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第二部 悪魔とダンス
九
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林を出ると犬男が手を振って近くの倉庫を指さした。そこにはすでに五人転がされ、電気女がいた。六人目は筋肉大男が転がした。
「フィールド発生器は人数分、ショックガンは勢子が一丁、待ち伏せが二丁、改造のこぎりが二台」
犬男が装備を数え上げ、何のつもりか電気女が端子に手を当てた。
「装備不足。プアーなアタック」
「頭数だけそろえたんだね。坊っちゃん、その子がそう? デート中だった?」
「そう。この子は前がある。尋問に立ち会ってもらう」
「勝手に決めないで。帰る。ご飯はいらない」取り調べを見るのはいやだった。自分がされるであろう事を先に見させるやり方は本土で散々やられた。
扉に向かった瞬間、犬男が前に立った。あっちにいたはずなのに、おそろしい早さだった。肩をすくめてしゃがんだ。
その扉をがんがんたたく音がした。犬男が耳を立てて笑うと細く開けた。ざくろオートマトンがふらふらと入ってきた。「あんたもお疲れ」
返事もせずに白シャツ男のそばに行くと、操作腕でケーブルを差し出した。男はさっきのところに貼りつけた。
電気女が六人全員の目かくしをはずし、ケーブルをつけた男がハンドサインをした。おとなしくしろ、よけいな手間をかけさせるな。警察と共通だったのでわかった。
同意しなかった一人だけ目かくしがもどされた。襲撃に選ばれるほどなのに頭が良くない。それとも経験不足だろうか。意味のない意地は損なだけなのに。
残った五人のうち、一番年上に見える者と、年下のマスクが開口された。
「これは誘拐で不当な監禁だ。即座に解放せよ」年下のほうだったが、とりあえず言ったという感じだった。
「先に攻撃したのはそっちだ。記録もある。それに、違法改造したのこぎりはどうする? いっしょに『解放』しようか」男はしゃべりながら一歩前に出た。「むだ話はやめよう。お互いわかっているはずだ」
尋問が始まった。あゆみが知っているのに比べたらとてもやさしかった。
「襲撃の目的は?」
「言えない」
「さっき言っただろう? むだ話はよそうって。それにこっちはいくらでも時間かけていいんだし。そっちは今日の昼の上陸だな。『適応』まで待ってもいいんだぞ」
開口されていない者たちの目が伏せられた。分かりやすい。年上が答える。
「おまえらだ。改良型第二世代、いや第三世代か。それと実験世代のおまえ。本土の施設で研究する」
「なるほど。じゃ、おれたちを殺すつもりだったんだ。で、研究してどうする?」
年下が年上をじっと見た。やめろ、言うなと訴えているのだろう。電気女がそいつをつま先で小突いた。
「われわれは人工知能群による政策決定に反対している。そのため相手の出方はすべて分析しておきたい。特にここのインフィニティ・マザーと呼ばれる人工知能の野放図な活動だ。人造人間製造やシラミによる人体改造など許せるものではない」
「おれたちの解剖なんて野蛮な手使わずに論文読めよ。ぜんぶ公表されてるぞ」
「それが人間をだめにしたのがわからないか。何事も自分の目で見、手で触れて確かめるべきなんだ」
「『真実のともしび』のべき論と議論する気はない。意味はなく、くだらない。だが、そのために島民に被害が出ている。これは看過できない」
目隠しをはずされた者たちはみんな白シャツ男をにらんだ。一人はうなっている。白シャツ男はその目をまっすぐ見返した。
「先月、第二世代の不審な失踪が発生した。最後の位置情報はチーバランド沖だった。どう説明する? とぼけるなよ。ほかにも証拠はある」
「話す気はない。黙秘する。覚悟はできている」年上は顔をそむけた。それが答えだった。
「話せよ!」
なぜそうしたかは分からない。ただ大声が出た。みんなの目が集まった。
「このような状況では話せない」
その返事に詰め寄るあゆみを筋肉大男が止めた。首を振る。押さえられたままやつらを睨んだ。
「坊っちゃん、これは高度に法的、政治的問題です。これ以上は……、一旦……」
犬男は言葉を選ぶのに苦労していた。
「こいつらは帰しましょう。襲撃の記録と今の証言をつけて。対応は本土にまかせないと。ウォーデの言う通り、これは高度な問題です」
電気女は感情を消していた。
「坊っちゃん、あゆみさん、プリーズカームダウン」
「フィールド発生器は人数分、ショックガンは勢子が一丁、待ち伏せが二丁、改造のこぎりが二台」
犬男が装備を数え上げ、何のつもりか電気女が端子に手を当てた。
「装備不足。プアーなアタック」
「頭数だけそろえたんだね。坊っちゃん、その子がそう? デート中だった?」
「そう。この子は前がある。尋問に立ち会ってもらう」
「勝手に決めないで。帰る。ご飯はいらない」取り調べを見るのはいやだった。自分がされるであろう事を先に見させるやり方は本土で散々やられた。
扉に向かった瞬間、犬男が前に立った。あっちにいたはずなのに、おそろしい早さだった。肩をすくめてしゃがんだ。
その扉をがんがんたたく音がした。犬男が耳を立てて笑うと細く開けた。ざくろオートマトンがふらふらと入ってきた。「あんたもお疲れ」
返事もせずに白シャツ男のそばに行くと、操作腕でケーブルを差し出した。男はさっきのところに貼りつけた。
電気女が六人全員の目かくしをはずし、ケーブルをつけた男がハンドサインをした。おとなしくしろ、よけいな手間をかけさせるな。警察と共通だったのでわかった。
同意しなかった一人だけ目かくしがもどされた。襲撃に選ばれるほどなのに頭が良くない。それとも経験不足だろうか。意味のない意地は損なだけなのに。
残った五人のうち、一番年上に見える者と、年下のマスクが開口された。
「これは誘拐で不当な監禁だ。即座に解放せよ」年下のほうだったが、とりあえず言ったという感じだった。
「先に攻撃したのはそっちだ。記録もある。それに、違法改造したのこぎりはどうする? いっしょに『解放』しようか」男はしゃべりながら一歩前に出た。「むだ話はやめよう。お互いわかっているはずだ」
尋問が始まった。あゆみが知っているのに比べたらとてもやさしかった。
「襲撃の目的は?」
「言えない」
「さっき言っただろう? むだ話はよそうって。それにこっちはいくらでも時間かけていいんだし。そっちは今日の昼の上陸だな。『適応』まで待ってもいいんだぞ」
開口されていない者たちの目が伏せられた。分かりやすい。年上が答える。
「おまえらだ。改良型第二世代、いや第三世代か。それと実験世代のおまえ。本土の施設で研究する」
「なるほど。じゃ、おれたちを殺すつもりだったんだ。で、研究してどうする?」
年下が年上をじっと見た。やめろ、言うなと訴えているのだろう。電気女がそいつをつま先で小突いた。
「われわれは人工知能群による政策決定に反対している。そのため相手の出方はすべて分析しておきたい。特にここのインフィニティ・マザーと呼ばれる人工知能の野放図な活動だ。人造人間製造やシラミによる人体改造など許せるものではない」
「おれたちの解剖なんて野蛮な手使わずに論文読めよ。ぜんぶ公表されてるぞ」
「それが人間をだめにしたのがわからないか。何事も自分の目で見、手で触れて確かめるべきなんだ」
「『真実のともしび』のべき論と議論する気はない。意味はなく、くだらない。だが、そのために島民に被害が出ている。これは看過できない」
目隠しをはずされた者たちはみんな白シャツ男をにらんだ。一人はうなっている。白シャツ男はその目をまっすぐ見返した。
「先月、第二世代の不審な失踪が発生した。最後の位置情報はチーバランド沖だった。どう説明する? とぼけるなよ。ほかにも証拠はある」
「話す気はない。黙秘する。覚悟はできている」年上は顔をそむけた。それが答えだった。
「話せよ!」
なぜそうしたかは分からない。ただ大声が出た。みんなの目が集まった。
「このような状況では話せない」
その返事に詰め寄るあゆみを筋肉大男が止めた。首を振る。押さえられたままやつらを睨んだ。
「坊っちゃん、これは高度に法的、政治的問題です。これ以上は……、一旦……」
犬男は言葉を選ぶのに苦労していた。
「こいつらは帰しましょう。襲撃の記録と今の証言をつけて。対応は本土にまかせないと。ウォーデの言う通り、これは高度な問題です」
電気女は感情を消していた。
「坊っちゃん、あゆみさん、プリーズカームダウン」
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