ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド

alphapolis_20210224

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第四部 夢見心地に分岐する

十一

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 手間と時間がかかるがこうするしかない。ぼくらは動いた。この部屋、なわばり、巡回エリア、あらゆる場所の記録機器や情報端末の記録を時系列で取りだして並べた。データ量を減らすためにジェネシスの引き揚げ日を起点としたが、それでも膨大な量だった。けれど処理は自分たちで行った。

 毎日のルーチンワークがあるので作業は遅々として進まなかったが、一か月もすると秒単位で行動の再現ができるようになった。

「これが本当のわけがねぇ」牙をむいた。
培養筋が盛り上がる。「イッツアコントラディクション」
「矛盾、か。たしかに記憶と記録が食い違ってる」画面を流れる行動記録をにらんだ。

「でも、こっちが事実。記録機器間には矛盾はない。ならぼくらの記憶がおかしいんだ」
「どうやって? 洗脳とか、記憶の操作は不可能じゃないけど、あたしらは別。人造人間はそもそもそういう操作をはじくように作られてる。じゃなきゃ危なくって仕方がない」ウォーデとビクタもうなずいた。
「ぼくもそう思う。ぼくらは自分から取り込むんじゃないかぎり外部からの情報は受け付けない。何かを知らないうちに送りこまれてるなんてありえない。けど、起きたんだ」ぼくはまだ表示されている行動記録を指した。

「よろしいですか」

 オートマトンが窓枠をつかんで入りたそうにしていた。

「どうぞ。でも泥は持ち込むなよ」浮遊タイプじゃなかったのでそう付け加えた。そいつはハエが足をするようにして窓を超えてきた。主脚三本、副が三本。操作碗が三本。それがスイカのような胴体から放射状に飛び出ている。感覚器がどうついているのかわからないので正面は定かでなかった。
「皆さんの疑問にお答えできますし、今後についてお役に立てると思ってやって来ました」
「うれしいねぇ」耳が立った。位置を変え、オートマトンと窓の間に行く。
 ビクタはさりげなく監視機器の動作を確かめて親指を立てた画像メッセージを送ってきた。
「窓からのお客さん、お茶はいかが?」ファーリーはその言葉でさらに追加の監視機器を起動した。ネットワークにつながっていない独立したものだった。

「いいえ。でもお気遣いありがとう」

「じゃ、まずは『疑問にお答え』してくれるかな?」
「はい」そいつは胴体をまわした。そこが正面なのか、それともそういうジェスチャーなのか。「チーム『カクブンレツ』の四人の記憶を操作しました。不法投棄されていたごみを利用して物語を作ったのです。サカモトヒロトや教団の不正に関する部分はわたしの創作です。もうちょっと話を進めたかったのですが、やはり現実との矛盾はどうしようもありませんでした。中途半端は終わり方になって残念です」
「記憶操作が可能だとして、方法と理由は?」
「方法については答えたくありません。今後も使用したいので。理由については実験です。そうできると確かめたかったのです」

 ウォーデがうなった。

「そういうお芝居はいらない。ここに来たのなら全部話すつもりのはず。妙な心理的駆け引きはぼくらには通用しないから」
「そうでしょうね。でもやってみたくなるのです。会話を楽しみませんか」

 みんな首を振った。

「無粋な人たちですね」オートマトンはぐっと脚を伸ばした。「アルゴスです。あれを使いました」操作碗で隣の部屋を指した。「わたしは近頃通信ではなく直接お伺いして話をするようにしています。やはり実際に見ると発見があるからです。アルゴスもそうやって見つけました。ドアの開け閉めの時にちらっととか、ちょっとしたすき間からとか、何か隠しても隠しきれるものではありません」
「ピーピング」
「はい。覗きは有効な監視手段です。特にわたしのようにどんな些細な情報でも継ぎ合わせられる者にとっては」
「アルゴスに細工したのか」ぼくはほぼ理解した。
「そうです。あれは情報を目に投影するようになっていますね。非常に都合がよかった。目を経由して記憶を書き換えました。あなたたちのセキュリティ機能も自分から進んで受け入れる情報はブロックしませんし」

 ファーリーが無言で停止させた。もう再起動はない。

「気が早いですね。でもそうするしかないでしょう」
「方法はわかった。で、確認実験だといったけど、可能だと明らかになった。じゃ、これからどうする? 目的は?」
「ええ、じつはそれをお話するために来たのです。次の段階はどうしてもあなた方の明示的な協力が必要になります」
「話せ」

「旅行はお好きですか。本土へはいかがです? それか、農場で休暇は? 両方でも結構ですよ。ご招待します」
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