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第七章 覺めて見る夢

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 目を覚ますとやわらかな毛布の感触がした。お腹がすいている。夜らしい。炉の火は細く燃やされていた。体がよく動かないので目だけで見まわすと狭い部屋だった。頭の右に知らない人、左にクロウさんがいた。二人とも腰掛けたまま腕を組んで目を閉じていた。
 変な臭いがする。かすかだが、便のようだった。腰のあたりが変だ。天井を見ながらしばらく考えて分かった。おむつだった。そうやって体を生かしておいてくれたのだろう。
 戻ったとすぐ知らせた方がいいだろうか。しかし、強烈な眠気が襲ってきた。いいや。朝になってからで。

 朝、気づくと毛布をはぎ取られ、おむつを交換されようとしていた。
「おはようございます」
 変な状態のままとりあえず挨拶してしまう。その女性は寝間着のズボンをはかせてくれるとびっくりした顔で外に飛び出していった。それから一騒動だった。体を洗い、着替え、食事を済ませた。まだ流動食だったが自分の手で匙を使って食べた。

 食事が終わると座って待っているように言われ、しばらくすると若い男の人が来た。昨夜いた人で、自分はケストリュリュム家の魔法使いだと言った。正面に椅子をもってきて座る。
「あの、お名前は? わたしはトリーンです」
「トリーン・トリストゥルムだね。知ってます。それとごめん。わたしのような魔法使いは名前を明かさないんだ」
「ここは?」
「君のいた呪術文様の近くの庵。ちゃんと戻れてよかった」
「じゃあ……」
「昨夜文様ごと消えた。わたしが立てた計画で、クロウ氏には多大なる協力をいただいた」
「会えますか」
「もちろん。でもその前に少しだけ。わたしの質問に答えてほしい。いいですか」
「質問によります」
 魔法使いはちょっと驚いた顔をした。
「これはこれは。あなたは見た目より大人らしい。では、こういうのはどう? いまの気分は?」
「まだ眠っているような感じ。どこかはっきりしてません。あの、わたしの魂、全部戻ってますか」
 笑いが返事代わりだった。幅の広い口が大きく開けられた。
「大丈夫。保証するよ。その質問そのものがあなたがあなたである証明です。そこでもう一つ。超越能力、まだ使えるか試したい。いいですか」
 若い魔法使いの顔を見、心の中で応援しながらうなずく。その男もうなずき、指を一本立てて灯をともした。赤から橙、橙から青白色へと変わっていく。
「ありがとう。もういいですよ」
「どうです? 結果は?」
「すばらしい。すぐにでも復帰できる。じゃあ最後の質問。君の夢は? 将来なにをしたい? どうなりたい?」
「帝国の治安維持に関わりたい。皆が安心して暮らせるような御役目につきたいです」
「立派だね。でも残念だ。わたしには壁を作るんだな」
 立ち上がり、扉の外に合図する。その落ち着きはらった動きを見ていると、この魔法使いは見た目ほど若くないんじゃないかという気がした。
「ではさようなら。お話ありがとう」
 そう言って出て行った。入れ替わりにクロウさんが入ってきた。
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