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第五部 ゴールデンエイジ
四
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圧すら感じるような光だったのに、ぼくは問題なく見えていた。ビクタもそうだった。人々も見えているらしく、輝いている視界に戸惑いつつもその場から退避を始めていた。
「とにかく逃げよう」とビクタの堅い肩を叩いた。
「ランナウェイ、賛成」何か拾い上げたと思ったら左腕だった。
訳がわからないが様子からして奴らだけ見えなくなっており、そばにいた三人が三つ首の龍を中心に固まっていた。チャンスと言えばチャンスだが原因がわからない以上今はとにかくこの場を離れる方が先と判断した。
通信はまだ回復しない。とにかく部屋にもどるとウォーデとファーリーが先に来ていた。監視柱は一部が有線なので、それで島中を探していた様子だった。
「坊っちゃん大丈夫か」ウォーデはそう言いながらビクタの左腕を見て息をのんだ。
「ぼくはなんともないけど、ビクタが手ひどくやられた」
「そこまでだとプリンタ用意してもらわないと。多分もう繋がらないよ」ファーリーが有線で連絡すると、すぐオートマトンがやってきて左腕を回収していった。
「あのスピード、ノーマル人間とは信じられん。軍用の強化装備だって無理だ」
ウォーデはまだ興奮している。ファーリーが付け足す。
「あたしらも気配は感じたんだけど、何かする前にショックガンを撃たれた。フィールドも張れなかったなんて初めてだよ」
「じゃあ、あいつらがそうする気ならぼくらは全滅してたんだ」
「くやしいが、そこは認めなきゃな。圧倒的に格上だよ。奴らは」
「やっぱり、ヤクゥザか」ビクタは救急キットを出してきて、切断面に医療用樹脂を塗って固めた。プリンタで新しい左腕を作り、研究所で接続するまで二か月と言ったところか。とにかくしばらくは不便だろう。
「そんなに切れる刃も見た事ねぇ。どうすりゃいいんだ? フィールドが役に立たねぇなんてよ」ウォーデがぼやいた。
「でも、マザーは対応できたね」ファーリーは茶を用意した。熱めで香りが強い。そういう葉なのだろう。一口飲むとすこし落ち着いた。ありがたかった。
「そうだ。ありゃ何だ?」
「ベリーベリーブライト。でもあいつらにだけ」
「だな。ぼくらは視界は明るくなったけど、見えるには見えてた」
窓でがちゃがちゃ音がして、さっきとは別の多脚オートマトンが入ってきた。
「ビクタの左腕は復元中。接続手術も含め四十五日を予定しています」
「サンキュー」
「それだけじゃないだろ?」
センサーの集合体をこちらに向けた。今だにこういうジェスチャーをやる。
「そちらから質問してください」
「聞かれた事にのみ答えるってか。じゃ、まずあいつらはどうなった?」
「視覚を一時的に遮断しました。光学的なパターンを投影して視神経を情報過多にしたのです。人間だから通用する方法です」
「いや、ぼくが聞いているのは……」最後まで言う前にかぶせてくる。「十二名全員逮捕しました。現在拘禁しています。通信は回復。輸送船は返しました。無人のオートマトン操縦で船内に武器など違法な物品はなかったので」
「逮捕? 拘禁? いいのか」
「お忘れですか。自警は認められていますし、ここは府中刑務所の支所です」
ウォーデが口を挟む。
「奴らの武器、それにあの速さ、ありゃ何だ?」
「両方とも現時点では不明です。ただし武器の方は民生用に偽装した軍の特殊部隊用ナイフの可能性があります」
「そこまでは知らなかった。じゃ、フィールドが役に立たないのか」
「いいえ。標準出力では防ぎきれませんが、百パーセント以上上げれば弾けます」
ファーリーが笑った。「じゃ、防げないって事だよね。そんなに出力上げたら三秒くらいでバッテリーも弾けるよ」
ウォーデも笑ってファーリーの肩を叩いた。「お前以外はな。頼りにするぜ」
「でも、あの速さに対応できなきゃ何にもならない。奴らの仲間だって来るだろうし」
みんな黙った。
「マザー、尋問はどうなってる? できればぼくらも加わりたいんだけど」
「そうだ。肩か背中見たい。スリーヘッズドラゴンのタトゥーしてるのかな」
「尋問は行われています。しかし本土の犯罪集団や軍装備品の密輸、違法改造は微妙な問題をはらんでいます。あなた方が絡むとややこしくなります。法務人工知能と密に協力可能なわたしにまかせてください」
オートマトンはあわただしく帰っていった。
「マザー、何を隠してるんだ」
ぼくがぽつりと言うと、みんなうなずいた。
「とにかく逃げよう」とビクタの堅い肩を叩いた。
「ランナウェイ、賛成」何か拾い上げたと思ったら左腕だった。
訳がわからないが様子からして奴らだけ見えなくなっており、そばにいた三人が三つ首の龍を中心に固まっていた。チャンスと言えばチャンスだが原因がわからない以上今はとにかくこの場を離れる方が先と判断した。
通信はまだ回復しない。とにかく部屋にもどるとウォーデとファーリーが先に来ていた。監視柱は一部が有線なので、それで島中を探していた様子だった。
「坊っちゃん大丈夫か」ウォーデはそう言いながらビクタの左腕を見て息をのんだ。
「ぼくはなんともないけど、ビクタが手ひどくやられた」
「そこまでだとプリンタ用意してもらわないと。多分もう繋がらないよ」ファーリーが有線で連絡すると、すぐオートマトンがやってきて左腕を回収していった。
「あのスピード、ノーマル人間とは信じられん。軍用の強化装備だって無理だ」
ウォーデはまだ興奮している。ファーリーが付け足す。
「あたしらも気配は感じたんだけど、何かする前にショックガンを撃たれた。フィールドも張れなかったなんて初めてだよ」
「じゃあ、あいつらがそうする気ならぼくらは全滅してたんだ」
「くやしいが、そこは認めなきゃな。圧倒的に格上だよ。奴らは」
「やっぱり、ヤクゥザか」ビクタは救急キットを出してきて、切断面に医療用樹脂を塗って固めた。プリンタで新しい左腕を作り、研究所で接続するまで二か月と言ったところか。とにかくしばらくは不便だろう。
「そんなに切れる刃も見た事ねぇ。どうすりゃいいんだ? フィールドが役に立たねぇなんてよ」ウォーデがぼやいた。
「でも、マザーは対応できたね」ファーリーは茶を用意した。熱めで香りが強い。そういう葉なのだろう。一口飲むとすこし落ち着いた。ありがたかった。
「そうだ。ありゃ何だ?」
「ベリーベリーブライト。でもあいつらにだけ」
「だな。ぼくらは視界は明るくなったけど、見えるには見えてた」
窓でがちゃがちゃ音がして、さっきとは別の多脚オートマトンが入ってきた。
「ビクタの左腕は復元中。接続手術も含め四十五日を予定しています」
「サンキュー」
「それだけじゃないだろ?」
センサーの集合体をこちらに向けた。今だにこういうジェスチャーをやる。
「そちらから質問してください」
「聞かれた事にのみ答えるってか。じゃ、まずあいつらはどうなった?」
「視覚を一時的に遮断しました。光学的なパターンを投影して視神経を情報過多にしたのです。人間だから通用する方法です」
「いや、ぼくが聞いているのは……」最後まで言う前にかぶせてくる。「十二名全員逮捕しました。現在拘禁しています。通信は回復。輸送船は返しました。無人のオートマトン操縦で船内に武器など違法な物品はなかったので」
「逮捕? 拘禁? いいのか」
「お忘れですか。自警は認められていますし、ここは府中刑務所の支所です」
ウォーデが口を挟む。
「奴らの武器、それにあの速さ、ありゃ何だ?」
「両方とも現時点では不明です。ただし武器の方は民生用に偽装した軍の特殊部隊用ナイフの可能性があります」
「そこまでは知らなかった。じゃ、フィールドが役に立たないのか」
「いいえ。標準出力では防ぎきれませんが、百パーセント以上上げれば弾けます」
ファーリーが笑った。「じゃ、防げないって事だよね。そんなに出力上げたら三秒くらいでバッテリーも弾けるよ」
ウォーデも笑ってファーリーの肩を叩いた。「お前以外はな。頼りにするぜ」
「でも、あの速さに対応できなきゃ何にもならない。奴らの仲間だって来るだろうし」
みんな黙った。
「マザー、尋問はどうなってる? できればぼくらも加わりたいんだけど」
「そうだ。肩か背中見たい。スリーヘッズドラゴンのタトゥーしてるのかな」
「尋問は行われています。しかし本土の犯罪集団や軍装備品の密輸、違法改造は微妙な問題をはらんでいます。あなた方が絡むとややこしくなります。法務人工知能と密に協力可能なわたしにまかせてください」
オートマトンはあわただしく帰っていった。
「マザー、何を隠してるんだ」
ぼくがぽつりと言うと、みんなうなずいた。
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