ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド

alphapolis_20210224

文字の大きさ
61 / 79
第五部 ゴールデンエイジ

しおりを挟む
「ツーリスト? ワーカーにしちゃ多すぎる」ビクタが港を映しているモニタをつついてこっちを見た。
「変だな。エナジーアイランドツアー?」ビクタの冗談につられてやるつもりで検索をかけたが、もちろんそんな物好きな企画を立てている旅行社はなかった。「密航でもなさそう」
 輸送船から一斉に降りてきた集団は十二名。防護服の肩と背中に古い絵柄の龍や桜を表示している。顔は見えない。一応荷下ろしのような動きを見せているが明らかに作業員ではない。
「何かもめ事を起こしに来たとしか思えない」
 ビクタに合図して装備を整え、五分後には家を出た。巡回中のウォーデとファーリーには現地に向かうように、しかし姿をさらさないようにと連絡した。

 彼らは港周辺を固まってうろつきまわっている。時々店の品物を手に取るが買わずに戻す。店主が挨拶しても無視だった。
 ウォーデとファーリーからぼくとビクタを確認したとタップ信号が入った。ビクタがハードモードへの遷移を合図してきたが、まだだと首を振った。状況がはっきりするまで相手を過剰に警戒させてはいけない。

 十二人全員が同じような態度で、特に目立ってカバーされているような者はおらず、誰がリーダーか分かりにくかった。しかし、肩の龍が一人だけ三つ首になっている者がいた。ちょっと見ていたが画像は変わらずそのままだった。

「すみません」八百屋の店頭にいた三つ首の龍に話しかける。「ご案内が必要ですか」
「お前は?」返事はそいつの隣からだった。合成音声だった。

 店主は心得たもので、客を連れて引き下がった。

「我々は『カクブンレツ』というチームです。このあたりを管理し、また、島の自警団として活動しております」
「三下か」
「わたしは無教養でして、そういう言葉はあいにく存じませんので今検索しましたが、わたしたちには該当しないようです。さて、繰り返します。『ご案内』が必要ですか」

 集団が位置を変えた。三つ首の龍の周りに三名。残り八名は二人ずつ組になって距離を取った。

「これは失礼しました。わたしたちは『臥竜鳳雛の会』と申します。土地の衆にご挨拶もせず田舎者がうろつきましたのはお詫び申し上げます」
 三つ首の龍が言った。合成音声ではない感じだった。中年過ぎの女か。

 ビクタが大きな『?』を発信し、ウォーデが答える。「ちょっとは調べろ。『がりょうほうすう』ってのは才があるのに知られてない者って事」

「それと『ご案内』のお申し出はありがたく思いますが我らには不要です。ここには視察に来たまでですので、今日一日歩き回るつもりでおります。それではこれをご挨拶としまして、もう行ってよろしいでしょうか」

 ファーリーから信号が入った。マザーの応援が到着した。非殺傷性の制圧装備を搭載したオートマトンで半浮遊が六機、蟹が三機。また、輸送船は荷下ろし用オートマトンと人造人間が乗りこんだので、指示あり次第押さえられるとの事だった。

「視察? 事前の連絡もなしにですか。それは田舎者であるかどうかに関わらず、礼儀正しい行いとは考えられませんが」

 散開した八名が短刀を抜いた。いや、農作業や機械の解体に使う振動刃のナイフだった。何も切ってないのに低くうなっている。安全装置をはずした改造ものだ。防護服の輪郭が一瞬歪んだのはフィールドを張ったのだろう。

 まさか、そんな装備で、と思った瞬間、ぼくの首のところで火花が散り、衝撃でひっくり返った。

 状況を確かめようと地面から見上げたぼくは、ビクタの左腕が飛んだのを見た。出血はすぐ止まり、全身装甲化が始まった。こいつら、速い。

「最初の血が流された。降伏するか」
 三つ首の龍は立ち位置を変えない。周囲の八名はいなくなっていた。遠くで破裂音がした。オートマトンが破壊されたのか。ウォーデとファーリー、それとマザーからの状況報告がなぜかない。ノイズばかりだった。

 ぼくはなんでもない風を装ってビクタと背を合わせて立った。

「見ての通り、フィールドは我らの刃には無効だ。お前の首が繋がっているのは情けだ」
「条件は?」
「勘違いするな。おまえになど用はない。マザーと話したい」
「どこかから聞いてるよ。要求は何だ」
「『臥竜鳳雛の会』の支配を認める事。その証として我らにコードをすべて開示せよ」
「ふん、『光』か」ぼくは以前の事件を思い出した。

 タップ信号が来た。ノイズだらけだがマザーだった。こいつらの通信妨害、完璧じゃないのか。
『五分、いいえ、三分稼いで。立て直しています。なお、ウォーデとファーリーは生存。しかし行動不能』

「『光』『ともしび』。人々の真実を見たいという誠の心はおまえらのような人工知能やヒトもどきには分からないだろう」
「『臥竜鳳雛』を自称するだけあるな。自分の才能を信じてるのか」
「黙れ。お前になど話してはいない。マザーはなぜ返事をしない。時間稼ぎか」
 こいつが合成音声を使わないおかげで口調から心が読み取れた。自分に陶酔している。大きな目的を達しつつあり、そしてそれを自分が行ったと満足している。

「おまえらはなぜ政治結社を作らないんだ? 拝んでばかりだな」

 ぼくは時間稼ぎが七割、本当に疑問に思っているのが三割くらいの問いをぶつけた。こいつら犯罪者集団はいつも宗教を隠れ蓑に使う。同じ偽装団体なら政治結社の方がいいと思うのだが。

「ヒトもどきは口を閉じてろ。今の質問が心に神を持たない人造人間の限界を証明したようなものだ」
 嘲るような口調だった。

 答えようとした時、半浮遊型のオートマトンがふらふらとやってきた。

「マザーの回答を伝えます」

 太陽が降りてきたかのような光が辺りを包んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...