
「おれはウォーデ」
「ビクタ。よろしく」
「もう知ってるだろうけど、あゆみ。それだけでいい」
そう言って白シャツを見た。
「ないんだ。こいつらは坊っちゃんって呼ぶけど。好きじゃない」
「ないの? なんで? 困らない?」
「誰もつけてくれないんだ」
男は三人を見まわした。ファーリーが口を開いた。
「分からないんだよ。つけていいものかどうか。あたしら三人の遺伝子から坊っちゃんは作られた。通常とちがって赤ん坊として送り出された。育てたのもあたしらだけど、命名はできなかった。遺伝的には親なんだろうけど、何も思いつかないうちに大きくなっちゃった」
そう一息に言った。ウォーデとビクタは目で肯定した。
「あなたたちの名前はだれが?」
「作られたときから知ってた。製造番号みたいに組み込まれてた」ウォーデだった。
「じゃあ、組み込まずに渡したんならあなたたちにつけてほしいんでしょ。マザーは」
「ずっと坊っちゃんって呼んでたから坊っちゃんだな。それでオーケー」ビクタは気楽だった。
「それは変だよ。名前がないなんて」
「いいんだよ。おれたちはここで作られ、ここから出られない。区別するための名前はなくてもいい。それに、あんたおれたちが人型だから人間だと思ってるけど、違うから。名前にそれほど大きな意味はない」
男は茶を飲み干し、自分でお代わりを注いだ。
「違う?」
「じゃあ質問。死ぬと分かって第二世代をさらってった『真実のともしび』の連中に与えられる可能性のある刑罰は?」
「誘拐に、殺人だろ」
「はずれ。窃盗と器物損壊」
あゆみは舌打ちした。「そういう事かよ」
「そういう事だ。でも実行者は初犯だろうから実刑はない。たぶん賠償が支払われるだけで終わる。それよりも、これまでのいろんな件プラス今回の襲撃で、『真実のともしび』が制限団体に指定されるのを期待してる」
三人はだまって茶をすすった。ビクタは台所に行ってごそごそやり、菓子盆を出してきた。
「ライスクラッカー。お茶に合う」
「おまえ、ひとんちの台所よく知ってるな」
六人はオートマトン船で帰した。記録はマザーを通して本土の警察に送ってもらった。
あゆみはなぜか誘われるまま白シャツ男の部屋に行き、『カクブンレツ』の四人と遅い夕食をとった。肉じゃが、ご飯、豆腐と油揚げの味噌汁。まともな食事だった。
その部屋も食事と同じくらいまともだった。本土なら中くらいたが、ここでは上流といえる。清潔で、質素だが必要なものはそろっていた。
食後、これもちゃんとした茶を飲みながらあゆみは聞いた。
「『何かを知りたいなら自分の目で見るか触らなきゃだめだ』、だろ?」白シャツはそう答えた。あゆみはうなずく。
「だよね。たしかに見てよかった。つらいけど。自分があんなのに関わってたなんて」
ざくろオートマトンは窓の外だった。風にふらふらしている。
「ねえ」と電気女が茶のお代わりを注いでくれた。「わたしはファーリー」
「おれはウォーデ」
「ビクタ。よろしく」
「もう知ってるだろうけど、あゆみ。それだけでいい」
そう言って白シャツを見た。
「ないんだ。こいつらは坊っちゃんって呼ぶけど。好きじゃない」
「ないの? なんで? 困らない?」
「誰もつけてくれないんだ」
男は三人を見まわした。ファーリーが口を開いた。
「分からないんだよ。つけていいものかどうか。あたしら三人の遺伝子から坊っちゃんは作られた。通常とちがって赤ん坊として送り出された。育てたのもあたしらだけど、命名はできなかった。遺伝的には親なんだろうけど、何も思いつかないうちに大きくなっちゃった」
そう一息に言った。ウォーデとビクタは目で肯定した。
「あなたたちの名前はだれが?」
「作られたときから知ってた。製造番号みたいに組み込まれてた」ウォーデだった。
「じゃあ、組み込まずに渡したんならあなたたちにつけてほしいんでしょ。マザーは」
「ずっと坊っちゃんって呼んでたから坊っちゃんだな。それでオーケー」ビクタは気楽だった。
「それは変だよ。名前がないなんて」
「いいんだよ。おれたちはここで作られ、ここから出られない。区別するための名前はなくてもいい。それに、あんたおれたちが人型だから人間だと思ってるけど、違うから。名前にそれほど大きな意味はない」
男は茶を飲み干し、自分でお代わりを注いだ。
「違う?」
「じゃあ質問。死ぬと分かって第二世代をさらってった『真実のともしび』の連中に与えられる可能性のある刑罰は?」
「誘拐に、殺人だろ」
「はずれ。窃盗と器物損壊」
あゆみは舌打ちした。「そういう事かよ」
「そういう事だ。でも実行者は初犯だろうから実刑はない。たぶん賠償が支払われるだけで終わる。それよりも、これまでのいろんな件プラス今回の襲撃で、『真実のともしび』が制限団体に指定されるのを期待してる」
三人はだまって茶をすすった。ビクタは台所に行ってごそごそやり、菓子盆を出してきた。
「ライスクラッカー。お茶に合う」
「おまえ、ひとんちの台所よく知ってるな」
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