ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド

alphapolis_20210224

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第五部 ゴールデンエイジ

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「おはようございます」
 マザーは朝の支度が終わった頃を見計らってやってきた。入室の許可など求めなかったし、施錠されてるはずの扉は無抵抗だった。
「勝手に入ってくるな、マザー。着替えてたらどうする」
「花子です。終わったのは分かっています。プライバシーが必要な状況と判断すれば尊重します」
「じゃ、尊重してないじゃないか」
 マザー、花子は笑った。
「会話を楽しんでいますね。いい兆候です」

 ぼくは黙った。話のきっかけを作ってやるつもりはない。

「今日は世間話に来たのではありません。お時間よろしいですか」
「予定はぼくが決めてるんじゃない。天から声がするんだ」
 そう言うと、マザーは改めて天井に許可を求め、返事がないとわかると肩をすくめた。妙なユーモア感覚だ。

「一郎さん、その身体になってからどのくらいになりますか」
 花子はベッドのそばの椅子を指して座るよう促し、自分は机に座って足をぶらぶらさせた。手は届かない距離だった。
「分からん。おまえに『停止』させられたし、そうでなくても時間の感覚なんて当てにならない」
「その通りですね。一か月かもしれないし、十年かもしれない」
「そんなにはならないだろ。人間は成長する」
 言ってから気づいた。それも止めておけるかも。
「今重要なのは一郎さんの身体感覚で、まだ十日ほどしか経っていません」
 うなずいた。それは納得できる。
「つまり、まだあなたは島の坊っちゃんから十分に分岐しておらず、その状態で複製元と話すのは危険なのです。鏡に映したように同一の二つの心を接触させるのははっきり破滅的です」
「なら、島のぼくもそれほど時間が経っていないって事だな。じゃ、今の所身体感覚と実際の暦の時間にはそれほど差はないって考えていいのか」
「はい。そこを分かっていただければ結構です。十分に時間が流れ、完全に分岐するまでは島との連絡は許可できません」

 ずっとぶらぶらさせている。マザーにとって肉の足を持つというのはどんな感じなのだろう。

「それはそれとして、じゃあここにきてる仲間には会わせろよ。雄二、さくら、大三郎、そんな名前だったな」
「ええ、今日はそのつもりで来ました。もう会っても大丈夫でしょう。みんな脱走しようとして再収容されましたし。通過儀礼を済ませたようなものです」

 ぶらぶらを止め、扉の方を向くと開いた。

 三人が立っていた。

「なんか久しぶり」ウォーデ、雄二は大股で入ってきた。短髪でのっぺりとした人の頭に毛のない肌、ぼくよりはたくましそうな肩をしている。子供の声だが、振る舞いは間違いなくウォーデだった。

「だいぶ変わった」ファーリー、さくらはいつものように二人の間をすり抜けるように歩く。肩までの黒髪はつやつやしていた。三人の中では一番背が高い。ぼくより高いだろう。体形はまったく違うし、あれでは一ミリアンペアだって放電できそうにないが、やはりファーリーはファーリーだった。

「今はただのチャイルド。会えて嬉しい」ビクタ、大三郎は元を想像しにくい見た目だった。やせ形で背も低い。坊主頭はきれいに丸かった。いたずらが好きそうな目をしている。「ライトウェイトになった」

「みんな、元気か」

 そう言うのが精いっぱいだった。涙がにじんだ。ただ仲間と会っただけなのに。やはりぼくは何かされたのだろうか。
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