秘められた願い~もしも10年後にまた会えたなら~

宮里澄玲

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 注文した料理が来た。
 料理を取り分けようとすると、俺がやるから、と手際よくそれぞれ私の分をお皿に載せてくれた。本当に優しい…。それに、料理をシェアするという、まるで恋人同士のような行為に幸せを感じた。
 料理はどれもおいしかった。先生も、うん、うまいな、と頷きながら嬉しそうに食べていた。
 食事をしながらその流れでお互いの食生活の話になった。先生は食べ物の好き嫌いはなく、基本的には何でも食べるという。
 「普段食事はどうしてるんですか?」
 「平日はほとんど外食だな。あとはスーパーやコンビニで弁当や総菜を買ったり。健康のことを考えると自炊した方がいいのは分かっているんだけど、帰りが遅くなることが多いから中々難しくてな…。まあ、栄養のバランスはそれなりに考えて、野菜を多く取るように心がけてはいるが」
 「そうですか…。いつも帰りは何時頃なんですか?」
 「早くて夜7時ぐらいだな。遅いときは9時過ぎることもざらにあるし。帰ってから家で仕事することもよくあるから尚更自炊なんてな」
 想像はしていたものの、やっぱりホントに忙しいんだな…。いくらベテランで慣れているとは言え、毎日やることが多いだろうし色々大変なんだろうな…。
 「そうなんですね…。小学校だと全教科担当しないといけないし、先生のお仕事ってただ勉強を教えるだけじゃないですもんね、授業以外にも色々な学校行事や保護者との関わりもありますしね。毎日長い時間生徒たちと関わりながら、他にもたくさんの仕事をこなさないといけないから本当に大変だと思います。それでも先生は10年間ずっと変わらず、当時の私たちにしてくださったことと同じように今の子どもたちに対してもたくさんの愛情を注いで成長を見守っているんですよね…。尊敬します。毎日いつもお疲れ様です」
 私の言葉に先生の表情が一変した。
 「あっ、すみません。なんか生意気なことを言ってしまって…」
 「いや、違うんだ、謝る必要はない」
 先生が横を向いて恥ずかしそうに目線を下げると、ボソッと何か呟いた。
 「?」
 「あ、いや…そんなこと今まで人から面と向かって言われたことなかったから。結城は教師の仕事をよく理解してくれているんだなって感心したんだ。ありがとう」
 気を悪くさせたのではなくてよかったと安心したが、その前に何を呟いたんだろう…。
 「ところで、結城は自炊してるのか?」
 「できるだけ自炊するように心がけてはいます。疲れていて作りたくないなぁという時は私もお弁当を買ったり、外食したりしますが」
 「仕事していて毎日自炊するのは大変だろう。それでもちゃんとしているんだから偉いよ。得意料理はあるのか?」
 「特にこれというのは…。あ、でも昨日はとても和食が食べたい気分だったので、頑張って肉じゃがとかひじきの炒め煮なんて作っちゃいました」
 和食という言葉に、先生が天井を見上げながら、はぁ…とため息をついた。
 「和食かぁ…あぁ…いいなあ、そういう家庭料理…最近全然縁がないな…」
 しみじみと心から恋しそうに呟く先生に、私はつい、とんでもないことを口走ってしまった。
 「私が作ったのでよろしければ、まだたくさんあるので召し上がりますか?」 
 だがすぐに、しまった! と自分の失言に気付き、今の言葉は忘れてください、と言おうとしたら、 
 「えっ! 本当に? いいのか? 1人暮らしだと和食を作るのは正直億劫で…。頼む、ぜひ食べたい。食べさせてくれ!」
 と、先生が身を前に乗り出してきた。
 私は先生のあまりの勢いに完全に飲まれてしまい、思わず「はい」と承諾してしまった。

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