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第二部 悪魔とダンス
八
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「カウントスリーで。三、二、一、ゴー!」
木箱をけってダッシュした。そのまま進めば建物の間を通り抜けるが、たしかにいかにも待ち伏せされてそうだった。
うしろでフィールドに干渉した破裂音がした。ざくろオートマトンが撃たれたのだろう。
まるでそれを合図にしたかのように男が反転した。ショックガンを抜いている。あゆみも地面をけって方向を変えた。
ざくろオートマトンのブロックはすばらしかったが、それにくらべて男の腕はあきれるほどだった。まったく当たらないどころか一発はオートマトンをかすめた。
だが、勢子を突っ切るというのはいい思い付きだった。めちゃめちゃに撃ちながら一機と二人が迫ってくるのを見てあわてている。大声で指示を出しているが、待ち伏せ部隊の行動はわずかに遅れた。振り向くと建物の間で三人が顔を見合わせている。こりゃ関係者全員素人だ。
操作腕と脚と触手と、ほかに繰り出せるものはなんでも繰り出して暴れているオートマトンは頼もしかった。勢子の一人がまきこまれて転んだのでその横を抜けた。
「林へ!」男の言う通りにすると、後から飛び込んできた。
「ケガは? ない? まだ走れるな。よし、木を盾に。町に行く」
木の焦げる臭いを背にして走った。撃ってはくるが、なんとなく間隔が間延びしている。ショックガンの数がないのだろうか。
もうすぐ林を抜けるという所に全身防護服がひとり立っていた。十五メートルほど。そいつの方から蚊の羽音が強く聞こえる。園芸用の剪定のこぎりを二刀流でかまえていた。それが高速振動している。安全装置をはずしてあるようだった。何も切ってないのに止まらない。
「止まれ! 手を上げて膝をつけ!」のこぎりの音のようなかすれた声だった。
男が無視してショックガンを数発撃ったが、当たってもフィールドではじかれた。
「もう一度言う。手を上げて膝をつけ」
あいつはなんでショックガンを持たずにのこぎり二刀流なんだろう。やっぱり数をそろえられなかったんだろうか。あゆみは男と目くばせして言う通りにした。
防護服は右ののこぎりを前にかまえ、左をどの方向にもふりまわせるように下げている。一歩一歩近寄ってきた。
数メートルまで来た時、横から大きな人間が突進してきて防護服を押し倒した。
あの筋肉大男だった。
黒革のような肌にのこぎりが当たると、火花が散って刃が跳んだ。格闘にもならずすぐに防護服が引き裂かれて中身は後ろ手にしばられ、マスクと目かくしをされた。
「坊っちゃん、オールクリア―。あっちもみんなニュートラライズずみ」
「六人?」
「そう。こいつ含めてワン、ツー、スリーのフォーメーション」
「『真実のともしび』だな」あゆみを見た。
「関係ないよ。もう」
「あるよ。過去から影が追っかけてきたんだ」
飾った言い方だった。気にいらない。
「坊っちゃん、リベンジかも」
「かもな。けどなんかちがう」
「ねえ、落ち着いたんならもう行っていい? あたしら別れたほうがいいんじゃない?」
二人は顔を見合わせて笑った。
「悪いが、その逆。つきあってもらうよ。今晩は」
「夕飯まだなんだ」
「おごるよ」
木箱をけってダッシュした。そのまま進めば建物の間を通り抜けるが、たしかにいかにも待ち伏せされてそうだった。
うしろでフィールドに干渉した破裂音がした。ざくろオートマトンが撃たれたのだろう。
まるでそれを合図にしたかのように男が反転した。ショックガンを抜いている。あゆみも地面をけって方向を変えた。
ざくろオートマトンのブロックはすばらしかったが、それにくらべて男の腕はあきれるほどだった。まったく当たらないどころか一発はオートマトンをかすめた。
だが、勢子を突っ切るというのはいい思い付きだった。めちゃめちゃに撃ちながら一機と二人が迫ってくるのを見てあわてている。大声で指示を出しているが、待ち伏せ部隊の行動はわずかに遅れた。振り向くと建物の間で三人が顔を見合わせている。こりゃ関係者全員素人だ。
操作腕と脚と触手と、ほかに繰り出せるものはなんでも繰り出して暴れているオートマトンは頼もしかった。勢子の一人がまきこまれて転んだのでその横を抜けた。
「林へ!」男の言う通りにすると、後から飛び込んできた。
「ケガは? ない? まだ走れるな。よし、木を盾に。町に行く」
木の焦げる臭いを背にして走った。撃ってはくるが、なんとなく間隔が間延びしている。ショックガンの数がないのだろうか。
もうすぐ林を抜けるという所に全身防護服がひとり立っていた。十五メートルほど。そいつの方から蚊の羽音が強く聞こえる。園芸用の剪定のこぎりを二刀流でかまえていた。それが高速振動している。安全装置をはずしてあるようだった。何も切ってないのに止まらない。
「止まれ! 手を上げて膝をつけ!」のこぎりの音のようなかすれた声だった。
男が無視してショックガンを数発撃ったが、当たってもフィールドではじかれた。
「もう一度言う。手を上げて膝をつけ」
あいつはなんでショックガンを持たずにのこぎり二刀流なんだろう。やっぱり数をそろえられなかったんだろうか。あゆみは男と目くばせして言う通りにした。
防護服は右ののこぎりを前にかまえ、左をどの方向にもふりまわせるように下げている。一歩一歩近寄ってきた。
数メートルまで来た時、横から大きな人間が突進してきて防護服を押し倒した。
あの筋肉大男だった。
黒革のような肌にのこぎりが当たると、火花が散って刃が跳んだ。格闘にもならずすぐに防護服が引き裂かれて中身は後ろ手にしばられ、マスクと目かくしをされた。
「坊っちゃん、オールクリア―。あっちもみんなニュートラライズずみ」
「六人?」
「そう。こいつ含めてワン、ツー、スリーのフォーメーション」
「『真実のともしび』だな」あゆみを見た。
「関係ないよ。もう」
「あるよ。過去から影が追っかけてきたんだ」
飾った言い方だった。気にいらない。
「坊っちゃん、リベンジかも」
「かもな。けどなんかちがう」
「ねえ、落ち着いたんならもう行っていい? あたしら別れたほうがいいんじゃない?」
二人は顔を見合わせて笑った。
「悪いが、その逆。つきあってもらうよ。今晩は」
「夕飯まだなんだ」
「おごるよ」
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