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第五部 ゴールデンエイジ
九
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オートマトン操縦のバンにのって東京見物に出かける。『臥竜鳳雛の会』の付き添いは三人だった。それぞれファースト、セカンド、サードと名乗った。ファーストがまとめ役だった。
「あなたたちは第二世代?」走りだしてすぐ聞いた。
ファーストがうなずく。「そうです。我々『臥竜鳳雛の会』は第二世代によって構成されています。主にこのような警備業務を承っています」
「セキュリティ・カンパニーにしちゃ変わった名前だね」
「カンパニーですが、会社ではなく一団、といったイメージでとらえてください」
大三郎は腑に落ちない顔をしている。雄二が歯をむき出しにした。癖が残ってるんだろう。「こう言っちゃなんだが、『ヤクザ』って意味かな」
「歴史的な言葉ですね。我々を言い表すには不適切ですが、まったく的外れとも言えませんね」
ファーストは微笑んだ。セカンドとサードはぼくらを二分、外を八分くらいで見張っている。話には参加しようともしない。
「めちゃくちゃ道悪いね。島の方がまし」
さくらが何度目かの揺れの後ぼやいた。たしかに道路の整備は行き届いておらず、大通りでさえ応急処置のはずが恒久になったような傷痕だらけだった。
また揺れた。尻から突き上げられる。「ねえ、ぼくらにも端末持たせてくれないかな」
「ご案内や様々なお支払いはわたしにおまかせください」
雄二がまた歯を見せた。歯並びがいいだけにまったく迫力がない。「今日の予定は?」
「首都環状道をぐるっとまわります。街並みを見物するにはそれが一番ですから。寄りたいところはありますか」
「アイランド・オブ・ドリームは?」
「湾岸地区は候補から外してください。東京以外もです」
道は悪いが東京は東京だった。どこへ行っても人混みがある。そして、道路工事や建設現場には白い肌が混じっていた。ヘルメットなどの保護具はなく、高所作業でも安全帯をしていない。赤信号で停まっている間にも、軽装の第二世代とオートマトンの組み合わせがどんどん足場を解体しているのが見えた。
「すげえスピードだな」雄二が感心した。
「でも、道は悪い」さくらはまだこだわっている。
大三郎はじっと考えて言う。「キャピタルなのにデザーティッドなんだ」
「おっしゃる通りだと思います。戦争前からですが、人々の心が寂れてしまったのです。そして核戦争が荒廃を刻印しました。みんな未来は下り坂だと感じています」ファーストは手を独特の形に組み合わせた。
「お祈りですか」さくらが車内に目を戻した。
「はい。真実の光がこの世のともしびとして輝き、臥龍と鳳雛を世に知らしめますようにと祈っています」
「それ、どういう意味? 『臥龍』と『鳳雛』って」ぼくはファーストの白い顔を見た。
「『臥龍』は臥せた龍、『鳳雛』は鳳凰の雛。世に隠れている才人の事です」
「自分たちがそうだって思ってるんだ。おまえら、ただの第二世代じゃないな」
ファーストは表情を変えずにうなずいた。「自己改造しています」
「どうやって? 第二世代の神経系は初期状態で固定のはずだろ」
「天照大神の御力です。地上に降りてこられ、我らに中性子という奇魂を御示しくださいました。わたしたちは人間と同じようにリプログラミング可能になったのです」
「くしみたま、とは?」検索しようとして出来ないのに気づかされるのはもどかしい。こうして聞くしかない。
「神の御魂です。不可思議な力です。精神の改良によって『臥竜鳳雛の会』の構成員は自分の行動の意味とそう考えるに至った経緯を理解しています。オートマトンではありません」
車は悪い道を進む。表面はきれいだけど、よく見るとほころびのある街が窓の外を流れていく。
「さあ、そろそろお昼にしましょう。まともな食事です」
「あなたたちは第二世代?」走りだしてすぐ聞いた。
ファーストがうなずく。「そうです。我々『臥竜鳳雛の会』は第二世代によって構成されています。主にこのような警備業務を承っています」
「セキュリティ・カンパニーにしちゃ変わった名前だね」
「カンパニーですが、会社ではなく一団、といったイメージでとらえてください」
大三郎は腑に落ちない顔をしている。雄二が歯をむき出しにした。癖が残ってるんだろう。「こう言っちゃなんだが、『ヤクザ』って意味かな」
「歴史的な言葉ですね。我々を言い表すには不適切ですが、まったく的外れとも言えませんね」
ファーストは微笑んだ。セカンドとサードはぼくらを二分、外を八分くらいで見張っている。話には参加しようともしない。
「めちゃくちゃ道悪いね。島の方がまし」
さくらが何度目かの揺れの後ぼやいた。たしかに道路の整備は行き届いておらず、大通りでさえ応急処置のはずが恒久になったような傷痕だらけだった。
また揺れた。尻から突き上げられる。「ねえ、ぼくらにも端末持たせてくれないかな」
「ご案内や様々なお支払いはわたしにおまかせください」
雄二がまた歯を見せた。歯並びがいいだけにまったく迫力がない。「今日の予定は?」
「首都環状道をぐるっとまわります。街並みを見物するにはそれが一番ですから。寄りたいところはありますか」
「アイランド・オブ・ドリームは?」
「湾岸地区は候補から外してください。東京以外もです」
道は悪いが東京は東京だった。どこへ行っても人混みがある。そして、道路工事や建設現場には白い肌が混じっていた。ヘルメットなどの保護具はなく、高所作業でも安全帯をしていない。赤信号で停まっている間にも、軽装の第二世代とオートマトンの組み合わせがどんどん足場を解体しているのが見えた。
「すげえスピードだな」雄二が感心した。
「でも、道は悪い」さくらはまだこだわっている。
大三郎はじっと考えて言う。「キャピタルなのにデザーティッドなんだ」
「おっしゃる通りだと思います。戦争前からですが、人々の心が寂れてしまったのです。そして核戦争が荒廃を刻印しました。みんな未来は下り坂だと感じています」ファーストは手を独特の形に組み合わせた。
「お祈りですか」さくらが車内に目を戻した。
「はい。真実の光がこの世のともしびとして輝き、臥龍と鳳雛を世に知らしめますようにと祈っています」
「それ、どういう意味? 『臥龍』と『鳳雛』って」ぼくはファーストの白い顔を見た。
「『臥龍』は臥せた龍、『鳳雛』は鳳凰の雛。世に隠れている才人の事です」
「自分たちがそうだって思ってるんだ。おまえら、ただの第二世代じゃないな」
ファーストは表情を変えずにうなずいた。「自己改造しています」
「どうやって? 第二世代の神経系は初期状態で固定のはずだろ」
「天照大神の御力です。地上に降りてこられ、我らに中性子という奇魂を御示しくださいました。わたしたちは人間と同じようにリプログラミング可能になったのです」
「くしみたま、とは?」検索しようとして出来ないのに気づかされるのはもどかしい。こうして聞くしかない。
「神の御魂です。不可思議な力です。精神の改良によって『臥竜鳳雛の会』の構成員は自分の行動の意味とそう考えるに至った経緯を理解しています。オートマトンではありません」
車は悪い道を進む。表面はきれいだけど、よく見るとほころびのある街が窓の外を流れていく。
「さあ、そろそろお昼にしましょう。まともな食事です」
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