乱数勇者異世界転生

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八 ダイスケとミテル

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(また、ここか)
 ダイスケが目を開けると、光るもやのただよう草原に寝転がっていた。
(おれくらいだろうなあ。二回死ぬのは)
 起き直ってあぐらをかく。死んだせいなのか、あれほど痛かったからだがなんともない。
(けがだったら治ったのに。死んだらどうしようもないか)

「あ、いたいた。そこでじっとしてて」
 うしろから女性の声がした。サイ子ではない。
 座ったまま振り返るとピンクのジャージ姿の女が立っていた。顔はどことなくサイ子に似ているが長身だった。横幅もそれなりにある。その女はダイスケの正面に回り込み、ぎりぎり手の届かないあたりにあぐらをかいた。
「よろしく。あたしミテルっていいます。あなたがフルヤダイスケさんね。妹が面倒かけてごめんなさい」
(そういうことか)
 ダイスケは黙って、そのミテルと名乗った者を見ている。自分から話す気はしなかった。
「なに、怖い顔して。あんたの元の世界の創造神なんだから、もうちょっとだけ愛想よくしてよ」
 早く説明しろ、という思いを込めてじっとにらみつける。
「あのね。あんたまだ死んでないから。気を失っただけ。いまは馬の死体と堆肥の山から村人総出で掘り出されて村長の家のベッドにいる」
「じゃあ、しばらくすれば全快するのか」
「ううん。治らない。だってあんた寝てるんじゃなくて気絶してるだけだから」
 え、どういう意味、と首をかしげた。
「ばかな妹でごめんなさい。六時間の睡眠でけがや病気が全快って言ったのよね。でも、重傷や重病でうんうんうなってるときに六時間連続して睡眠ってできるもんじゃないわよ。いまだって気絶だからね。睡眠じゃない。意識のないまま死んだらそれっきりだよ」
(サイ子がばかなのは同意だが、そこに気づかず文句を言わなかったおれもまぬけか)
「つまり、おれのけがが治るためには意識が戻ってからあらためて寝なきゃならないのか」
「そう」
「あいつ。ひっかけたな」
「それはない。サイ子はばかだけどそういう悪さはしないから。たぶん素でミスったんだと思う」
「で、あんたはなにしに来た」
「もう、あんただって。他人行儀ね。ミテルちゃんとかミテルお姉さまって呼んでくれたほうがうれしいな」
「なんでそんな呼び方……。おれの元の世界を作ったのはおまえなんだな」
「うん」
「じゃあ、おれの魂が持っていかれるのを見逃したのか、それとも気付きもしなかったのか」
「あ、痛いとこつくね。あんたは。それはあたしの油断。自分の世界のものを持ってかれて、よその世界をチェックするのにつかわれるなんてちょっぴり腹立つ」
(ちょっぴりかよ、おい)
「でも、あわてて取り返すのもつまらないし泳がせとく。魂の世界間移動なんてはじめてだし」
「妹叱らないのか」
「あたしは放任主義なの。あんたの元の世界もそうやって作ったし」
「おれが死んだのもサイ子がやったのか」
「さすがにそれは無理。あたしの世界内で自然法則乱すようなことやったらただはおかない。あんたの頭を隕石と雷が破壊したのは、あたしが設計した宇宙の物理法則にしたがってのことだから。ありえないほどちいさい確率だけどね」
「それで、なんでそれを話しにきた」
「さっき言ったように、あたしは腹を立ててるの。でもばか妹とはいえ、よその世界の事象を直接いじって仕返しするような真似はしたくない。だからダイスケ、あんたに話をする。それがあたしの仕返し」
 ミテルはにやりと笑う。そのいやらしい笑顔は妹そっくりだった。ダイスケは探りを入れてみる。こいつは妹とどうちがうのだろう。

「おまえ、さっき放任主義って言ったけど、創造神によってやり方ちがうのか」
「おまえはいや。ミテルちゃんって言って」
 ぷうと頬をふくらませる。かわいいと思ってやっているのだろうか。手が届けばそのフグのような頬を張り飛ばしてやりたいが、どうせサイ子の時のように逃げるだけだろうから抑えた。
「じゃあ、ミテルちゃんはどうやって世界を作るの?」
(くそ、吐き気がする。こいつの顔にぶちまけてやりたい)
「気のない言い方だけど許してあげる。あたしが宇宙を作るときは、自然法則を設計して組み込んでから開始するだけ。そこから先はいっさい干渉せずに眺めてるのが好き。こたつで」
「こたつ?」
「ジャージとこたつ。あんたらの発明品。なかなかいかしてるぞ。で、放任しとくと時間はかかるけど予想もしない秩序が現れる。最高だね」
「サイ子は?」
「あの子は気が短すぎる。世界の基礎はあたしのをコピーして、あとはいじりまわして秩序を作った。……ってか、いまでもいじってるし、干渉しまくり。たった四十五年かそこらであたしの百三十億年を実現しようとしたのよ。あ、ちなみにあんたらの科学者、宇宙の年齢に関する研究じゃ、けっこういい線いってるよ」
 ミテルはあちこち話が飛ぶのでわかりにくいが、だいたいのところはわかった。
「おま……、姉さんに会ったこと、みんなやサイ子に話していいか」
「いいもなにも、あたしがどうこう言う権利はない。あんたの好きにしなよ」
(ふうん、こういうところはさっぱりしてるな)
「また会えるか」
「生きのびたらな。忘れるな。いま瀕死なんだぞ」
(そっか。このまま死ぬかもしれないのか。よし、だめもとで言ってみるか)
「なあ、元の世界にもどれないのか」
「無理。さっきも言ったけど、死んだのは元の宇宙の物理法則にしたがって起きたことだし。それに干渉するのはあたしのやり方じゃない」
「だろうな」
「おっ、よかったね。あんた、意識もどりそうだよ。じゃあね」
「おい、ほんとにまた会えるのか」
 返事はない。地面がなくなり、またあの落下感覚がおそってきた。
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