ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド

alphapolis_20210224

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第三部 アップルパイ、閉回路ソースを添えて

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 アルゴスはこの急激な変化をとらえきっていなかったが、警官が集合した場所は大ざっぱに見当がついた。

「港か。帰るつもりかな」
 ファーリーが島の港それぞれに警官の推定人数に対応した印をつけた。一番多いのがぼくらのなわばりだった。
「港をぜんぶ使うって、そんなにハリーアップ?」
「大変な事件には違いないけど、島の治安を維持する名目で来てるのに何考えてんだ?」ウォーデが鼻を鳴らした。
「だから、何も考えてないんだろ」

「目視情報はどうなってる? ほんとに残存部隊はない?」
 ファーリーが端末を操作して首を振った。「いない。無責任にもほどがある」

 そういっているうちにアルゴスの推定も更新された。港近辺をのぞく島内に警官によると思われれるマシンの偏在はなかった。

 迎えはすぐだった。船とVTOL。いずれも操縦はオートマトンだった。酔っぱらいの野次を無視し、揺れる影たちはあっという間に去っていった。

「これが本土の連中の言う治安維持らしいな」牙をむく。
「愚痴は後。マザーに連絡とって以前の治安維持体制を復活させよう」
 ファーリーが資料をそろえて送信した。

「これはもうアンネセサリ―」
 ビクタが工具を突っ込んでアンクレットをねじ切った。警報がぴよぴよ鳴るが叩きつぶした。ぼくも、ウォーデもファーリーもそうした。明日の朝は残骸がそこらに散らばっているだろう。

 マザーの返事はすぐだった。改良型ざくろオートマトンが飛び跳ねてくると窓から入ってきた。
「こちらから要望しようとしていました。旧治安維持体制を復活します。『カクブンレツ』をはじめ協力してくれるチームは多数います。また、遺棄にともない監視柱を制御下におきましたのでデータを提供します」
「了解。それと、当面は夜間外出禁止令を」
「発令します。あ、裁判についてはまかせてください」
「裁判?」
「この無責任さにもとづく費用発生について賠償請求を行うとともに、自警活動を再び認めさせます」
 ぼくはこんな状況だというのに笑った。「まかせるよ」

 ひさしぶりのなわばり巡回だった。すべてが以前のようだった。まだ様子を見ているのかもめ事や犯罪は見られないが、いずれ増加するだろう。これは認めなければならないが、われわれには『制服』ほどの強制力はない。

 それでも靴ひもを自分で結ぶ気分は心地よかった。

「あ、すみません。外出禁止令が出ています。戻ってください」
「でも、これ届けないと間に合わない」
 ビクタがライトで照らした。「アップルパイ!」
「いけません。明日の朝一でお願いします」
「うち、これだけ入る冷蔵庫ないんです」
「一晩くらい……。なまものじゃないんだから」
 小型の随伴パレットにケースが積まれ、身長より高くなっていた。「困ります。冷蔵しなきゃ一晩でも味落ちるし、フィリングがだめになる」
「なんでそんなたくさん」
「だからちゃんとした冷蔵庫ないから、仕入れた材料みんな焼くから」
「坊っちゃん、こうなったのも急な事だし」ファーリーだった。ぼくはちょっと考えた。
「配達って、どのくらい?」
「五店。二、三時間ほど。いや、さすがに三時間はかかりません」
「わかった。ファーリー、ついてやって。終わったら合流しよう」

 二人が去っていくのを見送り、ぼくらは巡回を再開した。

「なあ、いま思ったんだけど、あの人の胚、どうなったんかな」ウォーデは手なぐさみにショックガンでガンスピンをしている。
「ニュースじゃ胚の素性まではいってなかった」
「考えてみりゃピティだ」

 デモは多数の逮捕者が出て解散させられた。死者、重傷者はでなかった。子供たちは施設に再収容されたとの事だったが、それ以上の後追い報道はなかった。
 政府は胚を用いた実験につき近く説明を行うと発表したが、子供たちの遺伝情報の公表は拒んだ。そのせいもあり、抗議のデモは全国主要都市から周辺の市町村まで広がった。

 地方のデモでは用意された旗が振られていた。その一部には『真実の光』という団体名が書かれていた。
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